インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 10周年を機に導き出したいと願った 「どういうバンド?」という言葉への回答的作品 Helsinki Lambda Club・橋本 薫が掘り下げた“自分/音楽”


10周年を機に導き出したいと願った
「どういうバンド?」という言葉への回答的作品
Helsinki Lambda Club・橋本 薫が掘り下げた“自分/音楽”

「僕の頭ん中覗いてくれよ、と聴いてくれるみなさんにも遂に言えそうです」というのは、ニューアルバムの核になったと本人が語ってくれた曲の解説資料にあった一文だ。Helsinki Lambda Club――2013年7月に結成され、今年10周年を迎えたこのバンドから、アニバーサリーイヤーを盛り上げる3枚目のフルアルバム『ヘルシンキラムダクラブへようこそ』がリリースされた。筆者がこの作品を受け取って一周ぐるりと聴いた後心に残ったのは、どこだかわからない外国の、どうやって遊ぶのかもわからない遊具も混じった大きな遊園地。それぐらい曲がバラエティに富んでいて、いい意味で雑多、ワクワクする気持ちがジワリとくる作品だった。その心に残ったイメージは、コラージュで表現された奇想天外なジャケットのアートワークと相まって、なんてぴったりなんだよ、頭ん中覗かせてくれよ! と思うほど、このアルバムについて知りたくなった。 そしてこの夏、バンドのキーマンでもある橋本 薫(Vo/G)にインタビューするチャンスが到来。ライトに頭ん中について聞こう〜! といろいろ質問してみたら…このアルバムうんぬん以前に、10周年を機に自分と、Helsinki Lambda Clubが奏でる音楽についてとことん向き合い掘り下げていたという事実を知った。これまでバンドを追いかけてきたファンはもちろん、ここでHelsinki Lambda Clubに出会ったあなたにも橋本の真摯な姿勢と、音楽への取り組み方が伝わるといい。ぜひ、一緒に橋本の頭ん中をじっくり覗いてほしい。

ニューアルバム制作前に必要だった
"自分を掘り下げたこと"を振り返る


――そろそろ2023年の夏も終盤ですが、Helsinki Lambda Clubとしてそしてご自身としてはどんな夏を過ごされましたか?

「僕自身はかなり夏が好きで楽しみにしているんですけど、今年は8月にアルバムのリリースがあったので、リリースとツアーの準備でずっとバンドが稼働している状態だったので、夏っぽいことはしていないですね。あと暑過ぎましたね」

――暑かったですよね。例年だと過ごし方でした?

「ここ数年は夏を味わえていませんでしたけど、いつもなら海や山に行ったり、フェスに行ったり。屋外のアクティビティは好きですね」

――それが今年は。

「屋内にいましたね。あ、でもフジには3日間行けましたし、今年は香港のフェスにも出演できたので、いい夏は過ごせたなと思います」

――香港はどうでしたか?

「香港は2回目だったんですけど、イベント自体にお客さんも多かったし前回の出演から3、4年経ってインディーバンドを受け入れる土壌ができあがってきつつあるのかなという肌感がありました。お客さんのファッションを見ていても、歓声の大きさやノリ方の自由さもすごく変化を感じました。香港では政治的にいろいろあったから、カルチャーにも影響があったはずなんですけど、サブスク全盛になってから音楽の活発化は起きているのかなという感じはします」

――みんな音楽をたくさん聴いている感じ?

「聴いているなと思います。香港に限らずアジア全体でそういう感じがします。僕はタイが好きで現地にも友達がいるんですけど、音楽の聴き方として深く深く聴いていっているなという印象があります」

――ちなみに、日本人の音楽の聴き方はどんな印象ですか?

「日本では深く聴いていく人、浅くいろんな音楽を聴く人が極端に二極化していってると思います。その中間層がないというか。それは昔から思っていました。僕らのバンドの活動は自分たちが目立ちたいというより、そういう二極化している人たちのハブ的な存在になれればいいのかなと思うんです。それだけではなくて、アジアと日本のハブにもなりたいし。昔から自分たちはそういう立ち位置にいそうだなぁと思うことはありました。そういう存在っていそうでいなくて、いろいろ経験を重ねて感じて、自分がどうというよりはみんなが楽しむために自分がハブ的になれればすごく循環させることができそうかなっていうのは最近すごく思います」

――なるほど。先ほどこの夏の過ごし方についてお伺いしましたけど、今年はHelsinki Lambda Clubが結成10周年を迎えた夏でもありました。そもそも2013年夏に結成と公表されていたものが、今年、2013年7月4日結成と日にちが詳細になりました。これは、なぜ判明したのでしょう?

「そもそもHelsinki Lambda Club自体、僕が前にやっていたバンドメンバーがごっそり変わったタイミングでバンド名も変えてスタートという感じだったので曖昧だったんです。だけど10周年を迎えるにあたって、もう少し節目感が欲しいなと思ってSNSを遡っていたら、7月4日に結成したというのがわかって。僕、そういうメモリアル的なものに重きを置くタイプじゃなかったけど、みんなに喜んでもらうにはそういう節目の日があるといいのかなと」

――SNS、相当遡られたんじゃないですか(笑)。

「10年前まで遡りました。実は去年の夏にコロナに罹ってまして、その中で来年10年だなぁと思いながらSNSを見返していたんです(笑)。バンドのオフィシャルTwitterで見つけました」

――この夏は10周年ということを謳って活動をされていますが、ここまでの活動を振り返ってみてどうですか? 10年は。

「そうですね、セルフ洗脳をしながらバンドをどうにか続けている節もあるんですが...」

――セルフ洗脳!?

「基本的にはやっていたことを楽しかったって言いますし、この先も楽しいことがあるって言うんですけど、振り返ってみたらマジでしんどいことの方が多かったですね。メンバーチェンジも結構ありましたし、一時期は全然バンドが見えなくなってる時期もあったし。僕がバンドの舵を取ることを放棄している時期もあったので...思い出したくない時期もあるんです。でも思い出したらキツい時に支えてくれた人がいたなとも思うので、最終的には感謝しかないです。...10年、全然平坦ではなかったですね」

――じゃあ今バンドが続いていることは「頑張ったなぁ」と思いますか?

「振り返ってダメになったこともあるけど、続いていることもありますから、続いている部分に目を向けたら頑張ったなとも思うし、ちゃんと向き合ったんだなと思えることが残っているかなっていう気はするんです。10年間たくさんの失敗をしてきて、こうなったらこうなるっていうデータを集めてきたので、現時点ではいろいろ見えているのでいい感じでやれているなとは思いますね」

――そして同じく今年の夏は、約3年ぶりのニューアルバムがリリースになりました。発売から少し時間が経ちましたが、どんな反応が届いていますか?

「今までで一番、本当にいいと思ってくれていそうな『よかったよ』が届いてます。僕もすごく自信を持ってリリースしたものですし、今までで一番自分なりに丁寧に作って世に出したので、ちょっと実を結んでるなと思います。Apple Musicのオルタナチャートで1位を獲れたりもしたんです。ちゃんと頑張れば結果は出るんだなっていう当たり前のことを、10年かかって感じましたね」

――実感として"ちゃんと届いているな"と。

「それを言うとちょっと変わってくるんですけど、ヘルシンキのことを知らない人に届いているのか全然わからないし、もっといろんな人に聴いて欲しいなとも思うんです。そこに関してはずっと悩んでいます。まだこんなもんじゃないとも思っちゃいますね」

――この作品によって"もっと届けたい欲"が生まれた感じですか?

「そうですね。この10年で一番ちゃんと届けたいなと思っているかもしれないです」

――そういうマインドになった理由は言葉にできますか。

「20代の頃は根拠のない自信で自分を突き動かしながらやってきて、でもやっぱり自分の自信のなさも自覚していました。作品も自信を持ってリリースはするけど、完璧ではなくて、自分の中では作品の弱いポイントなんかもわかっていて。振り返ると、僕は制作に対する集中力がなかったなと思いますし、そこにちゃんと目を向けられていなかったところに粗さが出ていて、100%の気持ちで人に提示できなかったのはあるのかな。勝負に出たいけど、ちょっと待ちたいみたいなジレンマを抱えたまま10年やってきた気がします」

――すごく自己分析されているんですね。そのウィークポイントにも目を向けられたからこそ、10年で一番丁寧に作ったと。

「はい。そこはすごく意識しました」

――制作を始める前に、自分に向き合う作業をされたんですね。

「そうですね、マインドの作り込みは、制作前も制作中も個人的にすごく大事にしてやっていました。作曲は自分と向き合うある種セラピー的なところもあるし、1曲作るごとに何か自分の中で答えが出たり、疑問が生まれたりの積み重ねでした」

――そんなアルバム『ヘルシンキラムダクラブへようこそ』を何周も聴かせていただいて、私の心の中に残ったアルバムのイメージが、恐ろしいほどジャケットのアートワークとピッタリで。

「あ、よかったよかった!」

――あまりにもシンクロしたので驚いたんですけど、聴き終わった時にそもそもこのアルバムはどんなところから始まったのかが知りたくなりました。

「始まりの始まりは、10周年の節目を見据えてアルバムを作りたいねっていうところですかね。僕の中で10周年がキーワードになっていたのは確かです。これまでの活動の中で、ヘルシンキってどういうバンドか紹介しづらいというのはよく言われてきました。正直自分でも説明できないままずっとやってきたので、ここでひとつ答えを出したいなと思ったんです。なので、アルバムを作る前にヘルシンキってなんなんだろうっていうことを考えて、ヘルシンキと自分に俯瞰して冷静に向き合うところから始めました」

――俯瞰して自分に冷静に向き合って、掘り下げていくのは10周年だからこそできたことだった?

「それもさっきの集中力の話とつながると思うんですけど、僕は割と自分を掘るタイプの人間だとは思うんです。でも集中力が続かずに掘っている最中にいろんな方向に行ってしまうが故に、核が見つからない状況が続いていて。そういう部分も初めて自覚してからスタートしました。10年のたくさんの失敗を振り返った時に、その失敗に共通していることはなんだろう? と考えて、それが自分の内面に行き着く部分があったりして。とにかく自分を自覚してからがスタートでした」

――自分を自覚することは、今回のアルバム制作のどんなことのために必要だったんでしょうか。

「それあまり考えなかったかもしれないです。でも僕らの曲っていろんな曲調がある分、そこをつなぐ芯が必要だなと常々思っていて。改めてアルバムを作るにあたって、音楽性はいろんなものをやると自分で決めていたので、あと必要なのはマインドだなということは自覚していました。曲調はどれだけ違っても、同じマインドがあるというのが作品の強度として必要だなと思ったのは大きかったです」

――うんうん。その自分を掘り下げる作業の中でできたのが、この「リファレンスリスト」ですか?

◯アルバム全体のリファレンス、影響、テーマメモ

コンプレックス、パラッパラッパー、ルーツ、アトランタ(ドラマ)、仏教、アジア、タイ、Steve Lacy, フレンズ(ドラマ)、バラエティ番組、自然、バランス、サザンオールスターズ、WBC、ジャルジャル、Everything Everywhere All At Once、コロナ禍、旅、80年代、オードリー、L'Arc~enCiel、ディズニー、アンミカ、バビロン(映画)、ディザスター・アーティスト、ビートルズ、JAWNY、はっぴいえんど、キングギザード、スチャダラパー、De La Soul、Arthur Lyman、The Flaming Lips、William Onyeabor


「それに関しては、自分の掘り下げとアルバム制作の相互に作用し合っているものとして生まれました。常にいろんなものから影響を受けますし、常に自分を疑っているというか。信じてもいるんですけど。いろんなものから影響を受けてこのリストをアップデートしていくんです。それが音楽にもそのまま出てるかなと。今回は、丁寧なっていうところのひとつかもしれないんですけど、音楽だけじゃなくいろんなカルチャーとかからのリファレンスもリストにしているんです」

――パラッパラッパーとか、仏教とか、もうホントいろいろですよね。

「いろいろですね。自分のルーツを掘って掘って、今回のアルバムにマインドとか、確固たる軸みたいなものに必要なものを掬い上げてリスト化したんです。リスト化すると再確認できるじゃないですか。再確認することでまた、セルフ洗脳じゃないけどまた影響を受ける。自分にもこういうよさあったよねとか。そういう意味ではかなり役立ちましたね」

――なるほど。このリストを見て、ミュージシャンやアーティストの名前が挙がっているのはすごく納得なんですけども、コンプレックスとか、先ほども挙げたパラッパラッパーや仏教、そして一番びっくりしたのはアンミカさんのお名前でした。え? なんで? って。

「アンミカさん最高ですよね。僕大好きなんですよ。玄関にアンミカさんの日めくりカレンダーをずっと飾ってあるほど好きで」

――アンミカさんのどういった部分にそんなに夢中になっているんでしょう。

「あのポジティブさって人生経験からのものだし。優しさでもあると思うんです。言霊的な部分も持たれている方だし、生き方や発想の仕方とか、めちゃくちゃ尊敬しています。あの裏付けのあるポジティブさはヘルシンキの陽の部分とも通じる気はするんですよ。あと、僕自身がアンミカさんから影響を受けているので、リファレンスリストに入っています」

――じゃあリストに入っているものは、なんらかの曲には影響を与えているんですね。

「めちゃくちゃ遠いところかもしれないけど、挙げたものはこういう要素が自分にはあるなという感じで、作品に影響は与えていますね」

――ちなみに、アンミカさんテイストあるなと自覚されている曲を教えてもらえますか。

「アンミカさんが一番出てるの...やっぱり「Be My Words」ですかね。すごくポジティブな曲なので、表アンミカさんかな。それで、「Chandler Bing」が裏アンミカさんって感じでしょうか。どちらもポジティブではあるけど、表裏がある感じです」

――資料にも「Be My Words」は"今までで一番、「ポジティブな曲を書きたい」と意識して書いた曲"とご自身で解説されていましたもんね。同じく資料で気になったのは、"今作は説得力というのも大事にしたかったので、曲によってなぜその楽器を使うのか、なぜその言葉を使うのか、などマインドに関わる部分はなるべく丁寧に考えて選びました。" という一文でした。今回説得力を大事にしたかったのはなぜだったのでしょう?

「いろんな曲調がある分それをひとつのバンドとして提示するためのものが説得力ですね。僕、自分が音楽をやりたいと思ったのは"強度の高い音楽"だったので、そのためには説得力が大事かなと。ヘルシンキは批評に弱いバンドな気がしていたんです」

――誰しもそう、という気もしますけど...。

「ははは。ただ、突かれればほころびはいっぱいあったと思うんです。でもそれは楽しいことをしたいとか実験的でもあって、ファッション的というか、クローゼット開けてこれとこれと組み合わせて面白いねっていう感覚だったんです。今までは。でもこれからはバンドをもうひとつ推し進めていくという意味で、必要になるのが説得力とか強度なのかなと思いました」

――説得力を重視して、丁寧に作るということを意識したことで得られたことはありましたか?

「内面的な部分で言えば、自信にはつながったかな。そういうことがチャート1位に結びついたのかなと思います」



バンド10周年のアルバムだからこそ
できたことがたくさんあった


――実は事前にいただいた資料には橋本さんによる超詳細な全曲解説がありまして、これなかなか取材前の資料としていただけるものではないんです。

「あ、そうなんですか? ないんですか? マネージャーと頑張って作ってよかったです」

――これをまるっと掲載すべきと思うほど詳細で、面白く拝読しました。こういったインタビューでは時間も限られていて特にアルバムだと1曲ずつのエピソードをお伺いするのは難しいんです。

「そうですよね」

――あの資料はなかなか公開するのは難しいので、今回は橋本さんにアルバムから3曲ピックアップしていただく形でショート解説をお願いできないかなと思っています。まずは今回のアルバムの核になった曲、そして最大の難産だった曲、最後に10周年だからこそできた曲を挙げていただけますか?

「いいですね。まず核からいきましょうか。どれも核なんですけど、んー...どれを選ぼうかなぁ。あれも核だよなぁ。んー。ちょっと脱線しますけど「バケーションに沿って」は僕なりに数字として結果が出せるような曲を作りたいなと外に向けて作った曲ではあるし、僕なりのそういう覚悟で書いた曲なので、核と言えば核なんですけど...いや、「Chandler Bing」にします」

――(笑)。理由を聞かせてください。

「自分を知ってもらうって、人を知る上でも大事かなと思うようになったんです。そういうことを考えて、自分のマインドを知って欲しいなという思いを外に向けて書いた曲ですね。ただそこに全振りするのではなく、言葉選びで誤魔化しちゃうのも僕っぽさもあるので、そういう前に進めた部分と変わらない部分の自分が共存している曲なんです。だから自分軸で考えると、この曲が核になったかなと」

――制作前に自分を掘り下げたことか、きちんと具体化された曲なんですね。

「そうですね。アルバムの中でも初期にできた曲ですし。あと曲調自体もすごく多ジャンルで境界のない感じというか。僕、東南アジアとか大好きなので、そういうトロピカルな感じも出しつつ、でも元々憧れていた欧米のカルチャーの要素を入れて。そういうまぜこぜ感はヘルシンキを組んだ時からやりたかったんですけどなかなかそれを形にできなかった10年だったので、曲調的にもやりたかったことがバシッと出せた1曲になりましたね」

――ふむふむ。じゃあお次は生み出すのに苦労した曲を。

「「バケーション〜」も苦労したんですけどねぇ」

――J-POPの要素を落とし込むという点で?

「そうです。どこまで寄り添えるんだろう? とか。どれが難産だったかなぁ。「収穫~」もしんどかったなぁ」

――そのしんどかったっていうのは、アイデアをうまくメロディーにできないとかなんでしょうか。

「僕、普段メロディーは一切迷わないんですけど、この「収穫のシーズン」はめちゃくちゃ迷いましたね。Aメロのメロディー、めちゃくちゃ迷いました。制作時はその原因が掴めなくて苦労したんです。自分が今までキャッチーとしてきたメロとは違うメロで、だからなのか、このメロにちゃんと僕のマインドは乗っかっているんだろうかと悩みました。多分自分の思いを乗せやすいメロディーラインがあるんですけど、この曲に関しては全然それがなくて。今回はレゲエダブ的なアプローチをしっかりしたいというところだったので、そこの硬派さっていうのを失いたくなかった分、めちゃくちゃ悩みました」

――ご自身の解説文にも「作り終えた後も自分の理解が追いついていない曲です」と書かれています。

「書きましたね〜。ただライブでめちゃくちゃ披露したので、ライブを繰り返してアルバムに入ってようやく見えた感じはしますね」

――それは自分に馴染んできたという意味で?

「そうですね。そういう意味では作り終わってからも難産だったかもしれないです」

――なるほど。そして最後、10周年だからこそできた曲というのは。

「「バケーションに沿って」ですかね。自分なりの人に対する優しさやサービス精神が、今までよりは音楽に関しても出せたし、かつ10年かかって技術面も含めて成長できたので、ヘルシンキなりの下地の上にトッピングとしてJ-POPの要素やひらけた感じが乗っかっているというところに持って行けたのは、これまでの10年いろんな人との出会いや経験あってこそのことだし感謝だなぁと。できればみんなが喜んでくれる曲を作りたいって素直に思うんです。そういう意味で、今回が一番大人になれたんじゃないかなと思います。できればこの試みを肯定的に捉えてもらえるとうれしいですね」

――3曲、ありがとうございます。ちなみにこの10年の集大成とも言えるアルバムに、『ヘルシンキラムダクラブへようこそ』と付けたのは、どんなことを担わせたかったのでしょう?

「これも数年前なら付けなかったタイトルだと思うんです。10年やってきて、基本感謝しかなくて。尖ったことはもう言わないけど、10年経ってみなさんにようこそ! 来てください! と言えるような感覚が得られたのが大きいかな。とはいえ、バランスがしっちゃかめっちゃかな曲が多いので、ばっちり完成はしていないよというマインドがディズニーランドにも近いなと思っていて。このアルバム自体がテーマパークみたいにも思えたので、みなさんここで遊んでくださいという意味もあるし、これがヘルシンキラムダクラブですよっていう提示でもあるし。みなさんへいろんなようこその意味がありますね」

――10周年のアルバムとはいえ、ようこその意味があるならヘルシンキ入門としてもいいですよね。

「僕はもう客観性が失われているので、ちょっとわからなくなってきてますけど(笑)、名刺がわりの一枚としても楽しんでもらえたらと思います」

――そして10周年のツアーも始まっています。

「ツアーもやりたいこと考えていたら準備が大変でした。全15ヶ所でメンバー以外の人にも参加してもらったりするのでツアーと言いつつその日その日でメンバーも少し変わったり、セトリもそうですし、内容がいろいろなので、どこに来てもらっても楽しいと思います。今までで一番想像がつかないツアーですね」

――それこそ「ようこそ」ですね。

「そうですね。ホント、オープンな気持ちでいるので、みなさんもオープンな気持ちで来てくれたらうれしいなと思います」

――オープンな気持ちで大阪公演に伺いたいと思います。最後に、個人的に次の10年はどんなことを目指していきましょうか?

「次の10年かー。20代の時は割とずっと絶望...というか、何を楽しみにしていいかわからないところがあったんですけど、このアルバムを作って自分の中で整理をして、ようやくバンド活動のスタート位置に立てた気がしているんです。だから何やっても楽しい気がしています。僕個人としてはアジアや海外へ向けてのアプローチを楽しみにしていますね。アジア各国の音楽シーンがすごく盛り上がってきているので、外に出ていくのがヘルシンキにとっては健全なのかなという気がします。いろんな形でライブもしたいし、バンドも成長を続けて、やりたいことをやれる基盤が作っていけたら最高ですね」

Text by 桃井麻依子




(2023年9月 1日更新)


Check

Release

3rd Album
『ヘルシンキラムダクラブへようこそ』
発売中

【LP】(2枚組LP+CD)
6050円
HAMZ-021

【配信ダウンロード】
2444円
Hamsterdam Records/UK.PROJECT

《収録曲》
01. 台湾の煙草
02. Chandler Bing
03. バケーションに沿って
04. Horse Candy
05. 愛想のないブレイク (with FORD TRIO)
06. 収穫(りゃくだつ)のシーズン
07. Golden Morning
08. 触れてみた (feat. 柴田聡子)
09. Be My Words
10. ベニエ
11. See The Light

Profile

ヘルシンキラムダクラブ=橋本薫(Vo/G)、稲葉航大(B/Cho)、熊谷太起(G)からなるオルタナティブロックバンド。2013年7月4日に千葉で結成、2014年にUK.PROJECT主催のオーディションで応募総数約1000組の中から最優秀アーティストに選出され、同年12月にシングル「ヘルシンキラムダクラブのお通し」でインディーズデビューを果たす。2016年10月には“ニューオルタナティブ”と謳った1stフルアルバム『ME to ME』、2018年12月に2ndミニアルバム『Tourist』を発売した後、2020年11月に2ndフルアルバム『Eleven plus two /Twelve plus one』を発表した。コロナ禍〜2023年にかけては積極的な配信リリースを続け、15分を超える楽曲『NEW HEAVEN』のリリースやサンリオピューロランドにてワンマンライブを果たすなどトッピクス満載の中、この8月に3rdフルアルバム『ヘルシンキラムダクラブへようこそ』を発売したばかり。中毒性の高いメロディーや遊び心のある歌詞、実験的なサウンドは、ある曲ではガレージロック、別の曲ではファンクやソウルと実に多彩で、音楽的ジャンルや文化の垣根を越える不思議な魅力を持っている。

Helsinki Lambda Club
オフィシャルサイト

https://www.helsinkilambdaclub.com/


Live

『10th Anniversary Tour “ヘルシンキラムダクラブへようこそ”』

※8月公演は終了

【香川公演】
▼9月1日(金) TOONICE
【岡山公演】
▼9月2日(土) CRAZYMAMA 2nd Room
【福岡公演】
▼9月3日(日) The Voodoo Lounge
【岐阜公演】
▼9月9日(土) yanagase ants
【北海道公演】
▼9月15日(金) SPiCE
【宮城公演】
▼9月16日(土) 仙台MACANA
【新潟公演】
▼9月17日(日) GOLDEN PIGS RED STAGE
【石川公演】
▼9月18日(月・祝) 金沢AZ
【愛知公演】
▼9月22日(金) 名古屋クラブクアトロ

Pick Up!!

【京都公演】

Sold out!!
▼9月23日(土・祝) 18:30
磔磔
オールスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可、小学生以上は有料。
[問]清水音泉■06-6357-3666

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:244-264
▼9月24日(日) 18:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可、小学生以上は有料。
※販売期間中は、インターネット(PC・スマートフォン)のみで販売。1人4枚まで。チケットは、9/17(日)朝10:00以降に引換えが可能となります。
[問]清水音泉■06-6357-3666

【東京公演】
▼9月26日(火) Spotify O-EAST

チケット情報はこちら