インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > もしも音楽に対する熱量が冷めた時 もう一度追い焚きできるような作品に 決意と共感の1st フルアルバム『oidaki』が誕生 とたインタビュー

もしも音楽に対する熱量が冷めた時
もう一度追い焚きできるような作品に
決意と共感の1st フルアルバム『oidaki』が誕生
とたインタビュー

2000年代生まれ、TikTok発のベッドルームアーティスト・とたが、2月22日に1stフルアルバム『oidaki』をリリースした。2021年2月から、TikTokやYouTubeなどのSNSにオリジナル曲やカバー曲動画を投稿しはじめた彼女。柔らかく透明感のある歌声、一度聞いたら耳から離れないメロディ、確実に心を掴む叙情的な詞世界。そして手書き文字とノスタルジックな風景を使用した、作り手の温度感を感じる動画。統一された世界観と圧倒的な音楽センスは、やがて注目を浴びる。2021年6月に公開された『紡ぐ』のShort ver.が、わずか1年足らずで270万回以上再生され、27,000本以上のユーザー動画が投稿されるなど、じわじわと存在感を示してきた。1stフルアルバム『oidaki』は、インスト4曲を含む全12曲が収録されている。日常に馴染む楽曲たちの随所に散りばめられた温度感からは、この作品が大切に創られたことがわかる。今回ぴあ関西版WEBでは、ベールに包まれたとたの歩んできた道すじや、アルバム『oidaki』に込めた想いを紐解いた。本当にこれからの活躍が楽しみでならないアーティストだ。つい先日、本人も出演している『紡ぐ』のMVが公開されたばかり。素晴らしい才能の芽吹きをぜひ一緒に追いかけてほしい。


曲を作るのが好き。作ったから聞いてもらいたい、
という気持ちでSNSに動画をアップ



――とたさんの音楽の原体験は?

「私は最初はピアノから始めました。両親がバイオリンとピアノ、ギターをやっていたので、私が音楽をやりたいなと言った時には、すぐ"いいよ"と了承してくれて」

――小さい頃からピアノを。

「そうです。小さい頃から10年ぐらいピアノを習っていて。そのうちにピアノだけじゃ飽き足らず、色んな楽器に興味を持ち始めて、ギターを始めて、今はDAWを使いながら曲の制作をしてる感じです」

――オリジナル曲を作り始めたのはいつ頃ですか。

「2年前ですね」

――SNSで発表する少し前ぐらいから。

「そうですね、結構最近です」

――それまではカバーを?

「ピアノはクラシックを習ってたんですけど、だんだん飽きてきちゃって。私結構飽き性なんですけど、クラシックに飽きてきたらJ-POPとかを耳コピして、弾き語りで勝手に伴奏をつけるみたいな。ピアノを習ってたのに、それを授業でやらせてもらったり」

――授業でですか。

「自由にやらせてもらえてたので。耳コピで持ってきたものを弾いたり、その辺りからカバーもしてましたね」

――音楽系の学校に行ったりとか?

「ではないです」

――人前で弾いた経験は?

「なかったですね。学校の合唱コンクールとかはやらせてもらったりしてました」

――人前で演奏したり、歌ってみたりしたいという気持ちはあったんですか。

「私は曲を作る方が好きなので、人前でやりたい気持ちが先行するよりかは、まず作って、"せっかく作ったし発表したいな"みたいな気持ちが後からくる感じですね」

――アーティストになりたいとか、シンガーソングライターとして活動していきたいというよりも、曲を聞いてもらいたい気持ちが先で、TikTokに公開し始めたと。

「はい、そんな感じです。曲を聞いてもらえたら良いなと思って」

――動画をこういう感じでアップしようといった構想は、ご自分の中でお持ちでしたか。

「"歌詞に合わせて映像をこんなふうにしよう"とかは、その場で曲を作りながらバーッと考えてて、曲を作ってすぐ映像を編集して。最初は投稿しようかちょっと迷ってたんですけど、"出さなきゃな"と思って出しました」

――2003年生まれということは、物心ついた頃にはYouTubeやボカロP、歌ってみたなどのカルチャーがあったデジタル世代ですよね。

「そうですね、栄えてる時代ですね」

――SNSから音楽の情報を得ていたんですか?

「音楽に興味を持ち始めた時は、自分のスマートフォンを持っていなくて。うちはそんなに早くSNSに触れるキッカケがなかったので、最初はラジオを聞いてました。ラジオはTVとは違うものが流れてるじゃないですか。そこから"こんな曲もあるんだ"とネットを使って調べるようになって、どんどん音楽との距離が近くなったかなと思ってます」

――それはいくつぐらいの時ですか。

「いくつぐらいだろう。中学生の時からラジオは結構聞いてましたね」

――スマホを持ったのは?

「自分のスマートフォンを持ったのは、高校生に入ってからです」

――動画の編集も自分でされているとお聞きして、本当にセンスが良くて。息をするように動画編集ができる世代なのかなと思っていました。

「確かに、友達が詳しかったりするので、使い方とかもわかりやすく教えてもらえる環境かなとは思います」

――ちなみにインスタ、TikTok、YouTube、それぞれに投稿する時に意識していることはありますか?

「うーん、TikTokは見てくださる世代が若めの方が多いので、絵文字の使い方は考えてます。見た時にハッとするような。丸だけじゃなくて色がついてる方が目に止まるかなとか、そんなことを考えていますね」



曲は、自分の感情や思考を残して覚えておく備忘録のようなもの


――『紡ぐ』はユーザーが楽曲を投稿に使うことで伸びていきましたが、投稿する時にもそこを意識されているんですか。

「最近になって、ようやく"こういう人に届いたらいいな"とか、ターゲットを考えるようになったんですけど、『紡ぐ』を公開した時は、本当に自分の音楽に対する決意みたいなものが大きかったので、そもそもこんなふうに色んな方に音源として使ってもらえるような広まり方をするとは思ってなかったんです。でも、使いやすい楽曲だなとはすごく思っていて。"空"とか、聞き馴染みのある、皆の身近な単語を歌詞に入れるのが好きなので、そういった意味で私の曲はどんな人が聞いても共感しやすいのかなって。それが使ってもらえた原因なのかなと、後になって考えたりはしてました」

――ターゲットは同世代の10~20代の方?

「曲によりですけど、最近作ってる曲はそうですね」

――それはなぜですか?

「私の曲の作り方が、私の中から出てくる気持ちを大きく膨らませて極端にして、それを主人公にして、曲の軸にするんですけど、やっぱり自分の中から出てくるものなので、使う言葉も同世代が1番届きやすいというか。多分、私自身の作りやすい曲が10〜20代の生活に馴染み深いテーマなので、今聞いてくれる人の層にマッチしているのかなという感じはしてます」

――コメント欄を見ていると、受験のことを書いてらっしゃる方もおられて、しっかり狙ったところに届いている印象です。

「コメントをもらえると、届いていると実感しますね。あと、昔を思って懐かしんで聞いてくれるもう少し上の世代の方もいて。昔の自分に対して共感しているというか、そんな聞き方もあるんだなと発見でした。本当にありがたいです」

――とたさんのお名前の由来は、ゲーム『あつまれどうぶつの森』の"とたけけ"がキッカケだそうですが、他にも理由はあるとのことで、その理由をお聞きしたいです。

「とたは平仮名なんですけど、ローマ字にした時に"tota"で"トータ"になるんですよ。私の曲は今の自分が思ってることが全てじゃなく、昔の体験を元に書いてるんです。で、大人になってくにつれて、自分の中で少なからず淘汰されていっちゃうものってあるじゃないですか。私は結構忘れっぽいので、自然に自分の中でなくなっていくものを備忘録みたいに曲にして残して覚えておいて、曲を改めて聞いた時に"ちょっと恥ずかしいけどこんな時もあったな"と思えたらいいなと。それで"淘汰"という意味があって。あと音楽活動を始めるにあたって、"淘汰されないように力強く頑張りたい"という気持ちもあって、"とた"にしました」

――なるほど、決意もあるわけなんですね。

「最初は、とたけけが私の中でビビッときた理由です」



アルバムにおいて重要なインスト曲の役割


――そして改めて『oidaki』リリース、おめでとうございます!

「ありがとうございます」

――今は配信だけのリリースをされる方も多いと思いますが、フィジカルのCDを作ることは、とたさんにとってどんな意味がありましたか。

「今回の『oidaki』は温度感を大事にしたいなと思っていて。配信とは別で、実際に手に取ることで伝わるものってあるじゃないですか。CDをセットして曲を聞く行為も、ストリーミングとは違う良さがあると思うので、今回は温度感が伝わることを意識して作りましたね」

――なるほど、温度感。

「ジャケットの写真も温度感を意識してて。寒色っぽい色に温かい暖色が差し込んでて、1番グッときてるんじゃないかなと思って、気に入ってます」

――動画にも温度感があるなと感じますが、その辺も意識されていますか。

「そうですね。曲によって温かい印象を覚えてほしいなと思う時はオレンジっぽくしたり、ちょっと冷たい印象にしたいと思ったら青っぽくしたり。視覚的な情報としてもスッと曲が入ればいいなと思って編集してます」

――今回は楽曲の間にインスト曲が4曲入る構成です。その流れによって物語性が高まっていると感じました。どのように制作に入っていかれたんですか。

「歌詞のある曲たちを、それぞれの主人公の繋がりを、どうしたら説明的にならずに伝えられるかなと思った時に、インストってすごく力があるんじゃないかと思って。ヒントとしてタイトルも置けるし、メロディーの展開やサウンドだけで伝わるものも大事にしたかったので、"ここにはこのインストを挟もう"とか、先に全体像を考えてから作っていきました」

――曲順に関してはいかがですか。

「曲順としては、私が曲の主人公に対して持ってるイメージも結構あって、そこから考えました。『君ニ詠ム。』(M-2)は、始まりを意識させる曲だと思ってるので最初の方に持ってきたいとか。リリースした曲順というよりか、アルバムになった時にどこにあったら1番しっくりきて、流れ良く聞いてもらえるかなという視点で決めた感じですね」

――『ぬるくなったら』(M-11)から『薔薇の花(in the bathroom)』(M-12)の流れは、タイトルとの関連性も感じられてとても納得しました。

「嬉しいです。『ぬるくなったら』は自分でも気に入ってて。転調の仕方が次の『薔薇の花(in the bathroom)』に繋がっているのと、曲自体が持つ意味を1番サウンドとして落とし込めたんじゃないかなと思ってます。だからこのアルバムにぴったりだなと」

――どういうところがうまく落とし込めましたか?

「『oidaki』というアルバム自体の意味にも関わってくるんですけど、私が結構飽き性で、でも音楽は唯一ずっと楽しいなと思って続けれられていて。今後も手放したくないと思うものの中で、結構大きいんですよ。なので、もし音楽に対する熱量が冷めてしまった時に、もう1回自分で聞き直して、その熱量を追い焚きできるようなアルバムになったらなと。最初のアルバムだし、自分自身の気持ちを高められるものになればいいなという気持ちもあって」

――そうなんですね。

「で、『ぬるくなったら』はアルバムタイトルの意味をかなり意識した音作りをしました。曲の始まりは長調なんですけど、長調から短調になって、そこからまた転調して、最後長調になるんです。同じメロディーなのに違う調をナチュラルに続けてる。私の中では長調=温かい温度、短調=冷たい温度としていて。長調は音楽への熱量が温まっている今の状態の象徴で、もしどこかで熱量が冷めてしまう時があって短調になっても、自分の新しいスタートとして、この曲やアルバムを聞いてもう1回踏み出せたらいいなと。『ぬるくなったら』は今作で1番入れたいと思っていたインストです」

――2分の間にそんな展開が。

「(笑)。今すごい説明しちゃったんですけど、そういうのも読み取ってもらえたら嬉しいです。アルバム自体にもインストにも色々な意味を込めてるので。CDのブックレットではインストのところに詩を載せてて、インストが何でこの位置に入ってるのかを読み解くヒントになったらいいなと思って」

――すごく良いですね。CDを買う楽しみって、そういうところにありますもんね。

「そうですね。インストはフィジカルのCDを出す理由として1番強いかもしれないです。『栞』(M-1)というインストを1曲目に入れたのも、このインストが何でこんなふうに入ってるのかを表したくて、1番最初に入れるとずっと決めてて。考えながら作れたので楽しかったです。小説家になった気分でした(笑)」



これからもずっと、言葉を大事にし続けたい


――とたさんの歌詞は平易な言葉を使っているけど、すごく深いですよね。"これってどういう意味なんだろう"と、思わず向かい合いたくなります。個人的には『一弦』(M-7)が好きで。

「ありがとうございます。嬉しいです」

――ギターと人生を重ね合わせるダブルミーニングや、『せーかいせかい』(M-8)の<戻れないあみだくじ>といったような比喩表現が考えさせられるし、刺さるんですよね。

「物に例えるのがすごく好きで。聞いた時にあまり生活からかけ離れてるものじゃない方が入りやすいと私は思うので、そこら辺は意識して言葉選びをしてますね」

――『一弦』は、それこそ大人にも響く曲です。何がキッカケになって作った曲ですか。

「これはもうそのまんまで。ギターの1弦が切れた時に、"これ、曲にした方がいいな"とひらめいて。弦が切れた時にこの曲を手に入れました」

――本当に生活の中で起こる、ふとした出来事を曲の種にされているんですね。『あしたてんき』(M-5)はスリッパを蹴ったことがキッカケになっているとか。

「そうです」

――パッと結びつくのがすごいなと。

「『一弦』は衝撃でした。私、ギターを弾いてる時に弦が切れたのが初めてで。初めてだからビックリしたのもあるかもしれないんですけど、何かの刺激があった時に直感が降りてくることは多いです」

――弦が切れたことをキッカケに、歌詞を書いて音を乗せた感じですか。

「そうです。最初に歌詞ができたので、主人公の感情の変化が1番伝わりやすい形でサウンドを作りたいなと思って意識しました」

――宅録ですか?

「これは宅録ではないです。歌だけスタジオで録りました。宅録もあれば、そうじゃない曲もありますね」

――宅録の曲は『薔薇の花(in the bedroom)』(M-4)と『薔薇の花(in the bathroom)』ですか?

「そうです。ベッドルームとバスルーム、どちらも宅録でがっつりやってます。バスルームの方は実際にお風呂場で録ってて」

――やっぱりそうですよね。反響の具合がお風呂的でした。『薔薇の花』はアルバムの中で2回出てきますね。

「最初に作ったサビの部分が『薔薇の花(in the bedroom)』です。ちょっと話変わっちゃうんですけど、私がこれから続けたいと思っているのが、言葉を大事にすることなんです。それを1番表してるのがこの曲なので、『薔薇の花(in the bathroom)』の方はサビに加えて今回のアルバムのために書いた歌詞をつけてます」

――私これを聞いて、ミスチルの『くるみ』という曲を思い出しました。<誰かの優しさも皮肉に聞こえてしまうんだ>という歌詞で。

「まさにですね」

――アルバムの最後をこの曲で締めようと思ったのはなぜですか。

「『薔薇の花(in the bathroom)』はアルバムのために作ったものなので、アルバムの中で重きを置いて、目立たせたくて。前半に『薔薇の花(in the bedroom)』がもう1曲入ってることと、バスルームということで、1個前のインスト『ぬるくなったら』にも、お風呂場っぽい環境音を入れてるんですね。その流れも考えた時に、『薔薇の花(in the bathroom)』をお風呂場で録って最後に置くのが1番アルバムとしての締まりがいいかなと思いました」

――シャワーの音ですね。全体的に生活音が聞こえてきて、それもきっと温度感に繋がっていますね。

「部屋で曲を作ることが多いのもあって、サウンドは結構部屋とか環境を意識して作ってますね」



曲が広がったことで、新しい解釈が生まれた


――『紡ぐ』(M-10)のFull ver.が収録されていますが、やはりShort ver.の反響の大きさがFull ver.に繋がったんですか。

「そうですね。元々Short ver.でアップした時は、サビの歌詞はできていて、私の音楽に対する決意表明や思ってることを等身大に歌ってたんです。でも思ってた以上に反響をいただけて、聞いてくださった方が自分に重ねて聞いてくれてて。そこで私が思う以外の新しい解釈が生まれたので、せっかくだからFull ver.を作る時にも、聞いてくださった方が自分と重ねて聞きやすいようにしたいなと思って。Full ver.は、元から入れていた自分の解釈と音楽への決意に加えて、聞いてくださった方が自由に歌詞を解釈できるように、余白を持たせて作詞しました」

――Short ver.の動画には朗読も入っていましたが、すごく感情が動かされました。<本当はあなたのために歌いたい>というのは、とたさんの決意表明なんですね。

「"あなた"が、聞いてくださる方のイメージだったので、そうですね。最初はそういう感じで歌ってました。ポエトリーの部分は、今聞くと赤裸々すぎて、ちょっとだけ恥ずかしいです(笑)」

――でもあれで心掴まれた人は多いんじゃないかなと思います。アレンジに出羽良彰さんが入ってらっしゃいますが、音作りはどのようにされていったんですか。

「この曲は元々結構シンプルで、私がスマートフォンで打ち込みで作ったものをそのままShort ver.で投稿していたので、音に重みがないというか。歌詞に新しい意味を持たせるなら、このサウンドだとちょっと軽いなと。聞いてくださった方の色んな解釈として、もう少し重みがあった方がいいなと思ったので、Full ver.はシリアスでスケールの大きいサウンドにしたくて、こういう形になりました」

――出羽さんとはどんな話し合いをされたんですか。

「歌詞の意味をお話して、"こういうイメージなんです"、みたいなやり取りはしましたね」

――一緒にやってみてどうでしたか。

「元々スマートフォンのサイズ感で作っていて、iphoneのマイクで録音していたが故に、やりたいイメージがあってもできないことが結構多かったんですけど、今回Full ver.を作っていく過程で、どんどん自分のイメージに近くなっていくのがすごくワクワクしました」

――自分1人では難しかったことができたと。

「難しかった。ほんとそうですね。多分1人だったらFull ver.でこういう歌詞にはならなかったと思うし、サウンドもお力を借りてできました。こうやって自分の作りたいものが作れたことも、ある意味では"紡げた"んじゃないかなと思います」

――『紡ぐ』の歌詞で気に入ってるところはありますか?

「サビは何回聞いても変な抵抗がない言葉だなと思ってて、結構気に入ってます。<空が泣く>という始まりも好きで。<空が泣く>までなら、正直どこかで聞いたことあるかもしれないワードじゃないですか。でも<あなたが笑えるように>って自分の中で歌詞として出せたことで、この曲は1歩前に進めたんじゃないかなと思って。私らしい歌詞かなと思って気に入ってます」

――歌詞を書く時はスラスラ出てくることの方が多いですか。

「時によりですね。出てくる時は頭の中ですごく連想ゲームしてて、バーッと出てくる時もあって、出てこない時は絞り出して、"出てこい、出てこい"と言いながらやってる感じです(笑)」

――『紡ぐ』はどうですか。

「『紡ぐ』はサビまでの歌詞がちゃんとできてない状態で。何ならサウンドも作りながら、歌詞も作りながら、歌いながら、一小節ごとに作ってました。完全に同時並行。気持ちの動くままにやってたので、結構スラスラ出てきたかもしれないです。コロナ禍に活動を始めたのもあって、冒頭は世間的な背景も交えた歌詞になっていて、その時だから書けた歌詞だなと、今見てもすごく思います」



対面でライブをすることで
"私の曲ってこんなに愛してもらえてたんだ"と実感できると思う



――改めて『oidaki』、どんな作品になったと思われますか。

「聞いてくださった方にとっては、どこを見ても少し引っかかるような、問題提起されてるんじゃないかと思ってもらえたらいいなと。あと、『oidaki』という名前を決めたのは、考える時間がもっと欲しいという意味もあって。私、長風呂して追い焚きしながら結構考え事をするんですよね。手しわしわになりながら2時間とか入ってて。お風呂と追い焚きと考え事が私の中ではすごく結びついてるので、アルバムを聞いてくださる方がリラックスしたい時、何か考え事をしたい、向き合いたいと思ってる時に歌詞を見てもらいたい。それで、変わるキッカケや何かのヒントになったらいいなという想いがあります。今作は『oidaki』というタイトルとしての役割が果たせる曲をまとめた、お風呂場で聞いてもらえる1枚になったんじゃないかなと勝手に思ってます」

――今後のビジョンはありますか。

「続けたいと思ってるのは、さっきもお話したように、歌詞を大事にし続けること。その曲ごとにいる主人公みたいな存在も、軸がぶれないように作り続けたいと思ってます。あと今後新しく取り組みたいのはライブです。SNSの配信ライブはしたことがあるんですけど、実際に人前で歌ったことがないので。それこそ『紡ぐ』とか、1人じゃできなかった曲が完成したみたいに、実際に人前で歌うことで刺激を受けて、また新たな曲を紡げたらいいなと思っています」

――リアルでお客さんと会うのは緊張しそうですか。

「緊張しぃなので、きっとしちゃうと思うんですけど(笑)。ずっと画面越しだったので、対面でライブをすることで"私の曲ってこんなに愛してもらえてたんだ"と実感できると思うんです。『紡ぐ』が伸びた時もそう思ったので、機会を作れたらいいなと思ってます。緊張でブルブルしないように頑張ります(笑)」

――やってみたいこと、会ってみたい憧れの人はいますか?

「やってることが近いなと思うのは、girl in red。私にはまだまだ手が届かないんですけど、世代的にも歌ってる内容も悩みや問題提起があったり、ベッドルームポップな感じも良いなと思って。私の手が届くように頑張りたいです(笑)。あと本当に憧れてるのは、beabadoobeeです。サマソニでライブを見たんですけどカッコ良すぎて。私がイケイケな感じに慣れてないんで、girl in redの方がどっちかというと纏ってるものが近いかなと。お二方ともいつかお会いできたら嬉しいですね」

――口に出すと叶うかもしれませんからね。

「そうですよね、口に出して掴みたいです」

Text by ERI KUBOTA




(2023年3月 7日更新)


Check

Release

ベッドルームから紡がれる極上ポップミュージック

1st Full Album『oidaki』
発売中 2500円(税込)
REP-065

《収録曲》
01. 栞[inst]
02. 君ニ詠ム。
03. ブルーハワイ
04. 薔薇の花(in the bedroom)
05. あしたてんき
06. 通り⾬[inst]
07. ⼀弦
08. せーかいせかい
09. こうかいのさき
10. 紡ぐ
11. ぬるくなったら[inst]
12. 薔薇の花(in the bathroom)

Profile

2000年代生まれ、TikTok発のベッドルームアーティスト・とたが、2月22日に1stフルアルバム『oidaki』をリリースした。2021年2月から、TikTokやYouTubeなどのSNSにオリジナル曲やカバー曲動画を投稿しはじめた彼女。柔らかく透明感のある歌声、一度聞いたら耳から離れないメロディ、確実に心を掴む叙情的な詞世界。そして手書き文字とノスタルジックな風景を使用した、作り手の温度感を感じる動画。統一された世界観と圧倒的な音楽センスは、やがて注目を浴びる。2021年6月に公開された『紡ぐ』のShort ver.が、わずか1年足らずで270万回以上再生され、27,000本以上のユーザー動画が投稿されるなど、じわじわと存在感を示してきた。1stフルアルバム『oidaki』は、インスト4曲を含む全12曲が収録されている。日常に馴染む楽曲たちの随所に散りばめられた温度感からは、この作品が大切に創られたことがわかる。今回ぴあ関西版WEBでは、ベールに包まれたとたの歩んできた道すじや、アルバム『oidaki』に込めた想いを紐解いた。本当にこれからの活躍が楽しみでならないアーティストだ。つい先日、本人も出演している『紡ぐ』のMVが公開されたばかり。素晴らしい才能の芽吹きをぜひ一緒に追いかけてほしい。

とた オフィシャルサイト
https://instabio.cc/3061509TNL1nu