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Dannie Mayインタビュー
ギリギリも怒涛も経て、今、東京という街でダークに希望を描く

待望の1stアルバムを完成させたり、アニメやドラマのテーマを担当したりと、昨年大活躍を見せた3ボーカルバンド・Dannie Mayが、12月6日にデジタルEP『青写真』をリリースした。また、さまざまなYouTuberやクリエイターらがカバー動画を公開し、2021年発表の曲『ええじゃないか』がバズり中なうえ、1月26日(金)からはワンマンツアーも控え、その勢いは衰え知らず。そこで今回は昨年一年間のこと、新作のこと、来年のことを聞くべく、師走の大阪で田中タリラ(vo&key)とYuno(vo&kantoku)にインタビュー。まずは2023年の振り返りから話はスタートする。

――2023年はどんな年でしたか?

Yuno「アルバムを出すまではアーティストとして確立しないなっていう意識があったんで、5月にようやく1stアルバム『Ishi』を出せたのが大きな節目になったかなと。去年は挑戦として新しい方向性を探っていったんですが、今年はDannie Mayらしいサウンドをたくさん出して、ちょっと原点回帰というか。アルバムで扉を開けた年でもあるけど、キャリアを振り返った年でもあり、過去から未来へのターニングポイントになった年でもありますね」

田中「最近、メンバーや友達とどんな年だったかを話すんですけど、僕、何も覚えてなくて、何もしてなくね?って(笑)。アルバム出してたし、アニメタイアップもやってたし!って人には言われるけど......」

Yuno「うん。ドラマも(『笑わせらぁ』がドラマ『東京極夜物語』主題歌に起用)」

田中「いろいろ新しいこともしたんですけど、記憶から消えていて。でも悪い意味じゃなく、たぶん今までの自分たちに比べてどんどんキャパが拡大しているというか。アルバムを作った時もキャパを超えて、こんな大変なんだ!って。怒涛でやって、なんかポカーンって感じ。いろいろあり過ぎて覚えてないのかな。でも、また次に向けて制作するなかで、そのキャパに慣れている自分がいて、月に2曲完パケさせてくださいって言われても、はい!みたいな。全然ヤバいって思わないメンタルの変化があります」

――頼もしい。そんな充実のなかで作られているのに、今作『青写真』はダークサイドがたっぷり。

Yuno「『暴食』(2019年発表)とか『灰々』(2020年発表)とか、以前から僕らは結構ダーク寄りなんで、それを思い出しながら、(さわやかなロックナンバーの)『コレクション』が入るのも決まっていたので、その整合性を取って統一感はギターサウンドで持たして作ろうっていうところだったんですよね。ただ『暴食』や『灰々』はいわゆるダークポップで、世の中に訴える部分も強かったんですけど、活動を重ねてきて、言うだけは簡単だよなって思うようになって。たとえば、『暴食』は情報社会に飲まれる人に対して、おかしくないか?みたいなことがテーマだったんですけど、今は飲まれてしまう人もいるだろうし、どうしようもないこともあるだろうし......みたいなものが見えてきて。だから今回は今までのダークポップっぽいサウンドでやりながら、ちゃんと希望を見出したいなって。『コレクション』はすごく希望があって力強い歌だし、僕が書いた4曲目の『3分半の反撃』もアウトロで希望を持ってくるように作ったり。『暴食』のころにはしなかったことをやってます」

――では個々の曲の話を。1曲目はリードトラック『東京シンドローム』。この曲はMVがありますが、Dannie Mayさんの制作スタイルであるMVのプロットからの曲作りだったんですか?

Yuno「今回はマサの気持ちから出てくるものが先でした。マサが精神的に不安定だった今年の夏とか秋に、東京に出てきた自分と夢を追ってる自分をテーマにして吐露したのがこの曲で、タイトルも最初から『東京シンドローム』って出してきて。何をリードトラックにするかってなった時は、『青写真』は自分たちの未来の設計図をテーマにしていたので、純度の高い曲にしようってことでこの曲に。歌詞は内省的でライブで話してきたこととかが入っていて、今までの僕らを知ってる人じゃないとわからない部分も多いだろうなって。でもサウンドは幅広い人に楽しんでいただけると思います」

――"張り切り過ぎた日々のことや 散り散りになった夏のこと"など、歌詞は事実に基づいているのかなと思いました。

Yuno「あと、"騒がしい街の腹ん中 弾かれてくよバッタ者"とか、"美しいとこしか映らない"とかは、マサが感じてる、本当に頭がキューってなるようなところですね」

――東京に対し、マサさんと同じ暗い感情を抱きますか?

田中「東京、好きですね!」

――即答(笑)。田中さんは愛知県出身ですよね?

田中「僕、出身幼稚園が森みたいな所でクジャクもいたんですよ。家の隣も森で、毎日ずっと自然いっぱいの中で遊んでました......ま、それは関係ないですけど(笑)、東京はお金があればあるほど楽しい。今、お金があるわけじゃ全然ないんですけど、でもテレビで見て(紹介された場所に)そのまま行けたり、マップに保存しとこうってできたりするじゃないですか?」

――少年のよう(笑)。

田中「その心を持ってるつもりです(笑)」

――マサさんとは逆?

田中「でも僕は僕で精神崩したこともあるので、(マサの感情も)わかるっちゃわかるっていうか。でも東京に対してキューッとはなんないです」

――Yunoさんは?

Yuno「(マサが)曲をあげてきた時の最初の感想は、やっぱりアーティストって東京に対して何か思うんだなって。特にマサは広島から出て来ているから、(東京に近い)神奈川出身の僕より東京に対して感じるものが大きいはず。だからこういう曲ができて、それは純粋におもしろいなって思いました。あと、2番のサビの"爆ぜる月のうらがわに"は、1stシングル『今夜、月のうらがわで』のセルフオマージュの歌詞なんですけど、そのころ渋谷駅のモヤイ像の所で有線のイヤホンで曲を聴いて、これでいける!みたいな話をした記憶がよみがえってきて。東京っていう街で、今も不安に駆られることもあるけど、かつてあった未来に対しての希望を、(マサが)まだ強く思ってるんだなって、うれしいし気合いが入るなって思いましたね」

――ちなみにこの曲のMVも、いつものようにYunoさんが手掛けていますね。

Yuno「今回は東京に疲れて飢える寸前の女の子がいて、その子を僕たちが助けて、一見怖そうなお面のシェフが、実はその子に飯を食わせて働く場所も与えてくれるっていう(物語)。これが、ダークで社会に訴えるっていうだけじゃなく、あと、東京ってこんな街っていう決めつけもしたくなかったから、おどろおどろしい雰囲気がありつつも、東京にも確かに希望はあるはずで、みんながここを目指してやって来るっていうところです。それと『今夜、月のうらがわで』のMVのオマージュもしています」

――それでは次に2曲目のタリラさんが作った『異形』について。これが一番ダークですね。

田中「僕はただただ、自分が思ってることを書いてるだけで。"脳内血管パンパンです"とか本当に自分そのまま。何か嫌なことについて考える時に、それこそマサさんと同じで、僕もパニックを起こすみたいな感じですね。歌詞に関しては数時間でできました」

――歌詞には漢字が多いし、松果体なんて単語も。どこから出てきたんですか?

田中「都市伝説が好きで。松果体は、人類の思考を停止させて衰えさせているみたいな話から(笑)」

――業火やカルマなど仏教用語も出てきます。

田中「......僕はある特定の人を死ぬほど見下してるんですよ」

――ん⁉

田中「"現状嫌になって悪態づいて惨敗です"って歌詞は、僕なんですよ。で、"脳内血管パンパン"で、"天国へのサイレン"で死にそうになって、"人間界とはおさらば"したいなって。でもそこで、じゃあ自分が死ぬか......じゃなくて自分はちゃんとした感覚があって、いろんなセンスもあると思っているので、自分が天上に上がって、その"超感覚的思考で 見下したるわ凡才"、ボケ!って。で、天上だと人間界の友達とか恋人とか、そういうものとももう関わらなくなってしまうけど、それでも俺は天上に行って、そいつを見下すためだけに生きていく。だから最後は"全ての相愛とはおさらばしましょう"と。好きなものとおさらばしてでも、俺はそいつを......!って」

Yuno「口悪いな(笑)。でも、尖っててすげえいいなって思う」

田中「(感情が)ギュッて濃縮した時にこの歌詞が出てきた感じですかね」

――そんな『異形』に対し、次の『コレクション』はキラキラの青春ロック。逆方向に振り切れています。そしてアニメ「ビックリメン」の主題歌ですね。

Yuno「今までDannie Mayとしては選択してこなかったんですけど、言っても僕らはJ-ポップ、J-ロックのど真ん中みたいな音楽がやっぱり好きなんで。ただ、そこでDannie Mayらしさをどう入れるかっていうと、マサの歌詞。絶対的な希望の歌なんですけど、どこか自信なさげな部分があるのが人間らしい。歌詞はマサが『ビックリメン』の脚本を読んであげてきたんですけど、今、リアタイでアニメを見ていて、すごくリンクしてるし、ちゃんと設計されてるなって思います。曲としての完成度や強度がめちゃくちゃ高いですね」

――マサさん、しっかりしていますね。あと、この曲は大会場でのライブで映えそう。

Yuno「これはもう、全員で大合唱するための曲です」

――『青写真』の4曲はそれぞれにライブ映えしそうです。

Yuno「狙いましたね。来年はライブを増やしたいねって話をしてて、ライブが増えた時にいわゆる『ええじゃないか』とか『KAMIKAZE』とか、一軍の曲の選択肢を広げたいっていう。そうしたら、この公演では『コレクション』をやるけど、こっちでは違う曲をって、もっとライブが幅広くできるんじゃないかなって。今回は一軍を4曲増やすイメージで作りました」

――そして最後は『3分半の反撃』。実際にこの曲の長さは3分30秒です。

Yuno「歌詞が先にできて、デモは最初3分40秒だったんです。ただ、俺は削れるんじゃないかなって思ったから、歌詞は"3分半"のままでいったんです。1番と2番の間を半分にしたり最後も調整したり。あと実は、この曲、過去にコンペに出して落ちた曲なんです。だけど楽曲自体はめちゃくちゃいいので出したいってなって、それでマサから、自分はコンペに向けてテーマも歌詞も作ったから(Yunoが)新しい脳で書いてくれって言われて。サビの"散々なこの世界で"っていうのは残したんですけど、残りは2時間ぐらいで新たに書きました。僕が東京に出た時に思ったことを書いてますね」

――Yunoさん版の『東京シンドローム』?

Yuno「そうですね。僕も強い音楽を聴いて最強になる気持ちでないと、情報がうるさくて東京には勝てないなっていうのがあったんで、その時に助けてくれた音楽とか、そういう音楽を聴いてる人たちとか、全部に対してのアンサーソングみたいな内容になってます」

――『青写真』は三者三様だからできた、曲ごとに個性がある作品ですね。そういえば、前回の取材でマサさんが2人は裏表がなくていいと......。

Yuno「あいつはめっちゃ裏表ある。気をつけてください(笑)」

田中「あるある(笑)。俺、さっき訂正します!って言おうとしたことがあって。(マサさん)しっかりしていますねって、あそこ。全然!って言おうかと思ったんです。全然です(笑)」

――裏のマサさんは、ふまじめ(笑)?

Yuno「ふまじめではないけど、しっかりはしてない」

田中「一番しっかりしてない。しっかりさとかストイックさとかは一番ないかもしれない」

Yuno「うん。外向きには結構ちゃんとしてそうだけど」

――そう見えました(笑)。遅刻や忘れ物をするとか?

Yuno「遅刻は俺が一番。マサは......何て言えばいいかな?」

田中「軽い詐欺師みたいな(笑)」

Yuno「めちゃくちゃ言うな(笑)」

田中「もう、めちゃめちゃぶつかった時期もあったんで。そん時は死ぬほど罵詈雑言を浴びせ合ってるから(笑)。今は何言っても大丈夫かなっていう」

Yuno「そうそう。殺し合うんじゃないか⁉っていうくらい。手だけはギリギリ出てないけどっていう(笑)」

――バンドに歴史あり(笑)。でも実際、フロントマンとしてマサさんが話すことが多いと思いますが、裏表があるなら、あれ?ってなることもあるんですか?

Yuno「最近は(マサが)きれいごとで固めることもないし、いや、それ嘘ついてるだろ!って時は俺がツッコミ入れますから。でも、ちょっと小さくまとめようとするんですよね(笑)。作った時には壮大で純粋なテーマを持ってたはずなのにとか、実際にそう言ってたのにとか。外だと萎縮しちゃう。もっと自信持っていいよ!っていう」

――互いのことを十分理解したうえで、『青写真』という今後の設計図ができるってことは......。

Yuno「バンドの雰囲気が全然いいですね」

――東阪ワンマンツアーも楽しみになります。1月26日(金)の大阪公演は2024年のライブ初めに?

田中「あ。大阪が来年一発目だ。僕、父親が兵庫(出身)で、昔から周りに大阪の人が多かったんで、大阪、めっちゃ好きですね」

Yuno「大阪はすごく熱くて僕らの楽曲と相性がいいのか、毎回いいライブになるから、一発目にはすごくすてきな場所になるなと。年末に振り返った時、なんだかんだで1月の大阪が一番盛り上がったんじゃね?って思えるくらい盛り上げたいと思います」

――2024年の目標もいただいていいですか?

田中「......バンドの目標って難しい。目標を掲げつつも何がどうなるかわかんないっちゃわかんないじゃないですか。自分の中では(目標を)考えていて、そこに対して行動もするけれどっていう。ま、目標を言うこと自体、俺、あまりしないし(笑)」

Yuno「取材で最悪(笑)。マサのタリラも言わないんですよ、バンドとしてこうなりたい!とかを」

――そういうことなら、タリラさんは個人の目標を(笑)。

田中「編曲かな。コンプ感とかEQ処理とか、そういうところのきれいさをかなり磨きつつ、この人はやっぱりプロだね!ってなる編曲にいけたらなって......って、たぶんいくんですけどね」

――バンドの目標はYunoさん、お願いします。

Yuno「今までの最大キャパは都内だと渋谷のクアトロで、これが700人ぐらいだと思うんですけど、そこをソールドアウトでパンパンにするような勢いをつけたいなと思います」

田中「そこが最低目標」

Yuno「そう。2024年、絶対これだけはクリアしなきゃいけないっていう目標です」

Text by 服田昌子




(2024年1月25日更新)


Check

Release

Digital EP『青写真』
配信中

《収録曲》
01. 東京シンドローム
02. 異形
03. コレクション
04. 3分半の反撃

https://dannie.lnk.to/blueprint

profile

Dannie May(ダニーメイ)profile
3人が織り成すボーカルワークに、幅広いサウンドエッセンスと映像・デザインなどのアートセンスを加えて現代版のポップスにアップデートし、中毒者を続出させる新時代の3ボーカルバンド。同じボーカルグループで活動していたマサ(vo&g)、田中タリラ(vo&key)、過去に別のボーカルグループや映像クリエイターとして活動していたYuno(vo&kantoku)の3人により2019年に結成。とにかく歌が好きな3人が集まり、3人独自の歌い分けやコーラスなどのボーカルワークに作詞作曲、アレンジ、コンセプトの立案とメンバーが役割を分担しながら、ポップスはもちろんロック、ジャズ、ファンクなどあらゆるジャンルをブレンドしバラエティ豊かな音楽を送り出している。初めてのフィジカルCD作品、EP「暴食(グラトニー)」はタワーレコードの未流通リリース企画「タワクル」で4週連続1位を獲得し、楽曲「ええじゃないか」のMVはYouTube視聴回数約300万回を記録。2022年8月配信シングル「ぐーぐーぐー」は初のテレビドラマタイアップを獲得し、10月配信シングル「めいびー」がアルペンのプライベートブランド“TIGORA2023”春夏コレクション「なかまと一緒に」のテーマソングに大抜擢。さらには今年10月には、アニメ「ビックリメン」のオープニングテーマとして新曲「コレクション」を書き下ろすなど活動の幅を広げ、注目を集めている。ユニット名のDannie Mayとは、架空の人物としてDannie(外国人男性の名前)とMay(日本人女性の名前)を掛け合わせた造語(架空の人物)。

Dannie May オフィシャルサイト
https://danniemay.com/


Live

Dannie May ONEMAN LIVE「青写真」

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:256-998
▼1月26日(金) 19:00
心斎橋JANUS
オールスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[問]JANUS■06-6214-7255

【東京公演】
▼2月1日(木) Shibuya WWW


SKID ZERO pre.「TOKYO ZERO TOUR 2024」

2月25日(日) OPEN 17:30 / START 18:00
名古屋・新栄シャングリラ

2月26日(月) OPEN 18:30 / START 19:00
大阪・梅田シャングリラ

2月29日(木) OPEN 18:30 / START 19:00
東京・下北沢シャングリラ

■出演
Chevon
Dannie May
DeNeel

■チケット
ADV 3800円+1Drink代別
DOOR 4500円+1Drink代別

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