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塩入冬湖(FINLANDS)、みゆなが“対談”、
音楽制作の根本にあるものとは?
「怒りやイラ立ちを覚えるときに曲が書けるのは
ミュージシャンとして健康的なことなのかもしれない」

FINLANDSのボーカル&ギターをつとめるほか、adieu(上白石萌歌)やSalyouへの楽曲提供でも知られる、塩入冬湖。そして映画『見えない目撃者』(2019年)やドラマ『赤いナースコール』(2022年)の主題歌に抜てきされるなどして脚光を浴びる、みゆな。そんなふたりが3月、大阪でひらかれたライブイベントで初共演を果たした。そこで今回は、塩入とみゆなによる“対談”を実施。両者の音楽作りの根底にあるもの、そしてこれからリリースされる作品やツアーについて話を訊いた。

――おふたりは今日が初対面ということですが、お互いの印象はいかがですか。

塩入「夫がみゆなさんの曲が好きで、2年前に車のなかで流れていたことがきっかけで知りました。ボーッとしていたら聴こえてきて「素敵な曲だな」と調べたら、みゆなさんで。初めて会ってまだ5秒くらいなので、お人柄のイメージを軽率に答えるのは失礼なのですが、でも何事にも媚びない強さを感じています」

みゆな「え、すごく嬉しいです。記事のなかで『塩入さんの話を聞きながらニヤニヤするみゆな』と括弧づけで書いてください!」

塩入「ハハハ(笑)」

みゆな「私は、友人がFINLANDSさんのことが好きで、それを機に聴くようになりました。"友人が知っているバンド"という部分で余計に大きな存在に見えて。ものすごく遠いところにいるミュージシャンという印象なんです」

――おふたりは音楽を作るとき、どういうものから着想を得て曲を作り上げていくのでしょうか。

塩入「私は『こういう言葉を使いたいな』というのが先行して曲ができていきます。自分の実体験ではなくても、誰かから聞いた話などをきっかけにして、『この言葉を組み合わせて曲が作れないかな』って。なにか大きな経験や衝撃をもとにはしていなくて、日常でふと感じたこと、そのなかでどうしてもトキめく言葉があればそこから広げて曲を書きます。特に運転しているときにいろいろ降ってくるというか。『これってもしかして、こういうことをあの人は言っていたのかな』と考え、そこで出てきた答えを曲にしたり」

みゆな「私の場合は怒っていたり、イライラしていたりするときにしか曲が書けないんです。自分でもまだまだ若気の至りを感じることが多くて。満たされているとあまり作れません。そういう悲観的なときって、誰かと話すより自分と対話することの方が多くないですか? そんなとき『私ってこういう言葉を知っていたっけ』というワードが出てくるんです。で、そこからストーリーを作って曲を生み出すのが好きですね」

塩入「たしかにイライラしているときに曲ができる感覚って分かる気がします。むしろ怒っているときになにかに気づくことができて、そして曲が書けるのはミュージシャンとしてはすごく健康的なことでもあると思うんです」

みゆな「特に、自分の思い通りにいかないときはやっぱり気が立っちゃいますね。もちろんすべての要望が叶うなんて考えていないし、単純にそのときは納得したとしても、自分の思いが通らなかったという事実自体にはイライラしたり」

塩入「こちらがかけてもらいたい言葉が返ってこなかったり、全然違うことを言われたりすると、イラ立ちを覚えたりもしますよね。だけどそれって、自分がその物事に真剣に向き合っている証じゃないかなって。どうでも良い人や物事だったら『まっ、いっか』となるから。怒りって一番分かりやすい感情。だからこそ、気づけることもたくさんある。今はあまりないのですが、でも私もかつては怒りをもとに曲を作ることはたくさんありました」

みゆな「私が一番苦手なのが、『やりたくないこと』『嫌なこと』について説明をしなきゃいけないこと。『嫌です』と言っても、『なぜ嫌なのか』と尋ねられるじゃないですか。だけど、嫌以上も、嫌以下もなくて。もちろんそこにはコンプレックスとか、いろいろ理由はある。ただ、それを言ってもなかなか納得してもらえない。だから『なぜ嫌なのかを語るのって本当に難しいな』って。それでイラ立つことも多かったし、人によってはそれがわがままに見えたはず。それでも最近は少しずつ言葉にできるようになってきた気がします。でもやっぱり、嫌なものは嫌ですね(笑)」

塩入「私も、自分の感情を言語化するのが苦手な時期がありました。そういう物事はひとつも受け入れたくないって。それって自分のアイデンティティを否定することだと思っていたんです。『だったら嫌なことはまったく受け入れず、否定した方がアイデンティティは保ちやすいんじゃないか』と。全部を否定し続けて、自分が良いと感じたものだけで曲を作っていました。その頃の曲を今聴き直してみると、格好良いなって感じる反面『こうしておけば良かった』ということも多々あります。5月にリリースするアルバム『SHUTTLE』は、そういう曲を、今の年齢、今のメンバーで作り直してみたいと考えたのがきっかけです。この10数年でやり残したこと、後悔していたことを根こそぎ取り戻すことができた作品ですね」

――FINLANDSはそんな『SHUTTLE』を提げて、5月から7月までライブツアー『I AM SHUTTLE TOUR』を開催しますね。

塩入「2020年にコロナが日本でも広がりはじめ、少しずつ緩和していったタイミングで妊娠・出産したので、ここ数年は大きな規模でツアーをまわることができていませんでした。その分『I AM SHUTTLE TOUR』ではライブハウスをたくさん訪れます。今までライブを見るタイミングを逃していた方にもチャンスが多いツアーです。私はバンドをやり始めた頃から、ツアーをまわることが続いていたから、それに対して特別な感情を抱くことってあまりなかったんです。だけど『それは幸せなことなんだ』とあらためて気づけるようになりました。今年はライブもやれるだけやっていこうという気持ちです」

――みゆなさんも5月から6月に『みゆな Acoustic Tour 2023 -Sing for you-』におこない、ミニアルバム『Sing for you』も会場限定でリリースされます。

みゆな「私がリリースした楽曲はこれまで音数や情報量が多いものばかりでしたが、『だけど元をたどれば、ライブではギターとマイクだけだな』と思い、弾き語りとしてやっていることを形に残したくなったんです。弾き語りは自分の歌詞とあらためて向き合えるし、なにより目の前の人たちにちゃんと届けられている実感が持てるんです。一方そうやって『誰かのために歌う』という気持ちをあらわすのって、人がやっているのを見ると格好良く映るけど、自分がやると照れ臭く感じていました。それでもこの数ヶ月、自分の頭のなかに顔が浮かぶ人たちや、ライブに足を運んでくださるファンの方のために歌いたいという気持ちがふくらんできました」

――なぜそういうモチベーションになったんですか。

みゆな「いつも元気で明るいと思っていた友人が、実は心にダメージを負っていたことを知ったのがひとつのきっかけです。そういうとき『頑張って』と背中を押すのは、どこか強制的な気がして違うなって。私の友人に限らず、誰だって精神的に疲れを感じていることは多いはず。そんなときに自分ができるのは、優しい気持ちで『笑って』と寄り添うように歌うこと。大事な人たちのことをより大事にしたい、という意味でもミニアルバムとツアーのタイトルを『Sing for you』にしました。正直、まだまだガキンチョだから『Sing for you』と口にするのは恥ずかしいところがあるんですけど(笑)、この機会にみなさんと近いところに私の歌があることを感じてほしいです」

取材・文:田辺ユウキ




(2023年4月21日更新)


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FINLANDS

FINLANDS LIVE TOUR『I AM SHUTTLE TOUR』
【北海道公演】
▼5月13日(土) mole
【愛知公演】
▼5月19日(金) HUCK FINN
【静岡公演】
▼5月21日(日) 静岡UMBER
【東京公演】
▼5月28日(日) LIVE HOUSE FEVER
【宮城公演】
▼6月2日(金) 仙台ROCKATERIA
【岩手公演】
▼6月4日(日) club change
【千葉公演】
▼6月7日(水) 千葉LOOK
【長崎公演】
▼6月10日(土) ホンダ楽器 アストロスペース
【福岡公演】
▼6月11日(日) DRUM SON

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【京都公演】
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▼6月18日(日) 18:00
GROWLY
オールスタンディング-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]ナードマグネット
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【大阪公演】
チケット発売中 Pコード:239-885
▼6月19日(月) 19:00
LIVE HOUSE Pangea
オールスタンディング-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以下は無料、但しお子様はイヤーマフなどを着用してご入場ください。
※各自治体の要請に伴い開場/開演時間が変更になる可能性がございます。事前に最新情報をご確認の上でご来場ください。
※販売期間中は1人1公演4枚まで。
[問]GREENS■06-6882-1224

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▼6月23日(金) TOONICE
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▼7月7日(金) 新潟CLUB RIVERST
【長野公演】
▼7月8日(土) 松本ALECX
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▼7月13日(木) F.A.D YOKOHAMA

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みゆな

チケット発売中 Pコード:237-167
▼5月7日(日) 17:00
musica hall cafe
全自由席-3500円(ドリンク代別途必要)
※小学生以上はチケット必要。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。
[問]マウントアライブ■050-3504-8700

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http://finlands.pepper.jp/fuyuko/index.html

みゆな
https://www.miyunamiyuna.com/