ホーム > インタビュー&レポート > これぞ名盤。進化した4人の愛すべき人生賛歌 3rdフルアルバム『ugly beauty』が誕生! DENIMSインタビュー
土井の加入でバンドに起きた変化
――徳人くんが入って以降、バンドの雰囲気はどうですか?
釜中健伍(g&vo)「人間関係的なことも、曲作りのペースも、単純に良くなりました。バンド内の空気がすごく良い状態です」
――ずっと仲は良かったですよね?
土井「そうですね。いつも遊んでもらってました」
――外から見ていたDENIMSと、実際に入ってからのDENIMSって、感覚は変わったりしましたか?
土井「どうかな。大きく変わることなく、割とそのまんまのイメージですね。皆僕より5~6歳離れてて、面倒見の良いお兄ちゃんが3人みたいな(笑)」
釜中「面倒見の良い弟が1人みたいな(笑)」
――お互いに面倒見が良い。
釜中「そうですね。徳人はすごくしっかりしてるので」
岡本悠亮(g)「僕らに1番足りなかった社交性みたいなものを持ち合わせてくれています」
土井「(笑)」
岡本「古着屋さんとか、めっちゃ色んな方面に友達がおって」
江山真司(ds)「東京のライブで50人ぐらい来たよな。どんだけ友達おんねんって」
――ご出身は関西ですか?
土井「三重なんです。大阪に来る前が東京でした」
釜中「美容学校に行ってたから、美容師とか古着屋の友達とか多いイメージやな」
土井「東京で何かやる時は、助けてくれる人が多いですね」
――制作面ではどう変わりましたか。
釜中「やっぱりベースラインのフレーズは、まっつんとは違いますね。多分徳人も意識して、まっつんはやらないだろうラインを攻めてきたり、"もっとこういう風に作っていった方がよくない?"、"他のバンドはこんな感じでやってるよ"という意見ももらったりして。今回のアルバムを作るまでの間にそういう話し合いもあって良かったです」
土井「元々あるDENIMSの良い部分を、"これをしたらもっと良くなるんやろうな"と考えてました」
釜中「徳人はバンドも色々経験してきたし、意見を出してくれたことで、長いこと自分たちだけのノリでやってた制作の良くない部分を改善できたという意味では、すごく変わったと思いますね」
――DENIMSに入る時、"こんなベースを弾きたい"というイメージはあったんですか。
土井「今まで他のバンドサポートとか、割と気軽に参加してたんですけど、DENIMSは10年近く同じメンバーでやってきてるから、"ファンの人はどう思うやろう、まっつんさんやったらどうするかな"という気持ちが、最初の1年ぐらいはずっとありました。けど、アルバムに意識が向いた時ぐらいから少しずつなくなっていって。受け入れられ始めたかなと感じるタイミングがちょこちょこあって、精神的にもいけるかもとなって、まっつんさんと違うことをやろうかなと思えました」
――徳人くんが悩んでいたのは、3人は見ていて感じましたか?
岡本「いや、全然。徳人は柔軟で、"こういう音色があるんちゃうか"と自分で探したりして、そこはまっつんになかった部分かなと思います。普段聞いてる音楽がカマチュー(釜中)と近いので、カマチューが"こういうことやりたい"と言った時にも話が早いし」
釜中「お互いブラックミュージックが好きやし、新譜も結構追ってるので、そういう話になったりしますね」
今のDENIMSにある「テーマ」
――2021~2022年で配信シングルを6枚出されましたが、その中で新体制のDENIMSの曲作りの形ができて、今作のアルバムに行きついた形ですか?
釜中「あまり意識はしてなかったんですけど、言われてみたらそうですね。配信シングルは割と1曲1曲集中して作ってて、"この時期にこんなシングルを出せたらいいな"というイメージはあったんですけど、アルバムはまだ意識できてなくて。アルバムを作るとなってから、曲のまとまり具合や"今のDENIMSとは?"みたいなことを考え出したかもしれないです」
――"相対する2つのものが共存する矛盾の中にある美しさ"がテーマで、それが今のDENIMSらしさなんですね。
岡本「今作に限らず、ずっと相反したテーマみたいなのがありますね」
釜中「『RAGE』を出した後に『AIWO』を出してる時点で、全然統一性がないというか」
岡本「かなりメンヘラやな」
釜中「めちゃくちゃ怒って、めちゃくちゃ抱きしめるみたいな(笑)。速めや激しめの曲を出したら次はゆっくりした曲を出そうとか、その癖があるかも。『ひかり』の後に『way back』を出したり」
――今作は私、1回聞いて最後ちょっと泣いてしまいました。
釜中「ほんとですか! ありがとうございます! 嬉しいです!」
――"ダメな大人"を歌っていたDENIMSが地に足が着いたというか。それぞれご結婚もされて環境の変化もあるのかなと思いますが、様々な経験をしたDENIMSの歴史が詰まっているし、懐も大きくなって、さらに自分たちの道を進もうとしてる。本当に感動しました。
岡本「めっちゃ名盤」
――そう、名盤。おかゆちゃん(岡本)が"あなたの人生の名盤TOP10にランクインする"とコメントを寄せていましたが、本当にそうやなと思って。
釜中「ありがとうございます!」
――シングルは1曲ずつ丁寧に作ったというので、アルバム曲もやはり丁寧さを意識されたんですか。
釜中「シングル曲は全部気に入っていたし、それぞれ評価されたとも思ってたので、それに負けないアルバム曲にしたいなと思ってました。配信シングルは2曲~3曲を同時期に録ったりしたんですけど、そのテンションでアルバム曲も丁寧に録りました。だからこそちょっと悩みましたね。期限がギリギリになったり、歌を録り直したり」
――今回はレコーディングディレクターに韻シストのTAKUさんを迎えておられますが、どんな経緯で一緒にやる流れになったんですか。
釜中「それこそ絶対に良いアルバムを作りたかったので、より良い音になるようにマネージャーと相談して、ディレクターはTAKUさんがいいんじゃないかと言ってもらって。僕自身、TAKUさんにギターを習いに行っていた時期があって、レッスンの後にプリプロを聞いてもらって、意見をいただいてて。僕の作る曲は音楽理論的にハチャメチャなことをしがちなので、"このコードにするならこのメロディーにした方がしっかり整理できるよ"とか、そういうことを教えてくださる方だったので、協力してもらいました」
――なるほど。
釜中「とはいえ、『RAGE』『AIWO』は結局セルフプロデュースで、後半の『ひかり』『way back』を録音し始めた辺りから協力してもらったので、プロデュースとかアレンジというほどやってもらったわけじゃないんですけど。エンジニアさんは、韻シストがいつも録音されてて、僕たちも『LAST DANCE』(2020年)を録ったbranch studioの栃尾(恒樹)さんという気の知れた方だったので安心できました。"この音をもうちょっとパキッとしてほしい"とか、"もっと華やかにしたい"みたいな僕の抽象的な要望を、TAKUさんが音楽的な言語に置き換えて栃尾さんに伝えてくれて。TAKUさんはギターの音作りやギターテック、タイトなスケジュール管理まで担ってくれて、レコーディングの監督役をやってくださったのが特に助かりました」
岡本「僕が"こういう音を出したいんですけど"と言う時は、参考音源がそもそもギターじゃなかったりするんですけど、TAKUさんは"うーん......"と悩みながらも持参したエフェクターで一緒に作ってくれたり、僕の作っためちゃくちゃなフレーズも精査してくれたり。ただ、"このフレーズめちゃくちゃかもしれないけど、僕はこれがいいんです"というものに関しては"それでいこう"と尊重してくれて、気持ち的にはすごく助かりましたね」
――皆のやりたいことも叶えつつ、整えてくださったんですね。
釜中「TAKUさんは、"カマチューの作る曲はめちゃくちゃな部分があるけど、そこは大事にしといてほしい"と言ってくださって。音楽理論を学んでいくことで自分らしい発想がなくなって、頭でっかちで曲を作る方が怖いからと。少しずつ理論的にも曲を作れるようになって、聞き心地を整理できるようになったらもっと良くなるよと言ってくださいました」
土井「僕もTAKUさんには音の選び方を助けてもらいました。あと、第三者的な目で"DENIMSはこうだからいいよね"と言ってくれて。論理的だし、TAKUさん自身もバンドをされてて両方兼ね備えてる人で説得力もあるので、すんなり入ってきました」
――江山くんは。
江山「僕は、前作『more local』もやってくれたドラムテックのToyoaki"ANIKI"Nagaiさん(THE→CHINA WIFE MOTORS)がいるだけですごくやりやすかったんですよ。今回はそこにTAKUさんが入ってきて。今までメンバーに"これどう?"と聞いて、"全然いいと思うよ"と言われても、信用できてない自分がずっといたんです。ほんまにちゃんと聞いてくれてるんかな、みたいな」
岡本「そんなこと言われても(笑)」
江山「そこに対して、信頼できるNagaiさんとTAKUさんが"全然いいよ"と言ってくれたことで、僕の中で"これでいいんや"という気持ちが倍になったんですよ。安心できた。だから録音が早くなって、納得の度合いも高くなった。それがアルバムの評価にも繋がってると思うし、素直に喜べる。お2人の存在はほんまにありがたいですね」
"自分のやりたいことは、音楽として邪魔じゃなかったんや"(江山)
――江山くんはコメントに"自分の中で凝り固まってたことがほぐれていき、DENIMSのドラムで良かったと気付かされた"と書いていましたね。
江山「前身バンドのAWAYOKUBAがあって、DENIMSが結成された時、最初に"自分のやりたいことを抑えて、歌が聞いてもらいやすいドラムを叩く"というテーマを決めたんですよ。それ故に、自分の中でどんどんおかしくなっていって。本当はもっとドラマーとしてやりたいことがあるのにできない。逆に自分でガチガチに縛りつけるようになってしまった。で、改めて今作を作る時に、邪魔かどうかは考えずに自分がカッコ良いと思うリズムを入れてみようと。それが実現できたのが『Life Is Good』と『syotyu-mimai』(M-2)なんです。今、DENIMSは割と歌で始まる曲が多いと思うんですけど、その中でしっかりイントロのある『Life Is Good』が評価されたのも嬉しくて。"ちゃんと想いを込めてこだわったことをやれば聞いてもらえるし、評価してもらえるんや"って自信になった。同時に、"自分のやりたいことは音楽として邪魔じゃなかった、余計じゃなかったんや"って。それがすごく嬉しくて。頭の中で凝り固まってたものが溶けた成果が出た感じですかね」
――そうだったんですね。『Life Is Good』をリード曲にしたのはなぜですか?
釜中「配信シングルで色んなジャンルや音楽性に挑戦したからこそ、曲を並べてみた時に、意外とソウルファンクっぽい曲がないなと。アルバムを出すならやっぱり、僕たちの中心にあるソウルファンクの雰囲気を、今の僕たちなりにミックスしたかった。だから『Life Is Good』と『syotyu-mimai』を作りました。『Life Is Good』は最初からリード曲として作ってたんですけど、気負いすぎて」
――歌を1回ボツにしたとインスタライブで仰ってましたね。
釜中「サビが転調してるんです。多分今までの僕たちだったら、『fools』(2017年)みたいな雰囲気でコード進行はループで、ラップっぽい歌を乗せてサビで終わらすイメージだったんですけど、今回はドラムフィルありの派手なイントロが最初にできて、めっちゃ気に入ってて、それをどう広げていくかみたいな作り方をしました。歌の転調も挑戦したくてやってみたら、今までの歌の乗せ方がはまらなくて、10パターンぐらい書き直して。でも歌の録音日が来て、モヤモヤしたまま録音したら全然しっくりこなくて。ごめんなさいと謝って録り直しましたね」
――最後まで突き詰めたんですね。
釜中「皆は録り終えてたので、僕の歌だけ。それもTAKUさんに相談して、"この転調の仕方は相性が悪いし勿体ない"と整理してもらって、また書き直して。最終的に納得のいく塩梅になったので良かったです」
――ベースはどうでしたか。
土井「『Life Is Good』、どんなリズムにしようかなってずっと悩んでたんですよね」
釜中「確かに悩んだ。歌がしっかりできてなかったし、テンポもベースの刻み方も悩んだな」
――江山くんも難しかったと言ってましたね。
江山「難しかったっすね。それがさっき話した、"これまでドラマーとしてやりたかったけど、やらない方がいいんじゃないかと思ってた部分をやった"から。故にだいぶ難しい(笑)」
――なるほど。でもそれは江山くんのやりたいことを1つ叶えたということだから。
江山「そうです、そうです。ツアーも5本ぐらいやってきて、今は全然大丈夫なんですけど、難しいことしてしまったなというのはあります(笑)」
岡本「後悔するよな、難しいことやっちゃうと」
江山「簡単にすることはできるし、今までは簡単にしてきた。でもそれはしないと自分の中で決めたね」
――ギターはどうですか。ギタリスト人生で全曲ベストプレイと仰ってましたが。
岡本「メインの印象的なフレーズはカマチューが作ってくれたので、Aメロだけ頑張って作ろうと色々なパターンを試しました。歌と歌の間にオブリガート(主旋律を引き立てるために演奏される短いフレーズ、助奏)を弾くのはなんか違うなと思って、よりリズム的で、そのままベースラインにも使えるアンサンブルが合うやろうと、ああいうフレーズになりました」
釜中「イントロから16分音符を刻むリズムに変化する展開とコード進行、ギターフレーズが『Life Is Good』の核というか。今の僕たち全員が1番納得のいくアンサンブルを作ることが、根本にありましたね」
――『syotyu-mimai』は皆さんお気に入りの楽曲のようですね。
釜中「2曲目に"こんな曲欲しいな"というので作り出して、ギターリフをおかゆと僕で振り分けて弾いて、ドラムフィルとかベースがあって、サンプリング的に音を切り貼りして、右と左に振って、サビで綺麗に転調して。『Life Is Good』よりもスッとできたし、遊び感覚で気負わず楽しく作れました」
岡本「ギターはずっと同じフレーズを繰り返すので、いかに良いところで崩壊させるかが気持ち良かったですね。弾いてて楽しかったです」
――歌詞は皮肉がきいてますね。
釜中「サビとか歌い出しは、元々違う曲で書いてたラップっぽい歌詞をはめたんです。語呂優先で、ほとんど何にも考えずに作りました」
――ここから『ひかり』(M-3)への繋ぎがとても良かったです。
釜中「ありがとうございます! 初期のプリプロを作る段階で『syotyu-mimai』のアウトロから『ひかり』の頭に入るイメージがあったんです。曲の前後の流れを考えるのが好きなので、うまくできて良かった」
――あと鍵盤の曲が増えたのは、やはりカマチューがピアノを始めてからですか?
釜中「そうですね」
――鍵盤曲を増やしたいと思ってた?
釜中「思ってました。ライブで重たい鍵盤を持って行ってるので。今までは『I'm』(2020年)や『夜にとけて』(2019年)を鍵盤バージョンでやってみるだけだったので、曲が増えればもっと使えるという単純な意味合いで。『way back』と『ugly beauty』は鍵盤で作りたくて作って、『Midnight Drive』(M-7)は元々ギターで録ってたけど、曲調的に鍵盤でやったらDENIMS的に新しいかなと鍵盤で録り直して。ギターの音量を下げて、鍵盤ボーカルの曲ですよという主張を強くした曲ですね」
江山「鍵盤のソロ入ってるの、『Midnight Drive』だけやっけ」
釜中「うん、鍵盤ソロはほんまに初めて。録音した後に良いスペースがあったんで、挑戦してみようと思って、頑張って家で録音して。鍵盤は皆割とスタジオじゃなくてパソコン上で完結するらしくて、僕も本物の音に近い音源ソフトを買ったんです。家で時間をかけて1個1個フレーズを作っていって、そのデータをエンジニアさんに渡してはめてもらいました」
三国志について歌った『Story of the Mountain side』
――おかゆちゃんの楽曲についてもお聞きしたいです。『Too dry to die』(M-9)はシングルになっていますが、おかゆちゃん作詞作曲の曲がシングルでリリースされるのは初めてですよね。
岡本「初めてです。シングルにできる曲を作ろうと思って作ってたので、シングルにしてもらえてありがとうございますという。でもやっぱシングルはカマチューに歌っていただかないとというのと、自分の中でも少しザラついた声の方が合うやろなというイメージがあって、カマチューに歌ってほしくて。ずっとDENIMSを知ってくれてる人からしたら、あれはシングルになったのは新鮮やったんちゃうかな」
釜中「うん」
――手応えを感じましたか?
岡本「そうですね。わかりやすくシンプルで、ライブで演奏した時にサビで皆がワッとなれる曲というのは1個テーマやったんですけど、歌詞を含めて半日ぐらいでできた。僕は結構ネガティブな歌詞を書いてしまいがちなんですけど、それはこのアルバムにも今のDENIMSにもそぐわないなというので、1個外に向けた、自分も聞いてくれた人も後押しできるメッセージにしました。基本的にはネガティブでもいいけど、やっぱりサビは"頑張ろう"と思ってもらえる曲にしたかった。そこは自分の中で一皮剥けたなと感じます」
釜中「ちょうど『ふたり』のアユニ・Dさんとの歌の録音で、僕だけ東京に行ってたのが本来毎週バンドが集まる曜日で、僕以外で楽曲制作を進めてくれてて。プリプロで2曲送られてきたのが『Too dry to die』と『Story of the Mountain side』(M-10)で、めちゃくちゃ良いやんとなって」
――『Story of the Mountain side』は三国志の曲ですか。
岡本「そうです」
――三国志にハマってるとか?
岡本「全然。途中まで読んだぐらいです。期待してもらったら申し訳ないですけど、深いメッセージはないですよ」
釜中「(笑)」
――ないんですか。
岡本「何の歌詞にしようかなと思った時に、そんな意味深な歌詞にしてもしゃあないなと思って」
土井「意味深になってもーてる(笑)」
釜中「東京でラジオ出演した時、この曲のこと1番言われた。ラジオDJって三国志ファン多いんやなと思って」
岡本「俺もそんな聞いてこられても困るんすよ」
全員「(笑)」
釜中「なんか1個突っ込まれたで。"これは実は時代が違うんだよね"みたいな」
岡本「<夢ならば覚めてよ everybody 楚歌 singing>のとこやろ。あれは違うとわかりつつも、四面楚歌を<everybody 楚歌 singing>と表現できたのが自分の中で快挙やったから、削りたくないなって。中国の歴史を歌にすることもないやろうし、突っ込まれるのはわかってたんですけど、もう入れてしまえって」
――歌い方が気持ち良いですね。息抜きの1曲というかね。
岡本「面白い曲ですよね。『syotyu-mimai』みたいに遊びの曲として作りました」
今作を作ったことで、自分自身も先に進める1枚になった(釜中)
――ラストの『ugly beauty』(M-12)は本当に一聴に如かずというか。最初から通して聞くからこそわかる曲ですね。セルフプロデュースのこの曲でアルバムを締めようと決めていたんですか。
釜中「このアルバムの総まとめみたいな意識でやりたくて、レコーディングが終わる同時期ぐらいにふわっと作っていて。曲調も音像も、普段の僕たちの空気感を入れて、ちょっと雑味のある音にしたかったので、OSAMI studio.で録って江山がミックスしてくれました。楽器もよりアコースティックに、生のアップライトピアノで録音して」
岡本「『ugly beauty』まで聞いた時に、自分らのアルバムなんですけど、"あ、終わっちゃう"みたいな感覚になったんですよ」
――わかります。
岡本「Beatlesの『sgt. pepper's lonely hearts club band』は、最後バーッと盛り上がって『A Day in the Life』で終わるんですけど、"うわ、もうこの曲で終わりなんや"みたいな気持ち。自分のアルバムでそうなったから、重ね重ねですけど、多分ほんまに名盤ってことなんやろなと思って」
――ほんまに名盤ですよ。終わるのが寂しい。
江山「僕とかは曲を書いてないじゃないですか。配信シングルがめちゃくちゃバズったりするこのご時世に、2人(釜中・岡本)はアルバムに対するこだわりがすごいんですよ。僕もありますけど、2人ほどじゃない。実際今回もこだわってアルバムを作りました。で、エゴサしてたらアルバムとしての評価が高いんです。"この流れめっちゃ最高や"という感想を見て、関係者に"そんなにこだわらんでいい"と言われながらも押し切った2人とこの結果を見て、"マジでしてやったりやな"と思って。アルバム自体が評価されるってあんまりないんちゃう?」
釜中「昔はいっぱいあったけど、少なくはなった。色んな曲を1曲単位で聞いたりもするけど、たまに流れが好きなアルバムを通して聞いてて、"次はこんな作品を作りたい"という意識が結構前からあったから作れて良かった。しかも江山が言ったみたいに、皆アルバム全体としての感想を言ってくれるのがすごく嬉しいです。売れてほしいですね」
――今のDENIMSにとってどんな1枚になりましたか。
釜中「アルバムのタイトル的には、最後の『ugly beauty』で言ってる、"相反するもの2つを受け入れて先に進んでいこう"という意味もありますし、全曲通して言えるのは"人生賛歌"。<Life Is Good>と言っているように、うまくいく時もいかない時も、全部含めて人生素晴らしいな、ということをまとめられた1枚になったかなと。今作を作ったことで、自分自身も先に進める1枚になったと思います」
――すごくどっしりしたし、良い年の取り方をしてますね。江山くんはいかがですか。
江山「今まで僕はドラマーとして、DENIMSを世に出すために頑張ってきたんですけど、今回は"ドラマー江山"としての名刺代わりにもなる、納得のいくアルバムになったと思う。だから"DENIMSのアルバム1枚貸してや"と言われたら、僕は今作を渡します」
土井「今までのDENIMSらしさもあり、新しいことにも挑戦できてるアルバムやと思う。進化してるし、3枚目にふさわしい1枚になった。良い作品ができたと思ってます」
岡本「僕自身ほんまに何回も聞きましたし、Beatlesと一緒ぐらい好きです」
――それはもう、かなりの位置を占めるのでは。
岡本「さっきも言ったけど『sgt. pepper's lonely hearts club band』とか『WHITE ALBUM』と並ぶぐらい。Weezerの『Weezer(Blue Album)』とかGreen Dayの『Dookie』とか、自分の人生の中で聞いて転機になったアルバムいっぱいありますけど、それと同じぐらいめっちゃ好きです」
Text by ERI KUBOTA
Photo by ヨシモリユウナ
(2023年2月 8日更新)
Album『ugly beauty』
発売中 2800円(税込)
OSAMI-0006
《収録曲》
01. Life Is Good
02. syotyu-mimai
03. ひかり
04. ふたり feat.アユニ・D
05. AIWO
06. way back
07. Midnight Drive
08. RAGE
09. Too dry to die
10. Story of the Mountain side
11. LAST DANCE
12. ugly beauty
デニムス…釜中健伍(vo&g)、岡本悠亮(g)、土井徳人(b)、江山真司(ds)からなる4人組バンド。ファンク、ブルースといったブラックミュージックをルーツに、ヒップホップやジャズ、パンク、シティポップといった要素を自由自在にミックスし、オープンなマインドで音を鳴らせばたちまち「DENIMS印」のサウンドに。「何故かこの人には何でも喋っちゃう」あの感じ。心の隙間にすっと入り込む、人懐っこくも飾らないグッドミュージックが魅力。古いものが好きだけど新しいことがしたい。大人だけど子どものように。お洒落だけど泥臭い。2021年より新メンバーに土井徳人(b)を加え、元気に活動中。2023年1月18日、新体制初となる3枚目のフルアルバム『ugly beauty』をリリースし、全国ツアーの真っ只中。
DENIMS オフィシャルサイト
http://denim-s.jp/
【北海道公演】
▼2月12日(日) BESSIE HALL
【愛知公演】
▼2月23日(木・祝) 名古屋クラブクアトロ
【石川公演】
▼2月25日(土) 金沢GOLD CREEK
【新潟公演】
▼2月26日(日) 新潟CLUB RIVERST
チケット発売中 Pコード:227-560
▼3月12日(日) 17:30
BIGCAT
オールスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※販売期間中は、インターネット(PC・スマートフォン)のみで販売。チケットは、3/5(日)朝10:00以降に引換えが可能となります。
[問]GREENS■06-6882-1224