ホーム > インタビュー&レポート > 新しいプログラムにも挑戦! 次のゴールへ向けての出発のコンサート 大江千里インタビュー
デビュー40周年を迎えた大江千里のソロコンサート「大江千里 Premium Piano Concert "Door Number YOU"」が今年9月に全国5か所で行われた。良質な音響のホールで、ポップス時代の名曲をジャズのアレンジで演奏したアルバム『Class of '88』からの楽曲とジャズのオリジナル楽曲をピアノで演奏した。
「会場のなかには木の壁の吸音がわかるくらい環境のいいホールがあって、ピアニシモで弾いても、その繊細なニュアンスが最後尾の席まで伝わっていく感覚があったし、反対に音がフェイドアウトしていってゼロになるまで、お客さんが固唾をのんで拍手のタイミングを待って下さっているのが僕に伝わってきた。両者が同じ音を共有している歓びがありつつ、こうすれば、もっと伝わるんだなといった発見もあったコンサートでしたね」
紀尾井ホールの公演を観た時は、演奏者と観客が何年を経ても楽曲を通してつながっている絆がすごく感じられた。時代を彩ったヒット曲がそれぞれの宝物となっているのだと思う。
大江千里は、ご存じのようにヒットを数々生んだポップスのシンガー・ソングライターから音楽留学を経て、ジャズピアニストに転向し、今もNYを拠点に活動している。そのキャリアと宝物を存分に生かすカタチのジャズとポップスの融合。それがいま大江千里が探求している音楽だ。
「ジャズとポップスは、スタンダードナンバーをいい例に密接な関係にあると思うけれど、しかしながら、似て非なるもので、紀尾井ホールで僕が『Rain』を無声で歌っていたというのはかなり一線を超えた状況で演奏していたことでね。常に休符のタイミングとか、いろいろ細部まで気を付けていることがある。僕の中の美意識としてジャズっぽいことをやっているのではなくて、ジャズのフィールドに立って新たな〈千里ジャズ〉、ビヨンド・ジャズのようなジャンルを模索して演奏しているので、いつも試行錯誤の連続。大胆に変えているようで、ジャズにしても遜色がないようにとても慎重にアレンジしています」
その模索のなかで、新たな挑戦も始めている。ひとつが横尾忠則現代美術館で行われた絵画を観ながらの即興演奏だ。静寂な会場での演奏は、動画で観られるが、「お話をいただいた時からもう楽しみで、前日に展覧会で作品を拝見して、そこでたっぷり受けたインスピレーションを一旦僕の中に溜め込んで、一晩寝かせて。それから当日はたくさんある絵画から4作品を選んで、難解になりすぎないように起承転結を作りながら演奏しました」という。その演奏は、アート作品とのコラボでありつつ、何かもうひとつの映像が浮かんでくるような、まさにストーリーが伝わるものとなっている。
そんな即興演奏は、ジャズを学んでからのものではなく、ピアノを習っていた子供の頃、「ショパンなどを弾いた後にご褒美として先生からお題をもらって、即興でピアノを弾くのが楽しくて、それがそのまま今に至っている感じですね」という。その原体験が彼を必然的にジャズへと導いたのだろう。
さらに好評を得た〈Door Number YOU〉が年明け1月に再度開催される。この公演はアンコールであると同時に、新しいプログラムにも挑戦する。目指す次なるゴールへ向けての出発のコンサートでもあるそうだ。
「将来に向けてのアイディアがいくつもあって、そのひとつが架空の映像作品のサウンドトラック。現実には存在しない架空の映画のサウンドトラックを作りたいと思っていて、それはロードムーヴィー的な映画かなとイメージしてて。そう考えるとそこへ向かう新たな旅が始まっているというか、その旅を一緒に始めているんだってどこかでハッと気付くようなコンサートになるかと。もちろん9月の公演のアンコールなので、その部分はしっかり味わっていただけるコンサートにしていきたいと思っています」
アンコール公演は4か所で行われるが、いずれも厳選された会場なので、素晴らしい環境のなかで大江千里のピアノを再び満喫することができるだろう。
Text by 服部のり子
Photo by フォトスタジオアライ 豊嶋良仁
(2023年12月 8日更新)
【愛知公演】
▼2024年1月5日(金)
三井住友海上しらかわホール
チケット発売中 Pコード:254-501
▼2024年1月6日(土) 13:30/17:00
ルネサンス クラシックス芦屋ルナ・ホール 大ホール
全席指定-6000円
ペアチケット(全席指定)-5500円(1名分(2枚単位=11000円))
※未就学児童は入場不可。
※販売期間中はインターネットのみでの販売。1人1公演4枚まで。チケット発券は12/23(土)朝10:00以降より可能となります。
[問]夢番地■06-6341-3525