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南條愛乃が振り返るソロ活動10年の道のり
「20代のときに思い描いていた理想の自分は、
登場人物が自分ひとりだった」

南條愛乃が、ソロ歌手活動10周年を記念したツアー『南條愛乃 Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~supported by animelo』を開催している。2022年12月にアルバム『ジャーニーズ・トランク』をリリースし、10年間の道のりやメッセージを楽曲のなかであらわした。ソロデビューした当時は「10年先のことは考えられなかった」と、焦りや不安を抱えていたという南條。しかし現在は非常に充実していると話す。この10年間どんな気持ちの変化があったのか、南條に話を訊いた。

「自分と一緒に楽曲も歳を重ねていて、深みが出てきました」


――この記事が掲載される頃には、『南條愛乃 Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~supported by animelo』の初日(4月23日)が幕を開けていると思いますが、どのようなライブ内容になりそうですか。

「10周年記念アルバム『ジャーニーズ・トランク』を提げてのツアーなので、これまでの軌跡を表現したいですし、自分のソロ活動のなかでもひとつの節目になると思います。10年前と現在を織り交ぜながら、ここまで歩いて来た道のりをパートごとに楽しんでもらえるはず。ごきんじょ(ファンの呼称)もこの10年も思い返しながら、ライブを見てもらえるのではないでしょうか」

――別のインタビュー記事で「デビューミニアルバム『カタルモア』(2012年)のときは、ソロ活動を10年やれるかどうか分からなかった」とおっしゃっていましたね。

「28歳でソロデビューして、現在は38歳。ただ28歳から見た38歳って相当先の話のように思えていたんです。10年後の自分の姿が想像できなかったし、なによりも仕事自体がどうなっているか分からなかったから。未知だったし、不安もありました。あのときは『ソロデビューは早ければ早い方が良い』と考えていて。10周年だけではなく、20周年もイメージしやすくなるし。だけどこうやっていざ10年が経つと、『あっという間だったな』って。むしろ28歳の頃よりも今の方が気持ちの面でも元気です。当時、いろんなことに焦っていたけどそのほとんどが杞憂だったと感じられて、楽曲も年齢を重ねたからこそ実感を持って歌えるものも多くなってきてるなと感じます」

――いろいろ経験したことが生きている、と。

「たとえば今回のアルバムに収録されている『ヨルゴト』は、作詞のrinoさんがさまざまな人の決意について書いてくださった曲で、私は『歌うことを選んだ』という歌詞に共感しながら歌いました。若いときって気持ち的にも怖いもの知らずだけど、そういう時期を経て、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、悩んだ経験があればあるほど気づくことも増えていく。『ヨルゴト』ってまさにそういう世界をあらわしているように思えます。『グリザイア』シリーズの曲も、歳を重ねれば重ねるほど自分なりの解釈が増えていっています。自分自身がいろんな方と出会ったり、別れたり。二度と会えなくなる人ももちろんいます。『この歌詞って、あのときの感情に似ている』と頭に浮かぶ光景がどんどん増えていってます。自分と一緒に楽曲も歳を重ねていて、その分、深みが出てきている気がします」



「今の自分は幻想より素敵なんじゃないかなって」


――お話を聞いていると南條さんは、年齢を重ねることへの焦りなどがどんどんなくなってきている気がします。

「20代の頃は『こうなっていたい』という理想がいろいろあったんです。一方で『たしかにこういう風になれたら良いけど、自分のキャラじゃないな』と自分が抱く理想像に違和感もありました。逆に、ごきんじょさんと本当にご近所づきあいしているような感覚というか、『あら、元気?』と気軽に挨拶し合う歳の取り方がしたいなと最近思っていて。ソロの楽曲は日常的なこと、普遍的なことを切り取って歌っているんですが、ありのままの自分と言うか、『私は今、こうなっていますよ』ということを素直にあらわしたいんです」

――南條さんが作詞された『ジャーニーズ・トランク』の一節に「ただただ理想だけ追いかけていたよ」とありますが、それって現在は現実をちゃんと見ていることなのかなって。

「20代のときに思い描いていた理想の自分って、今思うと、登場人物が自分ひとりなんですよね。『自分はこの先こうなっていたい、こういうライブをしたい』とか、自分の特性とか身の丈を考えずに理想を思い描いている感じ。こうなっていなければいけない、という生き急ぐ思いにも似ているというか。誰かのライブを見て『自分もこういうことをしたい』とか。それはそれとして刺激をもらって良いことなんですけど、じゃあたとえば車に乗って登場したり、空を飛んで歌いたいかって言われると、いや違うなあって(笑)。そういうステージは見ていてワクワクするけど、自分のやり方ではないなとか。人様と自分との境界線が明確になっていきましたね。」

――なるほど。

「他にも、自分でこういうステージにしてみたいという目標があっても、叶わないこともたくさんありました。ですがそうやって思い描いていた形ではなかったとしても、自分が実際にやってきたライブ、お客さんとの関係性、スタッフのみなさんの姿などを振り返ってみると、自分以外に思い浮かぶ顔がたくさんあって。『登場人物は自分ひとりじゃない』とあらためてその貴重さに気づくことができました。『ジャーニーズ・トランク』に『幻想より険しくて もっと綺麗な現実を』という歌詞がありますが、現実はうまくいかないこと、叶わないことや、辛いこともたくさんあるけど、それでも今の自分が歩いている道は幻想=思い浮かべていた理想の世界より素敵なんじゃないかなって」



「ライブは一瞬、一瞬のものでかけがえがない」


――「ジャーニーズ・トランク」、「A Tiny Winter Story」(2021年)、「君との音色」(2019年)、高橋ミナミさんへの提供曲「24/7」(2022年)など近年の南條さんの作詞曲には「キラキラ」というワードがよく出てきます。幻想ではなく日常のなかにあるキラキラを見つけようとしているように思えます。

「キラキラ......歌詞に入れやすいんでしょうね(笑)」

――そんな現実的な答えなんですか!

「『ジャーニーズ・トランク』でも歌っているのですが、これまで歩んできた道のりのなかでのお客さんとの思い出って、キラキラしたもののように感じていて。『24/7』は実際に私がたかみなちゃんのことをキラキラして見えていることを詞に込めましたし、『君と音色』はライブのことを歌っている歌で、照明だったりペンライトだったり光の粒が目の前に浮かび、その光景を描きました。自分がこれまで歩んできたソロ活動の道のりって、ドロドロ、ヒリヒリよりキラキラしたものが多い気がします。だけど自分自身の生活は全然、キラキラしていませんけど!」

――ハハハ(笑)。

「ただ、これはライブでもよく言っていることですが、ファンの皆さんも私もそれぞれに日常や生活がある。もしかすると出会うことがなかった人たちが、ライブでは同じ場所に集まって、楽曲を通してほぼリアルタイムで近い感情を抱く。しかも、まったく同じライブって二度とないもの。一瞬、一瞬のものでかけがえがないからこそキラキラにつながるのかなって思うんです。



「ライブが終わると当然、お腹が空く。それが現実なんです」


――いまおっしゃったように南條さんの作詞曲は「場所」もキーワードになることが多いですよね。「待ち合わせはあのカフェで!!!」(2022年)、「繋がりの歌」(2019年)、「白い季節の約束」(2017年)など。

「歌詞が書きやすいんでしょうね!」

――またそんなことを(笑)。

「でも『場所』でひとつ思い出したことがあるんです。20代の頃に受けたインタビューで、『南條さんはライブや曲を出すことで、みんなが集まれる場所を提供しているんだと思います』と言われたことがあるんです。でも当時はその意味がピンと来なかったんです。だけどファンのみなさんは、ライブに行くことが行動目標のひとつだけど、ほかにもそこでしか会えない人同士のコミュニティを築いていたりもしています。『南條さんのライブがあるから集まれるメンバーがいて、それが楽しい』という感想もよくいただきます。そういう話を聞くと、『あのインタビュアーさんが言っていたのってこういうことなのか』と。当時はピンとこなかっただけに、なんかだかちょっと悔しいですね(笑)。『繋がりの歌』はまさにそういうファンのみなさんと集まれるライブのことを思い浮かべて書きました」

――そういう風にライブで集まり、終わったら南條さん含めてみんなそれぞれの日常に戻っていくわけですね。

「私自身も、ライブでは光を当てていただいたり、華やかな衣装を用意していただいて歌ったりします。だけどそれが終わるともう日常なんです。かつてユニットでやったカウントライブのあととかは帰り道に牛丼屋さんに入って新年むかえたばかりの深夜3時頃とかに誰もいない店内でひとり寂しくご飯を食べていましたから(笑)。さっきまでみんなと一緒に華やかな場所にいたのになあ〜なんて思いながら、落としてないキラキラな舞台メイクと、ほどいたボサボサの髪で(笑)。それが私の現実であり日常なんですけど、ファンのみなさんはそういう姿も『南條さんらしいな』と思ってくれている気がします」

――『ジャーニーズ・トランク』にちなんで最後に尋ねたいのですが、南條さんは旅に出るとき、必ずかばんのなかに入れていくものはありますか。

「できるだけ身軽で出かけたいので、常備薬くらいですね。昔は不安で『あれも、これも』といろいろ持って行くタイプでした。だけどいまはなるべく小さいカバンで、最低限の着替えだけ詰め込んで、なにかあれば現地調達すれば良いかなって。気持ちの面でも身軽に生きていきたいですね」

取材・文:田辺ユウキ




(2023年4月28日更新)


Live

南條愛乃 「Live Tour 2023 ~ジャーニーズ・トランク~」

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:231-587
▼4月30日(日) 17:30
NHK大阪ホール
全席指定-9350円
※未就学児童は入場不可。本番中の迷惑行為一切禁止。新型コロナウイルス感染症対策にご協力をお願いいたします。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は4/24(月)10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【愛知公演】
▼5月3日(水・祝)
刈谷市総合文化センター 大ホール

【東京公演】
▼5月7日(日)
TACHIKAWA STAGE GARDEN

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