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待望の1stアルバム『Bigfumi 1』をリリースしたオールドルーキー
多くのスポーツ選手達から愛され、歌手としての矜持を胸に
“音を届ける”Bigfumiインタビュー

「西日本で最も体の大きいシンガーソングライター」ことBigfumiが、11月10日に1stフルアルバム『Bigfumi 1』をリリースする。ベリーグッドマンのHiDEXをプロデューサーに迎えた今作は、2021年以降にリリースされたシングル4曲と新曲4曲、再録1曲を含む全10曲を収録。前向きであたたかい歌詞、しっとりと響き渡る歌声、良質なメロディ。それはとても普遍的で明瞭で、どんな人の心も優しく撫でる魅力がある。また、阪神タイガースの梅野隆太郎選手をはじめ、セ・パ合わせて9名のプロ野球選手が彼の楽曲を登場曲に起用。アスリート経験のある彼だからこそ、プレイヤーとサポーター双方の気持ちをすくい上げる楽曲が作れるのだろう。さらにインタビューをしていて、思わずこちらがウルっときてしまうほどの想いの深さもある。スポーツ界からじわじわと人気が広がっている彼だが、その勢いを示すように、11月末から行われる東名阪ワンマンツアー『Bigfumi Oneman Live 2023~それでも生きていくんだ~』は、キャリア最大規模となる味園ユニバース公演、そして東京公演が既にソールドアウトとなり、名古屋公演も完売間近。ぴあ関西版WEB初登場のBigfumiに、活動の経歴や今作について、曲作りで大切にしていることについて、たっぷり語ってもらった。

レスリングをやめ、憧れていた音楽の道へ


ーー音楽活動を始められたのは、
2014年の20歳の時だそうですね。

「高校生の時にレスリングで日本3位になって、福岡大学にスポーツ特別推薦で進学したんですけど、挫折して大学をやめて、小学校5年生からの夢だった歌手を目指すため、20歳の時に路上ライブから活動をスタートしました」

ーー小学校5年生の時から夢だった?

「小学校3年生の時、父親がンドを組んだんです。催し物やお祭りで歌う父親の姿を見て、"歌手になりたい。親父よりもいいところで歌いたい"と思って。お父ちゃんお母ちゃんを安心させるため、大学卒業と同時に教員免許を取れる福岡大学を選んだんですけど"やっぱりもう1回根本の音楽をやるぞ"と」

ーーお兄さんも歌手を目指していたとか。

「男3人兄弟なんですけど、6歳離れた2番目の兄貴は大学進学とともに上京して、しばらく音楽活動をしてたみたいです。そもそも父の前座で最初に歌ってたのは2番目の兄貴。兄貴が高校3年生の時、宮崎の駅で路上ライブをしてるのを見に行ったりしてて、"僕が18歳の時には兄貴や親父みたいになってたいな"という憧れはありました」

ーーお父さんの前座として初めてステージに立ったのはいつですか?

「僕は中学校2年生の時。親父がギターを買ってくれて。コブクロさんの『赤い糸』をカバーしたのかな。前座は度々やってましたね。本格的にBigfumiとして名乗り始めたのが20歳の時です。福岡でもちょっとだけ路上ライブをしたり、大学の寮にギターを持っていって弾いたり、音楽はずっと大好きでした」

ーー阪神タイガースの梅野隆太郎選手と出会った寮ですね。

「そうです。僕は部活を1年でやめて3年生で中退してるので、1年間しか寮に入ってないんですけど、その中で梅野選手と仲良くなって。僕が2017年に自主でCD1stミニアルバム『いただきます。』)をリリースした時、"覚えてる?俺、お前の曲使うから、頼むね"みたいな感じで連絡をいただいて、登場曲として使ってくれて」

ーー大学をやめられてから、梅野選手と連絡を取られていたんですか?

「全く取ってなかったんです。寮にいた1年間だけ。でも僕の印象があったのか、梅野選手から連絡をいただいて」

ーーずっと見てくれていたんですね。

「そう思います。当時寮で歌ってた曲をリリースしたら、"この曲も聴いてたよ"と言ってくれたので」 

ーー寮で歌っていたのはオリジナル曲だったんですか?

「そうです。一番最初に作ったのが、18歳の時に自分の父親と母親に向けて書いた『Home』(2016年リリース『音届者 -オトドケモノ-』収録)なんですけど、梅野さんはそれを学生時代から聴いてくれていました」

ーー自然にオリジナル曲を作りはじめたんですか?

「高校に入ってからオリジナル曲を23曲作り出しましたね」

ーー福岡では1年ほど路上ライブをされていたと。

「毎週木曜日に路上ライブをしていたら、大体100人ぐらい集まるようになって。その時は歌手のなり方がわからなくて、とにかく路上ライブをしてスカウトされるのかなと思っていたら、各都道府県にローカルのミュージシャンがいて、地元のライブハウスを埋めて活動していることを知って。地元の先輩に対バンイベントに呼ばれたことがキッカケでライブハウスに出るようになって、そこから自分でファンを増やしていきました」

ーーお客さんを集めるのは大変でしたか?

「大学の友達がいたので最初はノルマも達成できてたんですけど、皆大学を卒業して就職して忙しくなって。特にローカルでは、ファンが多い"イケメン"ボーカルグループとかが多かったんですよ。そんな時僕は、"何番目でもいいからBigfumiのことを好きでいてほしい"MCで言い続けていました。そしたらどんどんファンが増えていって、福岡で500人のワンマンライブが成功したんですよ。それは、二番目の僕が一番になった瞬間というか。ここにいる500人には多分他に好きな人がいるんだけど、何番目かに僕のことを好きでいてくれたから集まってくれた。そんな気持ちでやっていました」

ーーライブの時は正装なんですね。

「僕は体が大きいので。清潔感が一番大事じゃないかなと思っているんです。だから福岡時代から白シャツに蝶ネクタイをつけて歌ってたんですよ。大阪に出てきて、色んな人がサポートしてくれる中でオーダースーツを作ろうよとなって、ジャケットを着るようになって。福岡時代はお金がなかったし、白シャツに黒パンツ、蝶ネクタイで髪をセットして歌うのが一番綺麗だと思ってたんですけど、他の人達の意見を聞くと"ジャケットが一番カッコいいじゃん"って」

ーーなるほど。ちなみにスポーツもお好きだったんですか?

「僕がレスリングに入ったのは、体格が良くてスカウトされたから。やっぱりレスリングの重量級となると競技人口が少ないんですよね。水泳、柔道、ラグビー、サッカー、色々やってたんですけど、スポーツがめっちゃ好きかと言われると、体を動かすのは別にそこまで......。歌う方が好きでした(笑)。レスリングで日本3位になった時も、これで生きていけるとは思ってなかったですし。ずっと頭の片隅で"音楽で有名になりたい"と思っていました。でもスポーツ経験があるから、アスリートに向けた歌を作れるのかなと思っています」


ただの"いい歌"、"歌が上手いね"で終わらせたくない


ーー曲を作る時は、何を大事にされていますか?

「自分が一番注力するのはテーマ。僕は"この曲は何を伝えたいのか"を、ハッキリさせていたくて。聴き流す曲をあまり作りたくない。何を伝えたいか、聴いた人がどんな気持ちになってほしいか、どんな人を救いたいのか。恐れ多いですけど、そう思って作っていきます」

ーー届けたい相手をイメージして?

「もちろん応援歌やバラードは、具体的な人や出来事が思い浮かんでることもありますね。でもそれだけじゃライブが成り立たないと思っているので、"ライブで楽しんでほしい、ライブをこんなふうに観せたい"というライブを想定した曲の作り方と、さっき言ったメッセージを込めたテーマを明確にして、"どんな人に届けたいか"というところまで考える曲の作り方の2軸ある感じですかね」

ーーメッセージ性を重視されているんですね。

「もちろん実体験から生まれる、自分自身に向けた歌もあります。自分が思っているということは、同世代や同じ状況に陥った人たちも皆同じことを考えてるんじゃないかな、という共感を大事にしてます」

ーー"いい歌で終わらない歌を届けたい"X(元Twitter)のプロフィール文に書いておられますが、Bigfumiさんにとっての"いい歌"というのは?

「僕、"歌上手い"って言われるの嫌いなんですよ」

ーーそうなんですか。

「僕的には"歌上手い"って言われると、"ああ、そこで終わっちゃったんだ"って、ちょっと残念なんですよ。歌が上手いのはプロとして当たり前じゃないですか。"歌上手いね"よりも"感動した""声がいいね""胸に刺さりました"と言われる方が嬉しいんです。曲も同じで、"この歌いい歌だね"というよりは、一つ掘り下げて"あの時聴いたらすごく感動したよ"とか言われたい」

ーーなるほど。

「最近地元の友達に、お母さんが亡くなった時に僕の歌をずっと聴いててだいぶ救われたと言ってもらった時、"この歌がいい歌で終わらなかったな"と思って。自分が作った曲なんですけども、人に届いた時、思ってる以上の効果や作用をしてるなと思たんですよ。自分が考えてるよりももっと、見えないところで誰かを救えてるんだなと身が引き締まります。すごい歌、救われた歌、美しい歌、その人なりの形容詞があると思うけど、"いい歌"で終わらなかった時は、音楽をやってて良かったなと思う瞬間ですね」

ーー聴いた人の中に残る歌がいい歌だと。曲の持つ力ですね。

"僕がやってきたことが間違いじゃなかった"なのか、"もっと頑張らなきゃいけない"なのか、その人の人生の状況によって、答え合わせができると思ってるので。同じ曲だけど、その人の現状によって考え方が変わる、そんな曲になっていったらいいなと思います

ーーBigfumiさんも、歌で考え方が変わった経験がありますか?

「もちろんあります。僕がそれを感じたのは高校ぐらいの時に聴いた、阿部真央さんとかりゆし58さん。もともと、ゆずさんから始まって、コブクロさん、19さんなどがルーツなんですけども、かりゆし58さんや阿部真央さんの曲を聴いた時、ハッとする瞬間があって。そのハッとする瞬間を僕も作りたい。他人のカバー歌うことが好きな少年が、シンガーソングライターに変わった瞬間ですね」

ーー影響されたんですね。

「阿部真央さんにはめちゃくちゃ影響されてますし、"こんな歌が歌いたいな"とリファレンスをもらって作った曲もあります。かりゆし58さんは沖縄出身で、僕も宮崎なので南の風を感じてます。ハッとしたワードで言うと、『会いたくて』の中に<やたらと夢を語っては 立ち向かう振りして逃げてた>という歌詞があって。夢を語った時って、皆すごく手を叩いて応援してくれるんですけど、実績が伴わないと"あいつまだ言ってるぜ"となるじゃないですか。僕は歌手になると小5から言ってて、最初は皆"すごいじゃん。頑張れよ"と言ってくれていたのが、"いつになったら歌手になるの?"に変わった瞬間が19歳頃だったんですよね。"夢を語るだけで満足してたな"と思って、独りで路上ライブに立ち出すんですけど。本当に音楽に影響を受けてきたし、人生を変えられた曲がいっぱいある。僕もそうなりたいと思ってます」

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入口は忘れてはいけない。後輩としてのポリシー


ーー2018年に福岡から大阪に移住されていますが、なぜ大阪だったんですか?

2017年から梅野選手が登場曲に僕の曲を使ってくれていたので、梅野選手のお力を借りて、阪神タイガースのファンの人に知ってもらおうということで、1年後に大阪に引っ越しました」

ーーやはり梅野選手は広まるキッカケになりましたか?

「もう本当に、あの人にご飯を食べさせてもらっているところがあります。20185月から大阪に住み始めて、6月に尼崎の"アマドゥ"という商業施設でフリーライブをしたら、梅野さんのユニフォームやタオルを持った人が200人ぐらい集まって、"阪神すげえ"と思って(笑)。そうやって関西で活動がスタートして、"これはいける"と思ったんすけど、まもなくコロナになって」

ーーベリーグッドマンさんとの繋がりはいつ頃から?

「大阪に住み始めた時、福岡の先輩アーティストからベリーグッドマンさんを紹介していただいたんですけど、僕は結構自分では硬派だと思っていて、媚びを売る人間だと思われたくないので、自分からはしつこくいかないようにしているんです。最初ご挨拶して、"いつでも僕は飛んでいきますよ"のスタンス。そんな中で"飯行こう"言われるようになって、グッと距離が近づきましたね」

ーーHiDEXさんにプロデュースをお願いするようになった経緯は?

「ずっとやってほしいとは思っていたんですけど、当時は福岡時代のアレンジャーさんや梅野さんの知り合いの方にプロデュースをお願いしていて。フリーランスになって、HiDEXさんとタッグを組んだ感じですね」

ーー仲が良かったんですか?

一番最初にご飯を誘っていただいたのがHiDEXさんだったので、入口は忘れてはいけないと思って。もちろんその流れでMOCAさんとRoverさん、それぞれにお世話になっています。アレンジに関してはHiDEXさんが一番親身になってくれていますね」

ーーいつもどういうやり取りで曲を作られるんですか?

「大体僕がボイスメモでサビを作ったり、歌詞とメロを先行で持っていくことが多いです。あとはHiDEXさんの前で鼻歌で歌って、その場で一緒にコードをつけてすぐ仮歌を録って、一気に作るパターンもありますね」



僕のポジティブは、ネガティブからくるポジティブ


ーー『Bigfumi 1』は、どのような経緯で制作に入られましたか?

「今回HiDEXさんのご紹介で、ベリーグッドマンがインディーズ時代にお世話になってたVillage Again Associationというレーベルからリリースするんですけど、今まで作ってきた曲と新曲で10曲入りにしようという話で、アルバムを作っていきました」

ーーセルフタイトルが冠されていますが、"やっていくぞ"という気合いの表れですか?

「そうです。福岡の路上ライブから始まって、大阪に出てきて、フリーランスになってコロナを耐えた3年半、やっと事務所とレーベルが決まって、ベリーグッドマンさんたちの力を借りながら再スタートというところで、自分の中ではエピソード4だと思ってるんですけど、アルバムを全国リリースしていただけるのも今回が初めてだし、"ここからがオールドルーキースタートです"という気持ちでやれたらなと思って、このタイトルにしました」

ーーここまでくるのは長かったですか?

2024年で活動開始10年。短かったとは思わないですけど、長かったとも思ってないです。まだ何も成し得ていないので」

ーー楽曲全体から、Bigfumiさんの前向きな精神性が感じられましたが、その前向きなメンタルは、もともとお持ちのものですか?

「僕のポジティブって、ネガティブからくるポジティブなんですよ。考えすぎて苦しくなることもあるけど、最後に行きついたら前を向いてる。その状況を"皆も一緒だよね""こんなふうに生きていったらいいんじゃないか"という感じで曲を作ってる。だから自分にも向けてる部分もあって。"前を向いて頑張っていけたらいいよね"というメッセージの方が強いのかな。決して根っから前向きな人間ではないです。考えた上で前を向いた経験があるから、それを皆に共有してる感じですかね」

ーー『サンキューバースデー』(M-5)の<喜びは貴方を優しくする 怒りは貴方を陥れる 悲しみが貴方を蝕んでも 楽しみを一つ見つけて生きなさい>という歌詞は、家訓のようだなと思いました。

「これは"喜怒哀楽"の四文字熟語から。僕の息子に向けて作った歌なんですよ。"誕生日おめでとう"と言われるけど、僕ら自分が生まれた日の天気とか、わからないじゃないですか。でも父ちゃんと母ちゃんは多分知ってる。ってことは多分、"ハッピーバースデー"ではなくて"サンキューバースデー"なんですよね。"誕生日ありがとう"の日。僕は怒りは人を陥れると常々思っていて。感情をぶつけるのも大事ですけど、怒りの感情は甘えだし、わがままだと思うんですよ。本当に希望に向かって進むなら、話し合いの方がいい。小さい頃、学校に行く時にお母さんが"起きなさい"と言った時に"わかってるよ"言ったりするのは甘えじゃないですか」

ーーそうですね。

「彼氏や彼女に対して、"なんでこんな時間に帰ってくるの!?"と言うのも、怒らずに帰ってきてほしいと正した方がいい。"怒りはあなたを不利にするよ"と子どもに伝えたくて。悲しくて泣いて怒る方が、まだちょっと人間らしいのかな」

ーー怒りの前に一つ感情があるといいますもんね。悲しい寂しい、それを蓋するために怒りが生まれてくるらしいですね。なるほど......歌詞のようなことをご両親から言われて育ってこられたのかなと思いました。

「それもありますよ。"楽しめることを一つ見つけて生きなさい"というのは、僕の親から言われてることでした」

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ライブで一番伝わるように楽曲を制作する


ーー個人的に印象に残ったのが『後悔なき航海』(
M-6)です。これは新曲ですよね。

「そうです。この曲は千葉ロッテマリーンズの山口航輝選手に向けて作りました。以前から僕の曲を使ってくれてる選手で、一緒にご飯食べてる時に"そろそろ曲を作りますよ"と言って。彼の名前の"""輝く"という文字を織り混ぜながら、千葉ロッテマリーンズということで海をイメージして書きました。大々的に"書き下ろしました"と言ってもいいんですけど、曲は聴く人のものであってほしいので」

ーーなるほど。でも山口選手はきっと嬉しいでしょうね。『繋いでいけ』(M-1)はラグビーの曲だそうですが、テーマからどのように広げていくんですか?

"ラグビーの曲を書いてほしい"と言われた時、ラグビーは繋いでいくものだなということで、サビの<繋いでいけ この想い託すように>がパッと思い浮かびました。Aメロの<起立、気をつけ礼を重んじ〜>というのは、ラグビー選手が大事にしてる項目があって。彼らにヒアリングして、品格や尊重というワードを入れていきました」

ーースポーツマンシップですね。

「やっぱり僕も泣くほど悔しい瞬間もありましたし、報われるのかわからない練習もありました。そういう経験がメロディーや歌詞に含まれてるのかなとは思ってます」

ーーサウンド面で言うと、どの曲にも印象的なギターソロが入っているなと。

「確かに。僕が曲を作る時、"生音っぽい音がいい"と言うんですよ。それはやっぱり僕にとってライブが一番大事で、面と向かって歌うのが一番伝わると思ってるから。それを表現しやすいので、バンドサウンドの曲が多いですね」

ーー録音も生音でされているんですか?

「ギター、ベース、ピアノは生音で、ドラムとストリングス系はソフトで入れてると思います。ただ『それでも生きていくんだ』(M-9)のサックスは、僕のバンドメンバーの関真哉(sax.)くんが吹いていたり。ライブではこのソロをベースがやったりサックスがやったり、ライブごとに変わるんですけど、それも一つの楽しみというか」

ーーライブでしかできないアレンジを。

ライブでは同期は使っていないので、6人のバンドメンバーで音源に近づくようにやってみる曲もあるし、ガラッとアコースティックにしたり、全部違うアレンジでやることもあったりします」

ーー『雨の日のバラード』(M-10)は『いただきます。』(20175月リリース)に収録されていた曲ですね。再録でストリングスが入り、歌謡曲っぽい印象もありますね。

「この曲は玉置浩二さんの『メロディー(1996年リリース)』を意識してます。サビの頭から高音が来ないようにしたかったんですよ。だから低音のサビっぽくないサビから始まって。玉置さんの『メロディー』も<あの頃はなにもなくて>がサビだけど、<それだって楽しくやったよメロディー>でトップキーが来る。これもやりたかったので、もしかするとその辺が歌謡曲っぽいのかもしれないですね」

ーー玉置浩二さんもお好きなんですね。

「僕の父親が大好きなんですよ。安全地帯さんの曲も小さい時からずっと聴いて育ってきたので、もちろんルーツにはありますね」


"報われてほしい人がいる人たちが報われてほしい"。何かを応援する人に向けた応援歌


ーー10曲の中で、懇身の1曲を挙げるとすると?

「やはり『太陽のような人でありたい』(M-4)です。この曲は2018年ぐらいに作って、56年間ライブでしか歌ってこなかったんですよ。阿部真央さんからインスパイアされた曲なんですけど、真央さんも『母の唄』という、ライブでしか歌わない曲があって。『太陽のような人でありたい』はライブでしか聴けないから、僕にとって一番大事なライブに来てもらって、面と向かって受け取ってほしい曲だったんですけど、今回Village Again Associationさんとレーベル契約することで、今がこの曲を広めるチャンスなのかなと。ライブでしか聴けなかった曲を全国に届けたい。だからアルバムの中では一番聴いてほしい曲かもしれないです」

ーー見守る側の視点の楽曲で、ファミリー感がありますね。

「この曲は、野球選手の奥さんと話してる中でできた曲なんです。二軍レギュラーじゃない旦那さんが家に帰ってきて、"超一流の世界で戦う人に、どんな言葉をかけていいかわからない。わかったようなことも言えないし。でも美味しいご飯を作って、あったかいお風呂をいて送り出していくんだ"と言われた時に、これは野球選手だけじゃないなと思ったんですよ。先ほどサッカーもやっていたと言いましたが、僕は全然レギュラーじゃなくて、でも母ちゃんは泥だらけのユニフォームを洗って、遠征や試合の送り迎えをして、ベンチに座る僕だけど、それでも支えてくれた。最近では知人が、おじいちゃんおばあちゃんが病気になった時、"代わってあげたい。けど代われないし、まだ生きてほしいし耐えてほしいと思った時に、どんな言葉をかけたらいいのかな"と言っていて。当人を上回る感情は出せないし理解できないけど、でも"代わってあげたい"というところに愛が生まれると思っていて」

ーー本当にそうですね。

「でも、支える側の人たちにフォーカスした歌はないなと思ったんです。だからこの曲をリリースして、"報われてほしい人がいる人たちが報われてほしい"と思ったんですよ。息子がレギュラーじゃないけど、夜キャッチボールに付き合うお父ちゃん。"頑張れよ、プロ野球選手になるんだろ?"って。プロ野球選手にはなれないと、うっすらわかっているかもしれないですね。"でもこいつが幸せになるなら"と車で送り迎えする情景がパッと浮かんで、そのお父ちゃんが報われてほしいなと思ったんですよ。あたたかく寄り添う曲ではあるんですけど、実はテーマ自体は結構コアなところに目を向けてるという」

ーー<私は一番そばで見てきました>という歌詞がグッときますね。

「<それでもどうかもし神様がいるなら>とかね、思うことあると思うんですよ。自分のパートナーが癌になっちゃって、"代わってあげたい、なんなら私が死んであげたい。生きてほしいけどそうはいかない"って。でもそれを願うあなたはきっと報われていいはずなんですよね」

ーーBigfumiさんの中で大事な曲なんですね。

「自分自身、野球選手の奥さんの話を聞いた時、本当にハッとしたので。僕らからは輝いて見えるけど、わからないじゃないですか。もっと言うと、スポーツ選手やミュージシャンのファンも同じ感情になってると思う。例えばスポーツ選手が怪我で苦しんでる。"あの人がどうか報われてほしい、私はあの人が大好きだから"って。でもこれを願ってるあなたのことも、僕は報われてほしいと願ってる。この曲は、何かを応援する人に向けた応援歌なので、僕のファンやスポーツファンの方はめっちゃ共感してくれて、大好きと言ってくれる人は多いですね」

ーーお話だけで感動しますね......HiDEXさんとはどんなやり取りをされたんですか?

「この曲はもともとピアノの弾き語り曲だったんですけど、HiDEXさんが"俺にアレンジさせてほしい"と言ってきてくれて"ここ最近で一番頑張った"と言ってて。彼も愛を持ってこの曲に関わってくれたので、愛が重なった大事な曲になってるのかなと思います」

ーーでは最後に今作への想いを聞かせてください。

「自分は今までの音楽人生、ずっと模索して生きてきたんですよ。今はプロモーターがいて、マネージャーがいて、レコード会社があって事務所があって。音楽業界というものに夏ぐらいからやっと足を踏み入れた感じがしていて1210日(日)の味園ユニバースはチケット完売ましたし、自分の意気込みと努力が、自分ではもう作用しないところに来てるような気がしていて。周りでたくさんの人が動いてくれている状況ではあるんですけど、誠実に誠実に、歌を届けていくことだけはやめずに、楽曲制作とステージパフォーマンスを絶対揺るがずにやっていく。意気込みとしては"凡事徹底"というか、今までやってきたことをとにかくやり続けていく。自分が信じたものを信じることは変わらずやっていきたい。あとはもうお願いしますという感じですね(笑)」

ーーご自分の魅力って何だと思われますか?

「何だろう。愛があるとこじゃないですか。愛を大事にしてます。何事も愛を持って接する」

ーーでは、ミュージシャンとしての魅力は?

「より心に届く声と曲だと思ってます。僕が言う"頑張れ"が、あなたにすんなり届いてほしい。言葉がスッと届くミュージシャンであるのは自負してます」

ーーまさにですね。そして目標は、ビルボード大阪と宮崎市民文化ホールでのライブ。

「自分が最初にに行ったのが宮崎市民文化ホールだったので、ここでライブをするのが夢です。身近な目標で言うならば、ビルボード大阪は、僕みたいに歌い上げる人は皆さん出てる場所だし、ファンの方にも音楽を浴びるほど楽しんでもらいたいので、いつかライブをやりたいですね。そしてフェスティバルホールをいっぱいにすることが今一番の目標かもしれません

Text by ERI KUBOTA




(2023年11月10日更新)


Check

Movie

Release

ベリーグッドマン・HiDEXがプロデュースし、ライブでは既に人気の楽曲も多数収録された、名刺がわりの1stアルバム『Bigfumi 1』発売!

2,500円(税込)
ZLCP-0431

【収録曲】
1.INTRO
2.繋いでいけ
3.Don’t Stop Music
4.太陽のような人でありたい
5.サンキューバースデー
6.後悔なき航海
7.Boo!熱い夏
8.Giant Killing
9.それでも生きていくんだ
10.雨の日のバラード

Profile

宮崎出身のシンガーソングライター。代名詞は音届者(おとどけもの)。ハートフルで心震わせる声が最大の特徴である。また、ストレートな歌詞がたくさんの人の共感を呼ぶ。2023年には9人のプロ野球選手の登場曲として使用される。ラグビーの応援ソング「繋いでいけ」をリリース。NTTドコモレッドハリケーンズの歴史を振り返るMVに使用された。また、元サッカー日本代表の乾貴士選手に書き下ろした「Giant Killing」もリリースするなど、野球だけでなくスポーツ界にも広がりを見せる。年間を通し開催したワンマンライブは合計1000人の動員を超える。ライブでは涙を流しながら聴く人が多くデトックスソングとも呼ばれている。2023年11月10日にはプロデューサーにベリーグッドマンのHiDEXを迎えた1stアルバム『Bigfumi 1』をリリース。

公式サイト
https://bigfumi.com/


Live

「Bigfumi Oneman Live 2023 ~それでも生きていくんだ~」

【愛知公演】
▼11月23日(木・祝)ell.SIZE
【東京公演】
▼12月3日(日)SHIBUYA TAKE OFF 7

PICK UP!!

【大阪公演】

SOLD OUT
▼12月10日(日) 17:30
味園 ユニバース
全自由-4600円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以下は1名様まで保護者同伴に限り入場無料。
[問]夢番地■06-6341-3525

追加公演決定!!!

12/17(日)23:59まで先行先着プリセール実施中!

Bigfumi Oneman Live 2024
~それでも生きていくんだ 追加公演~

▼2024年2月25日(日) 17:30
サンケイホールブリーゼ
指定席-5000円(ドリンク代別途要)
※4歳以下は膝上鑑賞に限り無料。但し、お席が必要な場合は有料。
[問]夢番地■06-6341-3525

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