インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > キーワードは“フジロックで戦える強い曲” 超攻撃ライブアンセムを備えたニコタンの夏 NIKO NIKO TAN TAN インタビュー


キーワードは“フジロックで戦える強い曲”
超攻撃ライブアンセムを備えたニコタンの夏
NIKO NIKO TAN TAN インタビュー

音楽×映像×アートを飛び越えた作品を発信し続けるクリエイティブミクスチャーユニット・NIKO NIKO TAN TAN。OCHAN(オオチャン/Vo・Synth・etc/作詞・作曲・編曲/イラスト)、Anabebe (アナベベ/ドラム/編曲)、そして映像・アートワークはDrug Store Cowboy(ドラッグストアカウボーイ/映像/アートディレクター/モーショングラフィック)という、音楽担当2名と映像担当1名を擁し、音楽のみならず映像をはじめとしたアートワークに至るまでユニット内で自作するなど独創的なスタイルを確立している。パそんな彼らがこの夏に放ったデジタルシングル「Jurassic」は、聞く者の鼓動も衝動も一緒くたにして駆り立てるメロディー&ボーカルと、太く強靭なリズムが体の芯に響いてくる1曲だ。リリースを前に「初のフジロックRED MARQUEE出演前に放つ NIKO NIKO TAN TAN流、超攻撃的なライブアンセム」と宣言した攻めの新曲について、取材時は出演直前だったフジロックへの思いなど、OCHAN・Anabebeのふたりに話を聞くことができた。

ライブはフィジカルとエレクトロニクスのぶつかり合い


――(この取材時)週末は大阪でジャイガへの出演でしたが、どんな景色が見られたでしょうか?

OCHAN「楽しかったですね。暑かったかな」

Anabebe「と言いつつ意外と涼しかったというか」

OCHAN「野外だと思って行ったら、俺らは屋内のステージだったんですよ。...よっしゃと」

――よっしゃ(笑)。暑いですもんねぇ。

OCHAN「いや、それだけじゃなくて、うちらパソコンを使ってライブをするのでね」

Anabebe「めちゃくちゃ熱に弱いんですよ」

OCHAN「去年の夏に結構ヤバいライブをしちゃったんですよね」

――ヤバいというと?

OCHAN「パソコンが止まって」

――えー! それは文字通りヤバい! だって生命線ですよね。

OCHAN「ですね。全部の音がなくて、ドラムのソロでね?」

Anabebe「15分ぐらいやって、パソコン回復待ちするっていう」

OCHAN「とにかくあーだこーだ回復を試みてドラムソロをやり続けてもらっても結局回復せず、それもこれも熱のせいで」

――それは怖いですね...その後の夏フェスはどんな対策で臨んだんですか?

OCHAN「対策としてはパソコンにファンをつけたり、冷えピタをつけたり」

――またアナログな! そういう面でいうと、会場が屋内っていうのは「よっしゃ」ですね。

Anabebe「安心しましたね。でも外でやれるなら、それはそれで単純にテンション上がりますよね。野生的な本能が」

OCHAN「確かにね」

――そして今週末はフジロックへの出演が迫っています。もう目前ですね。

OCHAN「イメトレしまくってますね。去年は苗場食堂で、今年はRED MARQUEEです。まぁ屋内なような屋外なようなって感じですよね。直射日光が当たらなければ、ライブ的には問題ないかなと思ってます」

――ステージの想定というか、どんな感じでイメトレを?

OCHAN「セットリストは決まったので、流れとかをイメージして」

Anabebe「この間「Jurassic」っていう新曲を出したんですけど、その入りでお客さんを煽って、端っこまでみんなが手を上げていてくれるっていう姿をね、想像して」

――RED MARQUEEは屋根もあって奥に細長い感じでもあるし、お客さんがずらっと手を上げてくれたら壮観ですよね。去年サマソニやフジに出演して、今年もオファーが来るというのは、この1年の自分たちの作品や活動が認められているということの現れでもあると思うんです。そういう実感はありますか?

Anabebe「うーん、そこまで実感はないかな」

OCHAN「自分的にもあんまり変わらないかなと思います。でも結果的にフジロックに決まったとか曲が前より聞かれているっていうのを見て、それは感じますかね」

――聞かれているというのは再生回数とか数字的なことで?

OCHAN「うん、そうですね。あとはお客さんの数とか、バンド名を知ってるとか聞いたことあるっていうのを友達づてでも聞こえてきたりとかで、去年よりは広がっているのかなっていうことは感じますね」

――NIKO NIKO TAN TANは楽曲はもちろんですけど、ライブがすごく評価されていると思います。俯瞰して見たとして、自分たちのライブの魅力ってどんなところにあると思えますか?

OCHAN「ステージでのパフォーマンスを俺らふたりでやってるっていうことだと思います。どれだけ広いステージだろうと、ふたりでやってるんで。シーケンスを流して、ダンスミュージックのような音の出し方をしてるんですけど、そこに暴君ドラムがいるこのフィジカルと、このエレクトロニクスのぶつかり合いがね。うまく混ぜることができてるのかなと思います」

――ちなみにNIKO NIKO TAN TANが今ライブで表現したいことっていうのは、ふたりで言葉にして共有したりはしているんですか?

Anabebe「あんまりしてないですね」

――そうなるとライブってどうやって作り上げているんでしょう?

OCHAN「付き合い長いんで、どうしたらかっこいいものができるかっていう認識は一緒なところがあって、細かく言うと、各々で結構ライブ映像を見るんですよ。あそこで入りこんな感じにしようかとか、こんな煽りにしようかとか、気づいたことはスタジオでちょっと話をしたりしてるんですけど、広い意味で"こう見せようよ"みたいなことは、言葉にしたことはないですね。とにかくライブとかイベントとか一緒の気持ちで出てるので、出る時はかまして行こうかと」

Anabebe「バンって感じで」



超攻撃的ライブアンセムのキモは"重いビート"


――この原稿が出る時にはフジロックは終わっているんですが、どんなステージを想定されていますか?

Anabebe「熱い感じで!」

OCHAN「ね? こんな感じなんですよね(笑)」

――まぁ、それでわかっちゃうぞと。

OCHAN「あ? なにそれ? とは思わないですね」

Anabebe「ステージ立ったらホンマに熱いんで」

――その熱いライブですが、6月以降、ものすごく本数を重ねているというか、超過密スケジュールですね。

OCHAN「ホンマに。ヤバいですよね」

――この夏の怒涛のライブ出演で今後のライブに生かそうと思っていることなどはありますか?

Anabebe「だいぶアレンジは変わってきたよな?」

OCHAN「そうですね。まぁ、この夏の山場がフジかなと思ってきたので、そこに向けてブラッシュアップしていくかっていう感じで考えていました。あと、新曲が出たので、山場あたりで仕上がっている感じにしたいなということで、Jurassicはかなり早い段階からライブで演奏していたんですよ」

――新曲である「Jurassic」のリリースは7月の中旬でしたが、ライブでやり始めたっていうのはいつ頃から?

OCHAN「6月の半ばくらいかな」

――手応えはどうでしたか?

Anabebe「リリース前にしてはすごくよかったよな」

OCHAN「うん、全然よかった感じです。この曲は早い段階でライブでやるっていうのは決めてましたね」

――今日はその「Jurassic」についてお伺いしていきたいと思っているのですが、まずは曲の出発点をお伺いしたいと思っています。先にライブやフジロックについてお話を聞いたのも、「Jurassic」の資料には"初のフジロックRED MARQUEE出演前に放つ NIKO NIKO TAN TAN流、超攻撃的なライブアンセム"っていうキャッチコピーがドカンとありまして。すごく明確なコピーだなと。

OCHAN「個人的には出発点としてフジロックはイメージにありましたね。RED MARQUEEで戦える強い曲を作りたいっていうのがありました」

――新曲を制作するにあたってイメージにフジロックを置いたというのは、去年の出演で感じるものがあったんでしょうか。

Anabebe「フジってやっぱり歴史が違うというか、あらゆる日本国内のフェスのベースを作ってきた場所だと思うんですよ。そこに出るっていうのは、ミュージシャン...」

OCHAN「冥利に尽きる?」

Anabebe「そうです!」

――なるほど。まずフジで映える曲を! という出発点から、どんなふうに制作は進めていったんですか?

OCHAN「実は結構な曲数のデモを作ったんです。最初数曲作って、それはのちに「琥珀」っていう曲になったりしてるんですけど、どちらかというとミドルテンポでメロウなやつが多かったんです。そういう感じの曲を作ってると、逆に激しいのを作りたくなるんですよ。元々そっちの曲が好きなのもあるし。で、まず1曲作り始めたのが「Jurassic」で。初めからJurassicっていうタイトルはどれかの曲にはつけたいなと思っていたこともあって、よしこの曲につけようって作ったら、自分的には結構手応えがあって」

――デモの段階で。

OCHAN「そうです。これはなんかいい匂いすんな、みたいな。で、後々Anabebeとかメンバーにいろんな曲を送って、どれが好きやった? って聞いたら、みんな「Jurassic」がいいと」

Anabebe「プンプンいい匂いしました」

OCHAN「なんかAnabebeも叩いてて気持ちよさそうな曲、かつ攻撃的で、で俺も好きな感じっていう曲を作りたいなと思ってたので、それがたまたま「Jurassic」だったっていう感じですね」

――曲が決まってからの肉付けっていうのはどういうふうに進んでいくんですか?

Anabebe「まずはスタジオですね」

OCHAN「だね。入って、ある程度の枠組みを準備しておいて、ビートはこんな感じでってグッシャグシャにしてもらうんですよ」

――グッシャグシャ!?

Anabebe「デモにドラムの音は入ってるんですけど」

OCHAN「一応、打ち込んではいて」

Anabebe「これをぶっ壊してくれと」

OCHAN「オーダーするんです」

――こと「Jurassic」という曲に関して言うと、あの体に響いてくるようなビートの感じが印象的なだけにそのぶっ壊す作業ってすごく大事ですよね。

OCHAN「うん、大事ですね」

――そのぶっ壊し方としてAnabebeさんが気をつけたこととか工夫したことって教えていただけますか。

Anabebe「そうですね、重さ。ビートの重心の低い感じの重さはすごく気をつけましたね」

――それによることの効果というか、狙いは?

Anabebe「デモを聞いた段階で攻撃的な曲にしたいと思っていたんです。ビートを重くすると、ガッとね」

OCHAN「なんかビートが重いと深みが出るよね」

Anabebe「うん、出るね」

OCHAN「Anabebeの好きな感じでもあり、俺の好きな感じでもあるんですけど、ブラックミュージックとかあの辺のラインって、ドラムとベースが最重要じゃないですか。タイム感とか。普通に聞いただけだとわからないような絶妙な位置で叩くことをAnabebeはすごく大切にしていて、彼は計算してやっているっていうよりは叩いたらそうなっているっていうこともあって」

Anabebe「うん、確かにそうですね」

――それはいわゆる間、ですよね。

Anabebe「間です」

OCHAN「言葉で説明するのは難しいところもあるんです。芸人さんにもそういうのってあると思うんですけど。聞いたらなんか違うっていうやつですね。それが結構大事だと思っていて、「Jurassic」もギターはあんまり入ってないですけどロックっぽい...あれを一般的な感じで叩くのと、Anabebeが言ってる重い感じで叩くのって、曲が全然違ってくるんです」

――なるほど。

OCHAN「レコーディングしてドラムを叩いて、その後微調整してもらうんですね。始めはそういうドラムの意図を伝えずにエンジニアさんに調整してもらったら、しっかり合わせてくれたんですね。あれ? 意図していた感じと違うぞと」

――エンジニアさんの仕事としては、それが正解なわけですよね。

OCHAN「うん、正解です。むしろちょっともたついているところも直してくれているぐらい。それで最初聞いた時は...」

Anabebe「びっくりしましたよね」

OCHAN「全然違うんですよ、曲が。それを俺らの意図通り、元に戻してもらって今の音源になったんですけど、そういう間の部分をすごく大事にした曲ですね」

――間ってセンスひとつだから、言葉で伝えてできるものでもないですもんね。まずは"壊すこと"からスタートして、重ねていくっていう感じなんでしょうか。

OCHAN「そうですね。叩いたのに合わせて、ベースを考えてってレイヤーしていく感じです。中でも重要視したのがドラムなんですけど、そもそもNIKO NIKO TAN TANの曲はドラムが大事です。今までそうやってきたっていうのと、俺がAnabebeのドラムが好きだっていうのがあるので、俺はすごく大事にしてます」

――さっきフジで披露することを前提に作ったとおっしゃってましたけど、そういうこと自体は制作を始める前に言葉にして共有されているんですか?

OCHAN「いや、しないですね。意図的にしないです」

――意図的にしない!?

OCHAN「Anabebeはごちゃごちゃ言うと考えすぎちゃうんで、全く言わないです」

――あはは! ご自身ではどうですか?

Anabebe「どうしようどうしようって考えすぎて、プレイにまで影響が出るタイプです」

OCHAN「なんか縮こまった感じ? 置きにいく感じになるんで、豪快さがなくなるんですよ。前にそういうことがあって、面白くなくなったからそうじゃないよと。だからイメージはあったとしても、最終の微調整でニュアンスを出したりするっていうのを採用してます」

――でも曲のイメージが最初にあるのだとしたら、言葉で伝えるのが確実で早いっていう気もするんです。そこを言葉にせず共有できているのは、デモの段階で結構しっかり固まっているというか作り込まれているからなんでしょうか。

OCHAN「そうですね、その時点で7割ぐらいはできてますね。ドラムのノリがどうとか、フレーズはこうとか、音数多くとか。それをとりあえず適当にやる」

Anabebe「その"適当"が大事なんですよ」

――それってデモが7割ほど完成しているからこそできることですよね?

OCHAN「いや、でも結構キツイと思いますよ」

Anabebe「(うんうんうん)」

OCHAN「俺もそこまで縛られたくないから作りすぎないようにはしてるんですよ。だからデモはギリギリのラフさを保つように意識して、まずはふたりの作業にしたいと思ってますね」

――そうしてできた楽曲をライブでの演奏を重ねてブラッシュアップしてきたとおっしゃっていましが、今現在のブラッシュアップ度としてはどうですか?

Anabebe「かなり馴染んできた感じはありますね」

OCHAN「ですかね。体に入ってきてるっていうのと、お客さんも覚えてきてくれていますね」

――フジでの披露も含めて、ライブを経て「Jurassic」がどう変化していくのかもすごく楽しみです。フジが終われば、9月の東京・大阪でのワンマンへと続いていきますね。

OCHAN「そうですね。映像も入って、フルセットの長尺でやる機会がワンマンなので、いつもの感じやフジの感じとはガラッとセットリストも変えてやりたいし、新鮮かつ、NIKO NIKO TAN TANのフルのライブとはこういうものだ!っていうのを見せたいですね」

――それってフジに出た後変わったりもしそうですね。

OCHAN「変わ...るんじゃないですかね。常に変わるから(笑)。今年、2023年の集大成を見せられたらと。あれ、なんか今年の集大成見せるの早いですかね? 一旦夏フェスの山場を超えて、やってきたことの集大成を見せる感じかな」

Anabebe「いろんなものを経て来て、面白いものが見られると思いますよ」

――そしてかなり早めのお伺いではありますが、来年に向けてはどうですか?

Anabebe「主要都市でツアーやりたいですね。東名阪プラス、札幌と福岡と沖縄行きたいですね」

――食べ物美味しいところばっかり(笑)。

OCHAN「あ〜、沖縄行きたいですね〜。今まで東京と大阪って感じなので、沖縄行きたいです!」

取材・文/桃井麻依子




(2023年8月16日更新)


Check

Release

Digital Single『Jurassic』
配信中
NIKO NIKO TAN TAN RECORDS

Profile

ニコ ニコ タン タン=2019年に結成された、ジャンルを超越した音楽×映像×アートを創造するクリエイティブミクスチャーユニット。音楽担当は、OCHAN(オオチャン/Vo・Synth・etc/作詞・作曲・編曲/イラスト)、Anabebe(アナベベ/ドラム/編曲)、そして映像・アートワークはDrug Store Cowboy(ドラッグストアカウボーイ/映像/アートディレクター/モーショングラフィック)がプロデューサーを務める進化的クリエイティブ集団。音楽・映像・アートが混合した表現を世に送り出している。2020年12月に、VANS主催『VANS MUSICIANS WANTED』のアジアTOP5に選出された。2021年9月に本格始動後、精力的にリリースとライブ活動を行う。2022年には、大型フェス『FUJI ROCK FESTIVAL '22』 や『SUMMER SONIC 2022』へ出演を果たし、初の東阪ツアー(Shibuya WWW X/梅田Shangri-La)をソールドアウトするなど躍進。今年2023年には「Drama」「琥珀」「Jurassic」と精力的にリリースを重ね、 『FUJI ROCK FESTIVAL ‘23』 では初のメインステージ出演を果たした。洗練された中毒性の高い楽曲と、圧倒的なライブパフォーマンスが話題となっている。

NIKO NIKO TAN TAN
オフィシャルサイト

https://www.nikonikotantan.com/


Live

Pick Up!!

『DMC&NNTT』

チケット発売中 Pコード:244-093
▼8月18日(金) 19:30
心斎橋JANUS
オールスタンディング-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[DJ]YUGO.
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]JANUS■06-6214-7255

チケット情報はこちら


『NIKO NIKO TAN TAN 2ND ONE-MAN TOUR [ lol ]』

【東京公演】
▼9月17日(日) 18:00
LIQUIDROOM
ALL STANDING-4000円(ドリンク代別途必要)
※未就学児童は入場不可。小学生以上はチケット必要。
[問]HOT STUFF PROMOTION■050-5211-6077 / https://www.red-hot.ne.jp/

【大阪公演】
▼9月24日(日) 18:00
club JOULE
ALL STANDING-4000円(ドリンク代別途必要)
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888 / https://kyodo-osaka.co.jp

チケット情報はこちら