ホーム > インタビュー&レポート > 続けていくためのバンド改革 アルバム『私飽きぬ私』における挑戦と今の想い キュウソネコカミインタビュー
バンドを続けていくために、前よりも横を見る
――昨年末のツアーでタクロウさんが復活されましたね。お休み中は連絡を取られていたんですか。
ヤマサキ「連絡も取ってるし、スタジオも入ってました」
ヨコタ「ライブ活動は1回休止したんですけど、他のことに関しては基本的にずっと変わらずやってたり。多分皆が思ってるほど休止してる感じはこっちはなくて。普通に会ってる様子をライブで皆に伝えていくとか、そんな感じでしたね」
――『優勝』のMVはリモートで撮影に参加されていましたね。
ヨコタ「最初は画面越しで、2回目からがっつり出たりして、だんだん参加していく感じにしました。だから皆からしてみたら、"いつ復活できるんやろう"というのは最初の数ヶ月だけで、徐々に復活していくんだろうなという感じにはなったと思います。スタジオにはたくさん入ってたけど、物理的には結構大変でした。サポートベースとツアーのスタジオに入るのと、タクロウと一緒に曲作りをするのと。僕らも2重生活でしたね」
――メンバーさんとしては、直接会う機会が少し減ったぐらいの感じですか。
ヨコタ「まあね、でもより会おうとしてたのはしてたんかな」
ヤマサキ「ツアーの合間とかで帰ってきたら、必ずスタジオに入ってたんで。ずっと1人にしておくのはないなという感じで」
ヨコタ「逆に向こうが気遣って"そんなに入らんでもいけるよ"と言うぐらい」
――タクロウさんが戻ってこられて、改めて思うことはありましたか?
ヤマサキ「やっぱり顔色も全然違うし、必要な休みやったんかなって。あのまま無理してたらもう続けられてないかもしれんなと思って。休止はネガティブなことですけど、必要な休みになったんちゃうかなと思いました」
ヨコタ「コロナで色々と制限されて、やることも変わっていった中でタクロウのことがあって、より前を向くというよりは横を向くというか。バンドを続けていくためにはそれをやらんと、どうしても前だけ見てたら見えなかった部分がめっちゃありましたね」
――より絆が深まったり?
ヨコタ「ですね」
ヤマサキ「コロナ渦寸前とかは、"自分の体調は自分でどうにかしろ、ついて来れる奴ついてこい!"みたいな活動の仕方やったんで、とんでもないスケジュールでライブしてたんですけど、この休みのおかげで話し合うことができるようになりましたね。その結果が出てるのが、『ほぼ週末ツアー』(笑)。1回詰めすぎないでツアーしてみようという、初めての試み」
――体制を見直した部分もあったんですね。
ヨコタ「だいぶ変わったと思いますね。"やれる奴がやれ"みたいなところから、"やるためにはどうしたらいいやろう"に変わったんで。それこそ曲作りの方法も。タクロウがスタジオに入るタイミングがなかなかない状態で、それでも曲を作らなきゃいけないから、それぞれ自宅で作業できるようにしないといけないなと」
――なるほど。
ヨコタ「今まではライブもやればやるほど良いと思ってたんです。"満足度の高いものをやるために集中して一撃でやりましょう"とか。皆が同じ方向で考えられるように変えてきましたね」
――皆さん30代半ばですが、年齢を重ねてきたことも影響していますか。
ヤマサキ「あんまり考えなくてもいけてたんですけど、ついていけなくなるというか、やっぱり無理したらあかんなという。年齢が理由で体制を変えたわけじゃないですけど、実際そうなってますね」
――キュウソは毎回ライブの熱量もすごいですもんね。
ヨコタ「そうなんですよね。5日間で3~4本ワンマンをやってると考えたら、それが異常なだけで(笑)。他のバンドに話して引かれることも多いし。改めて自分たちと似たバンドのスケジュールを見たら、めっちゃちゃんとしてる。僕らみたいに無理くりじゃない。これができた方が良いんちゃうかなと。今まで無視してたけど、変わらざるを得なかったですね」
――変えてみてどうですか?
ヨコタ「めちゃくちゃ良いですね。"もっとやりたいな"ぐらいがちょうど良い気がするんですよ。今は時間が空いたらやれることがあると思えるから、スケジュールを詰めるんじゃなくて、その分ライブ見に行ったり、友達と飲みに行ったりできるようになった。それが刺激になって最終的にパフォーマンスに繋がると思うので。今活動欲求はめっちゃ高まってるけど余裕がある状態。これを継続できる方が楽しそうやなって気がしますね」
――健康的ですよね。対バン以外でライブも見に行けないぐらいのスケジュールだったんですね。
ヤマサキ「俺らはそれが好きなんですけど、多分他の3人、オカザワ(カズマ/g)は違うかもしれないけど、ソゴウ(タイスケ/ds)とタクロウはもっと何もない日が必要だったんですよ。俺らみたいに毎日飲んだりライブに行くのが休憩になるタイプの人間と、本当に何もないのが休憩になる人間がいるから。どっちかに合わせてたら、やっぱり歪みが生まれるので」
ヨコタ「働き方改革よな。皆がバンドに合わせてたけど、バンドができる限り他の人にも合わせようというやり方になりました」
――バンドに合わせるのも愛情だし、個人に合わせるのも愛情ですね。
ヨコタ「最終的にメンバーが倒れてから、人がやってることやと皆わかった時に、大事にしないとやばいなと」
DTMの導入で、曲作りの意識も変化
――その中で今回のアルバムの楽曲たちはどう揃っていったんですか。
ヤマサキ「前回出した『モルモットラボ』(2021年リリース)の時点で曲のストックがゼロになって。しかもその音源が出たのが、コロナ禍になった瞬間で僕ら10周年やったんすよ」
――そうでしたね。
ヤマサキ「めっちゃ用意してて、10周年の前に曲が出来上がってたから、結構長い間曲を作らない期間があって。今作は、コロナ禍真っ只中で本当にゼロから作ったアルバムなんですよ。外からの刺激がない状態で、ほとんど家にいて、自分が感じたことやニュースを見て作りました。ちょっと強めの曲が多いですね」
――距離が近い気がしますね。
ヨコタ「曲のテーマがいつも身近なことなんですけど、ライブで楽しくやるために絶対にナイズドしてたんです。今回のアルバムでは、ライブでどうやれるかという話をせずに、"この曲はこうじゃない?"と皆思ったことをやりました。それは今までとだいぶ違います」
ヤマサキ「ライブでやることを考えると、曲が似通ってくるんです。"またこのパターンか"みたいな」
ヨコタ「盛り上がるからやりたいパターンみたいなのはあるよね」
ヤマサキ「曲作りへの慣れですね。でも時間がたっぷりあったんで、好きなことをしようと」
ヨコタ「俺らっぽい要素じゃなく、曲のカラーにちゃんとチャレンジしようという空気があって、皆であーだこーだ言って。面白かったですね」
ヤマサキ「あとPCでも曲作りできるようになったんですよ。今までは弾き語りで披露して、それに肉付けしてたんですけど、自分で簡単なデモを作ってPCに入れて、皆に聞いてもらえるようになった。弾き語りやとふざけたアイデアが出しにくかったんですよ」
ヨコタ「しかも弾き語りはなかなか本域ではできないじゃないですか。本域でも"よっしゃ! これええやんけ!"ってなりづらい。リズム入れてくれるだけでイメージしやすかったし、セイヤの頭の中がわかりやすくなりました。"こういう曲を作りたいんやな"というのが」
――なるほど。
ヨコタ「あとお互いのフレーズが嘘をつかなくなってきた。スタジオでは音が飽和してるから、何となく合ってるようにもカッコ良くも聞こえるけど、いざレコーディングしてみたら、"あれ、ちょっとちゃうな"みたいなパターンも結構あった。でもPCで打ち込んだデータは単体で再生できるから、"こういうフレーズやりたいんや、ならこうしよう"というのがやりやすくなった。おかげで楽器同士もよく聞こえるようになって、立たせたいものもハッキリしましたね」
ヤマサキ「本当に今までは"ここでヤンキーはこう言いたいんや!"みたいなことを伝えて、めちゃくちゃ困る時間とかあった」
――迷う時間が少なくなった。
ヨコタ「そうそう。完成に近づいてやっと"良い曲かも"と思うけど。『私飽きぬ私』(M-10)とかは、ほんまに作る段階でええ曲やとわかったから、最初からええ曲にしようと制作できた。スタートの意思が統一しやすいし、ブレない」
ヤマサキ「いつかPCでやらなあかんなとずっと思ってたので。やってみたらめっちゃ便利。未知のものだから最初の導入が怖かっただけで」
ヨコタ「コロナで集まれなくなった期間に、そういうやり方もいいかもなと薄々思っていて、タクロウが休むと決まった時、絶対に導入を現実のものにしましょうと。ピンチが革命的にラッキーになりましたね」
これまでのキュウソにはない要素を入れた曲
――『You don't know her.』(M-2)のサウンドは、重くて派手ですね。
ヨコタ「これは最初の方に作った曲で、前のアルバム(『モルモットラボ』)の"実験的"というテーマをちょっと引きずってるというか。"こういう重たいリフもできるやろ"、"ベースから始まるのめっちゃええやん"とか。あとは洋楽っぽさ。今までの延長線上でのやりたいことというよりは、挑戦も入ってる曲。キュウソってサウンド"だけ"にこだわることがなく、割と歌詞に寄ってる方だったんですけど、これは歌詞にそこまで意味がなくていいことを全員がわかってました。むしろ洋楽っぽく聞こえたら正解やんって」
――歌詞はどのように書かれたんですか?
ヤマサキ「とにかく早口で言葉を詰めたかったですね。聞き取れんでも音でテンション上がってくれたらいいやみたいな感じで。あと可愛さをなくしたかったんですよ。キュウソってポップ寄りやし、可愛らしい曲が人気になることが多かったんで。可愛げのない、ダークでいかつめの曲がカッコ良いなと思ってた時期やったんですよね。チューニング下げて重たい音で。それが男っぽいというか、ギラギラしてる感じがあって。そういう要素はキュウソのライブで少ないなと思って」
――確かに。
ヤマサキ「今まで見に来てたキュウソのファンに別の角度からパンチ入れたいなと」
――DTMを使うことで、再現が難しいフレーズが生まれたりは?
ヤマサキ「デモにはドラムとギターと歌しか入れないので。自分のギター4本入れたり、再現不能なことはしないです。ちょっとしっかり弾かなあかん曲にはなってると思います」
ヨコタ「今回のアルバム、全体的にそうよね」
ヤマサキ「『いけしゃあしゃあ』(M-6)もそう。いつもよりだいぶギターを弾いてて」
――掛け合いが難しいとか。
ヤマサキ「自分のフレーズも難しかったんですけど、オカザワも難しいことをしてて。本来は難しいフレーズをオカザワに任せたいんですけど、それを任せたらオカザワのフレーズを俺が弾かないといけない。どっちもむずい。俺もう逃げ場ないんすよね」
――それは、練習あるのみですか。
ヤマサキ「そうですね(笑)。決まったらカッコ良いやろうな。この曲に関しては俺、棒立ちで弾いてるかもしれない。むずすぎて」
――運指が難しいんですか。
ヤマサキ「運指というか奏法なんですよ。ミュートとかちゃんとしないといけない」
ヨコタ「ハッキリ弾くとかね」
ヤマサキ「他の弦も弾いちゃダメとか。パワーコードやと多少雑な音になってても成り立つけど、メインフレーズを弾いてるんで、そこが雑やとがっかりされるやろなと」
ヨコタ「今回は表現のために"これをやろう"となったら、自分もそこに向かって行きつつある。曲のカッコ良さを引き出す方を選んでる気がします」
ヤマサキ「確かに。PCで作ったから、弾けないフレーズを捨てることがなくなったかもしれないですね。何回もやり直しできるんで」
ヨコタ「手グセじゃないフレーズとかな。情感で良いメロディーを弾くようになるんで、逆に弾いてみたら"むず!"みたいなのがPCはめっちゃありますよ」
――でもそれでバンドのレベルがまた1つ上がりそうです。
ヨコタ「ですです、ほんとに。まだまだ上手くなれるなって。ちょっと意識上がりましたね」
俺たちが先頭に立って、ライブの良さを出せたら
――『スプラッタ』(M-4)はヘビメタっぽいですね。
ヤマサキ「あんまりお客さんをノセる気がないというか」
ヨコタ「言ってしまった(笑)」
ヤマサキ「オン展開しまくって叩きつけるような曲になってるんで、初期っぽい感じもあるんですよね」
ヨコタ「これはまだ結構俺らっぽくなってる感じがします」
ヤマサキ「客席をひとつにせなあかんとかを全く考えずに、歌詞の雰囲気を楽曲で表したいという勢いで作ってるんで、ライブでやるのめっちゃ楽しみなんです。今コロナが落ち着いてきて、フロアが熱狂を取り戻してるんですけど、その時に完全棒立ちになるのか、Bメロで飛ぶのか。"お前らどう楽しんでくれるんだ?"みたいな。楽しみだな」
ヨコタ「やりがいがある」
――キュウソのファンの方はどんな曲でも体を動かしそうな気もしますけどね。
ヨコタ「僕らのお客さんって、そこはマジでそうなんすよね(笑)」
ヤマサキ「わかりやすいものが大好きな世の中に、敢えてわかりにくいものを投入する楽しみ(笑)」
――やっぱりライブが戻ってきた感覚が強いですか。
ヤマサキ「今お客さんは本当に過渡期で、騒ぎたいお客さんとまだ早いんじゃないかというお客さん、元々騒いでないお客さんで分かれてるんですけど、ロックバンドを見る時の衝動ってすぐ思い出すんやなと思いましたね。言うて4割ぐらいのお客さんがモッシュしてたら後の6割は飲み込まれるしかない。バンドマンを見たい、曲を楽しみたいという想いが勝つんじゃないかな。自分も最近行ったライブでモッシュを久しぶりに体験して、全然嫌な気分じゃなかった」
ヨコタ「ライブシーンやコロナ前を知らなかった人たちがここからどんどん合わさっていくので、ライブの良さを俺たちが先頭に立って出せたらなって。声が聞こえるだけでも嬉しいけど、"コロナ前そんなもんじゃなかったな"という気持ちもある。その気持ちでライブした時に、初めて来た人が"こんなに声出していいの?"ってビビるぐらい声出して。そこから連鎖する状態になっていくような気がしてて。今それを見てる最中ですね。爆発寸前ぐらいやな」
ヤマサキ「まだな」
ヨコタ「皆声出してるつもりなんですけど、実際フロアに行ったら"まだこんなもんなんや"と思ってしまうんですよね。もっと出してたよ」
――お客さんもブランクがあるので、出せてるようで出てないのかもですね。
ヨコタ「それは常に頭に置いとかないといけないなと思いますね」
幼馴染の「Tくん」を通して馳せる旧友への想い
――ノンフィクションドキュメントソング『Tくん』(M-7)は愛情と優しさを感じるというか、最後のコーラスでグッときました。
ヤマサキ「ちゃんと届くんですかねえ。多分生きてるはずなんですけどね」
ヨコタ「関西にいたら、ぴあ関西版で届く(笑)」
――ずっと気にかけてらっしゃる存在なんですか。
ヤマサキ「付き合い長いってだけっすね。ずっと一緒におったわけじゃないんですけど、保育園から一緒なので定期的に会ったり。急に連絡来んくなって、"あーそれでいいんかお前"みたいな。こっちからは探さんでいいかと」
――曲にしようと思われたキッカケは。
ヤマサキ「100万貸して飛ばれたら、とんでもない出来事ですよね。俺変やと思うんですけど、普通100万取り返そうとするじゃないですか。"こいつおもろいやんけ。曲にしたらい!"と思って(笑)」
――イニシャルも出して。
ヤマサキ「今苗字変えてると思うんですよ。そこまでは知ってる。多分Tではないんですよ」
――なんと。
ヨコタ「最初デモを聞いた時、なんちゅう歌作ってんねんと思ったけど、さっき言われたみたいに愛じゃないですか。優しさと愛で捉えてるところが何でやねんという話ではある。"怒ってないんやこいつ"って。だったらちゃんとドラマチックに、思ってる以上に良い曲っぽくやる方がいいんじゃない?と皆がなって。"お前のこと許さねえからな"の怒りソングだとこうはならない」
――信じる気持ちがあるから、こういう曲になるんですよね。
ヨコタ「悲しい、悔しい、寂しい、怒りじゃない感情をこのシチュエーションで曲にするのが、やっぱりセイヤやなと。だから作ってる時も楽しかった。そうじゃなかったら、個人に向けたやりきれない気持ちを誰が聞きたいんや、みたいな話になったけど、最終的にこの形になったことで、"最近顔見れてないけどあいつ元気にしてるかな"と思える。1人にしか向けてないけど、捉えようによっては大きい曲になる」
ヤマサキ「ある意味冷たいんですけどね。だからそこまで手を差し伸べない。"そっちがその気やったらこっちは歌にさしてもらうからな。お前が仕掛けてきたんやからな"という感じで」
――発破をかけるじゃないですけど。
ヤマサキ「1回失った100(万)はね、もう1回用意しろといっても簡単には返せないっすよ」
ヨコタ「よっぽど真面目に働いてもむずい」
――連絡が来たら、すごいドラマですよね。
ヤマサキ「どうやって連絡してくるんやろ。多分LINE消えたんすよね」
ヨコタ「でもDMとか、セイヤに連絡取る方法なんかいくらでもある。今後に期待ですね。第2章があるかもしれない」
ヤマサキ「金貸してくれ言うたらブチ切れそうやけどな(笑)」
避け方、守り方、逃げ方。めっちゃ大事
――『ひと言』(M-8)もセイヤさんの優しさが出てる曲だなと思います。最近本当に誹謗中傷による悲しいニュースが多いので。
ヨコタ「デモを持ってきた時に、どういう曲にしようかと皆でかなり悩んで。レコーディングも大変でしたね」
――具体的には?
ヨコタ「この曲の本意をちゃんと伝えるために試行錯誤したというか。いつもの俺たちは、詰め込めるだけ詰め込んでバーン! みたいなのがやりやすいんですよ。そっちの方がパワーあるやんと思ってるんですけど、この曲は逆に引いて引いて、要らないものは全部なくして、残ったもので勝負したいという曲だったので。それをやるために弾くフレーズを減らして、セイヤの歌い方も意識して。表現としての引き算がめちゃめちゃ難しかったです」
――フレーズがずっとループしてますね。
ヨコタ「多分結末がない話だとは思うんですよね。フェードアウトも久しぶりにやったんですけど、『Tくん』みたいに会って解決という話じゃなくて、この問題に関しては似たようなことが続いていく可能性があるじゃないですか」
――そうですね。
ヨコタ「そういうのをループ感や淡々とした感じで表現してます。感情の起伏はあるけど、本当に生活の中に付きまとうイメージですね。難しかった。でもこういう曲を作れるようになるのも大事なことやなって。もっと濁したり、違う言い方をすることもできるけど、作って歌うならマジでやろうぜって。皆、シャンと背筋伸ばしてやる感じでした」
――向き合ったんですね。
ヨコタ「だいぶ向き合いました。ほんまに皆めっちゃ苦労してました」
――キャリアも重ねて、初期の頃から変わらない部分もありつつも、今作では表現の変化を感じます。簡単に聞こえるかもしれないですけど、大人になったというか。
ヤマサキ「全部自分が正しいわけじゃないですけど、やっぱり大勢の人が気持ち良く暮らせる社会を推していきたいバンドというか。思いやりとマナーと」
――それはずっと言ってますもんね。
ヤマサキ「こういう曲を出すことで、変なことを言ってくるファンにも気づいてほしいなって。周りにいる人や自分自身、メンバー、スタッフにも語りかけてる。たまにやっぱり喋ってて失敗するんですよ。要らんこと言ったなって。この曲が意思表明です」
――言われた方はずっと残りますもんね。
ヤマサキ「"絶対に失敗するな"って曲じゃなくて"そういうこともあるよ"という曲。でも、わけわからん奴は俺らが説いても変なこと言ってくると思うから」
ヨコタ「俺たちはSNSで言いたいことは言ってるし、ふぁぼとかRTされるけど、ほんまに届いてるんかはわからん。セイヤも他のメンバーもSNSでご意見番とかあまりしないタイプなんで。要は、今までは土俵に上がるわけじゃなくてフラットな状態でいようかなという感じだったんですけど、"土俵に上がるなら歌やろ"と。"それでこそミュージシャンやな"という気はしたんですよね」
――土俵に上がろうと思ったんですか?
ヤマサキ「表現するなら歌の方がいいかなというのはありますね。SNS難しいんすよね。皮肉言ってるはずなのに賛成してるみたいに取られたり。"やったー"みたいに言うけど、"いやこれ皮肉やぞ"って(笑)」
ヨコタ「伝わってないよな~」
ヤマサキ「伝わってねえ!」
ヨコタ「それぐらいやったらまだ笑えるけど」
ヤマサキ「何人か真意を汲み取ってくれる人もいる。"そこ絶対右です"と言いにくいし伝わりにくい。だからこそ発信する側がもうちょっと考えて責任ある言動をできたらいいな。今は褒め言葉も貶す言葉も、海外まで全部届くんですよ。有名人だけじゃなくて、学校内のグループSNSでも。面と向かって言わない言葉の破壊力というか」
――悪い言葉の方が、回るスピードが早い気がします。
ヨコタ「伝えたいことあるならSNSでええやんと言う人が多い可能性は高くて。じゃあ歌にする理由は何やねんという話だと思うんですよね。もちろんライブのために曲があるし、色んな面で曲って必要やけど、本来は曲を聞いた時、どんなことでもいいから何か思うところがあってほしい。それがミュージシャンをやってて願うところ」
――気づくキッカケになりますよね。言っても聞かない人には響かないかもしれないけど。
ヤマサキ「そういう人に出会った時は、"この人はそういう人なんだ"と思って、傷つかないようにする」
ヨコタ「避け方、守り方、逃げ方。めっちゃ大事やと思うんですよね」
ヤマサキ「嫌なことしてる人って、他の人とも仲良くないと思うんで。完全に1人にするわけじゃないですけど、やめといた方がええぞというのを曲でも言っていこうかなと」
一筋縄ではいかない応援ソングにしたかった
――最後の『私飽きぬ私』(M-10)はリード曲ですが、やはりこの曲が核ですか。
ヨコタ「ほんとそうです」
ヤマサキ「日々に絶望しないでほしいなと。失敗して"もう終わりだ"って一気にいってしまう人とかおるけど、"生きてるやんけ"と。生きてる限りはチャンスがある。落ち込むのも必要やと思うんですよ。周りから応援や助け船を出されても、それすらも全部嫌な瞬間もあって当たり前やと思うし。だから一筋縄ではいかない応援ソングにしたかったですね。ただ応援されても入ってこない時もあるよな、という要素を曲の中に入れたかった。自分がそうだから。最終自分の足で立ち上がらないといけないから、そういう想いも入れたくて」
――<不安だ>と言ってくれることで、自分の中の不安も薄まる気がしました。
ヨコタ「ライブではお客さんが叫んでくれたりして。言える場所があるし、不安だと言ってるけど、皆で叫んだら1個スッキリしたらええなというので、絶対にライブではやり続けていかなきゃいけないと思ってます」
――良い曲で、良いアルバムです。
ヨコタ「やりたいことが全部やれたおかげで、アルバム全曲個性が強い。カラー感がない中でタイトルは困ったんですけど、『私飽きぬ私』という曲が全てを象徴してる。初めて満場一致でタイトルにしました。それぐらい力を入れた自信曲です」
――存在感がありますね。
ヨコタ「ライブでも最初からすげえ手応えあったもんな。やればやるほど"ええやん"となるし、聞いた人が皆"めっちゃええやん"と言ってくれて。"俺たち色々あったけど、ちゃんと芯食った良い曲を作れるのが良い感じやん"と思ったし、"キュウソまだまだ良いじゃん"と思ってほしい」
――この1枚で新しいキュウソも見れた感じがします。
ヨコタ「今までは作ってる最中から"こう思われたい"というアルバムが多かったんですけど、今作はそんなになくて。逆に皆マジでどう思うのか、ほんまに楽しみですね」
若手バンド、"対バンのお誘い待ってるよ"
――最後に、『ほぼ週末ツアー』の意気込みをお願いします!
ヨコタ「新曲を色々やって、キュウソがどう見られるかを見たいのももちろんですけど、シンプルに"ライブハウス最高"と思えるライブをやりたい。僕らコロナ禍も試行錯誤しながらライブをやっていたので、正直良かったことも悪かったこともあったし、今までの俺たちがどうだったか考えたこともあった。ちゃんとその経験を活かして"キュウソのライブ最高でした"と言えるライブに絶対にします。ライブハウスの人も"よくぞやってくれた"と言ってくれるような。コロナ禍はそう言ってくれるライブハウスがめっちゃ多かったんで、熱狂を返しに行くというか」
ヤマサキ「今までのファンの人にも新しく来る人にも"キュウソはこれだ"というのを見せたいですね。正直コロナ禍のライブ、俺はどちらかというとしんどかった(苦笑)。お客さんも僕らも120%で楽しめる瞬間が戻ってきたらいいなと本当に思ってますね」
――皆我慢してきましたからね。
ヨコタ「今めっちゃ嬉しいのは、"帰ってきた"という喜びと"こんなの初めて"みたいな喜びが両立してること。その感じ、逆になかったんですよ。僕ら色んなところでライブしすぎて、様式美が決まってきてて。若手のバンドに誘ってもらった時に、"これこれ"と言ってる人もいれば、"マジで?"みたいな人もいて。それがめっちゃ楽しいですね」
――コロナ禍で結成されたバンドも多いから、声出しを知らないバンドさんもいますもんね。
ヨコタ「そういうバンドからもっと声をかけてほしいので、"対バンも是非待ってるよ"ってことをここで言っておきます(笑)」
――確実に良い連鎖反応が起きますね。
ヨコタ「刺激も受けてくれると思うし、それを見て俺たちも"ええやん"と思ってそうです、お互いにね」
Text by ERI KUBOTA
(2023年4月25日更新)
『私飽きぬ私』
発売中
【初回限定盤A】(CD+Blu-ray)
5940円(税込)
VIZL-2167
【初回限定盤B】(CD+DVD)
5390円(税込)
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※VICTOR ONLINE STORE限定セットも発売!
■初回限定盤A+オリジナルグッズ(フェイスタオル)7590円(税込)
■初回限定盤B+オリジナルグッズ(フェイスタオル)7040円(税込)
《収録曲》
01. 優勝 (ALBUM Mix)
02. You don't know her.
03. 住環境
04. スプラッタ
05. 真理
06. いけしゃあしゃあ
07. Tくん
08. ひと言
09. モノバショクセニイマモイキル
10. 私飽きぬ私
<初回限定盤 収録映像>
ヤマサキ セイヤ地元凱旋!!
初の和歌山城ホール ワンマンライブを ボリュームたっぷりに収録したBlu-ray、DVDを付属!!
(2023年1月14日 "ONEMAN LIVE ~和歌山の城ホール~"@和歌山城ホール)
ヤマサキセイヤ(vo&g)、オカザワカズマ(g)、カワクボタクロウ(b)、ヨコタシンノスケ(key&vo)、ソゴウタイスケ(ds)からなるロックバンド。2009年12月に関学にて結成。2010年より関西を中心に活動中。2011年11月25日にカワクボタクロウが加入して現体制に。2014年4月1日ビクター入団。2020年、コロナ禍で10周年を迎え、2023年3月29日、待望のフルアルバム『私飽きぬ私』をリリース。5月からは全国ワンマンツアー『DMCC REAL ONEMAN 2023 ~ほぼ週末ツアー~』を行う。
キュウソネコカミ オフィシャルサイト
https://kyusonekokami.com/
Klang Ruler 東名阪対バンツアー
”Space Colony”
▼4月21日(金) 19:00
名古屋クラブクアトロ
スタンディング-5500円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
[ゲスト]キュウソネコカミ
[問]サンデーフォークプロモーション
■052-320-9100
『JAPAN JAM 2023』
チケット発売中 Pコード:240-890
▼4月30日(日) 11:30
千葉市蘇我スポーツ公園(千葉市中央区)
1日券(9:30~10:00入場)-12000円
1日券(10:00~10:30入場)-12000円
1日券(10:30~11:00入場)-12000円
1日券(11:00~11:30入場)-12000円
1日券(11:30以降入場)-12000円
[出演]ano/アンジュルム/indigo la End/打首獄門同好会/osage/オレンジスパイニクラブ/キュウソネコカミ/go!go!vanillas/鈴木愛理/Tani Yuuki/東京スカパラダイスオーケストラ/Bialystocks/04 Limited Sazabys/BLUE ENCOUNT/モーニング娘。’23/ヤバイTシャツ屋さん/ユアネス/Lucky Kilimanjaro/リュックと添い寝ごはん
[DJ]DJ和
※6歳未満は保護者同伴に限り入場無料。出演者・開場・開演時間は予定のため変更の可能性あり。出演者変更に伴う払戻し不可。ご来場前に公式サイトにて、「注意事項」を必ずご確認ください。公演内容に関する詳細はhttp://japanjam.jpまで。雨天決行、荒天中止。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。発券開始は4/25(火)18:00以降となります。
『VIVA LA ROCK 2023』
チケット発売中 Pコード:236-599
▼5月3日(水・祝) 10:00
さいたまスーパーアリーナ
5/3 1日券-11000円
[出演]ano/Amber’s/UVERworld/大森靖子/THE ORAL CIGARETTES/岡崎体育/片平実/KEYTALK/キュウソネコカミ/THE KEBABS/go!go!vanillas/SHISHAMO/SKY-HI/Chilli Beans./This is LAST/Tele/Novel Core/Hakubi/MY FIRST STORY/マカロニえんぴつ/moon drop/森大翔/WurtS
※中学生以上はチケット必要。小学生以下は保護者1名につき1名まで無料。2人目からの小学生以下はチケット必要。公演当日要身分証明書。出演者は予定のため変更の可能性あり。他に2日券(Pコード:780-567)・5日券(Pコード:780-568)もあり。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1公演につき4枚まで。発券は4/30(日)10:00以降となります。
【動画配信】ビバラ!オンライン 2023
チケット発売中 Pコード:780-706
▼5月3日(水・祝)~9日(火) 10:00
PIA LIVE STREAM
1日券-2500円
[出演]ano/大森靖子/キュウソネコカミ/SKY-HI/Chilli Beans./This is LAST/Novel Core/WurtS/他
[司会]保井ひろゆき
※こちらのチケットをご購入いただくとオンライン動画配信をご覧いただけます。配信アーティスト及びスケジュールは予定のため変更の可能性あり。ライヴ映像の配信はVIVA LA ROCK 2023全出演アーティストではございません。他に5日通し券あり、Pコード:780-707参照。【視聴についての問合せ】event@linkst.jp(平日10:00~18:00)。公演日は配信終了1時間後まで土日祝も対応可能。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1IDで1回のみ購入可。1人1枚まで。
『OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2023』
▼5月13日(土) 11:00
METROCK大阪特設会場
1日券-12000円
[出演]indigo la End/WENDY/打首獄門同好会/THE ORAL CIGARETTES/神はサイコロを振らない/KEYTALK/キュウソネコカミ/クボタカイ/SHISHAMO/JUN SKY WALKER(S)/TOMOO/Novelbright/Billyrrom/Penthouse/黒子首/マカロニえんぴつ/マハラージャン/Mrs. GREEN APPLE/yama/由薫/yutori/Lucky Kilimanjaro/レトロリロン/WurtS/wacci/他
※公演当日要身分証。雨天決行、荒天中止。詳細は問合せ先まで。出演者変更に伴う払戻し不可。入場制限実施の可能性あり。未就学児童は保護者1名につき1名まで入場可、但しエリア制限あり。開場・開演時間は予定のため変更の可能性あり。無料シャトルバスあり。公演内容に関する詳細はhttps://metrock.jpまで。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888
『TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2023』
▼5月20日(土) 11:30
新木場・若洲公園
1日券-12000円
[出演]androp/THE ORAL CIGARETTES/キュウソネコカミ/GENERATIONS from EXILE TRIBE/JUN SKY WALKER(S)/-真天地開闢集団-ジグザグ/w.o.d./にしな/Newspeak/ハンブレッダーズ/04 Limited Sazabys/フレデリック/マルシィ/Mrs. GREEN APPLE/ヤバイTシャツ屋さん/優里/リーガルリリー/reGretGirl/Little Glee Monster/他
※公演当日要身分証。雨天決行、荒天中止。詳細は問合せ先まで。出演者変更に伴う払戻し不可。入場制限実施の可能性あり。未就学児童は保護者1名につき1名まで入場可、但しエリア制限あり。開場・開演時間は予定のため変更の可能性あり。無料シャトルバスあり。公演内容に関する詳細はhttps://metrock.jpまで。
[問]ディスクガレージ■050-5533-0888
『DAIENKAI 2023』
▼7月8日(土)・9日(日) 12:00
東京ガーデンシアター
一日券-8800円
[出演]KEYTALK/キュウソネコカミ/クリープハイプ/四星球/TOTALFAT/BLUE ENCOUNT/ヤバイTシャツ屋さん/千鳥/おいでやすこが/和牛/マヂカルラブリー/チョコレートプラネット/見取り図/金属バット/ロングコートダディ/ニューヨーク/オズワルド/カベポスター/男性ブランコ/空気階段/ミキ/ニッポンの社長/マユリカ/ヨネダ2000/他
※出演者(アーティスト・芸人)は7月8日、9日いずれかの出演となります。
※ご購入前に、DAIENKAI2023ホームページにて<感染症対策に関して>をご確認ください。未就学児入場不可。車椅子での来場はチケット購入前問合せ先まで要連絡。
[問]FANYチケット問合せダイヤル
■0570-550-100
『忘れらんねえよ主催 ツレ伝フェス2023』
▼7月23日(日) 12:00
CLUB CITTA’
オールスタンディング-6500円(ドリンク代別途必要)
[出演]忘れらんねえよ/キュウソネコカミ/時速36km/Hump Back/BIGMAMA/他
※小学生以上はチケット必要。
[問]エイティーフィールド■03-5712-5227
『OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL vol.12〈入場券〉』
▼7月29日(土)・30日(日) 10:00
男鹿市船川港内特設ステージ
7月29日券-9500円
2日間通し券-18000円
[出演]ASH DA HERO/ALI/打首獄門同好会/オメでたい頭でなにより/ORANGE RANGE/キュウソネコカミ/SHANK/10-FEET/TOTALFAT/Dragon Ash/バックドロップシンデレラ/04 Limited Sazabys/HEY-SMITH/MONGOL800/山嵐/ROTTENGRAFFTY/他
※小学生以下は保護者同伴に限り無料。出演者はいずれかの公演に出演。出演者変更に伴う払戻し不可。雨天決行。公演内容に関する詳細はhttps://onrf.jp/まで。
【福岡公演】
▼5月21日(日) DRUM LOGOS
【宮城公演】
▼5月25日(木) 仙台Rensa
【北海道公演】
▼5月27日(土) ペニーレーン24
【広島公演】
▼6月14日(水) 広島クラブクアトロ
【香川公演】
▼6月16日(金) 高松MONSTER
【東京公演】
▼6月22日(木) Zepp Shinjuku(TOKYO)
【石川公演】
▼6月24日(土) 金沢EIGHT HALL
【愛知公演】
▼6月28日(水) ダイアモンドホール
チケット発売中 Pコード:238-747
▼6月30日(金) 19:00
なんばHatch
1Fスタンディング-4800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
2F指定席-4800円(ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料(小学生は保護者の同伴が必要・席が必要な場合は、未就学児童でも有料)。
※会場内ではマスクの着用をお願い致します。
[問]清水音泉■06-6357-3666