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圧倒的な声、音、メロディーと唯一無二のグルーヴ
初のフィジカル『到底及ばない』で露わになった
ULTRAというバンドの底力

圧倒される――――初めてライブハウスでULTRAのパフォーマンスを見た時、頭を殴られたかと思うほど驚いた。「あまりにも強力な新人ロックバンド」が動き出すと聞いたのは2020年秋のこと。壺坂恵(acd., ex.ecosystem)、宮本菜津子(MASS OF THE FERMENTING DREGS)、 栁本修平(WOMAN)、杉本昂(TheSpringSummer, Liaroid Cinema)が壺坂・宮本のツインボーカル&ツインギターでバンドをやる。文字にしただけでもすごい話だったのだが、ライブはまた違う次元だった。フロントでギターをかき鳴らし歌う壺坂・宮本の圧倒的な声、音、パフォーマンス、強いのにしなやかな柳本のベースと、バンドの音の厚みを根底から作り出しているような杉本のドラム。とんでもねぇという言葉しか浮かばなかった彼らは、ULTRAとして動き始めてからもマイペースに配信を軸にしながらリリースを続けてきたのだが、2023年11月、ついにファーストアルバム『到底及ばない』を配信に加え、CDという形でフィジカルリリースも行った。この作品がまたエグい。音源とはいえ、すごい圧。耳からの情報だけで(視覚の情報なしに)、圧倒される。彼らの楽器で奏でられる音はもちろん、歌い方、コーラス、グルーヴ、それが一体化したものがバンドであり、ULTRAの4人の作り出す音楽の迫力に圧倒されるのだと気づくまで、そう時間はかからなかったが。リリース直後の11月某日、壺坂恵・栁本修平にインタビューする機会を得て、じっくりと話を聞くことができた。まずはULTRAとはどんなバンドかを、たくさんの人に知ってもらえたらと思う。

ULTRAとは...
「音がでっかいバンド」である

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――ぴあ関西版WEBでメンバーおのおののバンドではインタビューでもご登場いただいていたりULTRAのライブ情報はお伝えしてきましたが、インタビューは初めてです! よろしくお願いします。

壺坂柳本「よろしくお願いします」

――最初なので、そもそもULTRAとはどんなバンド? というところから伺っていきたいと思います。今、人に「どんなバンドなの?」と聞かれたら、なんと答えています?

壺坂「...スーパースペシャルかっこいいバンド?」

柳本「(笑)、僕は音でっかいバンドって答えてますね」

壺坂「あー、いいね。音でっかいバンド」

――「こういうバンド」みたいなことは、私たちマスコミが言いたいだけでもあるんですけど。

壺坂「私となっちゃん(宮本菜津子)がタッグを組んだ! と書かれることは多いけど、でも本当にスーパースペシャルで、すごくいい4人が集まったなと思っているんです。ULTRAっていう名前も、強いし、でもふざけているし」

――ふざけている?

壺坂「バンド名を付ける時に、よく使う/キャッチー/耳に残る/強い/ダサいみたいな単語を並べまくりました。その中でもULTRAが強かったし、キャッチーさやダサさも超越するほど音楽がカッコよかったら、ULTRAという名前さえもすごくカッコよくなると思って付けたんですね。その通りにしたくて、このメンバーを選んだというのもありました。...でも音デカいバンドです」

――音デカいバンドってめちゃくちゃわかりやすいです。私はライブ先行でULTRAに出会ったので、尚更そう思えるのかもしれません。結成のきっかけをもう少し詳しく伺っていいですか?

壺坂「私、割とくすぶるタイプで案外自分から何もできないんです。そもそもは私がやっているacd.というバンドをなっちゃんが好きでいてくれて、ライブで対バンした時に"メグちゃんがくすぶっているのは勿体ない"という話をされたんですね。そこからコロナ禍でなっちゃんが一緒にバンドをやろうと言ってくれたのを性格的に半年ぐらいなんとなく流していたけど、そのうち私もノってきてやろう! と。そこでドラムとベースに声をかけることになりました」

――自分でもくすぶっているとわかっていたんですか?

壺坂「バンドをしたいというよりも、もっと作曲をしたい、それをできる場が欲しいと思っていたので...くすぶっていたのかな? そんな状況でなっちゃんの声を半年モヤ〜っとかわしていたんです。でも彼女は押しが強くて。なんでもできる! 頑張る! 言えば叶う! っていうタイプの人だから

――ティモンディの高岸さんみたいな人ですね

壺坂「本当にそんな感じ! でも横でそう言ってくれると、最強のスタンドが横におるみたいな気持ちになってきて、じゃあやれるかなと思い始めるでしょ」

柳本「(会話を聞きながらずっとうなずいて)菜津子さんはずっとポジティブで、発言にすごく説得力がある裏表のない人なので、菜津子さんが言うならいけるといつも思いますね」

壺坂曲を作る人間なんて、人を疑ってナンボみたいなやつばっかりやから、周りの人が信頼おけるというのは私の場合すごく大事なんです。メンバーに素直さや純粋さがないと、バンドは組めないと思っていたぐらい。だから今はすごく楽しいです」

――まずはメグさん、なっちゃんのふたりが揃って、そこからどう展開していったのでしょう?

壺坂「なっちゃんと私が組んだ時点で強い×強いじゃないですか(笑)。音がデカくて強いイメージがあると思うんです。そういうふたりだからこそ、土台はしっかりさせないといけないなと。ドラムの杉本昂は昔から知り合いで、とにかく一緒にやってみたいプレイヤーでした。それで彼に声をかけたら、喜んで! と。で、ベースはなっちゃんがやるものだと思っていたら、私ギターがやりたい! ツインギターにしよう!と」

――思わぬ展開!

壺坂「そうしたらCARDの清水(雅也/壺坂の夫)が"WOMANの柳本くんがいいと思う。華あるやん?"って」

――おぉっ。夫のひと声。

壺坂「そう。めちゃええやんと思った翌日には、修ちゃんの職場の楽器屋へ口説きに行きました」

――行動はやっ!

柳本「『FLAKE RECORDSのDAWAさんから連絡先を聞きました、職場に行ってもいいですか?』 ってLINEが来たので、直感的に一緒にバンドができるのかな? って舞い上がって『いつでも来てください』って返事を返したんです。でも...待てよ? ただ楽器を見に来るだけなんかもと思い直して、バンドやれるかもスタンスでおるのはやめようと。で翌日メグさんに一緒にバンドをと言われた時には、やります! って」

――なるほど。そうやってメンバーに声をかけた時点では、まだ音像は見えていない感じですか?

壺坂「いや、もうふんわりありました。なっちゃんとバンドをしようと話が上がった時点で、私の中ではあったかな」

――それはどんな感じの音楽をやりたいと思っていたのか、言葉にすることはできますか?

壺坂「音がデカいバンド...」

――それに尽きる(笑)。

壺坂「やっぱり自分がデカ音バンドを聞いて育ってきたんですよ。今、音デカいなと思うバンドはちょっと上の先輩たちなので今からバンドを組むなら、そこに入っていきたいと思っていました」

――柳本さんも後から合流したとはいえ、こんなバンドがしたいというイメージはありました?

柳本「まずメグさんと菜津子さんのツインボーカルという時点で、強! ってなるじゃないですか。今も僕らのライブを見た友達が一番に言うのが"強い"ということなんですよね。正直それでいい、と思っていました」

――でもその強いボーカル・ギターのふたりを支えるベースやドラムも強強じゃないとダメですよね?

柳本「それに関する実感はなくて、一緒にできる! 楽しい、うれしいみたいなことだけ考えていました。あと...初めてスタジオに入った時に、もう音デカいなと思っていました」

壺坂「えー? ホンマに?」

柳本「逆に初日、菜津子さんに、"ちょ、修ちゃんベースの音小さいかも"って言われて」

壺坂「あはははは!」

柳本「なんか、震えました。やっぱり3人の出音に存在感があるんですよ。ガッツある弾き方、叩き方をしている気がします」

――今回のアルバムを聞いていても、ドラムの音が桁違いにガンガン響くと思って聞いていました。アタック感があるというか。

柳本「圧は強いですよね。鳴らし方が強いというか」

――それもバンドに欲しかった要素ですか?

壺坂「圧が強いかどうかよりも、そもそも割とタイトにリズム感よく叩く人は好きです。昂は、昔から女性っぽさがある叩き方をするなと思っていたんです。人間味があってうねっている音というか。でもその出音がデカいというのは感じたことなかったなぁ。ただ、全員音に説得力はあると思います。人間味の強い音を全員が出しているという感じですかね」


今までにないほど感じている
フィジカルリリースの重み



――結成は2020年11月で2023年11月に1stアルバムをリリースするまでは、どんな日々を重ねてきたのでしょう?

ultra231129-2.jpg壺坂「具体的に動き出したのは2022年に入ってからだけど、みんな個々のバンドや仕事もあるので、結構絞って活動はしてきたかな。去年はシングルも配信で少しずつ出して。だけど、世代なのかアルバムが出せてやっと自分たちの名刺ができたので、やっと始まったなという気がしているんです。地道に前に進んできたけど、アルバムで一気に前に進めた気がします」

――私個人としては、最初に「愛など」がリリースされた時はすごく衝撃で。それこそ「強!」とか「音デカ!」みたいな驚きと共に、あの曲はすごくecosystemの雰囲気を纏っていたので、新しいバンドはこういう雰囲気でやっていくのかなとも思っていました。

壺坂「実はあの曲はecosystemの最後の方で作っていた曲だったんです。実みたいなものはあって、それをメンバーに聞かせたら、いいやんって言ってもらえたので、その先を作ったという流れでした。だからecosystemの要素はすごくあるんだけど、どのバンドだろうが私には変わりないんですよ。それをバンドメンバーが認めてくれたのがうれしかったし、バンドが変わって音像が変わったらやりたい音の出し方も変わるけど、曲作りの部分は変わらないんです。とにかく私は曲作りの場ができてうれしかったし、私の持っていった曲にめちゃいいやん、やろうやろうってメンバーが言ってくれたこともうれしかったです」

――なるほど。曲にええやんと言ってもらえたところから先は新しいメンバーとの曲の構築作業になったわけですよね。それは、どうでした?

壺坂「任せるところは任せて、よりいい形を作っていけたかな」

柳本「最初はワンコーラスぐらいだけあってスタジオに入って作り始めるという感じです。 デモをもらってスタジオに入ってみんなで作ることが多いですね。結局メンバーが演奏した時点でみんなのフィジカルが乗っかるので、いい意味でデモの通りにはならないんです」

壺坂「だからデモは大体の感じで作って、あとは任せます」

――あとはよろしくできるメンバーが揃っている。

壺坂「そうですね。音作りに関しては何年もやっているのに私がわかっていなくて(笑)。でも修ちゃんがギターの位置とかも全部チェックしてくれるし、なっちゃんはすごくたくさん意見をくれて、昂さんは自由で独特なフレーズを持ってくるから、毎回楽しいよね?」

柳本「うん、楽しいですね」

壺坂「いいバランスよな、って思います」

――奇跡のバランスですね。

柳本「奇跡というのは、すごく思っていました。初めてスタジオに入る前は、今日クビになったらどうしよう...とか思っていたので」

壺坂「付き合ってみたけど、やっぱ別れよって?」

柳本「そう。いや、でも本当に一発音を出したらわかるレベルの人たちなので、ホンマにカウント入って音出したら、あ、ちゃうなってなる時はなるやろと。それはビビっていました」

――そんな日から月日は流れて、1枚目のアルバム『到底及ばない』がこの11月にリリースされました。まずはアルバム制作の経緯から聞きたいのですが、先ほどお話しされていたように"アルバムを出したかった"というのが大きかった?

壺坂「うーん...うーん...そう言われると、なんでアルバム出したかったんやろ?」

――配信全盛の時代で、シングルリリースを続けたりEPという形を採用したり、作品の発表の仕方はいろいろある中で、なぜアルバムが出したかったのかなと思いまして。

壺坂「小出しに配信して活動しているように見せたり、配信限定とか、LPがグッズとして売られる時代になって、CDを作るか作らへんかはメンバーともじっくり話をしたけど、やっぱり世代的にもアルバムをジャケ買いして、1枚通して聞いて、このアルバムの何曲目がよかったとか話していた世代やから、アルバムに対する執着もあると思います。今回CDを作るかも迷った挙句にFLAKE RECORDSのDAWAさんに相談したら、そりゃあったほうがいいよと。それで作ったけど、やっぱり配信だけだったらこの喜びはなかったと思います。気持ち的に全然違う。CDができてきた時も、手に取った時もうれしかったし。SNSで買ってくれた人が大事に写真を撮ってくれているのを見ると、すごく届いてるなというか、フィジカルの重みをすごく感じたし、出してよかったなと思いました。とにかくCDの重みがあります」

ultra231129-3.jpg――柳本さんはどうですか?

柳本「やっぱりモノとして手元にある方が、テンションが上がりますよね。すごく」

壺坂「修ちゃんは10コぐらい下で世代は違うけど、やり始めて分かったのはその辺の感覚が同じで年齢を感じさせないし、うちらより音楽のことをよく知っているし、CDをよく買うし、すごく頼りになるんです。モノに関しての考え方も、世代が違うとは思えへん。修ちゃんを勧めてくれた清水にも、そのメンバーが揃ったバンドめっちゃええやんって言ってくれたDAWAさんにも感謝しています」

――ちなみに、このアルバムの制作はどんなところから始まっていったのでしょうか。

柳本「EP出してからでしたよね」

壺坂「EPを出す頃にはアルバムの構想もあって、アルバムでよくいう捨て曲のないものを作ろうと。全部ハンバーグにしたいというか。あとは配信で1曲ずつ出しているから、大事なシングルを集めたウルトラヒットパレードです! どうぞ聞いてください! というパッケージングにしたいというのは最初から話していました」

ultra231129-4.jpg――ファーストアルバムだけど、ベストアルバムのような。

壺坂「はい。その方が ULTRAの音像がよくわかってもらえるだろうし、その中でバラエティ豊かになるようにも考えました。本当、ベスト盤って感じですね」

柳本「このアルバムの前にリリースしたEPはフィジカルを出していないので、これまでのシングルも、EPの曲もマルっとアルバムにまとめているんです」

――あくまでも軸足はアルバムにある、と。

壺坂「そうそうそう! これが本当の私たちの一歩目ですね」

柳本「配信だけで見ると何回同じ曲やんねんと思われるかもしれないんですけど、モノとしてはアルバムに全て集約している形です」

壺坂「ただ、今思えばですけど、シングルやEPとして配信した曲はひっかかりがない...感じがするかな」

柳本「やっぱりULTRAというバンドのコンセプトに合っているのはフィジカルだと思うんです。肉体派というか」

壺坂「そうかも!」

――ひっかかりを感じられなかったのも、フィジカルという肉体が伴っていなかったから?

壺坂「自分の中でもその辺が全てつながった気がしているのも、CDができてうれしくなっていることのひとつなのかもしれないです。ULTRAの音楽がパッケージになることで、こんなバンドだって言えるし、それが最も凝縮されるのがアルバムだと思うので」

――シングルやEPをリリースした時点で、次のアルバムの軸になるかなとイメージできていた曲はありました?

壺坂「それはもちろん「愛など」かな。このアルバムができるまでの期間はずっとバンドの軸に「愛など」がありました」

柳本「そもそもこのバンドがスタートした時に「flashback」と「愛など」と「door」を同時進行させていたので、この3曲は特に念がこもっているのかなとは思いますね」

壺坂「もう呪縛やんな(笑)。「愛など」はさっきお話した通り、ecosystemの後期で作っていた曲だけど、「flashback」と「door」に関してはバンドやろう! となってからすぐ作った曲で。修ちゃんが言うようにその3曲が軸になっています。個人的に「愛など」は、より認められた感は大きいかな」

――その3曲が軸になったというのは、やっぱり! という感じがあります。アルバムの中でもより強い3曲という印象がかなりありました。その軸になる曲をグッと押し上げてアルバムへと制作を進める中で、他にはどういう曲が必要だと感じたのでしょうか。

壺坂「なっちゃんが持ってきてくれた「Table」は、最初から入れようと思っていました。今まで自分が作詞作曲をするバンドばかりやってきたから、すごく勉強になることも多くて。あと、レコーディング中も最強のスタンドであるなっちゃんが横におってくれて、ハモリや言葉のニュアンスも合わせてくれるんです。それは私の喋りもめっちゃ研究して」

――ええっ!?

壺坂「そう。今までここまで寄り添ってもらえたコーラスはなかったし、私が強く歌っていてもハモリも強いから、すごく気持ちよくて。レコーディングの個々の速さや、気にするところ、いろんな場面が見られてよかったし、なっちゃんが持ってきてくれた「Table」に関しては、私が最強のスタンドになって寄り添った感じでできたんです。そんなふうに裏方に回ってレコーディングできたのも初めてだったし、勉強になりました」

――そして3曲目に収録されている「Knight」はおふたりの共作です。

壺坂「曲作りは好きだけど、メンバーもみんな曲を持ってきたらいいなと思っていたんです。当初から修ちゃんは曲を作ってくるだろうなと思っていたし、昂は感情豊かだから歌詞を書いてみないかなと思っているんです。だからまず修ちゃんに、曲持ってきてみてよって。ほんなら照れながら持ってきてくれました」

柳本「自分が初めて作った音楽だったんです。誰かに聞かせるのももちろん初めてで、聞かせるのがこのメンバーっていう...」

壺坂「勇気いったと思いますよ(笑)」

柳本「これではメンバーに聞かせられへんなみたいな自分内ハードルは上がり続けましたね。でもやっぱりこのメンバーだから出せるというのもすごく感じました」

――その曲を初めて聞いた時は...?

壺坂「めっちゃいいやん! って思いました。私アニメの『攻殻機動隊』が大好きなんです。夜でシティー感があって、ちょっと冷めたような感じだけど、オルタナ感のあるリフとか、もう大好物でしかないやんって。すごく私たちのやりたいことを理解してくれているんだなと思いました」

――本当、いいバランスですね。レコーディング自体はスムーズに?

柳本「めっちゃ巻きましたよね」

壺坂「私、歌録り早いし、私のギターが遅いぐらいでみんなも早いんです。3テイクもすればいい感じ。ただ「愛など」だけ違うスタジオで録ったんです。バンドで初めてのレコーディングだったので"すごくきれいに作ろう"ということを意識したんですね。結果的にはよかったけど、もうちょっと空気感というか、もっとバンドバンドしていてもいいなという発見はありました」

――きれいに作るというと?

壺坂「きれいに個々の音が録れていて、ミックスされた時に聞きよい音源なんだけど、もう少しザラザラしていたり、ライブ感のあるような音源の方がULTRAっぽいのかなと。そうなったのはスタジオが違ったせいもあるし、初めての録音だったから意気込みが違ったというか」

柳本「本当に最初のレコーディングでしたしね」

――それに気づいた時点で、方向性も見えてきた?

壺坂「そうですね。収録曲の中でも「Knight」に関しては、満足できる音像...みんな分厚い音だしライブ感もしっかりあっていいなと思っています」

――このアルバムに関して、メグさんのセルフライナーノーツが公開になっているのですが、すごくいい文章で。しかもすごく含みのある文になっていて、めちゃくちゃ読み手に委ねていますよね。このアルバムで伝えたかったことを、極力言葉にできるとしたら...。

12ライナーノーツ.png
壺坂「音がデカいバンドだよとは散々言いましたけど、正直強くもなければ、音がめちゃくちゃデカいわけでもないとも思っているんです。なんて言ったらいいんだろう...タイトルの『到底及ばない』も、私の中でも氷山の一角であって、今は笑っているけど本当は何を考えているのかわからないじゃないですか。それを探るために会話をしたり顔色を伺ったりするんですけど、音楽ってそれを聞く環境や自分のコンディションもそれぞれで、私がどれだけ怒り狂って作った曲でも、悲しい曲でもうれしい時に作った曲でも、捉え方によって変わってくる。だから人それぞれで、私でさえも感じていない感情を拾ってくれているのだとしたら、それで完結してくれたらいいという含みを持たせたかったんです。結局言葉で書いているけれど、言葉では伝わらないことばかりだなと。音もそうだけど、音の感じが好きというだけでもいいし、それぞれの人生の一部になったらなという気持ちでタイトルもつけたし、曲もそういうものが多いかなと思います」

――ふむふむ。それだけ思いのこもった作品が今世に出て、率直な感想としてはどうでしょうか。

柳本「ようやく出せたなと思っています。こうやって取材をしてもらっているのもアルバムが出たからで、人と関わることができる作品を出せたのはうれしいですね」

壺坂「うれしいなぁ。ここまでうれしいと思ったことがないぐらいうれしいです」

――またすごくいいアートワークですよね。

柳本「ですよね!」

壺坂「いいですよね。アートワークはCARDの清水です(笑)。人間味のある、個々がわかるジャケットにしたくて。少し赤みがあって、透明感があって、みんな猫の肉球みたいじゃないですか? それもまた生々しくて気に入っています」

柳本「僕、これで顔を覚えてもらえたらうれしいですね」

壺坂「私の友達は修ちゃんのこと、綺麗な顔の子やねぇって言ってるよぉ!」

――(笑)! そしてこのアルバムを携えて、東京と大阪でライブが行われます。壺坂さんにとって新代田FEVERはホーム的なライブハウスですよね。

壺坂「本当にしんどい時もお世話になっていて。今回もアルカラ先輩とやれるのはうれしいし、スタッフもすごく親身になっていろいろやってくれるんです。あんなライブハウスはないなと思っていて。居心地もいいし、嘘がない場所ですね。そういう人間味があるところに惹かれています。今、アルバムが出てうれしいのもあるけど、なぜ出したかというとライブに来て欲しいというところに一番つながるんです」

柳本「今まで音源がなかったですからね」

壺坂「とにかくライブに来て欲しいですね。ガツンとしたライブができたらなと思っています」

取材協力/BETA CAFE (https://arcteryx.jp/)
取材・文/桃井麻依子




(2023年11月29日更新)


Check

Release

1st Album『到底及ばない』

発売中
2500円
FLAKES-277
FLAKE SOUNDS 

《収録曲》
1. flashback
2. 愛など
3. Knight
4. Table
5. INU
6. 泡沫
7. heads
8. door

Profile

ULTRA(ウルトラ)…2020年11月、壺坂恵(Gt/Vo:acd.、ex.ecosystem)、宮本菜津子(Gt/Vo:MASS OF THE FERMENTING DREGS)、栁本修平(Ba/Cho:WOMAN)、杉本昂(Dr/Cho:TheSpringSummer、Liaroid Cinema)により大阪で結成。結成直後から積極的にライブを行いながら、2022年には「愛など」「door」「Knight」などのシングル曲と、EP『浮いた欲』を配信でリリース。それぞれのキャリアや経験に裏打ちされたバランスや妙がありつつも、フレッシュかつエッジィなオルタナティブロックサウンドで注目を集めている。


Live

ULTRA 1st album「到底及ばない」release party

【東京公演】
▼12月12日(火) LIVE HOUSE FEVER
[共演]アルカラ

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード 254-779
▼12月20日(水) 19:00
CONPASS
[共演]ayutthaya
オールスタンディング-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[問]CONPASS■06-6243-1666

チケット情報はこちら


Check!!

ULTRAオフィシャルInstagram
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ULTRAオフィシャルX
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