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「自由に表現することで楽になった」
“二面性”をテーマにしたアルバム『Asymmetry』でソロデビュー
ツアーではアイドルでもアーティストでもない“人間・岡田奈々”
としてなにが見せられるのか!? 岡田奈々インタビュー

2023年4月2日にアイドルグループ、AKB48を卒業し、ソロアーティストとしての活動をスタートさせた岡田奈々。2024年2月からは待望のツアー『岡田奈々 LIVE TOUR 2024 ~Asymmetry~』が全国6か所で開催される。そんな同ツアーで披露されるのが、11月にリリースされた初のソロアルバム『Asymmetry』だ。同作品で岡田は、自分が感じていた苦しみ、心のなかに溜まっていたもの、それらを素直な言葉で吐き出している。どのような想いでこの作品を生んだのか、話を聞いた。

――『Asymmetry』ではご自身の二面性を表現されたそうですね。

もともとはそのテーマで制作を進めていなかったのですが、出来上がったものを見てみたらそういう曲がたくさんあったんです。私自身もアイドル時代から「カタブツ」「マジメ」と言われてきましたが、本当の自分はまた違いますし。

――「カタブツ」「マジメ」と見られていた裏には、「どんなことでも完璧にやりたい」という岡田さんの考え方が影響していたように思えるのですが、その点はいかがですか。

完璧主義は、確かにそうかもしれません。あと負けず嫌いでせっかち。これは完璧主義という感じのエピソードではないですけど、たとえばゴミ袋にはギリギリまでゴミを詰めてから締めるとか(笑)。余り過ぎているとなんだか嫌で。あと、玄関には靴は置かずに全部シューズボックスにしまう。そういうところはきっちりしていたいんです。それと、時間の使い方も無駄が嫌いですね。起きるときもアラームは一つしかつけていない。それでしっかり起きます。朝はやることも決めていて、家を出る時間からきっちり逆算し、「この時間にメイクをして、この時間に食事をして」とか順序立ててやります。やることを時間いっぱいに詰め込むんので、だからせっかちにもなるんです。

――今の話って「自分としてやるべきことをやっている」ので、決して「カタブツ」「マジメ」というわけではないですけど、でも人によってはそう受け取ってしまうのかもしれません。ただこのアルバムはそういう面が崩れた瞬間でもあると感じました。書かれた詞自体はネガティブさもありますが、サウンドが重なることでその印象がかなり変わりますね。

作曲家のみなさんを信頼して制作していただいたんですが、私がDメロが好きだったり、あと転調や大サビ前にブレイクを入れるとか、そういう好みの部分はこだわりました。スタッフのみなさんとも「ネガティブさや弱さをそのまま出すのではなく、サウンド面は迫力のあるものにしよう」「もっと明るいように終わりたいね」「ロック調にしたい」など話し合っていました。

――詞に関して、ここまで自分の感情ってなかなか出せないですよね。本音を出すのって怖いし、なにを言われるか分からないじゃないですか。それで傷つくのは嫌ですし。あと人ってちょっと格好つけたくなるから、弱さ、ネガティブさってあまり出したくないはず。

誰もが「自分を良く見せたい」と考えるはず。でも私自身はそういう願望がないんです。それこそアイドル時代はなぜか「格好良い」「マジメ」などプラスのイメージを多く持たれていました。それが嫌でなかったんですけど、どこかで反抗したかったんだと思います。このアルバムは「私はそこまで良い人間ではない」という証明。私自身はグループ在籍時に問題を起こしてしまいましたが、ただ自分に限らずそういう風に見られる人がイメージに反するようなことを少しでもしたら「こいつはニセモノだ」と言われますよね。

――みんな勝手に他人をイメージづけて、自分の解釈がしやすいところへカテゴライズしがちですもんね。そう考えると、アルバムのなかでここまで吐き出すことで、溜まっていたモヤモヤは抜けたんじゃないですか。

だいぶ抜けました。吐き出すことで全部が流れ出てかなり楽になりました。もちろん問題を起こしたことは自分が悪いです。一方で真実とは違うことが伝えられたり、「なぜそこまで」と感じることまで言われたりしましたし。

――曲を聴いていると、「生死」のギリギリのところまで思い悩んだことがうかがえます。ただその点だけではなく、すべての曲でいろんな角度から「生死」を描いていますね。なぜそこまで「生きること」「死ぬこと」について歌っているのでしょうか。

もともとそういう哲学的なことが好きなんです。「なぜ人は生まれて、なぜ死んでいくのか」「なんのために生きているのか」とか。でも「アイドルだから、そういうことはあまり言わないで」となりますよね。自分が興味のあることなのに言えないと、吐き出せなくなって溜まっていくものがある。だけど今はソロとして自由に表現できるようになったので、まず自分のなかに秘めていたものを全部出しちゃおうと。そこでずっと考えていた死生観が強く出ました。

――音楽であればそれができる、と。

音楽には自由さがすごくある。もちろんそこには責任もついて回ります。でもあまり自分に制限をかけず、私のなかにあるものが全部出せた。2022年は自分が問題を起こしたり、怪我をしたり、さまざまなことが重なりました。そういうマイナスなことも、音楽であれば生かすことができる。やっぱりいろいろ傷つきましたし、自分で自分を苦しめたところもありましたから。

――「Mayday」の歌詞「『助けて』って言えなくて ココロが崩れてく」とかめちゃくちゃリアルじゃないですか。でも岡田さんは完璧主義だから「助けて」とはそう簡単に言えないんだろうなって。

「助けて」ってなかなか言えなくないですか?

――言えないですよね。逆にそれを素直に言える人がうらやましく感じます。

これは決して悪い意味ではなく、うまく逃げられる人になりたいなって。人に頼るのが上手い人がうらやましい。自分はみなさんが思っているより強い人間ではないし、むしろ精神的には脆いです。そういう普段は口に出せないことは全部歌にしていこうって。だって今さら、めちゃくちゃ人に甘えたり、弱音を吐く人間になったら「どうした、岡田」となりそうですよね(笑)。

――たとえば「サラン」では15歳のワンちゃんのことを歌っていて。これは岡田さんにとってもっとも身近な「生死」の存在と言えます。

今は3日に1回の点滴生活で、来年3月で16歳。元気にご飯を食べていますが、間違いなく生きものは死に向かっていきます。そういうことに立ち会う瞬間はつらいけど、大事なこと。いや、本当はものすごく怖いです。だんだん死に近づいているのが分かるから。想いがたくさんあるからこそ「サラン」はあっという間に詞が書けました。

――「サラン」を聴くと、岡田さんはとても優しい方だと思えるんです。そもそも生死だけではなく全曲「愛」についても歌っている。「カタブツ」「マジメ」と言われていたのだって、人に対して優しくいたいという気持ちから「ちゃんとやろう」とした結果な気がしてなりません。その点で考えると、岡田さんはかつて「優等生」と言われていましたが、「イイ子」という意味ではなく「優しく生きている」という意味の「優等生」なんじゃないかって。

そんなこと初めて言われました、ありがとうございます。意識はしていませんでしたが、でもたしかに自分のなかにある優しさが曲で少しでも伝わったら嬉しいです。自分では優しいなんて思わないですけど、でもどんなことでも基本的には受け入れたり、許せたりします。

――あと「裏切りの優等生」のなかで、自分のことを「偶像になれないダメな不良品」と責めたのは衝撃的でした。

「やっぱりアイドルとしては、自分はダメなんだ」って。ファンのみなさんが求める理想像になれなかったし。どこまでも卑下しちゃって、どん底まで自分を落としたくなったんです。私はもともと自分のことが大嫌いでもあって。だからいくらでも自分に対してマイナスな言葉が出てきます。そうやって落とした方が納得できる。自分のことを好きになれる未来が見えないですね。だから常に周りがうらやましくて、他人が素敵に見えます。

――だけど『AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』で1位を獲ったりしましたよね。そうやって数字で証明されるものがあってもダメですか。

だって上には上がいますから。もちろんその結果は嬉しいし、ありがたい。ちゃんと評価を受け止めています。それでも世界中にはやっぱり上がいて、私なんかはまだまだ。70億人のなかの一人。なかなか自分を褒められない。だからこそ作品をつくり続けられる。良くなるまで歌詞を書き続けて、そして歌い続けられる。

――そういう姿も見てもらえるのが2024年開催のツアー『岡田奈々 LIVE TOUR 2024 ~Asymmetry~』ですね。

今までアイドルという肩書きを背負いながら活動していたので、今度のツアーでは一度、人間臭さを出したいです。アイドルでもアーティストでもない、「人間・岡田奈々」としてなにが見せられるのか。

――ちなみに岡田さんが考える「人間力のある人」って誰ですか。

今パッと思いついたのはアリアナ・グランデさん。Instagramをいつも見ているんですけど、アリアナさんがドッキリでアイスクリーム屋さんの店員をやったりして人を驚かせたり、気さくにファンにキスをしたり、ハグをしたり。世界的な大スターなのにこんなにフレンドリーな接し方をしているんだなって、すごく感動しました。あとアリアナさんは「これから歳をとって、しわが出てくる自分の姿が見てみたい」というような考えから、リップフィラーやボトックスをやめたとおっしゃっていました。「どんな風に歳をとって、どんな顔立ちになっていくのか興味がある」って。そう思うことってなかなかできないし、それを発信するところもすごい。「すごく人間臭いな」と本当にリスペクトしました。いつか私もそんな風に自分と向き合える日がきたら良いなって思います。

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Text by 田辺ユウキ




(2023年12月11日更新)


Check

Release

Album『Asymmetry』
発売中

【AL+Blu-ray】
5500円(税込) AVCD-63529/B
トレカTypeB 1枚封入(6種+シークレット1種 計7種)

《CD収録曲》
01. 裏切りの優等生
02. Green Bird
03. 「ありがとう、幸せになってね。」
04. 声を失った人魚姫
05. ネット弁慶の皆様へ
06. この世から僕だけが消えることが出来たら
07. 終焉のカウントダウン
08. TAKOYAKI ROCK
09. 生きる理由
10. Mayday
11. サラン
12. 望まれない朝

《Blu-ray収録内容》
01. 裏切りの優等生 Music Video
02. Asymmetry Jacket Making & 裏切りの優等生 Music Video Making

【CD】
3500円 AVCD-63530

《CD収録曲》
01. 裏切りの優等生
02. Green Bird
03. 「ありがとう、幸せになってね。」
04. 声を失った人魚姫
05. ネット弁慶の皆様へ
06. この世から僕だけが消えることが出来たら
07. 終焉のカウントダウン
08. TAKOYAKI ROCK
09. 生きる理由
10. Mayday
11. サラン
12. 望まれない朝
-BONUS TRACK-
13. Silent Mermaid

Profile

2012年に行われたAKB48第14期生オーディションで合格し、AKB48のメンバーとして活動開始。2017年には姉妹グループのSTU48のメンバーを兼任する事を発表。2021年7月より、エイベックス・アスナロ・カンパニー株式会社に移籍し、歌を中心とした朗読劇、ミュージカル、ソロコンサートなどの活動を本格的に開始。2023年4月2日にAKB48を卒業。2023年11月7日アルバム『Asymmetry』でソロデビュー。

岡田奈々 オフィシャルサイト
https://okada-nana.com/


Live

「岡田奈々 COUNTDOWN CONCERT 2023→2024」

チケット発売中 Pコード:253-880
▼12月31日(日) 23:00
山野美容専門学校 山野ホール
一般指定席-12400円(お見送り、年賀状プレゼント付/一部演出で撮影可)
※3歳以上有料。3歳未満は膝上鑑賞無料(但し席が必要な場合は有料)。開場・開演時間は変更する可能性がございます。深夜に及ぶ公演のため、18歳未満の方は保護者同伴又は保護者の同意を得た上でご来場ください。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での販売はなし。1人4枚まで。チケットの発券は、12/24(日)昼12:00以降となります。


「岡田奈々 LIVE TOUR 2024 
~Asymmetry~」

【愛知公演】
▼2024年2月3日(土) ボトムライン
【広島公演】
▼2024年2月4日(日) LIVE VANQUISH
【福岡公演】
▼2024年2月10日(土) DRUM LOGOS

Pick Up!!

【大阪公演】

▼2024年2月17日(土) 17:00
梅田クラブクアトロ
一般チケット-8800円(ドリンク代別途要)
プレミアムチケット-11800円(ドリンク代別途要/リハーサル見学券、優先入場、非売品記念グッズ付き)
※未就学児のご入場不可。スタンディング・整理番号付。公演当日、入場時にご本人確認を実施する場合がございます。公的身分証明書をご持参ください。開場・開演時間は変更する可能性がございます。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【宮城公演】
▼2024年2月24日(土) 仙台 darwin
【東京公演】
▼2024年3月10日(日) Zepp Haneda(TOKYO)

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