インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 夜の本気ダンスが考える初期衝動の正体 「ほんまの初期衝動って0歳、純粋に 歌って踊る心を30代で取り戻せれば」


夜の本気ダンスが考える初期衝動の正体
「ほんまの初期衝動って0歳、純粋に
歌って踊る心を30代で取り戻せれば」

2023年に結成15周年を迎えた、夜の本気ダンス。そのメモリアルを祝すようなフルアルバム『dip』が1月24日(水)にリリースされた。水曜日のカンパネラのメンバーで知られるケンモチヒデフミが作詞作曲した「ピラミッドダンス feat.ケンモチヒデフミ」を含む全9曲を収録した同作は、「“夜”も昼も聴く者全てを“本気”で“ダンス”させる」というバンドの根幹をより明確にあらわした内容となっている。そこで今回は、そんな『dip』についてメンバーの米田貴紀(Vo./Gt.)、西田一紀(Gt.)、マイケル(Ba./Cho.)、鈴鹿秋斗(Drs./Cho.)に話を訊いた。

――『dip』は多彩なアプローチで踊らせてくれる楽曲が揃っていますね。

西田:昨年、結成15周年を迎えていろんな人と携わる機会を自分たちで設けたことが大きかったと思います。これまで作品をたくさん作ってきましたが、近年は煮詰まったり、考えが凝り固まったりするところも感じていたので。僕の場合はギターを弾く上でも手癖みたいなものがついちゃって、「自分はこういう音の選び方をしてしまう」というのがあったんです。たとえば僕らはギターのリフとかからテーマから膨らませて曲を作ることもあって、でもそもそもそれが同じような感じになったりして。自分で自分に退屈してくる部分が何年か前からあったんです。だからミニアルバムの『armadillo』(2022年)ではギターではなく木琴みたいな音からテーマを作ったりしました。今回の『dip』の「Vivid Beat」もピアノでテーマを考えたり。ギターになるべく縛られすぎずにやることができたのですが、それもいろんな人と携わって視野が広がったからできたことです。

米田:今作は、5年前に出したフルアルバム『Fetish』と比べても、心が躍ったり、気持ちが明るくなる方向へ導けていると思います。『Fetish』のあと、『PHYSICAL』『armadillo』の2枚のミニアルバムを出して、そこではバンドの4人だけの音じゃないものも足すようにして。ライブでもパソコンを使って音も流すなど、足し算の作り方も実践しました。一方。パソコンで音楽を作っていると興奮よりも冷静さが勝るんです。ちょっとした細かい粗を直す作業などがあるので。ただそうやっていろんな試みを重ねたことで「うるささとか、荒々しさとか、そういうはみ出す要素がもっとあって良いんだ」と考えられるようになりました。これまで培ってきたものが、良い形で『dip』にあらわれた気がします。

鈴鹿:あと今回は「初期衝動みたいなもの」もテーマとして出せました。今って昔と同じことをやったとしても、アレンジ面で変に考えたり、小難しくしてしまったりすることがある。その点、ケンモチヒデフミさん、the telephonesの石毛(輝)さん、ビッケブランカさんが作品に参加してくれたことで、安心感を持ってアレンジ面などを託すことができました。いつものように「もっと細かくリズムを入れなきゃ」とかアレンジでこねくり回さなくて良くなったから、「自分たちは衝動的にやっていこう」という気持ちを強く出せたんです。演奏する上でのシンプルに楽しめるものになりました。

マイケル:自分は元々、the telephonesのコピーをやっていたので、石毛さんと作業ができたのは経験としてとても大きかったです。石毛さんはレコーディング機材のマニアで、僕も同じく機材が好きなので。自分の家でレコーディングをするときはどういう機材が必要なのかとか、REC中の音の作り方とかを積極的に聞くことができました。いろんな気づきがあって、間違いなくバンドとしてもできることが増えました。なによりそうやって第三者が入ってくれることで、自分たちの曲に対する解像度も上がりましたし、自由にやることができました。

――『dip』では、お話にあがった初期衝動性を特に感じることができました。

米田:かなりプライマルなところを突き詰めていった結果、初期衝動という一番シンプルなものにたどり着いた感じがあります。「自分たちってどういうバンドなんやろう」と考えて、「シンプルに楽しく踊らせたらええやん」って。ただ一見、昔の僕たちの曲のシニカルな部分と似たような捉え方をされるのですが、実は何周か回ったり寄り道したりしてこの位置にいたりする。だからいろんな表現をやれるようになりました。衝動的な部分を強調させたけど、昔の感じでそのままやるというのも違う。30代の今の自分たちで、昔の「良い」と思っていた部分を表現しました。

西田:そういう意味で僕は「初期衝動を、初期衝動というだけで片付けたくない」と考えていて。「初期衝動とはなんぞや」をサイエンス的に突き詰めたかった。たとえば「このタイミングでこういうシンバルが入ってくるだけで初期衝動っぽい」「ここでベースが、こういう風にチグハグな感じで動くと初期衝動を感じる」とか。初期衝動の仕組みがもっと分かれば、さらにバンドとしてやりようが見えてくるかなって。フィジカル面でも、コーラスをするときに普通にスタジオへ行ってパッと歌って「ピッチが合ってるかどうか」ではなく、たとえばビールを一缶だけ飲んで歌ってみたり(笑)。テンションやモードを自分なりに工夫することで、「初期衝動」を演出できないかと。

鈴鹿:いろんなミュージシャンが初期衝動を大事と思っていて、それを出そう、出そうとしている。ってことはやっぱり、初期衝動にしかないものがある。でもやっぱりそれって初期衝動のときにしかないものなので、結局出ないというか。つまり細かいところを工夫して擬似的にやらないと無理なことだとは思うんです。今回はそういうマインドで望みましたが、結局「初期衝動ってなんやねん」とも感じましたね(笑)。ただ歌詞の一節とか、"ちょっと聴き"みたいなところから伝わってくるものは間違いなくあります。

米田:ほんまの初期衝動って0歳だと思うんですよね。僕は1990年生まれなんですけど、当時のホームビデオを観ていたら僕が「おどるポンポコリン」を歌っている場面があったんです。それこそ初期衝動なんです。音楽を聴いて、純粋に楽しくなって、踊ったり、歌ったりしている。なにも考えてない。でもそれをやれるのが一番やなって。今、0歳の脳になれと言われても無理。だけどそういう純粋にやれている心をこの30代で取り戻せれば、それは初期衝動になる。たとえばギターを弾くときに「指痛い」とかなっていたときに思い描いていたこととか。そうやってどんどん"子ども"になっていくことが初期衝動につながるんやろうなって。つまり音楽と対峙したとき、自分がどれだけ素っ裸になれるかどうかなんです。

マイケル:「初期衝動って出せたらいいな」と考え込んでいる時点で、出せないのかもしれない。ただ歳をとるにつれてやれることも増えますし、それが初期衝動に代わって、自分を駆り立てる別のなにかになる可能性もある。これからはそれを探す時間にもなる気がします。音楽じゃないものからも音楽に繋がるだろうし、柔軟に物事を見ていきたい。今回は「昔みたいにやってみる」というところから作品を考えていった。それが初期衝動だったのかどうかは分からないけど、新しいエネルギーになりえるものが身についていたら良いですよね。

――その点では、3月30日に開催される地元・京都での自主企画イベント『KYOTO-O-BAN-DOSS』は初期衝動的な気がします。17時からまず京都FANJで『KYOTO-O-BAN-DOSS "FAN FAN FANJ"』をやって、そのあと京都METROへ移動して24時から始発近くまで「KO-BAN-DOSS」というオールナイトイベントをおこなうという。

米田:夕方にまずライブをやって、そのあとオールナイトもやるという、後先を考えてないところがたしかに初期衝動ですよね(笑)。「30代のおっさんなんて深夜は寝てますやん」って。だから本番、僕らが一体どういう状態になっているかが一番の見どころ。もちろん夕方のライブは全力でやりますし、その上でオールナイトもかますつもり。「15周年の夜の本気ダンス、ほんまにやれんのか」と煽る雰囲気を自分たちで出しています。

鈴鹿:ニシカズ(西田)は寝るのが早いから一番ヤバそう。前までは「オールナイトなんて大丈夫」と言えたんですけど、もう何年も出てないから......。今からでも可能なら日をずらしたいですね。

マイケル:自分らで企画しておいて「日をずらす」とか、どういうことやねん(笑)。

米田:みんな、どうにかして抜け道を探している状態ですね。ただ、京都というホームでやれるのが大きい。遠征先だと気持ち的にしんどいけど、今回はなんかあれば実家にすぐ帰れるから。心理的な不安がないよね。

マイケル:いやいや、だから俺たちの主催のイベントなのに「心理的な不安」とかなにを言ってるねん!

西田:昔みたいなことをやりたくて「オールナイトしようぜ」と言ったけど、今になって「なんであのとき、俺はオールナイトしようとか言ったんやろう」って思っていますね。

米田:ハハハ(笑)。まあ、でも良いライブになることは間違いないからこそ、ここらへんでちょっと「大丈夫かな」とかにおわせて、観にくる人を巻き込んでいこうかなって。自信を持って、この日は2ステージともたくさん踊らせるつもりです!

取材・文:田辺ユウキ




(2024年2月15日更新)


Check

Release

Major 4th Album『dip』

発売中

【初回限定盤】
(CD+DVD)
5800円(税込)
VIZL-2271

【通常盤】
(CD)
3400円(税込)
VICL-65916

《CD収録曲》
01.ピラミッドダンス feat. ケンモチヒデフミ
02.DYWD?
03.Vivid Beat
04.GOOD LUCK
05.Gold
06.虹
07.ABRAKADABRA
08.パセティックガール
09.Crush me

《初回限定盤付属DVD収録内容》
結成15周年記念!ヒストリームービー「十五夜 -HISTORY OF YNHD-」(バンド結成~現在までの激レア映像・未発表ライブ映像、撮りおろしメンバーインタビュー、2023年開催した自主企画イベント「KYOTO-O-BAN-DOSS at 京都KBSホール」ライヴ映像の初収録等、盛りだくさんの内容を約100分収録した結成15周年記念ヒストリームービー!)

Profile

2008年結成、京都出身、“夜”も昼も聴く者全てを“本気”で“ダンス”させる、米田貴紀(Vo./Gt.)、鈴鹿秋斗(Dr.)、マイケル(Ba.)、西田一紀(Gt.)から成る4人組ロックバンド。ロックのピュアな初期衝動と多様なエッセンスが融合し生み出された独自のグルーヴとグッドメロディーが、躍動感溢れる”人力ダンスミュージック”に変貌を遂げシーンを席巻している。2017年4月、テレビアニメ「境界のRINNE」OPテーマ「SHINY」を含む「SHINY E.P.」をリリース。フジテレビ系木曜劇場「セシルのもくろみ」の主題歌「TAKE MY HAND」を含むメジャー2ndアルバム『INTELLIGENCE』を10月にリリース。2019年6月、メジャー3作目となるアルバム『Fetish』をリリースし、2020年には、バンド初となるホール会場でのワンマンライブを東京と大阪で開催。見事ソールドアウトさせ、大成功を収めた。2021年にはミニアルバム「PHYSICAL」をリリースし、約2年ぶりとなる全国ツアーを開催。2022年3月には地元・京都にて、約4年ぶりとなる主催イベント【O-BAN-DOSS】を開催し、9月には1年8ヶ月ぶりとなるミニアルバム「armadillo」をリリース。2023年はバンド結成15周年!地元・京都にてゲストアーティスト合計10組を招いた主催イベント【夜の本気ダンスpresents KYOTO-O-BAN-DOSS】を2DAYSで開催し、大盛況に終了!結成15周年イヤー、みなさん、”踊れる準備はできてますか!?”


Live

「夜の本気ダンス 全国ツアー "blue spring 18 dip" TOUR」

【栃木公演】
▼5月6日(月・祝)18:00
HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
【神奈川公演】
▼5月7日(火)19:00
F.A.D YOKOHAMA
【岡山公演】
▼5月10日(金)19:00
CRAZY MAMA 2nd Room
【愛媛公演】
▼5月11日(土)18:00
松⼭サロンキティ
【兵庫公演】
▼5月21日(火)19:00
神戸 太陽と⻁
【北海道公演】
▼5月29日(水)19:00
mole
【新潟公演】
▼5月31日(金)19:00
新潟CLUB RIVERST
【福岡公演】
▼6月16日(日)18:00
LIVE HOUSE CB
【大阪公演】
▼6月21日(金)19:00
梅⽥クラブクアトロ
【愛知公演】
▼6月26日(水)19:00
名古屋クラブクアトロ
【東京公演】
▼7月2日(火)19:00
渋⾕CLUB QUATTRO


Check!!