東阪バンドワンマンライブ
「やましたりな”レイメイ”release Tour」を開催
やましたりなインタビュー

――『レイメイ』には、「なりたい自分にどうやったら近づけるだろう」という模索が描かれた楽曲が多いですね。やましたさんの代表曲となった「ダイエットのうた」（2019年）もそういう姿が歌われていましたが。

「私自身がそういうテーマの曲を聴いて、感情を左右される人間なんです。前向きになりたいときはポジティブな曲を聴いて。音楽に気持ちを後押ししてもらっています。だから自然と自分も応援歌的なものを書くようになった気がします」

――ただ理想像がある反面、自分を直視することで嫌になるときだってあると伝えられていますよね。

「たしかに私も、いつも底抜けに明るいわけじゃないし、落ち込んだりもします。曲って、そういうマイナス思考になるときにできたりするんです。つまり、落ち込んだ感情を曲に昇華させて前向きになっていくのかなって。私はそうやって、自分のなりたいものに近づいていっているように思います」

――明るく見られることで苦しさを覚えたりしませんか。「本当の自分はこうなのに」とか。

「基本的には『やましたりなってずっと明るい』と感じていてほしいですね。本当にしんどいときに誰にも頼れない性格でもないですし、実はめっちゃ人に甘えるし。あと、自分の身近にも底抜けに明るい人がいて、そういう人と接するとすごく元気になれて、ハッピーになれるから。私もそういう存在になりたいんです。ただ、たしかに昔は『嫌かも』という時期はありました」

――ちなみにやましたさんが落ち込む瞬間ってどういうときなんですか。

「遅刻しているときとか......(苦笑）。『わー、ごめんなさい』ってなります」

――でもやましたさんって、遅刻してもそれこそ明るさで誤魔化すことができそうですよね。明るさがそういうミスを上回る人っていますけど、やましたさんはそういうタイプかと。

「あ、タイプ的にはそっちかも！　だけど自分がそのマインドでいたらダメですよね(笑)。あと、物を忘れるたり、なくしちゃったり、よく壊したり。そういうときは落ち込みます。今は、いつも使っているキャリーケースの取っ手が壊れちゃって引っ込まなくなり、収納スペースに入らなくなって出しっぱなしなんです」

――やましたさんの曲には、そういう日常のなかでの失敗や挫折が込められている部分が特徴的。だけど「ジャンクション」などでは、逃げ道を作ることは決して悪くないと歌っていますよね。

「完ぺきな人はいないと思うし、なにより私自身がめちゃくちゃ不器用で完ぺきから程遠いので。人間のそういう不完全な部分を否定したくないんです。もちろん自分も否定されたくない。不完全なままでも人って素晴らしいし、そういう人たちを肯定していきたい。たとえば私はアニメや漫画が好きなんですけど、気に入るキャラクターもみんな不器用なんです。特に『僕のヒーローアカデミア』のエンデヴァーとか。自分のヒーロー像を追いかけるあまり、家族の関係性に軋轢を生むきっかけを作ってしまって、でもそこから頑張ろうと気持ちを入れ変えていく。現実社会でも、失敗ばかり責め立てずにそういう頑張りをもっと認めたり、受け止めたりしてあげるべきかなって」

――やましたさんはどういうときに、どんな風に逃げてきましたか。

「曲を作ることからよく逃げているかも(笑)。で、『うーん......、路上ライブへ行っちゃえ！』って。もちろん路上ライブは楽しいし、自分がやりたいこと。ただ、「やらなきゃいけないこと」が手につかないときは「やりたいこと」に逃げちゃう感じです。だから路上ライブをしているとき、もしかすると実はなにかから逃げている真っ最中なのかもしれません」

――誰にだって悩みがあったり、逃げたくなったりすることってありますよね。それなのに「キャリーケースは重いままで」で歌われているように、「好きな事やってていいね」と言われることもある。

「『キャリーケース』を作ったのはコロナ禍2年目のとき。1年目はライブ自体をやったらダメだという風な状況でした。『ライブってなんなんだろう』と考え込みましたし、路上ライブをしても『こんなご時世に』という目で見られました。立ち止まって聴いてもらえることもほとんどなく、音楽をやること自体、否定的に感じました。つまり、自分ではなんとか行動を起こしているつもりだったけど、なかなか反応が得られなかったんです。物事がなにも動いてないように感じてすごくつらかった。そういう状況のなかでのライブの帰り道に思いついた曲なんです」

――なるほど。

「中には『こういう状況なのに、気楽で良いよね』と考える人もいたはず。でも、それが理解できたから余計にしんどかった。だって音楽活動は衣食住ではないし、生きるために絶対に必要なものじゃないから。だからこそ『好きな事やってていいね』という言葉は、悪気がないにしても余計に刺さってしまいました」

――曲のなかでは「いつか胸張って 好きな事やれていいだろ？って 言えるその日まで」と歌っていますね。

「この曲は、私がミュージシャンとしてもっと大きくなったら、いろんな人の希望になる歌だと思うんです。現時点では『好きな事やれていいだろ』とはまだ言えない。どこかへ行き着いた先に『この曲を聴いて』と堂々と言いたいです」

――そんな曲の数々を聴くことができるのが、東阪バンドワンマンライブ『やましたりな"レイメイ"release Tour』ですね。

「『クランクイン』『ジャンクション』『シースル』の新曲がどんなバンドアレンジなるのか想像がつかなくて、ワクワクしています。2022年も東名阪のバンドワンマンツアーをやりましたが、当時よりさらにメンバーの結束も強くなっています。あと、私自身もライブ演出のことを今まで以上に考えてやっていこうという意識が上がっていて。シンプルに歌うだけではなく、いろんな要素を入れたいです。たとえば照明なんかも、自分で意見を出せたら良いなとか。いろんな面でパワーアップした姿をお見せできると思います」

Text by 田辺ユウキ
Photo by ヨシモリユウナ

EP『レイメイ』からリードトラック『ジャンクション』のMVを公開！

（2023年7月10日更新）