インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 1993年の結成から30年――日々を積み重ね 「どんなことしてもええんちゃうか」と笑うGRAPEVINE、 ニューアルバム『Almost there』の衝撃


1993年の結成から30年――日々を積み重ね
「どんなことしてもええんちゃうか」と笑うGRAPEVINE、
ニューアルバム『Almost there』の衝撃

GRAPEVINEのニューアルバム『Almost there』がすごい。結成から30年を経て、今なお一線を走るこのバンドが、こんなにもロックで、ギターの音をガンガンに響かせて、だけれど打ち込みの音も効果的に取り入れてとてつもなく前衛的な音を聞かせてくれつつ、全ての曲の根底にそこはかとなく“GRAPEVINE”らしさを感じる全11曲。先行でリリースされた中でも、電子音とギターがギュルギュルに絡み合う中、飄々と歌われる関西弁の歌詞が衝撃を与えていた「雀の子」を聞いた時から、アルバムに対する期待は止まることを知らなかったのだが、正直アルバムを通して聞くとそのすごさに笑いが止まらなくなったのは個人的な話だ。奇しくもデビュー26周年のその日、大阪に滞在していたGRAPEVINEの3人に『Almost there』の制作にまつわる話を聞くことができた。加えて1993年大阪での結成から30年、彼らのこれまでについてもいいエピソードが飛び出した。大声で言おう、GRAPEVINE、超カッコイイ!!

長くキャリアも積んできて
いい意味で図々しく、厚かましくなってきた


――この取材の前にFM802に出演していらっしゃいましたが、みなさん今日がメジャーデビュー記念日だと忘れていたということが放送中に発覚しまして(笑)。

田中「そうなんですよ。全く忘れてました」

西川「ラジオの台本に日付が書いてあって、今日か? と」

――記念日にはあまり敏感ではない方ですか?

田中「毎年何かしらデビュー日まわりにはやっているんです。今年大阪城野音でライブをさせてもらったのもその流れだったんですけど、"何かやっていること"が恒例になりすぎていてデビュー日を忘れてた。ライブ会場でおめでとうという声もあったけど、アルバム発売のことだと思って普通にサンキュー! って。言われてみれば、ですよね」

――そんなGRAPEVINEのみなさんは全国3カ所での『GRAPEVINE SUMMER SHOW』を終えられて、夏に一区切りといったところだと思うのですが、今年はどんな夏を過ごされたのでしょう?

田中「イベントはちらほら出演したけど全然フェスもなくて、基本的にはレコーディングをしていた感じです」

亀井「あまり夏を感じられていないっていう」

――フェスに出演しなかったのは制作を考えて意識的に?

田中「うん、制作があったからっていうのが一番ですね」

西川「春はずっと制作していて、夏にはいろんな人が呼んでくれるようになっていて。声はかかっていたので、これから出演していこうかというのはありますね。夏はレコーディングと、制作の仕上げをしていたイメージです。いつもは作品自体を2〜3分割して作りつつ、合間にフェスに出演したりするところを、今回は一気にガーっと作ったというところはあります」

――一気にガーっと作ったのは何か理由があったんですか?

西川「そういうモードだったというか。本来のスケジュールで言うと、少し押してたんです。その分制作期間をグッと固めました。とはいえのんびり作らせてもらっているなとも思いますね」

田中「正直僕らのやり方として、これ以上スピードの上げようがないんですよ」

西川「若い人はすごく早いスピードで作る人もいると思うけど、うちはアナログな作業も多いですし」

――確かに、若いミュージシャンの方々にインタビューすると、コロナの自粛中に自宅で制作する術を得たと話している人がたくさんいました。利点はこれまでにないスピード感だと。

田中「そういう作り方はGRAPEVINEではしていないし、これからもしないだろうと思います。んー...やっぱり昔ながらのバンドなんでしょうね。みんなでイェーイ! ってやらないとできないというか」

亀井「みんなで演奏して録りたいっていうのはありますね」

――ということは前作『新しい果実』はまさにコロナ禍で制作をさたこともあって、いろいろ窮屈な思いもされたのではないですか?

田中「前作はまさにコロナ禍ですね。集まれなくて結構制作が遅れました」

亀井「あの時はみんな別々で録って作るの流行ってたもんね」

西川「配信ライブもやっている人は多かったですもんね。そういうテクノロジーは発達しましたよね」

――そういう新しいやり方もある一方でGRAPEVINEはこれまでのやり方を大切に今回も制作にあたられたのだと思うのですが、新作『Almost there』を作り終えて、率直に今どんなお気持ちですか?

田中「おもしろい作品ができたんじゃないかなと思っています。単純にあんまり他の人がやっていないことをやっている自負はあります」

――なるほど。私はこの作品を聞かせていただいて、ものすごくかっこいい! という驚きと...それに加えてかっこよすぎて笑いが止まらなかったといいますか。

田中「おぉ、ありがとうございます」

――こんなに毛色の違うバラエティに富んだ曲が11曲も収録されているのに、全てGRAPEVINEらしさに溢れていて、目から鱗が落ちるような感動がありました。そもそもこのアルバムはどんなところから始まったのでしょうか。

田中「各自家でデモテープを作ってその元ネタを集めて、それをみんなで集まっていじっていくっていういつもの形なんですが、今回は長年キーボーディストとしてバンドに参加してくれている高野勲氏に、プロデュースを頼んでみようと。バンドの中の人ではあるのですが、中の人としてプレーヤー・アイデアマンとして関わる+仕切り役・旗振り役として参加してもらおうと。いつも誰かしらプロデューサーをお願いしたいという話にはなるんですけど、何しろ僕らは曲ありきだし、曲によってホンマにいろんなことをやりたいので、プロデューサーを選出しにくいんです」

――曲ごとにプロデューサーがいてもいい?

田中「うん、それぐらいの感じなんです。例えばこういうサウンドにしたいからこの人に頼むということがしにくい。そういう意味で、僕らの中の事情を知っている高野氏に振ってみるのはどうだろうという意見が出てきて、なるほどいいじゃないかということになりました」

――プロデューサーを迎えることでどんな効果が期待できるのでしょうか。

西川「メンバーや決まった人間だけでやっていると、客観性や意外性がなかったりするんです。全然違う視点のものが入った方が意外なものになるし、自分たちも想像つかない新しいものが生まれる可能性も高くなる。僕らだけでやると停滞することもよくあるんですけど、そういう時にはプロデューサーがいると動かしてくれるし、気づかない部分も指摘してもらえますよね」

――なるほど。高野さんにプロデュースをお願いするにあたって、こういうアルバムが作りたいという話をするのか、それともそういう話ではなく曲を一旦集めて、どういう方向に持っていくかを考えるのか...。

田中「どちらかというと後者ですね。アルバム全体については、最初に話をしてもぼんやりしたものにしかならないんです。曲ごとにこれはこういうことをやろう、この曲はああいうことをやってみようと作っていく形です。高野氏は、事前にデモを聞いたうえでいろんなアイデアを用意してきてくれて。この曲はこういうふうにやってみない? って毎度毎度先回りして提示してくれていたんですよ」

――ふむふむ。

田中「そのアイデアをイメージしてみんなで演奏するんです。イメージ通りにならなくても、おもしろければOKという感じで。高野氏がとっかかりの部分を作ってくれていました」

――イメージ通りにならないというのはやっていくうちに転がっていって、思わず違うところに辿り着く感じでしょうか?

田中「そうですね。そうなんですけど、そもそも真剣にイメージに近づけようとは思っていないっていうところもあります。あくまでもこんな感じって聞いて、それぞれが思い描いた形で始めるだけなんですよ」

亀井「寄せているつもりでも、そうならないことも多いですし」

西川「参考資料に対して、全員が同じ認識をしているとも限らないですよね。特にそれに対する会話をするわけでもないし、おぼろげにスタートしていきますね。そこからぼんやりしていたものが、少しずつ見えてくる」

――それこそすごく時間のかかる作業ですよね。

田中「そうですね。そうやってセッションをやらないと見えてこないし、生まれてこないので、どうしても先ほど話に挙がったデータのやり取りでなんてことは不可能ですよね」

亀井「僕らはおもしろいことが起こったら、そっちに寄っていくというか伸ばしていくというやり方が多いですね。だから偶然性も大事なんです」

――そういう作り方を大事にされているのであればこそ、みなさんのその時々の気分が反映されるものなのでは? と思うんです。前作はコロナの雰囲気とか、そこから前に進んでいく希望みたいなものもあったかなとも想像できるのですが、今作に関してはみなさんどんな気分だったのでしょう?

西川「あまり音楽を作るにあたって、気分は反映していないですね。音楽を作ることが楽しいので、スタジオの外で何が起こっていても関係ないというか」

田中「例えば歌詞はやっぱり世の中のことを書くので、コロナ禍で制作した前作は多少なりともコロナの影響が表れてはいると思うんですけど、音を作る、曲を作る、アレンジすることに関しては、あまり世の中のこととは関係ないかな。どちらかと言えば個人の気分は反映されるかもしれないけどぐらいですね」

西川「最大限スタジオの空気だけが影響を受けます。不機嫌な人がいたら不機嫌な感じになるかもしれないし、停滞も反映されるかもしれない」

――だとすると、歌詞は今の気分を?

田中「今の気分です。...と言い切るのも難しいですけど今の気分を乗せて、最終的にフィクションに、作品に仕上げると言いますか。やっぱり世の中のことを書きたいし、そういう市井の人の気持ちを書きたいですし、自分の気持ちも書きたいです。自分の気持ちを乗っけて世の中のことを書く。でもそれは感情だけだとダメだと思ってるんですよ。あくまでもそれを作品に仕上げないといけないからすごく推敲しますし、時間をかけて歌詞を書きますね」

――今回歌詞を書くにあたって、よく頭に浮かんでいたことをいくつか挙げることはできますか?

田中「曲によりけりですけどねぇ。ただ、前作以前の作品まではもっと寓話的で。フィクションとして寓話的にメッセージを含ませた作り方をしていることが多かったんです」

――前作は神話を取り入れたり。

田中「そういうところから引用してみたりしてメッセージするようなことが多かったんです。今回は割と剥き出しの感情みたいが出ているんじゃないかな」

――その剥き出しの感情を出せたことに要因はありますか?

田中「前作をコロナ禍で作ったフラストレーションから解放されてきて、世の中もそれと同時に変わってきて、そういう時間の流れを肌で感じていたり。プラス、そのフラストレーションはバンドをやる楽しさに反動として返ってきたといいますか」

――へー!

田中「キャリアも積んできていますし、いい意味ですごく図々しく、厚かましくなってきたんですよね。どんなことしてもええんちゃうかと。何書いても、どんなことしてもいいんじゃないかっていう、ある種の開き直りが強かったと思います」

――田中さんがおっしゃったいい意味ですごく図々しく、厚かましくなってきたということを、亀井さんや西川さんも感じられているんでしょうか。

亀井「何をやってもいいっていうのはありますよね。曲も歌詞もどんどんそういうことになっていってるなと」

――バンドとして何をやってもGRAPEVINEになる。

亀井「そうですね。逆に言うと、使い分けないという意味では器用じゃないのかもしれないですよね。でもそれでいいと思ってます。バンドを始めた頃はもっと頭ガチガチでしたけどね。曲でいうと、オールドロックとかブラックミュージックとかに意識は寄っていたし」

田中「特に最初の頃は、バンドはこうあるべきみたいな頭はすごくあったと思いますね。例えばレコーディングするのに失敗したらアカンとか、失敗したらしっかり直さなとかそういう思い込みはありましたけど。それを次々関わってくれるスタッフにそうじゃないということも教わったりして、僕らもわかるようになってきたっていうのがあるし。今はもう単純にいろいろやりたいし、それをやるだけの図々しさにプラスしてスキルもついてきていると思うんです。10年ほど前だったら躊躇していたようなことも、今は平気でやるみたいな感じだと思います」

――ちなみに今は平気でやったこと...今回の『Almost there』に関して、サウンド面ではどんな挑戦をされたんでしょうか。

田中「打ち込みの入れ方も大きいかなと思いますし、あとは、ここ最近はギターを歪ませることはしていませんでした。前の作品は結構そういう意味ではアンビエント色が強い大人っぽい感じがしたと思うんです。今回はガッツリ歪ませたギターをよく弾いていたなという印象がありますね」

――ラストに収録されている「SEX」のラスト45秒ほども、とにかくギターの音がグワ〜ンと脳と耳に残るすごい曲でした。

田中「あ、あれもそうですね」

西川「プロデューサーの高野さんが、多分僕らにそういうことをやらせたかったんだと思ってるんですよ。お前らギターふたりもいるんだから、もっとやれよと。直接は言わないですよ。ここ弾いて? ぐらいの感じで。彼とも一緒にやりだして20年ぐらいになるんですけど、彼がずっと思ってたことなんだろうなと。チャンスがあればやらせてみたいなと思うことを、今回試したんじゃないですかね? 彼はキーボーディストでプロデューサーなんだから、もっとピコピコした音を入れてもよかったと思うんですよ」

――確かにそうですね。

西川「でもそうじゃないんです。ギターで持っていくシーンがすごく多かったなと思います」

――作品全体を通して、すごくギターの音が届いてくるアルバムだなという印象はありました。

西川「それがプロデューサーの思惑だったと思っています」

――今回そういうギターの音がしっかり立ってくる音作りをした手応えはどうでしたか?

田中「時流かどうかわからないですけど、思えば高野氏はいつもジェントルな振る舞いで、そういうことをおもしろがる人だなと。そう言えば昔から、もっと弾け弾けって言ってたなという気がします」

西川「あの人ライブでエレキギター弾いたりするんですよ。ライブ中にギターが3本鳴っていて、キーボードを弾いていないっていうこともよくあって。そういうことを普段から考えてるのかなと思いますよね」

田中「だから彼はいつも言いますね。"ギターバンドなんだし""お前らはロックスターなんだから"って。」

西川「ずっと思ってただけに、チャンスだと思ったんでしょうね(笑)」

田中「俺にやらせてくれるなら、こういうことやってもらうよっていうノリやったんやと思います。アレンジしていく中でわざわざ隙間や空間を作って、僕らが何しようかなって思うのを狙ってみたり」

――それもおもしろい試みですね。ちなみにアルバムには11曲収録されていますが、その中でも曲が完成したことでアルバムの軸になったと感じられた曲を教えてください。

田中「「Ub (You bet on it )」を、最初に手をつけたんですよ。ということは高野勲プロデュースの1曲目になったわけです。それがすごくうまくいった。いいじゃないかこれという手応えが、その後も勢いづけたと思います」

――この「Ub(You bet on it )」は歌詞の中に、前のアルバムタイトルと今回のアルバムタイトルワードを含んでいて"何かを示唆している"と感じさせる曲だったし、この曲がアルバムのトップに来ていることもすごく思いを含んでいるように感じました。

田中「そうですね、この曲の雰囲気や覚悟...自分のケツに火をつける、ハッパをかけるじゃないけど、そういう意識を生んでくれたなと思っています。かつ、前作の『新しい果実』から時間も経過して世の中も変わってきていて、そこで俺らはどうするんだ? ということを歌いたかった」

――そして2曲目に、ぜひお話を聞きたかった全編関西弁歌詞の「雀の子」が続きます。

田中「これもひとつの軸になりましたね」

――関西弁を歌うというのは...やしきたかじんさんや上田正樹さんに代表されるように、すごく"誰かのストーリーを歌っている"ように聞こえると思うんです。

田中「歌詞に関していうと、今までの関西弁の曲は関西弁っていうことを押し出した曲が多かったと思うんです。これは大阪でっせ、すっきゃねん大阪っていうノリの曲が多かった」

――普段日常では使わないような言葉尻も含めて。

田中「上田正樹さん然り、ウルフルズの「大阪ストラット」然り。大阪を全面に打ち出している感じ。僕はネイティブ関西弁ではありますが、この曲は大阪を打ち出しているわけじゃなくて、たまたま曲に関西弁がはまってエンジンがかかったので関西弁で書いただけなんです。曲として聞いている分にはそこまで関西弁っぽさはないと思うんですよ」

――確かに。歌詞で見るのと、聞くのはまた別でした。

田中「だからこそこの曲も軸になったんですけど、そもそも曲がストレンジで攻めた挑戦的なアレンジなので、さぁ歌詞を書くというときに、このストレンジさに見合った...それを後押しするような、助長するような歌詞にしたいと思ったんです。そこに関西弁というアイデアが出てきて、ヤケクソ感も出て」



30年変わらずやってこれたのは
メンバー間での適度な距離感と...


――ここからは少し、GRAPEVINE結成30周年のお話もお伺いできたらと。スペースシャワーTVで結成の地・大阪の街を巡るという特番もこの記事が出るころは放送後になりますが、実際に大阪を巡っていろいろな人に会ったりした中で、思い出したこと、忘れていたことなどはありましたか?

西川「ゆかりのある地を巡るので、まず取材させてくださいっていうミーティングがあったんですけど、30年も前なので人もいない、食べ物もないという状態で。その後頭を絞って思い出したのが、通ってたリハーサルスタジオ。そこはおばあちゃんがいて、休憩時間に飲んでた缶コーヒーにラップをかけといてくれるんですよ」

田中「アメ村にあったスタジオですね」

西川「僕らがおらん間に勝手にラップがかかってるんですよ。怖っ」

亀井「そこのスタジオは特別音がいいとかではなかったんですけど、それがおもしろいから通ってたっていうのはありますね。使い勝手もよかったし、空いてたからよく行ってたのかな」

西川「収録前にスタジオの名前思い出したけど、収録では行きはしませんでした。おばあさんご存命かな?」

――ちなみに、それに似たような...ではないですけど、WikipediaにGRAPEVINEのちょっとしたエピソードが載っているんです。今回はいくつかご本人たちに直接ご確認いただこう! と。

田中「ほうほう」

――ぜひご確認ください。ひとつめ、【田中はもともとギターで入りたかったが、セッションにて歌声を聴いた西原(GRAPEVINE元メンバー)の推薦によりボーカル担当となる。そのため、デビュー前にボーカルの重圧に耐えかね一時失踪している(実際は西原の留守電に辞めたい旨の伝言を残し、その足でフェリーで四国に向かうがその日のうちに帰ってきた)。その後西原による再三の説得により復帰。】とあるのですが...。

田中「うん、そうですね。ほぼほぼ合ってます」

――ほぼほぼ?

田中「失踪っていうほど大したことじゃなかったんですよ。僕元々ギタリストでギターを弾いていくつもりやったんですけど、歌ものもやりたくて、いくつかボーカル募集のバンドにも連絡してたうちのひとつやったんです。それでバンドに入ることになったはいいけど、このまま入ってボーカリストになったら看板背負わなあかんやないかと。一番見られるし、ライブでも喋らなあかんし嫌やなと。で1回辞めようと思いつつ携帯のない時代に家を空けたんです。車に乗って目的もなく海に向かって、フェリーに乗って四国に上陸したんですけど、夜に着いてから車で走ってても街灯も信号もなくて1回止まりたいのに止まれもしなくて」

西川「(笑)! どこ行ったん?」

田中「覚えてないんよ。信号ないから止まられへんのが怖くなってきて。で、帰ったら留守電がいっぱい入っていて、ボーカリストなしでスタジオ入ってるから戻る気があるならおいでって。それで戻ったんですよ」

――一旦家を離れただけ。

田中「失踪は言い過ぎですねぇ。連絡がつかなくなっただけ」

――ではふたつめへ! 【西川は雑誌のインタビューでギター選びの判断基準を聞かれた際に、コストパフォーマンスだと答えている。】と。これは?

西川「それね、本当にそう答えたんですけど、冗談ですよ。それをWikipediaに載せてるのもシャレが通じてないな~。コストパフォーマンスです、って言われたら返しようがないかと思って」

――(笑)!

西川「2000万円のギターを200万円で買えばコストパフォーマンスは高いでしょ。そうやってケムに巻いたんです。楽器はひとつひとつ個性があるものですから、基準は気に入ったら買うだけじゃないですか。なんでそんなこと聞くんかな~と思ってね」

――それがうっかりWikipediaに載ったままになっている、と。なるほど~。では最後は【昔はバンド貯金をしており、そのために銀行に口座も作っていた。】と。それは何のための貯金だったんでしょう?

亀井「デモテープを作るためのレコーディング資金ですね。バンド活動資金にもあてていました」

田中「ライブをするとそこそこ友達を呼べていたので収入があったんですよ。それを全部貯金するようにしていて、多くのバンドはそれをその日の飲み代に変えてしまうパターンだと思うんですけど、それをちゃんと貯めてたっていう」

西川「西原くんがそれまでいろんなバンドをやってきていて、いざ何かしようと思ってもお金がないとかそういうことにならないように、ちゃんとしようと。バンド名義の預金口座は作れなかったので、僕の名義で作ってました。ライブが終わったら僕が翌日に責任を持って三和銀行に入れると」

――ちゃんとしてますねぇ。

西川「銀行で、GRAPEVINE西川さ~んって呼ばれてました」

――こういうエピソードもあっての30年というわけで!

田中「本当、そうですよね」

――ここまで30年変わらずやってこれた要因というのを、どう考えられていますか?

田中「僕らメンバー募集で集まってて、元々友達同士からスタートしたバンドではないんですよ。全然距離感が近くなかった。なぁなぁな感じがないというか。その距離感がよかったんじゃないかとその手の質問にはよく返していますけど、本当のことを言うとみんな才能があったからですよ」

西川亀井「フッ(笑)」

田中「うふふふふふ。30年続くっていうのはそういうことです」

Text by 桃井麻依子




(2023年10月12日更新)


Check

Release

Album『Almost there』
発売中
SPEEDSTAR RECORDS

【通常盤】(CD)
3520円 VICL-65875

【初回限定盤】(CD+DVD)
5720円 VIZL-2228

【VICTOR ONLINE STORE限定セット】(初回限定盤+オリジナル・シリアルNo.入りTシャツ)
9900円

《CD収録曲》
01. Ub(You bet on it)
02. 雀の子
03. それは永遠
04. Ready to get started?
05. 実はもう熟れ
06. アマテラス
07. 停電の夜
08. Goodbye Annie
09. The Long Bright Dark
10. Ophelia
11. SEX

《DVD「STUDIO LIVE 2023」収録曲》※初回限定盤付属
スタジオセッションライブ映像5曲収録
01. SPF
02. Ready to get started?
03. Goodbye Annie
04. Ub(You bet on it)
05. それは永遠

<Tシャツ仕様>※VICTOR ONLINE STORE限定セット
素材:綿100% / サイズ:Lサイズ 身丈73cm 身幅55cm 肩幅50cm 袖丈22cm

Profile

グレイプバイン…1993年に大阪で活動を開始。バンド名はマーヴィン・ゲイの「I heard it through thegrapevine」から命名された。その後東京に拠点を移し、1997年9月にミニ・アルバム『覚醒』でポニーキャニオンからデビューを果たす。1999年には「スロウ」「光について」を収録したアルバム『Lifetime』がチャート3位を記録するスマッシュ・ヒットとなった。2014年にスピードスターレコーズに移籍、これまでに5枚のフル・アルバムをコンスタントにリリースしている。「Gifted」「ねずみ浄土」「目覚ましはいつも鳴りやまない」を含む2021年にリリースしたアルバム『新しい果実』は、オリコン・ウィークリーランキング8位を記録するなど好評を得た。現在は、田中和将(Vo/Gt)、西川弘剛(Gt)、亀井亨(Dr)のメインメンバー3人に加え、高野勲(Key)、金戸覚(Ba)の計5名で活動を続けている。

GRAPEVINE オフィシャルサイト
https://www.grapevineonline.jp/


Live

『GRAPEVINE TOUR 2023』

【北海道公演】
▼10月6日(金) ペニーレーン24
【宮城公演】
▼10月8日(日) 仙台Rensa
【新潟公演】
▼10月14日(土) NIIGATA LOTS
【長野公演】
▼10月15日(日) 長野CLUB JUNK BOX
【福岡公演】
▼10月21日(土) DRUM LOGOS
【広島公演】
▼10月22日(日) LIVE VANQUISH
【東京公演】
▼10月26日(木) LINE CUBE SHIBUYA
【愛知公演】
▼10月27日(金)
Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【岡山公演】
▼10月29日(日) CRAZYMAMA KINGDOM

チケット情報はこちら

Pick up!!

『SOMETHING SPECIAL GRAPEVINE×ZION』

▼12月6日(水) 18:00開場 ∕ 19:00開演
梅田CLUB QUATTRO
[出演]GRAPEVINE/ZION
オールスタンディング-5500円

チケット情報はこちら