ホーム > インタビュー&レポート > 今秋開催されているKenta Dedachi初の全国ツアー 『Acoustic Live “Cozy notes”Tour』 京都・紫明会館公演をレポート
地下鉄の鞍馬口駅から徒歩5分ほどの場所にあるレトロな佇まいの紫明会館。建物の中も旧時代にタイムスリップしたような雰囲気で、ステージ上に置かれたおしゃれな電球色のライトが温かみを醸し出していた。
開演時間になると拍手で迎えられてステージに登場したKenta Dedachi。椅子に座り、アコースティックギターの弾き語りで1曲目の『Stay with me』を歌い始める。彼の楽曲は英語の歌詞が多いが、この曲は日本語が前面に出ていて季節感漂うリリックが印象的だ。ゆったりとしたテンポにのせて澄んだ歌声を響かせ観客を引き込んでいった。歌い終わると、「京都のみなさん、こんにちは!京都いいですね、空気が違いますね」と笑顔を見せる。「ここもめちゃくちゃ雰囲気ありますね。こんな素敵な場所でライブができて嬉しいです」と会場の紫明会館もとても気に入ってる様子。8人兄弟というKentaは、「京都には家族で来たこともある」と自身の思い出を語り始める。鴨川に遊びにきたときに豆大福を買って食べたこと、妹が川に流してしまったサンダルを自分がキャッチしたことなど、微笑ましいエピソードを明かす場面も。「今日はこんな感じですごくゆる〜くいきたいと思います。"Cozy notes"を楽しみましょう!」と和やかに進行していった。
2曲目の『Dandy Lion』を歌い終わると、改めて今回のライブのコンセプトを説明する。"Cozy notes"という企画のライブは今年5月にも東京と大阪で開催されていて、その際は"時間"をコンセプトに朝から時間の流れを追っていく構成だったが、「今回は僕の好きな、居心地の良い"Cozy Place"を巡りたいと思います」とみんなに伝える。最初の"Cozy Place"は、Kentaの実家の部屋。今は東京で一人暮らしをしているが、それまでは実家の部屋で曲を書いていたそうで、窓の外には金木犀があり今の時期はその香りが部屋に入ってくるそうだ。17歳の時に「お姉ちゃんのウクレレを借りて作った。その時の僕の気持ちがたくさん入ってる曲」と言って歌ったのは『This is how I feel』。ここからアコースティックギターでルーパーにビートを入れて少しテンポアップ。みんなのクラップも加わってくると声量を上げてギターも力強くかき鳴らされた。「秋をイメージして書いたので今の季節にぴったりの曲」という最新シングル曲『Goldfish』では参加メンバーについても触れる。小坂忠の孫でLA在住のシンガーRaineについて、「この曲は英語と日本語が混ざってる曲。彼女はLAに生まれ育っているけど母親が日本人で(英語も日本語も)どっちもしゃべれて声も素晴らしいので、歌ってもらいたくて。偶然にも今年の夏、日本に来ていたタイミングでお願いすることができました」。演奏で参加しているピアノ・スリーピースバンドのRyu Matsuyamaのベース(Tsuru)とドラム(Jackson)の2人については、「リズム隊のお二人、カッコイイですよ。今、Ryuさんと(新しい)曲も一緒に作っている」と嬉しそうに話していた。また、この曲では「DIY好きでなんでも自分で作っちゃうんですよ」と自作のラバー・ブリッジ・ギターで演奏。LAのミュージシャンの間ですごく流行っているギターだという。古いヴィンテージ楽器のような温かみのある音で、バンジョーやハープのようなサステインの無い音色が特徴的だ。さらに、「"Kenta クワイア"にも来ていただきました(笑)」と言って、「よろしくお願いしまーす」の声をシーケンサーで流して場内を沸かせる。これはライブ用に自らの声を何層にも重ねて録音した音声のようだ。そんな"Kenta クワイア"と共にニュアンスに富んだボーカルワークで魅了すると客席から一際大きな拍手が送られた。
『Hunger for Blood』からは次の"Cozy Place"に移動する。そこはLAのダウンタウンから少し離れた場所にあるハッシエンダハイツという住宅街。この曲を歌う前に流していたSE(鳥の鳴き声)もそこで録音されたものだという。今年の始め頃にLAでレコーディングした時、その丘の上にある平家の一軒家にひと月半ほど滞在して、サウンドプロデューサーのKOSENと一緒に作った2曲が『Hunger for Blood』と『I'd hate 2 B a girl like U』。序盤の4曲は座っていたがここからは立ち上がってパフォーマンス。『Hunger for Blood』では徐々に声量も上げてエモーショナルな歌唱となり、『I'd hate 2 B a girl like U』では再びみんなのクラップも合わさって熱気を帯びたパフォーマンスとなった。
中盤に入っての"Cozy Place"は京都。父親が舞鶴出身で両親は同志社大学で出会ったそう。そんな縁ある京都でライブをするのはこの日が初めてとのことで、「京都でライブができて嬉しいです」と喜んでいた。ここで一曲カバー曲が披露されることに。自身が幼少期に影響を受けたというエド・シーランと、最近影響を受けたハリー・スタイルズの2曲のどちらか、「みなさんに選んでもらいたい」と提案する。できれば両方とも歌ってほしいようなスペシャルな選曲で観客もかなり迷っている様子。そこで、Kentaはそれぞれの曲の出だし部分を少しだけ歌ってみせる。その後、観客の拍手の大きさで決定されて歌った曲はハリー・スタイルズの『As It Was』だ。歌い終わると「"Cozy note"風にやろうかなと、めちゃくちゃチルバージョンの『As It Was』でした。初めて歌いました」とコメント。原曲はアップテンポの軽やかなポップチューンだが、ゆったりしたテンポでKentaの繊細な歌声が胸に沁み込んでくる貴重なカバーを耳にすることができた。
ライブの後半では、「僕にとってすごく大切な曲。(この曲を歌う度に)毎回、自分の中ですごくトランスフォームしてる感じがする。(生きているといろんなアップダウンがあるが)それを一個一個乗り越えて行き、後から自分の経験を振り返ると、あれがあったから今の自分があるなと感じられるようになってきた」と話していた『Jasmine』を日本語バージョンで披露。「ジャスミンの花言葉には神様からの贈り物という意味があるそうで、すごく良いメッセージだなと思って(同曲は20歳で亡くなった浅野大儀という青年が書き遺した「Jasmine~神からの贈り物」というインスト曲がもとになっている)。世界中でいろんなことが起きていて、メディアには悲しいニュースがたくさんあるけど。感謝すること、神様からの贈り物を見つけて生活していけたらなと思います」と彼自身の人生観ともとれるポジティブな思いを伝えていたのが印象的だ。この『Jasmine』ではギターは弾かずに、スタンドマイクの前に立って歌う。全身から声を振り絞るようにして力強い歌声を届けると、じっと聴き入っていた観客も大きな拍手を送っていた。
次なる"Cozy Place"はロサンゼルスのビーチ。「この時期のLAは最高なんですよね。暑いけどカラッとしてる。ビーチバレーをしたりして、そこで見た夕陽がすごく綺麗だった」といった思い出を語り、「夕方頃の一番最高のゴールデンアワーのLAのビーチにみんなと行きたい」と誘って歌いだした曲は『Tattooed Hollywood』。ルーパーに刻んだビートに、みんなも手拍子で加わりテンポアップ。Kentaもリズムをとるように体を揺らして歌い、客席からも歓声が上がっていた。刺激的なリリックにドキッとさせられる『Strawberry Psycho』ではルーパーを操作し、熱量と厚みを増したプレイと歌声に熱く揺さぶられる。後半はギターを激しくかき鳴らして、この日一番ともいえるパワフルなパフォーマンスで場内は一段と大きな拍手と歓声に包まれた。
その後、Kentaが「京都でCozyな場所はありますか?」と問いかけると、「植物園」という声が上がり、「植物園良いですね」と返す場面も。さらに、「みんなそれぞれに思い浮かべてみてください、みなさんが行きたい"Cozy Place"はどこですか?そこにこの曲で行きたいと思います」と言って歌ったのは『Fly Away』。途中、「一緒に歌ってくれますか」と声をかけるとコールアンドレスポンスをして、みんなの手拍子とシンガロングが重なり会場はさらに一体感が高まっていった。
ここまでいろんな"Cozy Place"を巡ってきて、「最後は僕の部屋に戻りたいと思います」とKenta。そして本編最後に歌ったのは"Cozy notes"のテーマ曲。「みんなのCozyな場所で寄り添える曲になってくれたらいいなと思います」との言葉を添えて、今回のツアーのために書き下ろしたノスタルジックな曲調の新曲で、ラバー・ブリッジ・ギターをやさしく奏でながら温かく包み込んでくれた。
まだこの場所を離れたくない...。そんな思いが感じられるみんなの拍手が続き、アンコールで歌ったのは『Life Line』。「最後は生音でやりたいと思います」と宣言すると、客席のフロアに降りてきてマイクを通さず歌うサプライズが!まさに純度100%のヒーリングボイスを、みんなの間近でたっぷりと注いでくれたのだった。
このツアーでは今までワンマンライブをしたことがない街をまわり、「すごく心が落ち着く場所が日本にも増えてる感じ。自分のホームが増えている気がする」と話していたKenta。曲間でのMCも多く、「ライブはこういうのが良いね。みんなと話しができて」と言っていたように自身も観客とのやりとりを楽しめたようだ。また、ライブのコンセプトとなっていた"Cozy Place"とは自分にとって、疲れたときにリフレクションタイムができる場所。そこにいると自分のことをもっと知ることができるというようなことも話していた。一方の聴き手にとっては、Kenta Dedachiと共有する空間、その歌声が聴ける場所こそが"Cozy place"なのだと実感させてくれたように思う。――この後、12月には大阪と東京でRyu Matsuyamaと共にバンドセットでのワンマンライブ『ALL-INN JAM with Ryu Matsuyama』が控えている。相性の良さを感じさせるピアノ・スリーピースバンドと組むことで、また新たに可能性を広げたライブになりそうだ。どんなステージで魅了してくれるのか今から楽しみにしていたい。
Text by エイミー野中
Photo by 松本いづみ
(2023年10月23日更新)
Kenta Dedachi
『Acoustic Live “Cozy notes”Tour』
2023.10.14 Sat at 京都・紫明会館
01. Stay with me
02. Dandy Lion
03. This is how I feel
04. Goldfish
05. Hunger for Blood
06. Iʼd hate 2 B a girl like U
07. Jasmine(Jpn ver.)
08. As It Was ※cover
09. Tattooed Hollywood
10. Beau
11. Strawberry Psycho
12. Fly Away
13. Cozy notes テーマ曲
EC. Life Line
【福岡公演】
▼11月3日(金・祝) ROOMS
▼12月3日(日) 17:00
umeda TRAD
全自由-5000円(ドリンク代別途必要)
※5歳以上はチケットが必要。4歳以下はチケット不要。車椅子でのご来場はチケット購入後問合せ先までご連絡ください。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888