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幅を広げ、種を蒔いて、もっと遠くへ
2ndフルアルバム『Eye』で大きく進化した表現力、提示した可能性
Hakubiインタビュー

京都発のスリーピースバンド・Hakubi。凛とした佇まいから発せられるパワフルな歌声と叙情的なサウンド、鋭く生々しいライブパフォーマンスが鮮烈な印象を残す。そんな新進気鋭の彼らが、3月15日(水)に2ndフルアルバム『Eye』をリリースする。2017年の結成から6年、精力的に活動を続けてきたHakubiだが、より多くのリスナーに自分たちの音を届けるため、今もバンドの音楽性を模索していると語る。そんなフェーズにおいて、彼らの“今やりたいアプローチの楽曲たち”がぎゅっと詰め込まれた今作。ぴあ関西版WEBでは、『Eye』の制作過程について片桐(vo&g)、ヤスカワアル(b)、マツイユウキ(ds)に話を聞いた。

"Hakubiの色んな側面や可能性が見えるアルバムになる"と
想像しながら作っていった



ーー2ndフルアルバムということで、制作する上で意識された部分はありますか?

ヤスカワ「前回の『era』はメジャー1stアルバムだったので、サウンド面では結構固く入りましたね。色んな年代でウケる要因とか、年齢層を選ばない音像とか。どちらかというとポップスに寄った音作りをしていたんですけど、今回はそこからスケールを広げて、ロック中心ではありつつも、手数と表現の幅をさらに増やしたアルバムですね」

ーー表現の幅を増やしたいと。

ヤスカワ「今、音楽のシーンって何が引っ掛かるかわかんないじゃないですか。色んな形で表現の幅を広げてリスナーさんに提供して、そこで引っ掛かったものから追求していけばいいかなというのが僕の持論だったので、今回はより幅を広げる方向に持っていきました」

片桐「『era』はHakubiのメジャーデビューまでの集大成をすごく意識して作ったアルバムでした。私たちはKYOTO MUSEというライブハウスで始まって、年間100本ライブをする年もありましたし、本当にライブハウスをたくさん廻ってきたことで、ライブハウスで見せるバンドの良さも出しながら、メジャーデビューをキッカケにもっと大きく広がっていこうと、そんなところも見せていけるHakubiに挑戦した1枚でもあったんです。『era』で挑戦したデジタルなサウンドメイクや、トライアンドエラーできたことが、今回の『Eye』に繋がってるのかなと思います」

ーー制作の舵取りは主にヤスカワさんがされているんですか?

片桐「アルくんは多分1番色んな楽曲や音楽を聞いているので、サウンド面でのアプローチの仕方を最初に聞くことが多いです。トレンドにも詳しくて、それこそTikTokとかは1番見てるので」

ーートレンドも意識されているんですね。

片桐「私とマツイくんは"古き良き"も大切にしたいタイプで。譲れるところ、譲れないところもあったりするんですけど。アルくんはどちらかというと新しいものを追っていけるタイプなので、絶対に意見は取り入れるというか、まず1番に意見を聞きますね」

ーー今作は全体的に生命力がある楽曲が多いなと感じました。1人だけれど独りじゃないといったメッセージ性を感じましたが、アルバムのテーマは決められたんですか。

片桐「コンセプトは特に決めていなくて。アルバムタイトルの楽曲『Eye』が1番最後にできた流れでタイトルが決まりました。今回は本当に私たちが"今"作っている最新の楽曲を詰め込んでいる感じです。去年出したシングルがそれぞれ全く違うアプローチからできているので、本当に色んなHakubiの側面や可能性が見えるアルバムになるなという想像は、すごくしながら作っていきました」



ライブで使う機材をレコーディングに使用


ーー収録されているのは、2022年配信のシングル4曲と1月15日にリリースされたシングル『Rewrite』(M-1)、そして5曲が新曲ですね。シングルはタイアップが多い印象でしたね。

片桐「それこそ『Rewrite』は去年の3~4月あたりで構想を練っていて、アルバムの曲の中では早い段階、『あいたがい』(M-3)と同じタイミングで書いていたんです。アニメの放送時期に合わせてリリースするので、早めに楽曲を制作して、リリースがちょっと遅くなることはあったんですけど」

ーー『Rewrite』は1年前には制作し始めていたんですよね。そしてTVアニメ『ノケモノたちの夜』のEDテーマとして放送されています。TVアニメ用に書き下ろすのは初めてなんですよね。

片桐「地上波は初めてでした」

ーーストーリー全体を見て書かれたんですか。

片桐「原作を読ませていただいて、そこから制作を始めました。タイアップって、"こういう言葉を入れてください"とか、"こういうイメージがいいです"みたいに縛りが厳しいと勝手に思っていたんですけど、プロデューサーさんも監督さんも、"Hakubiの音楽そのままやっていいよ"と言ってくださったので、本当に自由にやらせていただいて。もちろん作品からキーワードをもらったり、イメージしたりするところは多かったんですけど、自分と作品とキャラクターを重ね合わせて、自分のことを素直に書いている楽曲ではあるので。Hakubiらしさ、バンドらしさ、自分たちらしさを無くすことは全くなく、作品に寄り添ってはいるけどHakubiのバンドの楽曲だよねと思ってもらえる楽曲になりました。アレンジ面ではandropの内澤(崇仁)さんもバンドに寄り添っていただいて、今までの私たちのライブでも浮いてしまわない楽曲にしてくださいました」

ーーマツイさんは『Rewrite』に関してはいかがですか。

マツイ「レコーディングでは、曲ごとに合う機材を使った方がいいという概念があって、結構機材をレンタルするんです。自分が持ってる機材はライブで使ってレコーディングで使うことは少ないので、ライブの音を音源に入れられたら、『Rewrite』を聞いて初めてライブに来てくれた人がサウンド面で遜色なく楽しめるんじゃないかなと思って、自分の機材を使ってレコーディングしました」

ーーレコーディングしてみてどうでしたか。

マツイ「やっぱり嬉しさが強くて。1番叩き慣れてる音というのもあって、のびのびできました」

ーーヤスカワさんはいかがでしょう。

ヤスカワ「アルバムの中の立ち位置だと、割とロックナンバーの気が強い曲というか。EDなんですけど、結構ロックロックしてるかな」

片桐「確かにね。EDって静かに終わりやすいけど、ちゃんとロックナンバー」
ヤスカワ「アルバム発売前の先行配信シングルはほとんどシーケンスを使っていないので、スリーピースとして勝負できて良かったかなと思います」



「目と目を合わせること」や「向き合うこと」の大切さを考えた楽曲が
詰まっている



ーーアルバム全体に共通すると思ったのですが、『Rewrite』に<閉じ込めてたのは誰でもない自分だった>という歌詞があって、『Twilight』(M-2)に<価値がないと決めつけていたのは私の方なんだろうか>、『夢が夢であるうちに』(M-10)で<認めないのはいつも僕だった>と、自分軸に立つ表現が多いと感じました。楽曲は片桐さんの気持ちを表すものだと思いますが、こういった歌詞を書いた背景は何かありますか?

片桐「毎回、その時々で本当に楽曲に向き合って書いているので、あまり意識したことはなかったんですけど、自分が思うことは制作時期が違っても同じなんだなって、今言っていただいて思いました」

ーーなるほど。

片桐「"どんな曲がアルバムに入っていくんだろう"、"あとは何のピースが足りないんだろう"と考えていた時に、自分自身と向き合う楽曲が多いなと思って。ちゃんと自分自身と向き合ってると思っていても、しっかり目と目を合わせていなかったら、自分の奥底までは届かない。メジャーデビュー前やバンドを始めた頃は、その気付きが全くなかったなって。そこに気付けるようになったのも、自分自身との本当の向き合い方ができるようになったからだと思います」

ーー本当の向き合い方。

片桐「アルバムの中で最後に完成した『Eye』(M-5)という楽曲でシンガロングが少しだけ入ってるんですけど、自分と向き合った先に自分を認められたら、誰かのことも見れるし、自分を通してちゃんと誰かと目を合わせられる。そう思えるようになったので。人は1人だし、自分自身すら分からないことはあるけど、目と目を合わせることの大切さや、向き合うことの大切さを考えた楽曲が詰まっていると思います。1番最後に『Eye』を作れたのも、今までの楽曲があったからかなとも思っていますね。それが1枚の作品としてパッケージ化された。『Eye』でアルバムの最後のピースがハマった感じですね」

ーー『Eye』をイヤホンで聞くと、ボーカルが左右にパパッと振られるのも印象的でした。

片桐「歌詞の内容的には、自分と向き合ったり劣等感を書いていたりもするんですけど、背中を押して皆で一体になれる楽曲を作りたいねと話していて。サウンド的には4つ打ちだったり、ちょっとポップな要素が欲しいねって。ボーカルはアルくんがショート動画を見ていて、"早口の言葉を詰めている方がいいよね"とアドバイスをもらって作った感じです。色んなギミックがあることで、音楽の面白さが伝わる楽曲にはなったんじゃないかな。『Eye』に関してはアルくんがサウンドプロデューサーというか、色々アドバイスをくれました」

ヤスカワ「ほんまはエレクトロにしたかったんですよ。打ち込みとか入れたかった。けど"バンドが良い"とか言うメンバーがおって(笑)」

マツイ「とか言うて、とか言われた(笑)」

ヤスカワ「僕が折れましたね」

ーーこの曲がSNSなどで使われた時のことを考えて作られるんですか?

ヤスカワ「切り抜きで成立するような楽曲作りを、全曲に仕組んでるつもりです。さっきも言ったけど、何が流行るかわからないじゃないですか。でもある程度ベースは整えた方がいい。TikTokやショート系って、ユーザーが使用して他の動画と組み合わせたりして広がっていくじゃないですか。だからキャッチーな部分があった方が絶対合わせやすいと思ったんですね。アルバムとしても全体的にミドルの曲が多かったんで、残りのピースとして速い曲が欲しかったから、ちょうど良かったとこもありますけど」

ーー戦略的に考えつつ、曲を作ってらっしゃるんですね。

ヤスカワ「戦略的にやって、売れへんかったら意味ないですけどね(笑)」

ーー曲作りにおいて、そういう意識は最初から持っておられたんですか。

ヤスカワ「個人的な意見なんですけど、バンドを6年ぐらいやってきて、"ここ失敗したな"という時があって。1年目に『夢の続き』(2017年)を出したんすよ。で、MVがパーンと跳ねて。まあ、跳ねたは跳ねたんですけど、『夢の続き』自体はその時表現したい音楽ではなかったんですよね。僕らも若かったんで、尖って、逆張り逆張りでまた別の新しいアプローチにしていこうというので活動してきたんですけど、『夢の続き』のリバイバルで別の曲を出してたら、違う可能性もあったと思うんですよ。そこが1つ気掛かりのポイントで。だから今回は種をいっぱい蒔いて方向性を決めにいきたい。そんな段階のアルバムですね」

片桐「『夢の続き』の続きみたいな曲を書いた方が良かったってこと?」

ヤスカワ「今思うと、その方向でいった方が良かったんじゃないか」

マツイ「4〜5年前の反省会してる(笑)」

片桐「(笑)。でもアルくんが言ってくれたみたいに、その当時は本当にやりたい音楽や見せたい方向性がなかったので、確かにその方法を選んでいたらどうなっていたんだろうというのはありますけど......結局色んなのをやってたと思うけどね」

ヤスカワ「だから、それは別にB面とかでも良かったやん」

片桐「なるほどね」

ヤスカワ「......というとこがあるんで、音像自体は固まってきてはいますけど、楽曲のスタイルは色々あるが故に、まだまだ自分たちでも未知数なんですよ」

ーーそうか。今も探りつつ、Hakubiの新しい挑戦もしながら、自己表現をしている段階なんですね。

片桐「その中で『Eye』は本当にやりたいサウンドをやってる感じはありますね」



私は私、あなたはあなた。ちゃんと1人1人、自分として生きて行こう


ーー『天才にも秀才にもなれなかった僕は』(M-4)はインパクトのある楽曲でした。動き出す人の感情と行動の流れに心が震えました。

片桐「ありがとうございます。これは大好きな『僕のヒーローアカデミア』を読んでいて思ったことで、自分に重ね合わせて書いていて。タイアップとかではなく、アニメのOPに流れたらカッコ良いよなと考えて、疾走感のある曲を作りたくて作った曲ですね。青臭さも、今までのHakubiも引きずりつつという感じで。ぜひMADとか作ってほしいなと思ってます」

ヤスカワ「作ってほしいね」

ーーそういうのキッカケでタイアップのお話が来たりもするんですか。

片桐「どうなんですかね」

ヤスカワ「わかんないんすよ。けどMADは数字めっちゃ持ってるんで」

片桐「コラボレーション動画みたいなね」

ーーあと個人的に『ゆれて』(M-6)が好きで。私、"人は1人で歩いて行かなきゃいけない、どこまで行っても悩みは尽きない"と真実を歌ってくれるバンドをめちゃくちゃ信頼してまして(笑)。

片桐「"1人じゃない"と歌ってるのに、この曲は"1人で生きていかなきゃいけない"と言って矛盾なのかなと思うんですけど、でも、0から100まで分かり合えるのって、家族でもきっと無理だなと思っていて。全部自分が責任を取るということではないですけど、私は私、あなたはあなた。ちゃんと1人1人、自分として生きて行こうって。言い方や伝え方は違うけれど、結局Hakubiの音楽で言ってることとリンクしているのかなと」

ーー本当に。突き放すわけでもなく肯定してくれる歌で、とても好きです。しかも、京都を代表するTurntable Filmsの井上陽介さんがアレンジをされたんですね。

片桐「『結 ep』(2020年)で『Friday』をアレンジメントしていただいてからの繋がりで。私たち京都のバンドではあるんですけど、京都の音楽シーンというか、どういう音楽が京都と言うのはなかなか難しいというか。もちろんどこの都道府県でも同じだと思うんですけど、井上さんは京都らしさを持っているなとすごく感じていて。自分たちが『ゆれて』で表現したかった浮遊感や淡々とした感じを、さらに奥深くしてくださった印象があります」

ーー全体的に軽やかで、井上さんらしいリズム感ですよね。

片桐「最初のイントロで元々私がアルペジオを弾いていたのを、"頭を8分の6拍子にしたらどう?"と言ってくださって、それがめちゃくちゃカッコ良くてそのまま使わせていただきました。井上さんの良さがすごく出てるなと思って」

マツイ「バンド活動の中で色んな人と関わるタイミングっていっぱいあるんですけど、1回関わった人とまた関われるのがすごく嬉しい。僕は人と繋がることが大好きなので、井上さんとできたのも嬉しかったですね。井上さん節もありつつ、Hakubiっぽさも良い感じに混ざったので、僕もそのこの曲めっちゃ好きです」



バンドという見られ方やけど、別にバンドっぽい音楽をしなくてもいい


ーー『サイレンと東京』(M-8)は、どこか『午前4時、SNS』(2019年)に通ずるものを感じました。後半のエレクトロノイズがカッコ良くて。でも歌詞はなかなかの暗さという。

片桐「私はこの楽曲を作った時、これはHakubiではできないかなと思ってたんですけど、2人は気に入ってくれたのでやってみようとなりました。2人はなぜこの曲を選んでくれたのか、結構気になったりはしてた」

ーー聞いてみましょう。ヤスカワさんは『サイレントと東京』のどこがお好きですか?

ヤスカワ「TikTokで切り抜こうと言ってた歌詞、どこやっけ」

片桐「<レッカー呼んだ高速 ただ眠る場所を探し放浪>」

ヤスカワ「そこや。デモ聞いた時に、そこ何かいけそうやなと思ったから」

片桐マツイ「いけそうやと思った(笑)」

片桐「キャッチーな言葉ってこと?(笑)」

ヤスカワ「僕いけそうか、いけそうじゃないかで決めるんですよ」

ーーなるほど(笑)。

ヤスカワ「引きが強いかなと。こんなん言うのあれっすけど、僕らバンドという見られ方ですけど、別にバンドっぽい音楽をしなくてもいいかなとは思ってるんですよ。だから打ち込みがいいなって話をしてて。ライブはライブで別の考え方があるんで、別の演出方法でやったらいいかなってので、とりあえずエレクトロにいきたいという話はしてましたね」

片桐「楽器を持たずにライブをするビジョンもありなんじゃないかと話していて。例えば私がギターを弾かなかったり、アルくんがシンセベースを弾いたり。今はパッドを叩いてますけど、そういう広がり方も自分たちの可能性なのかなって。それこそアルくんが好きなMUSEのボーカルのマシューはマイク1本で歌っていらしたりするし。歌い方も今までは本当にスパンッと歌うことが多かったんですけど、この曲に関しては、THE CHARM PARKさんにアレンジをしていただく段階で、"素直に真っ直ぐはっきり歌うんじゃなくてボソボソ歌ってみたらどう?"と仰っていただいて、今までのHakubiにはない歌い方をしてます。1人の空間で真夜中に歌っているリアル感もあって生々しくて、それも良かったんじゃないかなと思います」

ーー確かに距離が近いですね。マツイさんは『サイレンと東京』のどこがお気に入りですか。

マツイ「ヤスカワくんが言った部分は一緒です。片桐さんが僕らにデモをくれる時、大概弾き語りが多いんですけど、この曲だけ世界観が違ってて。前回のアルバムは"今までとこれからの未来"というコンセプトやったんですけど、2作目は絶対に変化をつけなきゃいけないと考えてて。ヤスカワくんがエレクトロな感じと言って、そこは挑戦してなかった世界観だったんで、やってみるのも面白いなと思いました」

片桐「今までずっと弾き語りでデモを上げていて、皆に渡してデモを広げてバンドアレンジをする作り方だったんですけど、この曲はデモを打ち込みとアコースティックギターで作っていて。元々バンドでやる構想で打ち込みをしてなかったんですね。でもそれが良いと言ってくれて、可能性が広がったので良かったです」

ーーアルバムにこの曲があるかないかで言うと、あるとやはり幅が一気に広がりますね。あと東京という言葉を印象的に使われていますが、片桐さんは東京にはどんなイメージがありますか。

片桐「皆が夢を追う街でもあると思うし、どこかで諦めてしまう地でもあると思う。それは夢を諦めるのでもなく、例えば人間関係を諦める、理解して留めるというか。色んな意味で、始まりでも終わりでもある地。それこそ『ゆれて』の<都会の中央線>は東京の中央線のイメージで書いたんです。これはただの偏見で、都会あるあるかもしれないんですけど、電車で肌が触れ合うぐらい近い距離にいるのに遠くに感じたり、他人でも人でもない、隣り合わせても何も感じない、そんな虚無感も東京にはあるんじゃないかなと。人が溢れ返ってても、虚無で1人ぼっちだと感じる。その孤独な感覚があって書いてましたね」



自分のことを認めてあげられないと、先には進めない


ーー『夢が夢であるうちに』でアルバムが締まりますが、この曲からはメッセージ性の強さを感じます。

片桐「この曲は、片桐が"アルバムに入れたい"って2人にゴリ推ししていたんです。今じゃないと書けない曲だとすごく思っていて。『アカツキ』(2021年)にも通ずる、葛藤しながらも夢に向かってまた歩き出す楽曲なんですけど、自分のことを認めてあげられないと進めないというのは、ずっと感じているところではあって。Hakubiはよく、自分との葛藤とそれでも進まなきゃいけないという楽曲を作ってきたんですけど、未だにそれを書き続けるのは自分らしいのかなと。この曲は本当に自分の足で進むことを書ききれた曲です。2人がもう何を言おうが入れましたね(笑)」

ヤスカワ「ちょっとふてくされてませんでした。"やらへんのやったら、私ソロでやるし"って」

片桐「あーそうですね」

ヤスカワ「1番イメージ難しかったです。最初シンガロングにしてなかった?」

片桐「えー、そうだっけ」

マツイ「シンガロングやったら俺も止めてると思う。デモでもらった時は普通の弾き語りやって。昔の『17』(片桐が高校生の時に書いた、Hakubi結成のキッカケになった曲)と近いものがあったけど、それをもう1回やるのは違うし、まとまりつかなかったんですよ。曲自体は良いんですけど、僕らもどうしたらいいかわからんくて。でもさっき片桐が言った通り、この曲はアルバムの中で最後の位置だし、あと1番訴えかけてる曲に聞こえたんで、ちゃんと形にできたことがすごく嬉しいですね」

ーー形にするまでに紆余曲折あったんですか。

片桐「ありましたね」

マツイ「うようよしてました(笑)」

片桐「(笑)。いつもはデモで長い曲を渡しても、"じゃあこれ1番の半分にしてみない?"という話をしてまとまっていくんです。で、自分的に歌詞がちゃんと繋がるように切ったり合体させていけたんですけど、この曲に関しては一語一句を消すのは違うなというので、尺的には長くなってしまうけど、このまま入れたい想いがあって。その分アレンジ面ではすごく大変でしたね。弾き語りだと弾きやすいけどちょっと軽い、バンドにしたら重くなってしまうかもしれない。その面でどうしようかなとピアノのアレンジを入れたりして」

マツイ「弾き語りだけで完成されてたので、どう入っていいかもわかんなかった。アウトロもあって難しかったですね」

ーー最終的には納得のいくものになったと。

ヤスカワ「まあ、まあ。そですね。片桐の熱意ですね」



バンドを聞こうと思ってバンドを聞いてない人にも届く仕掛けを作りたい


ーー改めてどんな1枚になったと感じられますか。

マツイ「1作目の『era』は、培ってきた中で大きいステージに立たせてもらった時に、もっと上の人がやってんの見て"こうなりたい"という想いを詰め合わせた1枚やったんですけど、2枚目は感情のままもっと大きくなっていきたいのと、もっとHakubiを色んな人に知ってもらいたいのと、"こういうこともできる"という見せ方をできたアルバム。個人的には第2章の始まりの1枚になっていると思います」

片桐「今まで進化してきたつもりではあったんですけど、今作は色んな楽曲を通してバンド全体の大きな進化を可能性として見せることができるし、"Hakubiってこういうのも合うんだ"と思ってもらえるアルバムになったと思います。自分自身としては、歌い方と表現力がアップデートされたのがハイライトで。『サイレンと東京』でTHE CHARM PARKさんに言っていただいた囁き声の歌い方や、『Eye』のちょっとポップな歌い方。ボーカリストとしても進化できたアルバムです」

ヤスカワ「最近って、楽器にギターもベースもない音楽も流行ってると思うんすよ。そういう音楽のアーティストはバンドじゃなかったりするんですけど、聞いてる人がいる。自分たちもそういう層に聞いてもらいたくて音楽をやってると思う。聞いてるのがバンドサウンドなだけで、そんなにバンドを知らない人とか、バンドを聞こうと思ってバンドを聞いてない人もめっちゃいると思うんです。だからそういう人たちにも届く仕掛けを作りたい。まあ、自分たちは方向性が色々あって、欲張りっちゃ欲張りなんですけど。何を言おうと思ったかな。バンドとしてあんま評価されたくないですね」

片桐「アーティストとして?」

ヤスカワ「音楽団体みたいな」

片桐マツイ「(笑)」

ヤスカワ「と思いましたね、今回のアルバム。あと聞いてほしい層がロックキッズだけじゃ足りない気がしますね」

ーー確かにもっと遠くまで届く1枚だと思います。私もHakubiはロックのイメージがありましたが、『Eye』を聞いてイメージが変わりました。

マツイ「でも多分ライブやったらロック感強くなってると思う」

片桐「それこそ『Eye』で知ってくれた人たちがライブで聞いたら"こんなにすごいんや"って、CDを通して生で音楽を聞くことの素晴らしさに出会って、またさらに目と目を合わせて向き合って伝えられる機会があったら、それは新しい音楽の広がりにもなるんじゃないかな。その人たちにも私たちも出会いたいな」

ーー4月からは全国ツアー『-Eye to Eye-』が始まります。大阪は4月27日(木)のBIGCATでセミファイナルですね。意気込みをお願いします!

片桐「今まで出してきた曲も含め、新曲もたくさんあるので楽しみにしていただきたいのと、色んな曲で色んなアプローチをしたことでライブの幅もすごく広がったので、Hakubiのライブを見たことがある人もない人も、ぜひ足を運んで、今の新しいHakubiに出会ってほしいです」

マツイ「『Eye』の良さはもう『Eye』だけでいいんですけど、ライブの良さは『Eye』以外にも散りばめてきたので、やっぱりライブに来てほしいですね」

ヤスカワ「ライブに関してはいつも通りするとは思うんすけど、新しい風が吹いてもいいかなと思うし、まあ、声出せると思うんで、存分に色んな楽しみ方をしてください」

Text by ERI KUBOTA




(2023年3月10日更新)


Check

Release

“今のHakubi”がやりたいことを詰め込んだ2ndフルアルバム

2nd Full Album『Eye』
発売中

【初回限定盤】(CD+DVD)
4000円(税込)
PCCA-06178

【通常盤】(CD)
3000円(税込)
PCCA-06179

《CD収録曲》
01. Rewrite – TVアニメ『ノケモノたちの夜』エンディングテーマ
02. Twilight – RPG『メメントモリ』キャラクターテーマソング
03. あいたがい – ピッコマTVCMソング
04. 天才にも秀才にもなれなかった僕は
05. Eye
06. ゆれて
07. 32等星の夜
08. サイレンと東京
09. 君が言うようにこの世界は– ABCテレビ/テレビ神奈川ドラマ+『青春シンデレラ』主題歌
10. 夢が夢であるうちに

《DVD収録内容》※初回限定盤のみ付属
NOISE FROM HERE – HALL Edition
2022.11.03 @恵比寿ザ・ガーデンホール
01. 悲しいほどに毎日は
02. Twilight
03. 夢の続き
04. どこにも行けない僕たちは
05. 32等星の夜
06. サーチライト
07. 栞
08. 22
09. mirror
10. 君が言うようにこの世界は

Profile

ハクビ…2017年結成、京都発スリーピースバンド。地元京都を中心に全国で活動中。片桐(vo&g)が紡ぎ出すストレートな言葉とその弱さを押し殺すように訴えかける力強い歌声が早耳のリスナーから支持を受け、MV「夢の続き」はYouTubeにて330万回再生を突破。1st、2nd、2枚のe.pはライブ会場限定にも関わらずそれぞれ3,500枚を販売し、2019年4月、3rd e.p『光芒』を初の全国流通でリリース。内容、セールスともに大きな話題を呼んだ。2020年USENインディーズ年間ランキングでは「午前4時、SNS」が4位にランクイン! そして、2021年9月にリリースされたメジャーデビュー AL『era』は「第 14 回 CD ショップ大賞 2022」に入賞!さらに日本テレビ「バスリズム 02」『これがバズるぞ 2022』にて TOP5入、3 年連続ランクインを果たした。また 2022 年は、VIVA LA ROCK、METROCK、京都大作戦、 JOIN ALIVE、ポルノ超特急、RADIO CRAZY など続々と大型フェスに出演、入場規制となるステージもありライブにも大きな注目が集まる。11月には恵比寿ザ・ガーデンホールにて初のホールワンマンを開催、チケットは即日SOLD OUTとなった。今年3月15日、2枚目となる待望のフルアルバム「Eye」をリリース。4月からは全国8都市をまわる全国アルバムツアーを発表、ファイナルは東京・LINE CUBE SHIBUYAにて開催される。

Hakubi オフィシャルサイト
https://hakubikyoto.com/


Live

「Hakubi one-man tour 2023 -Eye to Eye」

【福岡公演】
▼4月1日(土) 18:00
LIVE HOUSE CB
【岡山公演】
▼4月2日(日) 18:00
YEBISU YA PRO
【愛知公演】
▼4月7日(金) 19:00
エレクトリック・レディ・ランド
【石川公演】
▼4月8日(土) 18:00
金沢vanvanV4
【北海道公演】
▼4月15日(土) 18:00
BESSIE HALL
【宮城公演】
▼4月23日(日) 18:00
仙台MACANA

Pick Up!!

【大阪公演】

3月11日(土)一般発売
Pコード:231-820
▼4月27日(木) 19:00
BIGCAT
全自由-3800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以上は有料、3歳未満は入場不可。 お子様の安全確保は保護者の責任においてお願い致します。
※販売期間中は、インターネット(PC・スマートフォン)のみで販売。1人4枚まで。チケットは、4/20(木)朝10:00以降に引換えが可能となります。
[問]清水音泉■06-6357-3666

【東京公演】
▼4月30日(日) 18:00
LINE CUBE SHIBUYA

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