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初レコーディングより60周年記念作
沖縄の苦難の歴史と地球の平和を願い歌う
15年ぶりのニューアルバム『平和星☆願い歌』をリリース
「古謝美佐子の唄会~ウムイうた」開催中!
古謝美佐子インタビュー

沖縄民謡歌手として1964年にレコードデビュー。今年、初レコーディングから60周年を迎えた古謝美佐子。オリジナルアルバムとして15年ぶりとなる新作『平和星☆願い歌』が11月26日(日)にリリースされる。今作は初めて沖縄をテーマに制作。自身が生まれ育った沖縄の苦難の歴史と地球の平和を願い歌う15曲が収録された68分の大作に。中でも1曲目の『ウチナーUCHINA~千と三百の核(たま)隠し』は戦後1950年代から1972年まで沖縄本島にアメリカの核弾頭1300個が配備されていた事実を歌い、キヨサク(MONGOL800)がラップで参加する注目曲だ。また、音楽活動を通して深いつながりがある故坂本龍一の曲『Glacier』をサンプリングした『億年の地球~mind of R.S.~』も収録されている。古謝は来年迎える古希を前に、どのような思いでレコーディングされたのか。円熟味を増した歌声が心に深く強く響いてくる各曲が誕生した背景とは。今回ぴあ関西版WEBでは、古謝美佐子とプロデューサーの佐原一哉氏に聞いた貴重なインタビューをお届けする。

これが最後のアルバムになるかも?
という気持ちで歌いました


――15年ぶりのニューアルバム『平和星☆願い歌』のリリースおめでとうございます。今作は古謝さんが9歳の時の初レコーディングから60年という記念作となります。どんな思いでレコーディングされましたか。

古謝「私は来年70歳になるので、もしかしたらこれが最後のアルバムになるかも?という気持ちで歌いました。孫とかの世代に歌いかけると同時に、聴いていただける全ての人のことを想っています」

――今作は全15曲68分の大作となっています。アルバム制作の準備から完成までどれくらいかかりましたか。

古謝「録音で私はほぼ歌うだけなので、あとは佐原に全面的に任せています」

佐原「今回、曲を作って構想を練ってdemoを作りアレンジしてミュージシャンを頼んで録音して最後までもう何年か、かかっていると思います」

――今までのレコーディングと比べて何か違いはありましたか。

古謝「とにかく私は2~3歳の頃から人前で歌うのが好きで、いまだにスタジオでマイクを前にして歌う録音は好きではないので、録音は毎回1~2回歌って終わり。ですから今回も特に変わったことはありませんよ(笑)」

――表題にも表れているように、"平和への願い"というメッセージと共に、古謝さんが生まれ育った沖縄のことはもちろん、"地球の平和"というグローバルな視野の大きさも伺えます。今、このテーマでご自身の歌を録音し、リスナーに届けたいと思った理由は? ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの戦闘など、世界的に戦争への危機感がさらに高まっているだけに、とても力強く深く心に響いてきます。

古謝「世界のあちこちで戦争ばかりしている人間は本当にどうしようもない生き物だと強く思います。世界の平和までを簡単に歌えるものでもありませんし"リスナーに届けたいと思った理由は?"なども簡単に言葉では伝えられませんが、ただ沖縄戦で何十万人の人が犠牲になったことに関してはウチナンチュとしていつまでも語り伝える義務があると思います。特に『平和星願い歌』は戦争などで亡くなった魂を私が掬い上げるという気持ちで毎回強く心を込めて歌っています」

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「ラップなんかしたことない」と不安がっていたが
「キヨサクのラップ最高だよ!!」と伝えました


――『ウチナーUCHINA~千と三百の核(たま)隠し』(M-1)では、1950年代~1972年まで沖縄本島にアメリカの核弾頭1300個が配備されていたというとてもショッキングな事実を歌で伝えています。米軍基地の問題など、沖縄の現状に対する"怒り"が原動力のひとつになっているようですが、古謝さんの歌声を聴いていると、怒りの感情が突き刺さるのではなく、もっと大きな思いに包み込まれるような感覚になります。戦争(沖縄戦)を体験した世代から受け継いでいる、心の奥底にある哀しみが怒りとなって湧き上がり、唄へと昇華されているようです。古謝さんはどのような思いで歌いましたか。

古謝「沖縄戦以降、1972年に復帰した現在も沖縄はまだアメリカと日本の植民地と思っています」

佐原「復帰前に起こった『千と三百の核隠し』で歌っている恐ろしい事実はその中の一つにすぎません。その他にも不条理なことがたくさんあります。日米地位協定問題、PFASなどの水や環境汚染の問題、オスプレイや戦闘機の騒音問題、米軍人の性的暴行問題、いつ完成するのかわからない辺野古基地の問題、離島の自衛隊基地問題、などなど沖縄に住んでいると色々な問題があります」

古謝「本土の人たちにはわからないことをCDやライブで肌感覚で感じてもらえたらと歌っています」

――同曲にはキヨサク(MONGOL800)さんが参加されていますね。キヨサクさんとの交流はいつ頃から? また、この曲に関してキヨサクさんとはレコーディング前に何かお話しをされましたか。

古謝「キヨサクとの初めての出会いは2000年代初めの頃で、モンパチ(MONGOL800)の3枚目のアルバム『百々』( 2004年発売)のタイトル曲に歌と三線で参加しています。それからは二人の公演をあちこちでやったりモンパチフェスに出さしてもらったりしています。今回キヨサクとはレコーディング前に話は何もしていませんよ。全て佐原に任せていますから」

佐原「ラップは誰に頼むのが良いか色々と考えたのですが、やはりキヨサクしかいないと。でも録音前にキヨサクは"ラップなんかしたことないから"と不安がっていたのですが、無理をお願いして見事にやってくれました!!」

古謝「終わって音源を聞いてから"キヨサクのラップ最高だよ!!"と伝えました」

――『与那国ぬマヤー小』(M-3)は伝統民謡にフリースタイルのサックス(坂田明)が合わさったユニークな楽曲です。この曲のアイデアと歌詞の内容について教えてください。

古謝「これも私は三線を弾いて歌っただけなのでアイデアとかアレンジとかは佐原に聞いてください」

佐原「サックスの坂田さんとは長年の知り合いで是非と言って、坂田学さん(ドラム)と親子で参加してもらいました。坂田さんはもう80歳近いのに本当に素晴らしいです。この曲は生きるのも厳しい離島の風刺いっぱいの伝統民謡で、役人を「猫」とか「犬」に比喩して揶揄している感じを、坂田さんのサックスの響きがよく現してくれています」

古謝「離島の歌は大変難しいし、歌詞も何を言っているのか詳しくはわかりませんよ」



環境問題はじめ色々なことに対して闘っていた
坂本(龍一)さんの意思を深く受け継いでいけたらと


――『億年の地球(ほし)~mind of R.S.~』(M-5)では、古謝さんの音楽活動の中でも深いつながりがある故坂本龍一さんの曲『Glacier』がサンプリンされています。これは坂本さんへのオマージュとして? また、この曲に関するエピソードがあれば教えてください。

佐原「この曲は坂本さんが亡くなる前に歌などを録音し終わっていたのですが、逝去後、何かオマージュをと思いこの曲にサンプリングできるような坂本さんの曲はこれしかないと使わせてもらいました。サイズもキーもピッタリ合ってびっくりです」

古謝「坂本さんとは最後2020年1月に沖縄で共演したのが最後でした。沖縄の辺野古基地建設反対運動などでも本当に助けてくれましたし、亡くなる直前まで環境問題はじめ色々なことに対して闘っていた坂本さんの意思を深く受け継いでいけたらと思います」

――このアルバムが完成してどんなことを実感していますか。

古謝佐原「15年ぶりのアルバムで70歳を前に初めて「沖縄」をテーマに作ることができて嬉しいです」

――このアルバムをどんなふうに届けていきたいですか。

古謝「それは聴いてくれる方々の自由です。どんなふうに聴くかというのは人それぞれです。ただメッセージのある曲でも決して強く押し付けがましくではなく、優しく暖かく穏やかに沖縄らしい歌の力で届けていけたらと思っています」



新作の曲もやりますし「童神」のような定番曲も
大阪ではすごい飛び入りゲストが参加してくれるかも


―― 現在、開催中の「古謝美佐子の唄会~ウムイうた」はニューアルバムからの新曲を中心に歌われるのですか。今回のライブの特徴や演目について教えてください。

佐原「もちろん新しいアルバムの中の曲もやりますし「童神」のような定番曲もやります。大阪のライブではもしかしたら他にはないすごい飛び入りゲストが参加してくれるかもですので、お楽しみに」

古謝「終演後はもちろんCDサイン会もやりますし、今回は特別に作ったオリジナル古謝首里城Tシャツも販売します」

――初日となった11月4日の沖縄公演はいかがでしたか。ライブの手応えや、そこで感じことなど教えてください。

古謝「沖縄では久しぶりのソロのホール公演でしたのでたくさん歌いました。
本土からもたくさんの方々が来てくれて嬉しいです」

――大阪でのライブはどんな印象ですか。

古謝「大阪は熱心なファンの人が多いですし、ウチナンチュなども多いので毎回楽しいですよ」

――最後にファンのみなさま、また、古謝さんのライブを未だ体験したことがないリスナーに向けてメッセージをお願いします。

古謝「そうですね、大阪は月末ともなるとだいぶ寒くなると思いますが、沖縄の暖かい風を感じてもらえたらと思います」

佐原「多分、ほとんどの方は体験したことのないだろうという仕掛けもありますから楽しみにしてください」

Text by エイミー野中




(2023年11月17日更新)


Check

Release

Album『平和星☆願い歌』
2023年11月26日(日)発売
3000円(税別)

《収録曲》
01. ウチナーUCHINA~千と三百の核隠し~
02. 平和星願い歌
03. 与那国ぬマヤー小
04. マリア・ソリーニャ
05. 億年の地球~mind of R. S.~
06. 雨夜花~アリラン
07. ホレホレ情歌~ホレホレ節
<昔うたメドレー:Once Upon A Time In Uchina> ※8~14
08. Prologue~時代の流れ
09. 廃藩ぬ武士
10. 南洋小唄
11. 軍人節~熊本節
12. 懐かしき故郷
13. PW無情
14. 屋嘉節~Epilogue
15. 日々是好日
  古謝(vo)+佐原(p)ver.

Profile

こじゃみさこ…1954年沖縄県嘉手納町生まれ。沖縄民謡歌手。初代ネーネーズのリーダー。基地の生まれ、幼少の頃から沖縄民謡に親しみ、小学生から舞台に立つ。1964年9歳で、マルフクレコードより「すーしーすーさー」でレコードデビュー。1986年より坂本龍一のプロジェクトに参加(レコード、ツアー)。'90年から沖縄ポップグループ「ネーネーズ」のリーダーとして参加し、6枚のアルバムなどを発表。'95年ネーネーズを脱退し、1996年よりソロ活動を再開する。特に伝統的な民謡や情け唄と呼ばれるしっとりとした情感を込めた島うたを得意とする。また、唄以外にも作詞や、三線、琉琴、指笛、三板、太鼓などの楽器演奏もこなす。2000年には初の本格的ソロアルバム「天架ける橋」を制作、2001年一般発売。「21世紀の沖縄音楽の夜明けを告げるアルバム」と絶賛される。また、その中にも収録されている自作詞の「童神(わらびがみ)」(1997年作)は、新しい沖縄を代表する子守歌としてブームを呼び、「夏川りみ」「山本潤子」「花*花」「加藤登紀子」など、数々の歌手によってカバーされている。2014年より宮里奈美子、比屋根雪乃(共に初代ネーネーズ)に島袋恵美子を加えた四人グループ「うないぐみ」の活動も開始。2015年に1stアルバム「うない島」発表。同年10月に坂本龍一とのコラボチャリティシングル「弥勒世果報-undercooled」を発売。その他、2007年より文楽人形の吉田勘緑氏とのコラボ「人形版 吉屋チルー物語」を全国各地で上演するほか、坂本龍一のオペラ「LIFE」に出演、アイルランドの国宝級アーチスト「チーフタンズ」のアジアツアー(2001~2002年)にゲスト参加、「モンゴル800」「夏川りみ」など若手歌手やミュージシャンのCD参加等、活動は多岐にわたる。また、音響研究者の研究により、「古謝美佐子の声は、人を癒したり健康を促進する『高い周波数域』と『ゆらぎ』を同時に持つ稀有の存在である」ということが証明されている。

古謝美佐子 オフィシャルサイト
https://kojamisako.com/


Live

【東京公演】
▼11月18日(土) 草月ホール

【愛知公演】
▼11月23日(木・祝) 今池ガスホール

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:249-558
▼11月25日(土) 16:00
クレオ大阪東
全席指定-5500円
[共演]佐原一哉(key)
※未就学児童は膝上観覧無料。
[問]ラッキーリング■06-7777-9977

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