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Keishi Tanaka、ずっと実現したかった
「ただ音楽を楽しむ」ための野外ライブ
盟友・村松拓との友情も!
『NEW KICKS GREENSPIA 2023』レポート

3月25日(土)、大阪・服部緑地野外音楽堂で『NEW KICKS GREENSPIA 2023』が行われた。Keishi Tanakaがライブ中のMCで明かしていたが、本公演は約3年前に企画されたもの。しかし、コロナの影響でなかなか開催できず、2年越しにようやく開催が叶った念願のイベントだ。「NEW KICKS」はKeishi Tanakaのバンド編成による自主企画ライブのタイトルで、「GREENSPIA」は毎年秋にthe band apartが服部緑地野外音楽堂で開催するイベント名の一部(『SMOOTH LIKE GREENSPIA』。ぴあ関西版WEBで毎年レポを公開中)。関西のイベンターGREENSとぴあ関西は、Keishiと日頃から関係性が深い。そして今回の共演者の村松拓(Nothing’s Carved In Stone、ABSTRACT MASH、とまとくらぶ)は、彼の親友。出店した「ランドネ」と「フィールドライフ」編集部、「CRAFTROCK BREWING」も活動の中で交流があり、Keishi自ら声をかけた。

つまり『NEW KICKS GREENSPIA』は、Keishiが全幅の信頼を置くチームとともに作り上げたイベント(そして『SMOOTH LIKE GREENSPIA』の兄弟的イベント)なのだ。「ただ音楽をやりたくて企画した」と自身のnoteでも述べていたが、気心知れた仲間と作り出す空間だからこそ、ほどよくゆるく、自由で、未来への希望も感じさせる最高の1日となった。

数日前までは雨予報が出ており、天気が心配されていたが、当日は奇跡の晴天!とまではいかないものの、どうにか雨は降らずにもってくれた。気温は低めで、3月下旬といえども肌寒く、ダウンジャケットでもよいくらいの体感温度。しかし確実に訪れる春を感じさせるように桜が咲き始め、服部緑地野外音楽堂の芝生席の向こうにも、5~6分咲きの桜が顔を覗かせていた。

ステージ上にはイベントキービジュアルのフラッグがはたはたと風に揺らめいている。客席を見ると、真ん中ブロック後方に英語のバルーンとカラフルな風船で「3.25 NEW KICKS GREENSPIA」と彩られた装飾が目に飛び込んできた。周りにはコールマンのミニランタンも置かれ、陽が落ちるとライトアップされた。また、客席の両サイドには、キービジュアルをイメージさせる赤・オレンジ・青・緑のテープが放射線状に張られており、フェスティバル感を醸し出す。これはGREENSスタッフのアイデアによるもの。入場したオーディエンスは皆嬉しそうに写真におさめていた。

Keishiと村松は普段から一緒にキャンプをする仲で、アウトドア雑誌『ランドネ』でも取材を受けているからか、会場に集まったオーディエンスはアウトドアファッションに身を包んでいる人が多いように見受けられた。キッズチケットも販売されていたため、家族連れの姿もあり、穏やかな良い空気が流れていた。

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「ランドネ」のブースでは、メスティンや寝袋などのアウトドアギアやファッショングッズ、『ランドネ』最新号を販売。また、Keishiとバンドでギターを担当する四本晶が毎月連載を担当するアウトドアフリーマガジン『フィールドライフ』も配布されており、開場中や転換中は人々で賑わっていた。

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「CRAFTROCK BREWING」のブースでは「Day Drunk Lager」と「BUTTERFLY」の2種のクラフトビールを提供。「CRAFTROCK BREWING」は、楽曲からインスパイアを受けてビールを造っていることが特徴。社長もバンドマンだそうで、音楽への愛情とリスペクトが根底にある醸造所だからこそのバイブスが素敵だ。音楽イベントも企画しており、Keishiの出演がキッカケで繋がりができたとスタッフの方が話してくれた。どちらも飲みやすい味ということで、オーディエンスはビール片手にゆるゆると自由な時を過ごしていた。ちなみに大阪でもビールを飲める場所があるので、ぜひ検索してほしい。

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定刻になり、お待ちかねのライブがスタート。先攻は村松拓。ソロでのバンドセットはこの日が初めてだ。缶ビール片手に乾杯スタイルで「Yo Yo! よう来たね!」と満面の笑みで登場した村松。ラフでゴキゲンな空気を纏った村松を、客席も大きな拍手で歓迎する。「ちょっと寒いですけど、ハートはね、最大限あっためますから、最後まで楽しんでください。よろしく」と挨拶し、まずは村松自身も所属するバンド・ABSTRACT MASHの小林雄剛(g)と2人で、ABSTRACT MASHの楽曲『アスピリ』を演奏。低めの歌声をゆったりと響かせる。さらに3月にリリースされたばかりのABSTRACT MASHの2ndアルバム『SIGNALS』から『Silent Wheel』を披露。村松のアコギと小林のエレキギターのハーモニーが、春の匂い香る野音の空に溶けていく。曲が終わって少し強めの風が吹くと、椅子に張られたテープが拍手するように賑やかに音を立てた。

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ひとたび歌い出すと低音ボーカルで魅了するが、喋るとゆるい。そこも村松のギャップだ。「こんな感じですよ、僕は。まったりやっていきますんで」と笑顔。初のバンドセットについては「Keishi Tanaka、僕は親友だと思ってるんですけど、彼が2ヶ月前くらい前に"服部緑地でやるんだよね。拓ちゃん出てよ"みたいな。出ますけど、ありがとうございますという感じだったんですけど、"バンドセットどう?"って、最初はマネージャー越しに連絡がきたんですよ。"バンドセット組んでやったことねえぞ"と悩んで、どうしようかなと1回断ったというか、難しいかなという話をしたんです(笑)。それでもどうしてもバンドセットで出てほしいということで、ケツをひっぱたいてもらいました。ありがとうございます!」とKeishiたっての希望で今回のバンドセットが実現したと明かす。ここからはバンドメンバーの梨本恒平(b/ABSTRACT MASH、winnie)と袮津隼(ds/THE ANDS)を呼び込み、4人編成で楽曲を紡いでいった。

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Keishiが村松のために書き下ろした『ラブレター』を「めちゃめちゃ大切な曲」と紹介し、艶のある歌声で丁寧に奏でてゆく。Keishiらしいメロディーの楽曲だが、バンドサウンドになることで深みを増した双方の化学反応が心地良い。

「大阪に来るのが嬉しすぎて、昨日メンバーと夜中の3時くらいまで飲んでて」と話しつつ、マイクに近づけた状態で(ステージに上がってから)2本目の缶ビールをプシュッ! 「まだ皆さん空気感全然掴んでないですよね。僕もソロのバンドセットは初なんで、まだ空気感掴んでないんですけど、だいぶ素の状態を皆さんにお見せしている感じです(笑)」とゆるーい空気を漂わせた後は「ボリューム上げます」と、『朝も夜も』でロックな一面も見せる。さらにピアノを同期した『You're My Friend』ではエモーショナルな展開に。キメるところはしっかりキメる。そこはさすがだ。

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最後は「ソロバンドの概念がいまいちよくわかってなくて。アレンジどうしようかなと思ってて。ギターの小林くんにお願いしたんですよ。音源上がって聞いてみたら、天才っすよね。最高です」と、フィナーレ感のある壮大な同期から始まった『遠くまで行こう』でライブを締め括った。梨本はシンセベースも兼任し、サウンドの厚さは最高潮に。服部緑地にスケールの大きなサウンドを響かせた。初のソロバンドセット、実に様々な表情を見せてくれた村松拓だった。

greenpia230412-10.jpg続いては我らがKeishi Tanaka。田口恵人(b)、四本晶(g)、別所和洋(key)、小宮山純平(ds)、黒須遊(sax)、阿部健太(trp)のバンドメンバーが先にステージにスタンバイ。やがてホーン隊がフューチャーされたイントロが鳴り響くと、その気合いがわかるほどテンション高くKeishi Tanakaが登場。客席も総立ちで歓迎する。Keishi的に言うとかなり「フンフン」していたのではないだろうか。「行こうぜ大阪!」と勢いよく『What A Happy Day』を放つ。夕暮れで気温が下がり、肌寒さは増していたが、自身もオーディエンスも熱くするようにステージを右へ左へと動き回り、呼びかけるように力強く歌う。「1人も置いていかないぜ大阪!」という叫びから客席との気持ちがグッと近づき、クラップも発生。田口のベースプレイからそのままジャジーなセッションアレンジを経て、シームレスに『This Feelin' Only Knows』へ。グルーヴィなサウンドで空気を動かし、あっという間に会場全体を巻き込んでゆく。今年1月にリリースされた最新アルバム『Chase After』からは、カラフルな『Call Me Up』をドロップ。ひとときも音を止めないスタイルで、次々に楽曲を披露していった。Keishiがキーボードの前に座り、少しトーンダウンして『雨』をしっとりと歌い上げると、美しいサウンドスケープが浮かび上がった。

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MCでは「改めまして、タナカケイシです! 降らなかったね」と曇天を見上げて笑う。今日のイベントについては「構想3年なんですよ。1年ぐらい考えて、2年前に形にできそうなタイミングがあって、発表もしたんですけど、直前でライブしてくれるなと言われて。2年経てやっと今日を迎えることができました」と経緯を述べた。「野外で、何でもないタイミングで、ただ音楽を楽しむ1日を作れないかなというので、大阪ならやれるんじゃないか、皆来てくれるんじゃないかなってことで大阪にしました」と言うと、会場からは大きな拍手が贈られる。「声出していいんだよ。7人編成で来れて嬉しいです!」の言葉には、あちこちから「フー!」という歓声が沸き起こり、Keishiもメンバーも嬉しそうに笑顔を見せた。

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盟友・村松については「今年誰かを誘うならあいつしかいねえだろうということで、村松拓バンドセットありがとうございます!」と感謝を述べると、芝生席でクラフトビール片手に見ていた村松が手を挙げて応える。初のバンドセットにも関わらず「できると思うよ、やればできんじゃない?」と説得し続けたKeishi。「OKしてくれた彼の漢気に拍手を」とリスペクトと賞賛を贈る。

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後半は「ハッピーな曲を持ってきてるんでよろしくお願いします」との言葉通り、メンバー紹介からそれぞれのソロプレイをバッチリキメて大盛り上がりした『One Love』を筆頭に、アーバンな『The Smoke Is you』、グルーヴィな『Let Me Feel It』を続けて披露。客席をダンスフロアに変えると自身も上着を脱ぎ捨てて、さらに『Floatin' Groove』を投下して熱量を上げてゆく。そこで「まだまだいける?!」と客席前のスペースに飛び降りたKeishi。サビでは客席の間を練り歩き、高らかに歌う。もちろん会場は大興奮。2番のサビはそのままオーディエンスに囲まれて歌声を響かせ、「Singing!」を合図に皆で大合唱。たまらない一体感で包み込む。その様子を見て、Riddim Saunter時代からハンドマイクで客席に軽やかに飛び出していったKeishiの姿が思い出され、思わず胸が熱くなった。コロナ前に何度も味わった、最高にピースフルでハッピーな時間。それがどんなに特別なことだったかが、今はよくわかる。ひょいっと柵を越えてステージに戻ったKeishiは「確実に戻ってきてるね、日常が。これからも歌い続けたいし、このイベントも成功させるし、俺自身もまだまだ成長する気満々なんで、皆さんついてきてください」と力強く語りかけ、最後にコロナ禍で書いた『I'm With You』を、目の前の1人ひとりに向けて歌い上げた。Keishiの想いの強さが本当に伝わるパフォーマンスで、客席も一心にそれを受け止める。

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アンコールでは、改めてGREENSとぴあ、スタッフに感謝を述べてから、「今日一緒に出てくれた村松拓バンド、ありがとうございます。俺が拓ちゃんに書いた『ラブレター』という曲を今日バンドで初めて見たわけですけど、逆に拓ちゃんが俺に書いてくれた曲もあって。こっちの曲は一緒にやっちゃえばいいんじゃないかなと思ってるんです」と言うと、客席からは歓喜の声が上がる。呼び込まれた村松がギターと缶ビールを持って登場。おもむろにポケットからもう1本缶ビールを取り出してKeishiに渡すと、マイクの前でプシュッ! 2人で乾杯し、村松がKeishiに書き下ろした『青のサーカス』を8人で大切そうに奏でる。歌い終え、笑顔で顔を見合わせたKeishiと村松は握手&ハグ。

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優しくあたたかな雰囲気を経て、ラストに演奏されたのは『Just A Side Of Love』。思わず体が動き出してしまうダンスナンバーだ。紗羅マリー(LEARNERS)とのデュエットソングで、彼女のパートをバンドメンバーが歌うこともあるが、今回はどうなるのか?と見守っていると、ステージに残った村松が2番のAメロを歌い、これまた大盛り上がり。Keishiと村松はまるで子どもが鬼ごっこをするかのようにスキップでステージを一周してじゃれ合っていた。そんな和む場面がありつつも、ラストスパートはホーン隊の2人が前に出て、黒須が客席にマイクスタンドを向け、シンガロングを促す。素晴らしい一体感に包まれ、最後は全員でジャンプ! Keishiもやりきった! と言わんばかりに両手の拳を突き出して晴れやかな笑顔を見せる。こうして『NEW KICS GREENSPIA 2023』は最高の締めで大団円を迎えた。

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Keishiが実現したかったという、手の届く範囲の信頼する仲間とオーディエンスと、ただ音楽を楽しむという目的はしっかりと果たされた。タイミング的にアルバム『Chase After』リリースツアーの間の開催となったが、コロナ禍において色々と悔しい想いをしてきたKeishiだからこそ、今回のイベントはこの先の希望の象徴にもなったのではないだろうか。彼の作り出す景色は本当にあたたかい。どうやら次回も計画されているようなので、また再会できる日を楽しみにしていよう。

Text by ERI KUBOTA
Photo by 小川星奈




(2023年4月12日更新)


Check

Set List

『NEW KICKS GREENSPIA 2023』
@服部緑地野外音楽堂
2023.3.25 Sat

村松拓
1. アスピリ
2. Silent Wheel
3. ラブレター
4. ただいま
5. 朝も夜も
6. You're My Friend
7. 遠くまで行こう

Keishi Tanaka
1. What A Happy Day
2. This Feelin' Only Knows
3. Call Me Up
4. 雨
5. One Love
6. The Smoke Is you
7. Let Me Feel It
8. Floatin' Groove
9. I'm With You

en1. 青のサーカス
en2. Just A Side Of Love

Live

Keishi Tanaka

『ITABASHI × TANITA × asian gothic label presents ITa FES “the band apart 25th anniversary”』
チケット発売中 Pコード:234-430
▼4月16日(日) 11:30
荒川戸田橋緑地 バーベキュー場
1DAY TICKET(特典付き)-7990円(コラボ歩数計付)
1DAY TICKET-5490円
[出演]the band apart/渡邊忍(acoustic live)/TGMX(acoustic live)/フルカワユタカ(acoustic live)/高本和英(acoustic live)/Keishi Tanaka(acoustic live)
※小学生以下は無料。雨天決行/荒天中止。2DAYS TICKETをご希望の方は、4/15公演の席種から「2DAYS TICKET」を選択して下さい。その他詳細は公式HPまで。https://asiangothic.net/itafes/
※販売期間中は、インターネット(PC・スマートフォン)のみで販売。1人4枚まで。チケットは、4/9(日)朝10:00以降に引換えが可能となります。
[問]ディスクガレージ■050-5533-0888

『Rainbow’s End CAMP 2023』
チケット発売中 Pコード:240-242
▼5月13日(土) 12:00
京都府立府民の森ひよし
前売入場券-5000円(必ず1人1枚必要!!(保護者同伴の方に限り中学生以下は無料)) 1)
フリーオートキャンプサイト-5000円(区画割りなし、車1台+テント1張+タープ1張) 2)
AC電源付オートキャンプサイト-8000円(区画:10m×10m (1台分の駐車スペースあり)) 3)
オートキャンプデッキサイト-7000円(区画:6m×6m (1台分の駐車スペースあり)) 4)
オートキャンプ露地サイト-6000円(区画:6m×6m (1台分の駐車スペースあり)) 5)
フリー(手持ち,デイ,日帰り)-3000円(区画割りなし、テント1張+タープ1張、1台分の場内駐車券付)
2台目以降場内駐車券-500円
[出演]organic dustbox/FOMARE/DENIMS/Keishi Tanaka/Rickie-G/かりゆし58/G-FREAK FACTORY/韻シスト/CHOZEN LEE/五味岳久/RowHoo/BANYAROZ/SUNSHINE DUB/Sawa Angstrom/RITTO(良音祭)/Olive Oil(良音祭)/Jambo Lacquer(良音祭)/他
※ご来場される方は前売入場券(必ず1人1枚必要)+1)~5)のお好みのサイトチケット(1グループにつき1サイト/全5種)のご購入が必要です!
※保護者同伴の方に限り中学生以下は無料。雨天決行。荒天、天災時はオフィシャルHPやSNSなどで開催の有無を発信いたします。開場/開演時間は変更の可能性あり。【公式HP】http://www.rainbows-end.jp/
※インターネット(PC・スマートフォン)のみで販売。チケットは、4/27(木)朝10:00以降に引換えが可能となります。
[問]KYOTO MUSE■075-223-0389

『NEW KICKS BY HABIT』
▼6月29日(木) 19:00
LIVE HOUSE FEVER
前売り-4500円(ドリンク代別途必要)
[共演]眞名子新/小宮山純平(ds)/Keito Taguchi(b)
[問]LIVE HOUSE FEVER■03-6304-7899

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