ホーム > インタビュー&レポート > “これが新odolだと自信を持って言える” バンド最大の転機を乗り越えて辿り着いた 5thアルバム『DISTANCES』の意義
"秘伝のタレ"を再び熟成させるまで
――大阪に来られるのはお久しぶりですか?
森山「ちょうど1年前にイベントに呼んでもらって来たんですけど、ワンマンはコロナで延期や中止になってしまっていたので、来年の3月にやるワンマンが4年ぶりですね」
――コロナで世界が大変なことになりましたが、その間にodolも体制が変わり、6人から3人になりました。今はどんな感じのモードですか?
ミゾベ「今はサポートメンバーを呼んでライブをやっているんですけど、僕の中では前よりバンドらしくなったかなと思ってます」
――どういったところでそう思われますか?
ミゾベ「6人の頃は、良く言えば自分たちのやり方を突き詰めてるんですけど、悪く言うと殻に篭っていたというか。今はいろいろなサポートミュージシャンに出会えたので、フィードバックをもらったり、例えば"普通はライブの現場だとこうするよ"ということを教えてもらったりして。そこで、音に関してもマインドに関しても、バンド感に気付いたと思っています」
――ほう、バンド感。
ミゾベ「関係性でのバンド感はあったと思うんですけど、6人の時代は結構音も作り込んでいくというか、ライブで再現するのが難しくても、自分たちの中で1番良いと思うものを探す作業だったんですけど、今は逆にライブが音源を超えてくることがあり得るんだということを、サポートミュージシャンたちに出会ったことで体感できたんです」
森山「"バンド感"って多分、バンドごとに違うと思うんですよ。その上で、僕たちが当時思っていたバンド感というのは、バンド独自の方法論や美学、関係性、バランスがあって、その中で熟成させていく"秘伝のタレ"みたいなもの。誰も作り方は知らないけど、なんか成立してる。でも継ぎ足しでやってるから、他のところで再現することはできない。ひとつのバンドという壺のような入れ物があって、その中にメンバーがいて発酵させていく。そういう時間を6~7年過ごしていたんです。その中でも外に向かって開ける感覚はあったんですけど、それはやっぱり壺の中から外を見ていただけ。そんな中で、ある日メンバーが2人辞めたことで、その壺がぶっ壊れたみたいな(笑)。バシャってなっちゃって、秘伝のタレを求めてる人に同じ味が出せなくて、でもそういう時に"助けて"と言ったら、色んなシェフたちが集まってきて、アイデアを出してくれた。イタリアンやフレンチの方法論、街の定食屋の方法論。僕たちが知らなかったけど、立派に確立していて、信頼できる方法論に一気に出会ったんですね。かつて熟成していたタレの味は覚えてるから、それらをうまいことミックスして、新しいodolの音が、ようやくまたこの数年間で作り上げられたなと思ってます」
ミゾベ「例えがわかりやすい」
――本当にわかりやすいです。壺が壊れてしまった時は、苦しい時期もあったんですか?
森山「非常に(笑)」
ミゾベ「(笑)」
森山「メンバー3人、そんなに表には出してなかったと思うんですけど、やっぱりメンタルに来るものもあって。思い描いていた未来が急に閉ざされたと同時にコロナが始まって。すごく暗闇ではあったんですけど、救いだったのは、そういう時に映像作品や広告でodolの音楽を求めてくれる人が増えていたんですよ。僕たちはライブももちろん好きですけど、元々制作が好きだった。そこで求められることが続いていったので、なんとかそれを足がかりにして、その中で色んな方法論を知って、僕たちの味が再発見できた状態ですかね」
――今お話いただいたタイアップ作品が入っているのが、2021年6月にリリースされた4thアルバム『はためき』ですね。制作時はコロナど真ん中だったと。
森山「そうなんです。もちろん撮影はとても大変そうだったんですけど、世界が止まっていても、映像や広告は生み出され続けていて。そういう時に、僕たちの存在意義と言うと重すぎますけど、音楽を続ける理由みたいなものを与えてもらえたことは、すごく幸運でした」
――自分たちの味が作れるようになったタイミングは、体感的には前作(『はためき』)ですか、今作(『DISTANCES』)ですか?
森山「前作も希望は見えてたとは思うんですけど、完成したのは完全に今作ですね」
ミゾベ「そうね。3人になった時、バンド全体の問いの中で新しいメンバーを探すのか、サポートの体制でやるのか、ずっと右往左往してて。もちろん良いメンバーがいたら入ってほしいところはありつつも、そのタイミングでは良い人がいなくて。今のアルバムの曲を作ってる最中に、一旦サポートミュージシャンと共にやるスタイルでいこうという意思統一はあったので、そういう意味ではその時に見えた感じがしましたね。数年先を考えても、今のスタイルで突き詰めていける予想は立っています」
――なるほど。秘伝のタレで言うと、初代店主がお店を再建したような感じですか?
森山「そう、スタッフは一緒なんです。だからその味を覚えていて、結果的になんとなく通ずるものがあるし、odolの音というものがブレずに再発見できたと思うんですけど、秘伝のタレそのものを再現しようとしていた時期は苦しかったですね。例えばフレンチのシェフに秘伝のタレのことをいくら伝えても、"いやここはソースで"という感じじゃないですか。秘伝のタレは他の人にどうしても伝わらないんですよね。同じ時間を同じ速度で過ごしていないと理解できないことが、"バンド感"という言葉に含まれていると思うので。"俺たちはこれでやってきたんだ"というプライドや自信があるからこそかなり苦しいし、未来が見えない感じもあったけど、"フレンチも美味い!"みたいになって、"じゃあ次はこういうふうにやろう"と受け入れ始めてからは、すごく楽しくなってきましたね」
バンドの変化の過程をそのままパッケージした作品
――今作には、2021年からの2年間で作られた楽曲が収録されていますが、そのモードの中で制作をされたんですね。
森山「この12曲がまるまる変化の過程ですよね。秘伝のタレに変わる新しいレシピを見つけてから作ったというよりは、見つけるために作っていたものがパッケージされている。最後の方に作った何曲かは、"自信を持ってこれがうちの味です"と言える作り方でした」
――順番的にはどんな感じでできていきましたか?
ミゾベ「最後にできたのが『幽霊』(M-9)かな。その前が『遠い街』(M-7)です」
森山「その前に『今日も僕らは忙しい』(M-4)や『本当の顔』(M-3)、『君を思い出してしまうよ』(M-6)があって。何をタイミングとするかですけど、僕が曲を作り始めたのはそういう順番ですかね」
――1曲目は『望み』から始まりますが、JR東海のTVCM『会うって、特別だったんだ。』がもう本当に良かったじゃないですか。記憶に残るCMってこういうことなんだと思いました。
森山「鮮明に覚えてるんですけど、この曲を作ってる時はコロナ真っ最中だったんですね。だけど感染者が減る時もあって、CMを出せるかもしれないけど、時期が未定のままどんどん先に延びていって。メッセージのあるCMは社会との関わりの中で、すごく難しい時期でもあったんですよね。皆抑圧されて、内側に閉じ込められている社会。この2年間で全員が気付いた、"会うって、特別だったんだ。"という普遍的なテーマに、どういうテンションの音をつけるんだろうと考えたら、やっぱり少しの曇りもない明るさが欲しいなと思ったんですよね。そういう理由で、それまでのodolとはガラッとテンション感が変わって明るい曲になって。でもそこで1回振り切れたことで、最近の楽曲も幅が広がっていった。今振り返ると、あそこで『望み』を作れたのはすごく良かった。良い曲を作らせてもらいましたね」
歌詞を書くための、様々な方法論
――3曲目の『本当の顔』は曲調は明るいのに、歌詞が"そこなんや"というところを突いていて、現実的で普遍的でもありますね。
ミゾベ「『本当の顔』はスラスラ書けたとは違うんですけど、詰まった感じはなかったですね。最初に"ダブルミーニングで書くぞ"と決めて書き始めて、自分の狙いを最後までやり通せた曲です。途中で変わっていくこともよくあるんですけど」
――ミゾベさんは、森山さんの曲の断片や音色から歌詞を書いていかれるそうですが、この曲に関しては、どんなところがキッカケになりましたか?
ミゾベ「この曲は、音というよりかは会話の内容ですね。僕らメンバーだけで1週間に1回ミーティングしてるんです。今だと議題は3月のワンマンに向けて何を準備するか、みたいな事務的なことなんですけど、その時は割とゆとりがあって、それぞれ今思ってることや気分を話してて。『本当の顔』はSNSについて書いてみたんですけど、その気持ちを普段から僕は2人に話していて。その直後に作ったので、その気持ちを書きました。ただ、SNSの負の側面をストレートに言うだけだと、10年後20年後にSNSがあるのかもわからないし、時代性が出すぎてしまう。2つの意味で取れた方が自分の好みとして面白いし、普遍的なものになるかなというので書いた感じです」
――曲が残り続けることを前提に歌詞を書かれているんですね。
ミゾベ「好みだと思うんです。他人の曲だと時代を捉えたものも良いなと思うんですけど、例えば昔の曲を聞いた時に、"メールが"みたいな歌詞が出てくると、"前の時代の曲なんだな"と感じてしまう。もちろん時代を限定する良い側面もあるし、聴いてる人を導ける良い部分もあるけど、今までodolでは、なるべくオーセンティックというか、いつの時代になっても聴ける言葉を意識して歌詞を書いてきました」
――ちなみに制作中、ミゾベさんがスランプになられたそうで......歌詞が書けなくなったんでしょうか?
ミゾベ「そうそう。僕に限らず、作詞家って年を重ねるごとに書けなくなっていくと思うんですよ。大人になるにつれて、新鮮さが失われていくじゃないですか。だから明確に"今スランプだな"と感じていたというよりかは、振り返ってみると全然できなかったなという感じです(笑)」
森山「多分グラデーションでスランプに陥ってると思うんですけど、あえてタイミングを決めるとすればレコーディングの延期をした日があって。今までは最終的にはレコーディングの日にスタジオで僕と一緒に1行ずつ作詞していくみたいなことで、無理矢理完成させてたんですよ。だけど今回は、延期したり録り直したりというのが2曲続いたんです。それが『幽霊』と『今日も僕らは忙しい』。2回連続でレコーディングを延期した事実が皆に共有されて、"書けてないんだ"ということがわかって。でも『Distances』(M-11)のRec日も来るしどうしようという中で、別の策を探して、3人で歌詞を書こうというので『Distances』を作りました」
――なるほど。
ミゾベ「歌詞は自分から出てくる言葉なので、"前にこれやったな"とか、"近い言葉遣いやテーマになっちゃってるな"というのが見えてきて。今まで実体験やドキュメンタリーで書いてきたんですけど、『遠い街』はフィクションで書いてみようとか、『本当の顔』はダブルミーニングの歌詞で1曲通して書いてみようとか、レコーディングを延期する前からそういうのがあったんですけど、その最後の方法論が、"皆で書いてみよう"でした(笑)」
サポートメンバーとの関わりが制作のヒントをくれる
――『今日も僕らは忙しい』は、ドラムの大井一彌さんにドラムパートを当てて作られたそうですね。
森山「そう、彼もシェフの1人ですよね(笑)。彼の包丁さばきはヤバいと思って、さばいてもらいたい材料を仕入れてきました(笑)。本当にドラマーってすごくいろんなタイプの方がいるんだなと、この期間に学ばせてもらったんです。同じ楽曲でも表情がガラッと変わったりするし、そういうのは同じメンバーでバンドを続けていると、なかなか気付きにくい。でも強制的にサポートを迎える状況に置かれたことで、たくさん気付けて。そんな中で、大井くんのドラムプレイは僕の中で本当に理想の1つで。彼も高橋幸宏の流れを汲んでいたりするので、根底の部分も近いし、あとはそれが現代のサウンドにちゃんとアップデートされている。それで、叩いてもらいたいドラムをイメージしながら曲を書きました。とはいえ、メンバーだけでやっていた時代も、各パートのアレンジをする時には、その人のプレーを思い浮かべながら作業するので、全てが当て書きだったとも言えますけど、odolの曲で、odolのメンバー以外のミュージシャンに対してここまで意識的には初めてかもしれないですね」
――実際に叩いてもらっていかがでした?
森山「もう最高でしたね。想像と全然違うとこに連れていってくれたし、だけど求めていたものはちゃんと鳴っていて。さらにライブで演奏する時にはさらに良くなっていたり。今サポートしていただいている皆さんは僕たちよりも経験値がある方ばかりだし、そういったライブにおける身体性や反射神経みたいなものも教わってる最中かもしれないですね」
――素敵ですね。
森山「よく言う話で、"作曲家と演奏家ってどっちが音楽を生み出してるんだ"というのがありますけど、今の時代、どちらかというと演奏の重要性が軽視されがちで。皆ベートーヴェンの名前は知ってるけど、その時代彼の曲を演奏していたオーケストラやバイオリニストはあまり知らない」
――確かに。
森山「でも実際に解釈して音にしてるのは、演奏家なんですよね。僕はそこへのリスペクトを改めて実感しているんです。本当の意味で楽曲を作ってくれて、今まさに生み出してくれている。ここ数年、odolを助けてくれてる全てのミュージシャンがそう思わせてくれてるところはありますね」
――歌詞はどのように当てていかれたんですか?
ミゾベ「この曲は、それこそスランプでかなり書き直しました。僕らも来年30歳になるし、将来の漠然とした不安や、さっきも言った、今まで新鮮に思えていたことへの慣れもすごくあって。そこをドキュメンタリー的に書いた曲なんです。デモの段階で歌詞を作っていて、書き直す前に、森山が作ったビートをギターの西田(修大)さんとドラムの大井くんがレコーディングしたものをもらったら、2人がデモをかなりアップデートしてくれていて。それを聴いて、メロディーに対してハマりの良い言葉や、歌っていて気持ち良い言葉を重要視して書きました。で、メロディーの意図や言葉の乗り方の意図を意識的に擦り合わせて、整合性を取って。そこを1番丹念にやった曲です。レコーディングの時も、歌い方を変えてみるのか、言葉自体を変えてみるのかはすごく意識しましたね」
――丁寧に作られたんですね。
ミゾベ「そうですね。森山もレコーディング前に歌詞をプリプロしてる段階で、僕がスランプ気味だったのがわかってたと思うんです。ヒントじゃないけど、"こういうのどう?"と言ってくれて、それで形になっていったところがありますね。実際には2人で書いたようなものだと思います」
――聴けば聴くほど良さが染み渡る曲ですね。
森山「僕、今作で1番好きなんですよ。歌詞も自分の世代や時代観にすごく共感できる部分もあるし、個人的なことなんだろうけど、普遍的だなって」
3人で歌詞を書くことの難しさと、かけがえのなさ
――先ほど『Distances』はメンバー3人で歌詞を書いたとお話くださいましたが、テーマはどのように決まっていったんですか?
森山「これは、歌詞を作ること自体をメタ的にテーマにしてるところがあって。歌詞って、全部説明しないじゃないですか。例えばモヤモヤしたものを表現するために、意味のわからない並びになっていたり、論理的ではなかったり。だけど普段のコミュニケーションで人に何かを伝える時は、論理的でないと伝わらないですよね。だから歌詞を3人で持ち寄っても、それだけでは全く会話にならないんですよ(笑)。好きか嫌いか感性に合うかでしか喋れないし、それって傷つけ合うだけだし。その流れがあって、"まずテーマを1つ決めよう"となって、他者同士のコミュニケーションと言葉の無力さ、だけどその無力な言葉を返して想像し合うことのかけがえのなさに、音楽を作ることを重ね合わせて。そういうふうに3人で改めて言語化して気付き直した瞬間があって、そこを軸にしようと」
――3人で歌詞を作るの、難しいですよね。
ミゾベ「やっぱり難しくて。一応経験値的に今まで僕が歌詞を書いてるから、僕が整合性を取るというか、責任者はできると思うんですけど、今回はそれというよりは、3人で作るコンセプトだし、"3人のうちの1人"になろうと思って書いていったんです」
――なるほど。
ミゾベ「で、テーマを決める話を数時間した後に持ち寄ってみたけど、やっぱり全員違う歌詞を持ってきて。メロディに対する区切りも違うし、1つの歌として成立させるのがすごく難しいんだなと思いました。でも面白い試みというか、前提としてのテーマが強くあったので、1つのフレーズに対して"これは?"と案を出し合って決まっていって。全部3人で言語化した上で置かれた言葉なので、納得度は高いですね」
――他の人が書いた歌詞を歌うことへの抵抗は?
ミゾベ「歌詞への美学じゃないけど、"こういう歌詞の方が好き"みたいなのはあるから、それは言うんですけど、あくまで"3分の1として意見しよう"と思って。僕たち3人は違う人間で、1人ひとり考えてることは違う。他人が持ってきたフレーズに対しての違和感はあるけど、最終歌入れをした時、違和感は全て払拭されました。逆に皆で書いた歌詞を僕が代表して歌って、完成できて良かったなという満足感が100%でした」
――良いですね。サウンドもインパクトがありますね。
森山「うん、攻め気味です(笑)。僕の場合、意味やコンセプトを元に曲を作ることはほとんどなくて、本当にその時に作りたい、フィットする音を探してるだけのところがあるんですけど、この曲もそんな中の1つ。その前に開けた楽曲をたくさん作っていたので、その揺り戻しで内向的な部分を表現したかったのかもしれないです」
写真家・濱田英明との運命的な出会い
――『時間と距離と僕らの旅(Rearrange)』(M-12)の濱田英明さんのリリックビデオについて聞かせてください。odolと濱田さんはこれまでも接点があって、X(Twitter)やnoteで濱田さんご自身がodolとの関係性を丁寧にポストされていました。リリックビデオを見た時の感想は?
森山「感動的でしたね」
ミゾベ「さっきの歌詞の話じゃないですけど、もちろん濱田さんと僕も違う人間なので、"これは違うかな"と思うこともあると思うんですけど、自分の想像を超えてる状況だと、"言うことないです"という感じでしたね」
森山「本当に。あの映像が生まれたのって、僕らが"映像を撮ってきてください"と言ったわけじゃなくて、濱田さんが"ピンときて、こんなの作っちゃいました"みたいな感じで、『時間と距離と僕らの旅(Rearrange)』の音源を乗せて僕たちに送ってくれたんですよ。あの曲はリアレンジだし、リアレンジしたのも少し前(2023年3月配信リリース)。アルバムの締め括りではあるけど、新曲ではなかった。でもこの曲を乗せて映像をつけてくださって。オリジナルは8年前ぐらいに作った曲なので時間も超えてるし、アイスランドと日本という距離も超えて、なんかすごいことになってるなって。やっぱりそういうものを、狙ってストーリーを作っていくことはできないなと。本当に振り返ると、ここに辿り着くためにやってきたような映像作品になっていたと思うし、SNSではそれを濱田さんはわかりやすく言語化してくださっていたと思うんですけど。映像を見た時も、そういう意義深いものが生み出せたこと自体に、本当に喜びを感じましたね」
――良いお話。
森山「"アイスランドを感じる"というのも、『DISTANCES』の12曲を聴いた時、濱田さんがおっしゃってくれたんですよ。僕はそこをテーマにしてなかったけれど、アイスランドの音楽シーンへのシンパシーを感じる部分は以前からあったし、好きなアーティストもたくさんいるんですね。それが音を介して濱田さんにも伝わっていて、ピンと来てもらえたことも嬉しかったですね」
――アルバムジャケットも濱田さんのアイスランドの写真です。これまでもブランドムービーなどでご一緒されていますが、おふたりは濱田さんのクリエイティブに関して、どのように感じておられますか?
ミゾベ「全幅の信頼を置いています。もう影響を受けまくってて。冗談も言ったりするし、今ではサポートミュージシャンもそうですけど、一緒に何かを作る仲間が1人見つかった感覚。1番はベースのソフィアンが濱田さんに触発されて、カメラをめっちゃやってて。そういう刺激を受けられるのはすごくありがたいことだと思います」
――odolの曲からは空気感を感じますが、濱田さんの写真も、空気感や質感が手に取るように伝わってきますよね。
森山「本当にそうですね。もう一つ、濱田さんは写真を通して、それこそ時間や距離に対しての気付きを言語化することをライフワークとされてる部分もあると思うんですけど、僕も15年音楽をやっている中で、外に発信はしないけど、すごく共感する部分があって。音楽を作る中で、自分の中に世界の見方としての言語が溜まっていったり、言葉を発見していくことが何よりも糧で、続ける意味だなと思っていて。そんなシンパシーを感じる濱田さんからも、同じことを伝えてくれたので、最初はすごく"出会ってしまった"と思ったんですね。そこから会話やコミュニケーションを深めても、よりシンパシー度合いが増していって。実は出会わせてくれたのは、『時間と距離と僕らの旅』のオリジナルバージョンのMVを撮ってくれた林響太朗監督なんです。監督が濱田さんとお知り合いで、濱田さんがodolが好きというのもあって、radikoのブランドムービー『小さなことをひとつ(2020年)』で繋げていただいて。運命的とも言えるし、今から見れば必然だった出会いかもしれない。本当にありがたいなと思うばかりですね」
――改めて今作、どんな1枚になったと思われますか。
ミゾベ「3人体制としての1stアルバム。そんな作品です。もちろん毎回そういう気持ちで作ってはいますけど、今までで1番曲数も多いし、1番色々なやり方を試したと思う。メンバーが抜けた時、それまでodolを応援してくれてた人は、"odolどうなっていくんだろう"と心配したと思うけど、そこに対する答えのような作品になったのかなと思っています」
森山「代表作と言えるアルバムだし、あの時の秘伝のタレではないけど、"新odolのレシピ"が確立しました。本当に迷いながらの2年半だったけど、今は本当に自信を持って"これがodolの味です"と言えます。"DISTANCE"はこの数年間、皆が聞いていた言葉。さっきミゾベが、歌詞で時代を特定するような言葉は美学的にあまり入れてないと言っていたけど、その時代を生きた僕たちが作った曲たちだからこそ、言語化されてない部分に、時代の空気がめちゃくちゃ詰まっていると思うので、『DISTANCES』がこの時代を象徴するようなアルバムとして残っていけばいいなと思っています」
――そのレシピを提げて、3月31日(日)に心斎橋ANIMAでワンマンがありますね。
ミゾベ「『DISTANCES』を作った時は、サポートミュージシャンにフィードバックを受けながらライブに1番向き合っていた期間でもありました。信頼のおける人たちと一緒に演奏するのが、今過去最高ぐらい楽しいので、楽しいライブになるんじゃないかなと思ってます」
Text by ERI KUBOTA
(2024年1月15日更新)
『DISTANCES』
配信リリース中
UKCD-1224
各ストリーミングサービス / ダウンロード
《収録曲》
01. 望み(※JR東海 「会うって、特別だったんだ。」TVCMソング)
02. 幸せ?
03. 本当の顔
04. 今日も僕らは忙しい
05. reverie
06. 君を思い出してしまうよ
07. 遠い街
08. 泳ぎだしたら
09. 幽霊
10. 三月
11. Distances
12. 時間と距離と僕らの旅(Rearrange)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo)、森山公稀(Pf/Syn)を中心に2014年東京にて結成。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。近年は、アース製薬「温泡」、映画「サヨナラまでの30分」、UCC BLACK無糖、radikoなど、様々な企業やクリエイターからオファーを受け、立て続けに書き下ろし楽曲を提供している。東京藝術大学出身の森山公稀が全楽曲の作曲を担当。ソロ名義でも舞台や映像作品の劇伴、また他アーティストへの楽曲提供、プロデュースなども行っている。2014年7月「FUJI ROCK FESTIVAL’14 ROOKIE A GO-GO」に出演。2015年5月、1st Album『odol』をリリース。2016年5月、2nd Album『YEARS』をリリース。2017年1月、新木場STUDIO COASTにて開催された、TWO DOOR CINEMA CLUB来日公演のオープニング・アクトを務める。9月、1st EP『視線』をリリース。2018年7月、「FUJI ROCK FESTIVAL’18」RED MARQUEEに出演。10月、3rd Album『往来するもの』をリリース。タワーレコードのバイヤーがレコメンドする企画「タワレコメン」に選出&「NO MUSIC,NO LIFE.」ポスター意見広告シリーズに起用される。『往来するもの』は、CDショップ大賞・九州ブロック賞を受賞。2019年3月、『往来するもの』に収録された「光の中へ」が、静岡パルコのグランドリニューアルのCMに起用される。6月、Digital Single『眺め / POSE』をリリース。9月、Digital Single『狭い部屋 (Rearrange)』をリリース。アース製薬「温泡」のTV / WEB CMに新曲「身体」 が起用される。11月、Digital Single『身体』をリリース。2020年1月公開の映画「サヨナラまでの30分」のリード曲である「瞬間」を、劇中バンド“ECHOLL”に楽曲提供する。2月、Digital Single『虹の端 (Rearrange)』をリリース。UCC BLACK無糖「#この気持ちは無添加です」キャンペーン(シネアド)に、新曲「かたちのないもの」を書き下ろし/提供する。4月、Digital Single『人の海で (Rearrange)』をリリース。6月、radikoブランドムービーに新曲「小さなことをひとつ」を書き下ろし/提供する。Digital EP『WEFT』をリリース。12月、森永乳業・コーポレートムービーに書き下ろし提供となるDigital Single「歩む日々に」をリリース。2021年6月、4th Album『はためき』をリリース。11月、Digital EP『pre』をリリース。2022年1月、JR東海 TVCM「会うって、特別だったんだ。」 に書き下ろし提供となるDigital Single「望み」をリリース。 3月、Digital Single「三月」をリリース。そして2023年3月、Digital Single「時間と距離と僕らの旅 (Rearrange)」をリリース。11月、5th Album『DISTANCES』をリリース。 3月には大阪で4年ぶりとなるワンマンライブを開催。
odol オフィシャルサイト
https://odol.jp/
1月27日(土)一般発売
Pコード:258-745
▼3月31日(日) 18:00
Live House Anima
一般-5500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
学割-4500円(当日要学生証、整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。学割の方は学生証を入場時にご提示ください。(大学、専門学校、高校含め)
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]GREENS■06-6882-1224