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どこまでも等身大で赤裸々な1stフルアルバム
『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』が
描くストーリー。ヤングスキニーインタビュー

こんなにも赤裸々に自身の体験を歌にしてしまえること。どんなにあけすけで刺激的でも心を動かされてしまう、そんな情緒的な楽曲を作れること。これは紛れもない才能だと思う。ヤングスキニーのメンバーである、かやゆー(g&vo)、ゴンザレス(g)、りょうと(b)、しおん(ds)の4人はSNSを通して集まった。最初は「音を鳴らしたい」という気持ちだけだった、言わば素人の彼らが、2021年7月にしおんの加入で現体制となり、今年2月にはビクター内のSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビュー。そして3月15日、1stフルアルバム『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』がリリースされた。今回はかやゆーとしおんに、結成から今までのこと、アルバム制作の経緯を包み隠さず語ってもらった。

知識のない中で始めたバンド活動。しおんの加入でピースがハマった。


――メジャーデビューされて、気持ちや環境に変化はありました?

かやゆー「ついてくださる方やSNSの反応は、半年前ぐらいから徐々に増えていった感覚がありますね。急にガラッと変わったことはそこまでない気がします」

しおん「うん、こういうインタビューとかのお仕事が増えたぐらいですかね。人と話すことで自分も新しい発見というか、"こういう聴き方もあるんだ"って気づかされる瞬間は多々あります」

――バンドの雰囲気は今どんな感じですか。

かやゆー「バンドの雰囲気は最初から変わらず、本当に良い意味で友達の感覚でずっとやってますね」

――皆さんは、かやゆーさんのSNSの呼びかけで集まったんですよね。

かやゆー「技術じゃなく人間性で選んだので、だからこそ仲良くできてるのかなとは思いますね」

――しおんさんが入って、ピースがハマった感じですか。

かやゆー「そうですね。しおんはメンバーの中でも唯一ちゃんと音楽やってた人間だったので、ライブとかもしおんに引っ張ってもらって。"こういうことをやっていくんだ"というのが見えて、逆に学びながらやっていますね」

――しおんさんは音楽の専門学校に行かれてたんですよね。

しおん「そうです。最初バンドに入った時は、自分が最年少だし下手に出てたんですけど、1〜2か月経ったぐらいで、"意外と中はボロボロだぞ、バンドとしてなんもしっかりできてない"と思って、ベースのりょうとくんに喝を入れるために、"今まで出会ったベーシストの中で、1番下手くそだぞ"と言ったりして。それからリズム隊として良くしようと話し合って、ライブはセトリもちゃんと決めて、こういう流れでやって、MCをバチコン決めて最後締めようという流れができて、だんだん皆も慣れてきて。セトリは基本的に僕が決めるんですけど、もう皆何も言わずとも大体流れをわかってきて。かやゆーくんも前までは、MC用にセトリにメモを書いたりしてたけど」

かやゆー「MCで言うことを全部決めてメモにして、それを見はしないけど覚えて読んでる感は自分の中でもあったんです。最近はその時に言いたいことを言ってる気がしますね」

――用意した言葉じゃなく、その場で感じた言葉を言えるようになった。それは何か変化が?

かやゆー「しおんがMCのやり方じゃないけど、他のバンドのライブ映像を送ってくれたりして。僕もめちゃくちゃ夢を追いかけてバンドをやってたわけじゃなかったし、良い意味で本当に好きなことができればいいという考えで、なりたいバンドマン像もなかったので、全くどうすればいいかわからず。映像を見せてもらって、"こういうことをやるんだ"と知って。真似る最初の段階が、テーマを決めてメモして言う。それだけでも前よりかはマシになったんですけど、それからさらに進んで、テーマを決めずにその時思ったことをちゃんと言えるようになった。ライブを重ねて自分の中でも余裕が生まれてきて、感じることが増えたのかなと思います」

――初ライブ(2021年1月の無観客配信ライブ@立川BABEL)では、それもなかったわけですもんね。

しおん「僕はまだいないんで」

かやゆー「その時は曲を最後まで演奏できたらいいね、ぐらいのレベルでした。初期のメンバーは本当に"音出せればいいや"の感覚で選んだので。曲が作れる素人だけでライブしてました」

――しおんさんはバンドマンになりたくてというか、プロ意識があって。

しおん「高校1年生からドラムを始めて、半年後には"絶対これがやりたい"って自分の中で明確に決まって、そこからずっとプロになりたいと思ってたんです。けどコロナを挟んで思うように動けなくて、専門学校の行事も他学科との交流もなかったので、SNSで探すしかなくて。そしたらたまたま"#バンド募集"でヤングスキニーのツイートが流れてきて、"これめっちゃチャンスだ"って」

――かやゆーさんはその時、単純にドラムが抜けたから次のドラムを探すつもりでツイートされていたんですか。

かやゆー「そうですね。活動して1年で、まだここで止まるわけにはいかないから、脱退ツイートの直後に募集ツイートをして。結構な量の応募が来てたんですけど、5〜10人ぐらいまで僕が独断と偏見で絞ったのをメンバーに送って、最終的に2人になって。俺とゴンちゃん(ゴンザレス)はしおんを選ばず、りょうとくんだけしおんを選んで(笑)」

――あれっ。

かやゆー「多数決では負けてるんですけど、リズム隊のりょうとくんが選んだ人なので。あとりょうとくんは普段そんなに意見を言う人じゃないんですけど、そいつが良いと言ってきたし」

――なるほど。

かやゆー「りょうとくんは高校3年間軽音部で、俺とゴンちゃんは軽音にも入ってなかったんで、りょうとくんは俺らの中では知識人で、技術もある人だと思ってて。でもしおんにボロクソ言われてて、"あれ、りょうとくんって大したことないな"と、そこで俺らも気づきました(笑)」

しおん「(笑)」

――しおんさんが入って、バンドという組織が機能し始めたんですね。

かやゆー「適当にやってたわけじゃないけど、シンプルに誰も知識がなかったんです。だから、しおんが知識を与えてくれたのはめっちゃデカいなと思いますね」

――意図してそういう人を探していたわけではないですもんね。運命の出会いという感じがしますね。

しおん「そうっすね」

かやゆー「いつも言ってんですけど、バンドやってなかったら多分僕は仲良くならないと思う(笑)」

しおん「そう。お互いお互い(笑)」

かやゆー「(笑)。でも本当に仲は良いですね。半年に1回メンバー旅行に行ったり。本当はこの冬も1泊2日でワカサギ釣りに行こうとしてたんですよ」



ヤングスキニーは、あまりボツ曲がない。


――Instagram、Twitter、TikTok、YouTubeをフルで動かしておられて、それぞれフォロワーがしっかりついていますが、マーケティング的な意識は持たれているんですか。

かやゆー「僕、今はインスタやってないんですけど、やってた時もそんなに深く考えてなかったですね。媒体によってそもそも載せられるものが違うじゃないですか。載せられるところで載せられるものを載せてたというだけですね」

――担当は決まってるんですか?

かやゆー「バンドのSNSはスタッフさんに動かしてもらって、それぞれのSNSはそれぞれで動かしてますね」

――バズり方がすごいですよね。

しおん「毎回スタッフさんのタイミングが神なんですよ。ライブが終わった直後って、皆SNSで感想を呟くじゃないですか。そのタイミングで即出しの写真とセトリをツイートして、TikTokにはライブ映像の切り抜きと歌詞まで入って。多分タイミングと相まってバズってるのかなと」

――そこは狙って投稿してらっしゃるんですか。

スタッフ「初めてライブに来た方は、結構曲がわからなかったりするんです。そういう方たちにすぐわかってもらうためにセトリは上げてます」

――ライブ映像を撮って、スマホで編集して?

スタッフ「そうですね」

しおん「ライブ直後は僕たちじゃさすがにできないので。感謝ですね」

――曲作りはかやゆーさんがデモを作って、全員でセッションしてアレンジするスタイルだそうですが、しおんさんの加入前からそうだったんですか。

かやゆー「基本的にはそうですね。ベースとギターは自分でフレーズを作れたけど、ドラムがフレーズを作れなかったんで、最初はスタジオで大体の方向性を決めた上で、ゴンちゃんが打ち込みで形にしてくれてました」

――しおんさんが入って、曲作りの変化はありましたか?

かやゆー「曲の作り方はそんな変わってないのかな。俺のデモに合わせて皆がフレーズを出して、各々意見があれば言って、みたいな感じで作ってますね」

しおん「弾き語りのデモを送ってくれた段階で、フレーズが出てこない曲ももちろんあるんですけど、出てきたものは大体他のメンバーも降ってきてる。そこでお互いの音を聞いて、探りながら変える感じでどんどん固まっていって。『コインランドリー』(M-5)みたいに、DTMにしてパソコン上でやり取りができるようにした楽曲もあります」

――基本はスタジオで、全員で顔を付き合わせて?

しおん「それが1番早いよね」

かやゆー「DTMだと、"送れ"って言っても皆送らないんですよね」

しおん「(笑)」

かやゆー「だからスタジオに入ってやらざるを得ない環境をつくる。やらされてるわけじゃないですけど、その方が俺らの性格的に早いですね。家に帰るとやんないんで(笑)」

――曲を作るスピードは早いんですか?

かやゆー「0から1はめっちゃ遅いんですけど、ワンフレーズ浮かんだら1〜2時間ぐらいでできちゃいますね。曲ができる時は何個も一気にできるんですけど、めちゃくちゃ波があります。作ろうと思って作れるタイプじゃなくて、急に浮かぶ感じなんで」

――天才タイプと言われる所以ですかね。

かやゆー「って言われるんですけど、バンバン浮かぶのが天才だと思うんで。僕はコンスタントに浮かばないから。毎回この話をするの嫌なんですよ。浮かんでくると思われちゃう」

しおん「それがプレッシャー?」

かやゆー「プレッシャーとまではいかないけど、そこまで天才じゃないんで」

――曲のストックはある方ですか。

かやゆー「今も未編曲や編曲中のものはありますね。たまにバンドマンの友達に聞いたりすると、バンドによってはめちゃくちゃ曲作るけど、そのうち音源化されるのは10曲作って1曲とか。ヤングスキニーはあまりボツ曲がないかも。大体全部リリースされますね」

――おお、すごい。

しおん「確かに、それすごいかも」

かやゆー「浮かぶのは時間かかるけど、浮かんだら100発100中なのかなと思ったりします」

――それは天才と言ってもいいと思いますよ。

しおん「そうですよね!」

かやゆー「いやいやいや」



歌にすることで、後ろめたさをなかったことにしている。


――今作はインディーズ時代と最新のヤングスキニーの曲が1枚にまとまった作品で聞き応えがありますね。他にも候補の曲はあったんですか。

かやゆー「あったし、プラス1〜2曲入れようとしたんですけど、十分濃いから無理に入れなくてもいいのかなと。1曲も4〜5分で長めだし、聞き応えのある作品にできるかなと思って、これで出しましたね」

――1曲目のリード曲『ヒモと愛』は純愛を歌っているんですね。

かやゆー「ゴミでヒモなんですけど、あくまで歌ってるのはあなたのことだけという点で純愛かなと。別に純愛ソングと思って書いたつもりはないけど、意図せずに出た言葉が<あなたのことだけを歌にする>だったんで。スタッフさんに"よく聞いたら純愛なんじゃない?"と言われて、"そうなんだ"って自覚して。しおんもさっき言ったけど、色々な方と話す中で逆に気づかされることは、曲の面でも本当にあります」

――どうしても、『ゴミ人間、俺』(M-2)との対比がすごくて。

しおん「だいぶそうですよね」

――『ヒモと愛』は愛を感じますが、『ゴミ人間、俺』は全く愛を感じないなと。私『ゴミ人間、俺』を聞いた時、ちょっとイラッとしましたもん。

全員「(笑)」

しおん「何も間違ってないです(笑)」

――こんなふうに感情が動くほど、リアルな歌詞を書けるのもすごいなと。

かやゆー「どの曲も8割実体験、2割妄想で書いてます」

――実体験、結構多いんですね。

かやゆー「はい(笑)。妄想は、例えば『コインランドリー』の2番。"どこの誰のかわからないTシャツを着た"なんてエピソードはないけど、ちょっと取り繕ったり入れたりするレベルで、曲の軸は実体験や思ってることです。そういう点でリアルと言われる曲ができるのかなと思います」

――MVのリアルさも理由のひとつだと思います。よくかやゆーさんご自身が主人公として出演されていますが、そうするとどうしても投影してしまうというか、そういう人だというイメージを持たれる可能性もあると思いますが、そこについてのお考えは?

かやゆー「そういう人です」

――はっきり!

かやゆー「この前インタビューされて気づいたことがあって。何で曲を作ってるのかなと思った時に、自分の逃げ道を曲にすることで、逃げ道じゃなくしてるんだなと。それこそ歌にすれば何でもいいと思ってる。だから『ヒモと愛』とかも、自分が後ろめたいことでも、歌にすることで後ろめたさをなくしてるんじゃないかなと」

――今作のタイトルそのままですね。

かやゆー「本当にただ思ってることを歌にしてるんだと思います」

しおん「ここまで全部出してるアルバム、なかなかなくないですか」

――ないと思いますよ。

しおん「ですよね。だから逆にすごいなと思うんですよね」

かやゆー「まあ、一種の開き直りを音楽にしてるのかなっていう」

――自分と作品の境界線がなくなったりはしないですか?"ヤングスキニーのかやゆー"として活動しているけれど、曲の内容はプライベートで起きたことで。ステージ上の自分とプライベートが混ざり合ってしんどくなったりは?

かやゆー「全然、考えたことなかったっすね」

しおん「俺は無理っすもん。プライベートと完全に分けてます。だからいくら俺が何か言われたとしても、逆に何も思わないです。プライベートはプライベートだから。こういう歌詞を書いたら、それこそ色々言われることもある」

かやゆー「なるほどね、曲のこと言われたら自分のこと言われてるんじゃないかって」

しおん「そうそう」

かやゆー「全然別に。そもそも言われることに対して何とも思ってないんで」

――スルースキルがあるのは素晴らしいです。

しおん「最強のフロントマンです」

かやゆー「まあ、何とも思わないようにしてるのかもしれないですけど。だからと言って、変に考えたりしたことないですね」



人間味が溢れた、4人じゃないと演奏できない曲。


――『ごめんね、歌にして』(M-10)なんて、今のお話そのままですね。

かやゆー「これは『バンドマンの元彼氏(2021年『演じるくらいなら、ありのままでいいけどね』収録)』のアンサーソングなんですけど、1年前のメンバー旅行でスノボに行った時、リフトの上で浮かんだんです(笑)」

――リフトの上で。

かやゆー「『バンドマンの元彼氏』と対比させた"今でもあなたを歌にしてごめん"的な内容が浮かんで、とりあえずメモにして、家に帰って。テーマが決まったおかげで、アンサーソングで彼女を歌にするバンドマンのことを書けばいいんだとなって、すぐできましたね」

――良いですね、この曲。

しおん「僕も好きなんですよ」

かやゆー「ちょうど1年前の春に引っ越しをしたんですけど、引っ越し中によく見た"単身者専用"というワードを入れたり。2番のAメロの<歌えなかったあの歌>は、『バンドマンの元彼氏』のことを遠回しに言ってる。弾き語りライブでも『ごめんね、歌にして』の前に『バンドマンの元彼氏』を歌って、<歌えなかったあの歌とさっきの歌と〜♪>みたいに暗示してますね」

――ライブでもリンクさせているんですね。

かやゆー「『ごめんね、歌にして』は『東京(2022年5月リリース)』のカップリングにデモで入ってるんですけど、レコーディング前々日ぐらいに完成したので、出来立てホヤホヤで歌詞を見ながら歌ってましたね」

――それを今回録り直されたんですか。

かやゆー「そう。デモはフル尺弾き語りで、今回は1番だけ弾き語りで2番からバンドなんですけど、1番の弾き語りも録り直して。最初はクリックを聞こうと思ってたんですけど、聞いたら聞いたでムズかったんで、ノンクリックで皆で目を合わせて。曲では目を見て言えなかったけど、俺らは目を見ながらね(笑)」

全員「(笑)」

しおん「多分1番ヤングスキニーらしい曲だと思うんですよ。人間味が溢れてる。各々アプローチやフレーズにこだわってるけど、圧倒的にこの曲は僕たち4人じゃないと演奏できない音になってる」

かやゆー「この曲はマジでクリープハイプさんをリスペクトしてて。曲調的には『ex ダーリン』っぽいんですけど、ギターの音は『さっきの話』を参考にして。バラードなのにめちゃくちゃ歪んでるんですよ。ゴンちゃんは良い意味で俺の歌詞を最優先に考えてくれるから、自分が出るとこじゃないなってとこは引いてくれるんです。だからゴンちゃんは絶対歪ませなかったんですけど、俺が"めちゃくちゃ歪ませて"と言って、歪みギターにしてもらいましたね」

――ドラムに関してはどうでしたか?

しおん「良い意味で何も考えてないです。自然に出てきたままですね」

かやゆー「俺もこれは、しおんが最初に出したやつが正解だと思った」

しおん「いつもはそこから改良したり、他の楽器に左右されて"こうした方がいいんじゃない"とかやるんですけど、もう皆自然だったよね」

かやゆー「皆ハマってましたね。セッションなので悩むことはあるんですけど、これはすんなりいきました。ギターフレーズは多少詰めてると思うけど、大まかな基盤は最初のセッションで出来上がってましたね。自分以外の楽器の良いポイントってさ、あんまり気にしないじゃん」

しおん「うん、しない」

かやゆー「でもこの曲はベースが2番のBメロで案外良いフレーズ弾いてたり、ギターもアウトロめっちゃ良かったり。自分以外の楽器でも良いなと思うところが結構ありますね」

しおん「ドラムはガチで縁の下の力持ちポジっす。最後のキメだけあった方がいいなって、瞬間に思ってやったくらいですね」

――余韻もあるし、しっかり締まって良い終わり方ですね。

かやゆー「これもいつだかインタビューで言われたんですけど、あくまで『バンドマンの元彼氏』のアンサーソングだけど、このアルバムで聞くと『ごめんね、歌にして』を歌ってるのが『ヒモと愛』を書いてる奴なんじゃないかと。俺は意識してなかったし、全く意図せず曲順を考えたんですけど、この2曲が最初と最後にくることで余計エモいなって。だから1作を通してちゃんとストーリーがあるのかなと思いました」



1年前にできなかったことができるように。


――これだけ赤裸々な歌詞を表に出してもエモーショナルになるのは、ヤングスキニーのすごいところですよね。MVも全部再生してしまいました。

しおん「ありがとうございます」

かやゆー「『ゴミ人間、俺』も今MVを考えてるんですけど、また僕次も出たくて。もっとゴミになってやろうって(笑)。何なら"かやゆーがゴミの山に捨てられるシーンで終わったら面白くね?"という話が出てました(笑)」

――ストーリーは、メンバー皆さんで考えるんですか?

かやゆー「監督さんも含めて考えます。『本当はね、』(M-3)が結構狂気じみた作品になったのは、ゴンちゃんとしおんが"ただの純愛ソングなMVじゃつまんないから、最後でどんでん返ししない?"みたいな(笑)」

しおん「そう」

――あれはすごかったです。

しおん「人を刺してるようで、刺してないじゃないですか」

かやゆー「本当は刺すつもりだったんだよね。でもそれがほんとに良い方に転んで。曲を聞いて幸せになって、MVを見て怖い気持ちになって、2つ相まって悲しさが生まれる」

――本当に。曲だけ聞くと女の子の可愛い恋心なのに、MVでひっくり返されました。あとアルバム曲で言うと『美談』(M-4)は、リズムがダイナミックですね。

かやゆー「この曲を書いた時は元カノに結構未練があって。戻りたいなと思ったんですけど、喧嘩みたいな感じで別れたんで、戻っても同じことを繰り返すんだろうなと自分の中で言い聞かせてた時に書いたんです。作り方としては結構珍しくて。しおんがずっとスタジオでドラム叩いてるんですよ。本当に静かにしてほしい時も、休憩中もずっと」

しおん「ドラム叩くの好きで(笑)」

かやゆー「で、そのしおんのフレーズに合わせてコードを弾いてみて、そしたらリズムができてきて、メモにあった歌詞を口ずさんでみたらメロディーが出てきて、じゃあこのリズムの方向性でいくかとなって、帰って、歌詞はそのままでメロディーを変えて作り直して。最初の基盤はしおんのうるせえドラムがキッカケでした。普通に作曲してたら多分こんなメロディーは浮かばないかも」

――意外なキッカケでも曲ができるんですね。

かやゆー「これは結構全員テクニカルで、レコーディングするまでに時間を費やして」

しおん「だいぶ。1年はかかってる」

かやゆー「"まだこれはレコーディングできない"って先送りにして、でも先送りにしたことでやりたいことが増えて、また悩まされて。色んな知識を詰め込んで、かつやりたい放題できた。良い意味で意味わかんない曲になったと思います」

――雑踏の音で静かに始まって、後半はエモーショナルになっていきますね。

しおん「あれは別になくてもいい音だけど、"入れたいから入れちゃおうぜ"のノリで、かやゆーくんが渋谷のスクランブル交差点を歩いた音を録って入れました」

かやゆー「あと1年前に初めてライブでやった時は、マジ声出なかったよね」

しおん「出てなかった!」

かやゆー「シンプルにサビが高くて。月日が経ってライブをいっぱい重ねてたら、気がついたら歌えるじゃんって。本当はキーを下げようか迷ったんですけど、下げると曲的に違ったからどうしてもこれでいきたかった。1年前は歌い終わると疲れてたんですけど、今はちゃんと歌いきれる。自分の成長も感じられましたね」

――しっかり力がついてきてるんですね。

かやゆー「ただ、難しいね。余裕ではないね」

しおん「余裕ではない。皆この曲やる時だけ顔がせっぱ詰まってます(笑)」



こんなに長いツアーは初めて。久しぶりの大阪ワンマンへ。


――改めて今作はどんな1枚になったと思われますか。

かやゆー「最初のデモは俺ですけど、そこからのアプローチの仕方は曲によって本当に様々。だからこそこういう1枚にまとまったと思います。僕はシャッフルでアルバムも聞いちゃうタイプなんで、正直曲順はそこまで気にしないんですけど、普通にどの曲も良いんで聞いてほしいです。全曲飽きずに聞けるのは、この作品の良いところかな」

しおん「曲調がバラバラだから、最初は一貫性がないのかなと思ったんですけど、並べてみたらちゃんとストーリー性がある。もちろんシャッフルでも楽しめるけど、1回は頭から最後まで聞いてもらえると、グッとくるポイントがよりたくさん出てくるんじゃないかな。1曲1曲のクオリティも高い、アルバムとして完成された作品だと思います」

かやゆー「レコーディング前、デモの段階でアルバムに入れる曲が決まってて、その時は"どれも冴えないな、もっと引きのある曲が欲しい"って、俺もしおんも思ったよね。でもレコーディングしたら、逆にどの曲が良いか選べなくなって」

しおん「ほんとにそう! 弾き語りだけだと冴えなかったのかもしれないけど、バンドとして1つの作品になったから、1曲ごとの個性が高くて比べられない良さがある、そんなアルバムになったと思います」

――4月12日(水)には梅田CLUB QUATTROでワンマンライブがあります。

かやゆー「久しぶりの大阪ワンマンで、ツアーとしては4公演目で前半の方ですけど、ツアーの中でも自分たちの見せ方が決まっていくタイミングだと思うので。もちろん最初から飛ばしていくし、色んなことを伝えて楽しませて気持ちを動かせたらいいですけど、自分たちの成長にも繋げられたらと思います」

しおん「僕が廻ったことのない都市もあるけど、個人的に大阪が1番盛り上がる気がする」

かやゆー「やりやすいんですよね。どこがやりにくいってわけでもないですけど、やっぱりノッてくれるお客さんがいると緊張もほぐれるし、こっちもテンション上がるし、会場もあったまる。それを1番感じられるのは大阪でやってる時かなって、本当に思います」

しおん「だから自分も楽しみです。楽しませるんで、お楽しみに!」

Text by ERI KUBOTA




(2023年3月23日更新)


Check

Movie

Release

メジャー1stフルアルバム
『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』
発売中

【初回限定盤】(CD+DVD)
4400円(税込)
VIZL-2158

【通常盤】(CD)
2970円(税込)
VICL-65784

《収録曲》
01. ヒモと愛
02. ゴミ人間、俺
03. 本当はね、
04. 美談
05. コインランドリー
06. 好きじゃないよ
07. 夜のままで
08. 東京
09. らしく
10. ごめんね、歌にして

《初回限定盤付属DVD収録内容》
「保証はないけどあなたを幸せにできる気がするワンマンツアー Live at SHIBUYA CLUB QUATTRO」
01. 東京
02. ゴミ人間、俺
03. ヒモと愛
04. バンドマンの元彼氏
05. ごめんね、歌にして
06. 本当はね、
07. コインランドリー
08. また冬が終わって
09. 憂鬱とバイト
10. ロードスタームービー

Profile

シンガーソングライターとして活動していた“かやゆー”を中心にSNSでバンドメンバーを募集し2020年8月結成。2021年5月5日に1st mini album「嘘だらけの日常の中で」をリリース。7月に新メンバーを迎え新体制に。本格的にライブ活動を開始すると、各地のサーキットイベントで入場規制が発生。12月15日には初の全国流通となる2nd mini album「演じるくらいなら、ありのままでいいけどね」をリリース。2022年2月19日に初のワンマンライブ「1st ワンマンライブ~バンド、バイトばっかで~」は10倍以上の倍率でSOLD OUT。10月にはバンド初となる東名阪ワンマンツアー「保証はないけどあなたを幸せにできる気がするワンマンツアー」を開催し、全公演SOLD OUT。10月5日に2nd Single「本当はね、」(TBS「王様のブランチ」10月度エンディングテーマ)をリリース。TikTokとSpotifyが共同でアーティストを応援するプログラム「Buzz Tracker」、Monthly Artist第8弾に選出。 Spotifyが年間を通して新進アーティストをサポートするプログラム「RADAR: Early Noise 2023」に選出。2023年2月8日に配信シングル「らしく」のリリースをもってビクター内SPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビュー。3月15日に 1st Full Album「歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた」をリリース。同日に開催した「いつか僕は誰もが羨むバンドになってやるフリーライブ」(代々木公園野外音楽堂)は総動員10,000人を記録。4月より全国ワンマンツアーを開催予定。

ヤングスキニー オフィシャルサイト
https://www.yangskinny.com/


Live

歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていたワンマンツアー

【新潟公演】
▼4月1日(土) GOLDEN PIGS RED STAGE
【宮城公演】
▼4月5日(水) 仙台darwin
【北海道公演】
▼4月8日(土) BESSIE HALL
【大阪公演】
▼4月12日(水) UMEDA CLUB QUATTRO
【愛知公演】
▼4月14日(金) NAGOYA CLUB QUATTRO
【山梨公演】
▼4月16日(日) KAZOO HALL
【香川公演】
▼4月18日(火) 高松DIME
【広島公演】
▼4月20日(木) SECOND CRUTCH
【福岡公演】
▼4月22日(土) BEAT STATION
【東京公演】
▼4月27日(木) LIQUIDROOM

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