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愛、願い、祈りが込められた全10曲
リズム隊ユニットが作り出す『INORI』の世界
dawgssインタビュー

ベース・ボーカルの森光奏太と、ドラムスの上原俊亮からなる2人組ユニット・dawgss(ドーグス)が4月5日に1stフルアルバム『INORI』をリリースした。彼らは元々Spice rhythmという名前でリズム隊ユニットとして活動していたが、2022年10月に改名、シングル『ORANGE』でRallye Labelからデビューした。2人は各々サポートミュージシャンとして藤井風、竹内アンナ、Anlyなどのライブや作品にも参加。本作は、盟友でありライブのサポートメンバーをつとめるピアニストの和久井沙良やギターのイシイトモキ、レコーディングには小西遼(CRCK/LCKS、象眠舎)や真砂陽地、半田彬倫、菰口雄矢、ボーカルディレクションにAAAMYYYやTENDREを迎えた意欲作。経験に裏打ちされた高い演奏力、森光が作るハイセンスな楽曲と柔らかい歌声で、聞きやすくもバラエティ豊かな全10曲が収録されている。今回はぴあ関西版WEB初登場の森光と上原にインタビュー。結成の経緯からアルバムについてまでたっぷりと話を聞いた。6月18日(日)には東京・WALL&WALLでワンマンライブも開催される。

初対面で感じたお互いの魅力と波長


――お2人は2020年からSpice rhythmとして活動されていましたが、いつどのように出会ったんですか。

森光「あれ何年だった?」

上原「俺の上京前だから、2019年の1~2月とかだった気がしますね。お互いの共通の知り合いのAnlyというシンガーソングライターを通して会ったんですけど、Anlyと3人でスタジオに入って、その時に初めて会った感じです」

――じゃあ、初対面で演奏されたんですね。

森光「そうそう」

上原「Anlyが同世代で、"すごいベーシストを見つけた"って。僕がたまたま上京前に東京に伺う機会があったので、そのタイミングで"3人でスタジオに入ろう"と連絡をくれて」

――Anlyさんが繋げてくれたと。

森光「俊ちゃん(上原)が上京する前に知り合えたのも、これだけ僕らが一緒にいるようになった理由かなと。上京してからもいつかは出会ってたと思うんですけど、上京前と後に出会うのだと、また違う結果だったかなと思ってます」

上原「僕も東京にそんなに当てがあるわけじゃなかったし。奏ちゃん(森光)と会って連絡先を交換して。そこからの付き合いですね」

――上原さんは沖縄から音楽をやるために上京しようとされていたんですか。

上原「そうです。僕の父親がベーシストで、琉球音楽と現代楽器を融合させて沖縄ポップをやってるりんけんバンドに所属してるんですけど、その影響で小さい頃から音楽が周りにあって。3歳からドラムを始めたり、高校卒業してアメリカに留学したり。帰国後1年ぐらいは沖縄にいたんですけど、だんだん刺激が足りなくなってきて、上京してみようかなと」

――Anlyさんとの繋がりは上京前からあったんですか?

上原「そうですね。僕は一方的にAnlyのことを知っていて。同い年ですごいシンガソングライターがいると知ってたんですけど、Anlyの所属している事務所の方と沖縄でたまたま知り合うことがあって、"僕Anlyさんの大ファンで。もしドラマーが必要だったら言ってください"みたいな生意気なことを言ってたんですけど、本当に連絡をくれて、東名阪ツアーのドラムを叩かせてもらいました。それが2018年とかだったと思うんですけど、Anlyとはそこからの付き合いですね」

森光「僕は高校を卒業してすぐに上京して専門学校に1年だけ行って、そこからずっとフリーで活動していました」

――音楽活動を始めたのはいつですか?

森光「僕も10歳からベースを始めて。キーボーディストの親父と一緒にライブをやったり、同年代の子とバンド組んだりして。ライブは結構地元の広島でもやっていたので、東京から来るフュージョン系の大御所ミュージシャンの方と知り合えて。上京後はそういう方に呼んでもらって、ちょこちょこ仕事をしてた感じです」

――サポートミュージシャンとして。

森光「そうですね。僕はスタジオミュージシャンになりたいと思って上京しました」

――初対面でお互いの魅力を感じたんですか。

上原「うん、感じました。奏ちゃんは既に東京でミュージシャンとして活動もバリバリしてたんで、年は1個下だけど、やっぱり現場で実際にやってる人たちのパッションや熱量が違うなと。初めて3人でスタジオ入った時にもちろんテクニックも"上手っ!"となったんですけど、それ以上に熱量を感じて。しかも沖縄からひょっこり上京してきそうなドラマーにフランクに声をかけて、東京に来たら連絡取り合いましょうよと言ってくれる。僕も上京で不安だったけど、こんなにすごいベーシストとこんなにすぐに知り合えたのも何かの縁だなと。そこから"奏ちゃんだったら間違いないな"みたいな気持ちが芽生えて、どこかで確信に変わっていってった気がします」

森光「僕も俊ちゃんに会った時"すごいな"と思ったけど、正直今思ってるほどではなかったですよ。上京してきて、下北沢にあるmusic bar rpmというセッションバーに2人でよく行ってて、俊ちゃんの演奏を見た時に"やっぱこの人すごい"と思って、そこでようやく俊ちゃんのすごさがわかったというか。多分1番最初に会った時は1歩引いてたのかな。で、rmpの上にある大好きなたこ焼き屋で2人で話して。"もう俊ちゃんしかいないな"と思ってたから、今まで年上の人にタメ口はあまり使ったことなかったんですけど、"タメ口にしていいですか"と聞いてOKもらって、そこから仲良くなりました」



RALLYE LABELとの出会い


――2人でユニットを組もうとなったのは?

上原「上京した年は僕もそんなに音楽の仕事があったわけじゃなかったんですけど、コロナになって仕事がぱったりなくなってしまって。人と演奏する機会もほぼゼロになったところで、時間もすごくあったし、奏ちゃんと2人でリハスタに入って、ベースとドラムだけのセッション動画をインスタに上げようとなったのが最初です。そこから始まったのかな」

森光「そうだね。最初はリズム隊で呼んでもらえるように、2人のブランディングのためにSpice rhythmを始めたんです。全然歌ってなかったし、演奏だけでインスタに動画を上げてたんですけど、やってくうちに曲を作りたいという気持ちが出てきて。でも自分で歌うんじゃなく、アーティストの知り合いに歌ってもらっていました」

――Spice rhythmでは、シングル『MAJIC』まではフィーチャリングゲストを迎えていましたね。最初は自分で歌うつもりはなかった?

森光「はい。その形でワンマンも2回ぐらいやったのかな。その後2022年5月に『MAJIC』をリリースして。『MAJIC』は"この人に歌ってほしい"みたいなのがパッと思い浮かばなくて、ちょっと自分で歌ってみようかなと思って歌ったら、"意外といけるじゃん"となってリリースして。そしたらRALLYE LABELさんが連絡をくれたという」

――なるほど、そこで出会うんですね。近越さん(RALLYE LABELオーナー)は『MAJIC』を聞いて連絡されたんですか?

近越「その前からは2人の存在は知っていて、動画も見てて。もちろん興味はあったんですけど、当時はリズム隊でフィーチャリングありきのユニットっぽかったので、そういうテーマでやってるのかなと思ってたんです。で、連絡したら、"ちょうど来週、自分で歌ってる曲を出すんです"と。それで送ってくれたのが『MAJIC』で、"自分で歌えるんじゃん"みたいな」

――森光さんは、歌うのは元々お好きだったんですか。

森光「そうですね。小学校の時に親父がやってる音楽教室で同世代バンドに入って、同時にベースも始めて、ボン・ジョヴィやエアロスミスとかの洋楽を適当な英語で歌ってました。でも普通に広島の小中高生だったからEXILEとかも好きで、カラオケで歌うのはめっちゃ好きだったんですよね。歌うことに関しては割と楽しいけど、別に人前で歌おうとは思ってなくて。『MAJIC』をキッカケに歌うようになりました」

――RALLYE LABELから声をかけてもらった時はどう思いましたか。

森光「Spice rhythmでリリースを始めた時ぐらいに、俺"いつかこの事務所入りたい"と俊ちゃんに送ってたのがRALLYE LABELだったんですよ」

――へー!

森光「TENDREさんもすごく好きで、オシャレな人がいっぱいいるなって(笑)。アーティストがたくさん所属する事務所に入るよりは、厳選されたところに俺らは入りたいと思って。2人のグループのノートにRALLYE LABELのHPも貼ってて。そう思ってたらRALLYE LABELからフォローしてくれました。で、僕らからメッセージを送って、『MAJIC』リリース後に1回会って話しましょうとなりました」

――RALLYE LABELと一緒にやるようになって、音楽性も少し変わりましたね。フューチャリングゲストを入れていた時は、もう少しソウルフルというか。

森光「そうですね。dawgssを始める前と今だと気持ちも違うんです。dawgssを始める段階で、"2人で売れたい"というマインドになって。それまではサポートミュージシャンの意識があったんですけど、アーティストの意識に切り替わりました。同時により多くの人に聞いてもらいながら、僕らの良さも活かせるような曲が良いなと思って、今の曲調になってるかもしれないですね」

――意識が切り替わった瞬間というのは、近越さんとのやりとりの中で生まれたんですか?

森光「最初に近越さんが、"もし一緒にやるんだったら、ここでこうなってこれをやろう"みたいなスケジュールを立ててくれて。それを聞いた時に、"俺らこんなに行けるかもしれないんだ"と。それならやりたいと思ったのがキッカケです」

――彼らの可能性を見ておられたんですか。

近越「やるなら最低限それぐらいはやらないと、一緒にやる意味がないなと思ったのと、最初に声をかけて、奏太が作ってるデモを断片も含めてたくさん送ってくれて、その時点で今の形に近いポップな曲もある程度多かったんです。そこを広げることを考えたら、そのプランでやらないといけないなと思ったし、やれるなという確信があった。コロナは収束してないものの、2023年はライブももう少し戻ってくるだろうと考えると、提示したプランニングでやりたいなというのはありました」

――なるほど。上原さんはRALLYE LABELと一緒にやると決まった時、どんな気持ちでしたか。

上原「奏ちゃんと話していたレーベルから声がかかったってことは、やっぱり何か可能性を見出してくれているんだろうなと受け取れたので、頑張ればいけるんじゃないかと。それこそ近越さんとがっつり契約をする前に、スケジューリングを出してくれたことで、漠然としていた道筋が見えたことが、気持ちの変化に繋がったのかなという気はします」





アーティストとしての視点と、サポートミュージシャンとしての視点


――ユニット名をdawgssに改めた理由は?

森光「1stシングルにしたいというのがあったんです。Spice rhythmからだと延長になっちゃうから、名前を変えると1stシングルになると近越さんから教えてもらって。だし、Spice rhythmって少し後ろにいるイメージというか、リズム隊というのが強すぎてアーティスト感がないから、変えるタイミングは今しかないなと。でも最初は全然思いつかなくて。Spice rhythmが自分たちの中でハマりすぎてるし、皆も"Spice"と呼んでくれてるのですごく悩みました。Spice rhythmでは割と犬をモチーフにロゴやジャケットを作ってもらってたので、犬をモチーフにもう1回考えようと調べてたら、"dog"の違う書き方を見つけて。ね?」

上原「"dawg"というヒップホップ系の人が使うスラングを奏ちゃんが見つけて。意味を調べると、犬はもちろんだけど、"仲間、ダチ"みたいな意味もあって、"めちゃ良いじゃん"となって。ユニットだから複数系にして、あとは奏太と俊亮で2人とも下の名前の頭文字がSから始まるので、dawgssという綴りにしました」

――お2人の仲の良さも伝わってきますね。

上原「そうですね」

――お2人はアーティストとしての視点とサポートミュージシャンとしての2つの視点を持ってらっしゃると思いますが、曲作りはどんなことを心がけておられますか。

森光「僕は完全に別です。けど今まで培ってきた技術的なものはフルで注ぎ込みたいと思ってて。サポートの時は他の人の音とか色々考えなきゃいけないことが多いので、本当に"ベーシスト"としてやってるんですけど、dawgssのレコーディングやライブの時は、1歩引いたプロデューサー的な視点でやりつつ歌ってる感じですね」

――自然に切り替えているんですか?

森光「そうですね。特に超意識はしてないです」

上原「サポートミュージシャンとしてドラムを叩く時はやっぱりサポートなので、ある程度支える方に重きを置いてるんですけど、dawgssは自分たちのユニットだし、色んなアプローチをしてみたいと思えるので、普段やらないような演奏を入れられる。自分の色を出せる場所。そういう気持ちの違いはありますね」

――やれることも変わってくると。

上原「サポートだと音源のドラムが僕じゃないことが当たり前にあるので、その人の演奏を汲みながらライブをするんですけど、dawgssでは完全にオリジナルアーティストの気持ちになれますね」

――サポートがdawgssの活動に役立っていたりもしますか。

上原「それはもちろん、めちゃくちゃ言えることだなと思います。"こういう風に叩いてほしい"と求められることに関しては、逆に自分の中にないものがあるので。"この叩き方やフレーズは自分の中でなかったな"というものを吸収して、自分たちの音楽に還元できる。メリットと言ったらあれですけど、すごくプラスにできていますね」

――作詞作曲は基本的に森光さんですか。

森光「そうです。最初にガッとしっかりデモを作って、もっとこうしたいという時に俊ちゃんに意見をもらって、そのままレコーディングする流れです」

――スタジオで合わせていかれるんですか。

上原「そうですね。最初に送ってくれるデモ音源に、奏ちゃんの中で多分かなり僕を意識してくれているドラムが打ち込まれているので、僕も聞いてて"ん?"みたいなことがあまりなくて。その中で広げられるところを広げたり、"もうちょっとこうしたら面白いかも"みたいな提案もするんですけど、結局レコーディングの現場に入ってから音を合わせるので、録りながら作っていくみたいな感じですかね」

森光「レコーディングの日に初めて俊ちゃんに叩いてもらうんですけど、俺は割と俊ちゃんのドラムをイメージして打ち込んでるし、"ちょっとこうしよう"みたいなのは何となく出てくるけど、"もっとこうしたい"というのもそんなになくて。いつもパッとやったらそれでOKみたいな感じですね」

上原「大枠を大変更みたいなことがあまりないのは、上京してからずっと一緒に音を出してきてるから。それが出てるなとすごく思います」



僕だけにしか叩けないフレーズやアイデアを入れたい(上原)


――『INORI』はdawgssとしての1stアルバムということで、どんな作品にしたかったですか。

森光「元々企画の時に話してたのは、アルバムじゃなくてEPだったんですよね。シングルも5曲リリースして、プラス2曲ぐらいでって感じだったんですけど、ストック曲も結構あったので、もうアルバムにしちゃおうかみたいな話になって、アルバムの気持ちになっていって、そこから作った『夢中』(M-8)や『MOON WALK』(M-7)、シングル以外の5曲がアルバムにしようと決めてから書いた曲なんです。シングル曲はそんなにアルバムを目指して作ってなかったので、自分の中ではちょっと分離してるんですけど。でも僕が歌詞を書くと、割と"愛"とか"願い"が表れた歌詞になるなと思って。特に『祈り feat.さらさ』(M-5)がすごく好きで。『祈り』を1番聞いてほしい気持ちもあるし、どの曲もやっぱり"愛、願い、祈り"がすごく想像できるなというので、『INORI』というアルバムタイトルになりました」

――森光さんの楽曲は歌詞も音も優しいですよね。現実社会の憂いを感じさせつつも、そこで終わらない。希望や幸せな世界がちゃんとあることを感じさせてくれる、あたたかい楽曲が多いなと思って聞いていました。

森光「ありがとうございます」

――『祈り』はさらささんがボーカルに入ってらっしゃいますね。とても気持ち良い曲です。

森光「ボーカルディレクションのAAAMYYYさんに、さらさちゃんと声がちょっと似てると言われて。確かにさらさちゃんも音域が高い方ではないので、割と近いなと思ってて。友達に聞いてもらったら、さらさちゃんが歌ってるパートも俺が歌ってると思ったぐらい。それも相まって声が混ざったのかなと思います」

――さらささんに声をかけた理由は?

森光「近越さんが提案してくれました。和久井沙良ちゃんのライブをCOTTON CLUBでやった時に彼女も見に来てくれたんですけど、もちろん歌も聞いてたから、同年代だしやりたいなと思ってお願いした感じです」

――コーラスには上原さんも参加されていますよね。

上原「ちょこちょこ歌ってます」

――何か意識したことはありますか。

森光「俊ちゃんの音域が割と低めで、僕は高くて、ちょうど良い感じに違うんですよね。基本的に僕が主メロを歌って、サビの大事なところや歌詞で伝えたいところを俊ちゃんにオクターブ下で歌ってもらってる感じです。本当にしっかり聞かないとわかんない人も多いと思うんですけど、僕的には2人の声が入ってるのをすごく大事にしたいなと思ってます」

――『祈り』のドラムはどのように作っていかれたんですか。

上原「曲自体はすごく軽快でリズムが跳ねてて、でも跳ねなかったりするところもあるんですよね。実は曲の中でリズムの変化があって、リズム的な視点で言うとそれを行ったり来たりする曲なんです。曲は軽快に進んでいくけど、演奏的にすごく難しい。ちょっとニッチな話になっちゃうんですけど、軽快さをなくさないように演奏しなきゃいけないのが難しいけど難しさを伝わらせすぎてしまうと逆にノイズになるから、邪魔しないよう、スムーズに演奏するように意識していますね」

――上原さんのドラムは、すごく主張してるわけじゃないけど安心感がある。音数も多い中でまとまっているし、アンサンブルを支える上原さんのドラムをすごく感じます。

上原「ありがとうございます。本当にそこは自分の中でも意識していて。リズム隊のユニットで旨味は残したいけど、でもやっぱり歌モノの曲は歌を1番にしたい。そこは邪魔しないようにしたいなと思うんですけど、リズム隊の良いエッセンスをちょこちょこ曲の中に残す感じにしていますね」

――具体的にはどの部分ですか?

上原「全体的に色々散りばめてます。『祈り』に関して言うと、曲間でドラムフィルだけになる、ドラムだけがスパッと抜かれるところがあって、敢えてズレてるように叩いてるんですけど実はハマってる。多分一般的に聞いたら、"何か間違ってない?"みたいな感じなんだけど、実は間違ってない。僕の中で勝手に楽しんでるところがあります。でも周りのミュージシャンの方に、"あそこのフィルどういう解釈?何でああいうのが出てくるの?"と言ってくれる人がいたりして、刺さる人には刺さってるんだなと。他の曲にもそういうところがちょこちょこあって、僕だけにしか叩けないフレーズやアイデアが入れられたらいいなと思ってやってますね」



才能の融合と連帯から生まれる良曲たち


――和久井沙良さんとの関係はdawgssにとって大きいのかなと思います。和久井さんもお2人との出会いが大きかったとインタビューでお話されてるのを見まして。

森光「沙良ちゃんとの出会いも下北沢のrpmで、マスターが"すごい子がいる"と出会わせてくれて。俊ちゃんと最初にやった時もそうだったけど、沙良ちゃんとやった時も初めての感覚じゃない、前世で一緒にやってたんじゃないかみたいな感覚だったんです。それで沙良ちゃんが自分のプロジェクトでも呼んでくれて、すごく仲が深まりました」

――『Rude』(M-1)と『Aurora』(M-6)は和久井さんとの共作ですが、どのように作曲されたんですか。

森光「インストを2曲作ろうと思ったんですけど、僕1人で作ってたらSpice rhythmでやってたような、ちょっとファンクっぽいインストになりそうだったんです。となると他の曲とのマッチが良くないなと思って、鍵盤の人と一緒に作りたくて、沙良ちゃんにお願いして家に来てもらって、もう1時間半とかで2曲作っちゃって。本当にパッとできた曲ですね」

上原「僕も制作現場にいたんですけど、本当に気づいたら出来上がってるくらい早くて。多分2人とも、お互いの考えてることや音にフォーカスする力があって、ちゃんと考えられるから、すぐ曲ができたんじゃないかなと。2人の作曲力はすごいなと思いながら、隣で見てました」

――ドラムはどのように入っていかれたんですか?

森光「沙良ちゃんのプロジェクトでは、俊ちゃんがずっと細かいビートを叩いてることが多くて。『Aurora』も最初"そういう感じで"と沙良ちゃんが言ってたけど、俊ちゃんは"dawgssでそんなに叩く?"と言ってて。その場ではすぐできないからレコーディングでやるしかないとなって。最初は『Aurora』も結構音数多めで録ってたんですけど、"何か違うね"となって、"俊ちゃんの好きにやってみて"と言ったらああなりました」

上原「やっぱり実際にやると気づきが早いですね」

森光「歌録りの前日に俊ちゃんが叩いてくれたおかげで、あの歌詞が出てきたなと思うし、曲のテンション感やジャンル感を俊ちゃんが作った感じはあります」





皆を引っ張っていけるように、良い曲を作りたい(森光)


――今回のアルバムにどんな手応えを感じていらっしゃいますか。

上原「全曲を通して聞いた時に、良い意味でジャンルに囚われすぎてないというか、色んな音楽性が込められているアルバムだなと思います。自分たちが元々楽器奏者だった強みを出している曲、1歩引いて支える方に特化した曲、これまで一緒に音を出して培ってきた引き出しが色んなところに散りばめられていて、聞いてて本当に飽きが来ない。メロディーもポップでキャッチーだし。リズム隊ユニットの出してるアルバムだからと言って、ちょっと敬遠されてしまうこともあるかもしれないですけど、本当にそんなことないから、1曲でも聞いてみてほしいなって。多分すごくイメージが変わるアルバムだと思います」

森光「僕の中での良い曲はサビがキャッチーというか、1回聞いた後に誰でもすぐ歌えることだと思うんですよ。もちろん良い曲もあると思うんですけど、まず僕は皆が口ずさめる曲が作りたくて。歌モノの曲はそれがちゃんとできたと思ったし、アルバム制作時のモチベーションとその前のモチベーションで僕的には少しズレもあるんですけど、すごく良いまとまり方をしたアルバムだと思います。だから、次大丈夫かなみたいな(笑)。不安は若干あるっちゃありますけど、でもこれが作れたなら次もまた良いものが作れそうだなって」

――良い作品ができたが故に、次どうしようと。

森光「そうですね」

――ジャケットもとても綺麗ですよね。琥珀の中に犬ですか?

森光「そう。この間ジャケットを撮ってくれたカメラマンのフジイセイヤさんがこの琥珀を持ってきてくれて」

――手作りなんですね! フィギュア的な何かが入ってるんですか。

上原「入ってるんですけど、色んな犬を掛け合わせて作られた、どこにも存在しないキメラ的な犬なんだと言ってて」

森光「写真の上に層を重ねて作ったらしいです」

上原「尋常じゃない時間がかかってる」

――ユニット名の由来や意味を知った上でこのジャケットを見ると感動しますね。これからの夢やビジョンはありますか。

上原「dawgssとしてデビューしたことで、人からの見られ方がめちゃくちゃ変わるだろうし、"dawgssの人だ"って多分どんどんなっていく。だから気持ちの切り替えというか、どこに行ってもどこに出ても、アーティストとしても人としても、もっとちゃんとしなきゃと思って。もしかしたらめちゃくちゃ有名になっちゃうかもしれないと考えたら、ちゃんとしようと思う」

森光「(笑)」

上原「そう思わせてくれるくらい、将来色んなことが実現できていくんじゃないかなという想いを抱けます。これからライブもどんどんしていって、2人のことを認知してくれたらすごく嬉しいですね」

森光「どこかのタイミングで決めたんですけど、僕は俊ちゃんの彼女でも結婚相手でもないけど、Spice rhythmもdawgssも一生引っ張っていきたい。最初は俊ちゃんだけだったけど、今はサポートしてくれる沙良ちゃんやイシイちゃん、RALLYE LABELの皆さん、関わってくれる皆を導きたい。良い音楽やってるから幸せとか、カッコ良いから幸せというのもそうだし、ちゃんと皆を引っ張っていけるように、これからも良い曲を作りたいなと思ってます」

――『ORANGE』(M-4)に込められた気持ちはそれですか。

森光「ああ、そうですね。それもありますね」

――同世代アーティストとの連帯もdawgssの強みなのかなと思います。

森光「僕らの世代ってミュージシャンでも異常にアーティスト味の強い人が多いというか。ギターのイシイちゃんも自分の名義でリリースしてて、それもまた僕らの世代の個性かなと思うので、そこは大事にしていきたいですね」

Text by ERI KUBOTA




(2023年4月27日更新)


Check

Release

2人と仲間の才能が凝縮されたdawgss初のフルアルバム

『INORI』
発売中 2750円(税込)
DDCR-7119_5

《収録曲》
01. Rude
02. あいこ
03. enemy
04. ORANGE
05. 祈り feat. さらさ
06. Aurora
07. MOON WALK
08. 夢中
09. MAJIC
10. FINALE

Profile

ドーグス…ベース・ヴォーカルの森光奏太と、ドラムスの上原俊亮による二人組ユニット。共通の知人を通じて知り合った2人は2020年よりユニットとして活動を開始し、数々のセッション動画をSNSに投稿し話題を集める中、2022年にdawgssと名前も新たに「ORANGE」でデビューを飾る。それ以降「あいこ」「enemy」といった楽曲を次々にリリースし、そのソウルを軸にしたグルーヴ感とメロウネス、ベースとドラムを中心とした抜群バンド・アンサンブルが高い評価を獲得。また、それと並行し藤井風や、Yaffleといったアーティストのレコーディングやライブのサポートを務めるなど、活動の幅を益々広げている。デビュー曲「ORANGE」、MELRAWがホーン・アレンジにて参加した「FINALE」、ゲスト・ヴォーカルに”さらさ”を迎えた最新曲「祈り feat. さらさ」といった先行楽曲に加えて、ライブでのサポートメンバーでもある和久井沙良やイシイトモキが参加した「MOON WALK」「夢中」「MAJIC」など全10曲を収録。また、レコーディングには小西遼(CRCK/LCKS, 象眠舎)や真砂陽地、半田彬倫、菰口雄矢や、ヴォーカル・ディレクションとしてAAAMYYYやTENDREも参加。アートワークはこれまでdawgss一連の作品を手がけるフジイセイヤとRakが担当。

dawgss オフィシャルサイト
https://music.spaceshower.jp/artist/12768216/

https://linkfly.to/dawgss


Live

dawgss「INORI」リリース記念
ワンマン・ライブ

Sold out!!
▼6月17日(土) WALL&WALL

5月13日(土)一般発売 Pコード:239-028
▼6月18日(日) 18:00
WALL&WALL
スタンディング-4000円(ドリンク代別途必要)
※小学生以下は入場不可。中学生以上はチケット必要。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。
[問]スマッシュ■03-3444-6751

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