インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 楽曲制作の裏にあった苦悩も乗り越えて 渾身のアルバム『SONGS』がついに完成 スカートインタビュー


楽曲制作の裏にあった苦悩も乗り越えて
渾身のアルバム『SONGS』がついに完成
スカートインタビュー

澤部渡によるソロプロジェクト・スカートが、メジャー4枚目のアルバム『SONGS』をリリースした。オリジナルアルバムとしては2019年の『トワイライト』以来、約3年半ぶり。卓越したライティングセンスから、数々のアニメや映画、ドラマの楽曲を担当、多くのアーティストへの楽曲提供やレコーディングにも参加するなど、その活躍ぶりは多岐に渡る。タイアップに関してはもはや職人と言えるのではないだろうか。本作には2020年~2022年に手がけたタイアップ曲10曲と、新録3曲の全13曲を収録。アニメ『オッドタクシー』のOPテーマ『ODDTAXI feat. PUNPEE』はリアレンジした上で再録された。初回限定盤の特典には『SING A SONGS』と冠された全曲弾き語りバージョンのCDが付属する。今回は澤部にインタビューを敢行。コロナ禍での紆余曲折やスランプなどの苦しみも吐露してくれたが、素晴らしい楽曲が揃ったことへの自信も滲ませた。来年春には東名阪クアトロツアーも行うスカート。16年のキャリアを重ねたスカートの今昔が交差する瞬間を目にしてほしい。

タイアップは"壮観"


――タイアップが10曲という数字、ご自身ではどう思われますか?

「壮観ですよ。本当こんなことになるとは」

――思っていらっしゃらなかった?

「そうですね、ありがたいです」

――タイアップはお話が来た時に書き始められるんですか。

「今回に関しては全部そうですね」

――基本的にはお題があって書いていかれると思いますが、ご自身の体験や気持ちを入れ込まれることはありますか?

「あると思いますよ。タイアップとはいえ自分の曲なので。ガチガチに作ることもたまにはあるんですけど、基本的には向こうも多少の余白のあるものをご所望の上でオファーをしてくれるので、そういう意味では割とそういうのも入ってます」

――アルバム特設サイトのインタビューでは、本作はコロナ禍で書かれた曲が多く、今の時代を切り取ったように思われたらどうしようと、想いを吐露されていました。

「単純にこっちはそういうつもりで書いてないというだけなんです。コロナ禍の心境を描いたわけじゃないのに、"コロナ禍の心境を歌ってますよね"と言われると、そうじゃないんですけど、言われてもしょうがないような内容だなとは思うんですよね(笑)」

――今回収録されているタイアップ曲の中で、印象に残っている曲はありますか?

「それぞれに特別な思い入れはあるんですが、やっぱり『ODDTAXI feat. PUNPEE』(M-3)は今までにないものが作れた感じがします。ずっと1人で曲を書いてきたので、共作で新しく曲を書くのがそもそも非常に刺激的でしたね」

――リアレンジの上で再録されていますが、ホーン隊も入って結構変わっていますね。

「人によって結構捉え方が違うんですよね。あまり変わってないと言う人もいるし。生音に置き換えて少し整えた、という気持ちもあるし、でもバンドの緩い感じも出たし」

――PUNPEEさんのラップでは、"アニメ"から"SONGS"に変わっていました。

「本当に遊び心のあるニクい人ですよ。最高です」

――あと、"澤部澤部......"って入ってますよね?

「ありますね(笑)」

――あれもPUNPEEさんが?

「そうです」

――リアレンジをするにあたって、どんな話し合いをされましたか?

「PUNPEEさんとは、バンドでのベーシック・トラックを録音した後にホーンのアレンジをどうしたいこうしたいと話していきました。土台はこっちが作って、それをPUNPEEさんと改めて揉んでエディットしてもらったり、あるいはホーンのフレーズのイメージをPUNPEEさんが提案してくれて進んでいきましたね。めちゃくちゃ楽しかったです」

――シングルバージョンはPUNPEEさんが編曲されたんですよね。

「全部PUNPEEさんがやってくださって。僕はギターを弾いただけですね。2021年の年末にやったライブ(『The Coastline Revisited Show』@恵比寿リキッドルーム)のアンコールでPUNPEEさんに出てもらって『ODDTAXI』をやったんです。その時すごく楽しかったので、本来ならボーナストラックに入れようぐらいのちょっとしたサービスのつもりだったんですけど、再録したらアルバムに馴染むような仕上がりでした」

――それで3曲目に収録されたんですね。ボーナストラックという言葉が出たのでお聞きします。初回限定盤の特典には弾き語りバージョンのCDがついています。『ODDTAXI』はどのタイミングで録られたんですか。

「Disc1と同じで、土台を作って投げてPUNPEEさんに吹き込んでもらいました。だから一緒にレコーディングはしていないんです」

――アコースティックアレンジはいかがでしたか。

「リズムが立つ曲だから、アコギのパーカッシブな感じでやれたのは個人的には楽しかったです。PUNPEEさんもよく付き合ってくれたなと。助かりました」



届けきれなかった楽曲、訪れたスランプ。コロナ禍での苦しみ


――『絶メシロード』の主題歌『標識の影・鉄塔の影』(M-6)と『架空の帰り道』(M-7)が連続した曲順になったのはたまたまですか?

「たまたまなんですけど、でもどこかで"こういうことがあったら面白いな"と思ってたんですよね。1期と2期のエンディングが続いてるみたいなね。いつもスカートのアルバムを作る時の曲順って、A面B面という考えがあって。今回は6曲目でA面が終わり、7曲目からB面なんですよ。B面で針を降ろして、『架空の帰り道』のああいうちょっとパンチのあるイントロが始まったら最高だなと思って。でもCDで聞いても良いだろうなと思って組んではいます」

――『架空の帰り道』の方が少しサウンドが重めです。オフィシャルインタビューでも、2曲が被らないように作ったと書いてらっしゃいました。

「かなり意識しましたね。『絶メシロード』のエンディングテーマだと、もう『標識の影・鉄塔の影』で完結してると思ったんですよ。だから"標識の影・鉄塔の影2"じゃないものを作んなきゃなと思って」

――難しかったですか。

「最初は結構考え込んで、どうしようと思ってたんですけど、やってみたら意外とスイスイ筆は進みましたね」

――スランプもあったとお聞きしましたが。

「大変でした」

――スランプだったのは?

「2020年3月から1年ぐらいかな」

――結構長かったですね。

「両A面シングルで出した『駆ける』(M-2)も『標識の影・鉄塔の影』も曲自体は2019年の曲なので、2020年は『ODDTAXI』しか書いてないはず。無理やりひねり出して何とかという形で」

――全然書けなかったんですか。

「全然ダメでした(笑)。2020年が『ODDTAXI』ぐらいで、2021年の5~6月ぐらいから少しずつまた書くようになった感じです」

――そうなってしまったのは初めてですか。

「ここまで極端なのは初めてですね。机に向かう気になれない感じでした」

――時間が経てば抜けられるものなんですか?

「時間だったのか何だったのか、今となってはわかんないですね。仕事としてやらなきゃと腹を括ったのは大きかったかな。あともう1つ大きかったのは、ライブ活動を1回諦めたんですよ。やれてもやれなくても、ちょっと心がキツいと。ライブに期待するのをやめようと思ったら、また曲が書けるようになってきましたね」

――その間に来たお仕事は、どうされてたんですか。

「スランプの間はなぜか仕事も来なかったんじゃなかったかな。名前が出ないCM曲とかは1~2曲は作ったけど。あとは藤原さくらさんの編曲とかやったりしてましたね」

――産みの苦しみもあると思いますが、スルッと書ける曲もありますか。

「昔はたまにありましたけど、もうそういうのは少なくなってきましたよ。今回結構どの曲も頑張って書いた覚えがあります」

――他に印象的なタイアップは?

「どれも印象的です。本当だったら『駆ける』を、もっと皆に聞いてほしかったですよね。2020年3月リリースで、ちょうどコロナ禍に紛れ込んじゃって、MVも撮れなくなったし。だから今回アルバムで良い扱いをしたいと思ってた。この曲が2曲目というのは、かなり早い段階、まだ1曲目ができる前から決めてました(笑)」

――2曲目は大事な位置なんですね。

「個人的には大事ですね。1曲目が良いのは当然なんですよ。その次の曲がアルバムの流れを左右する1曲だと思っていて。そこにはやっぱ『駆ける』かなと」

――思い入れがありますか。

「アルバム『トワイライト』を作った後に、スカートらしいんだけど今まであまり書いたことない曲ができたなと思って。"これはいけるぞ"って、自分の中ではかなり手応えがあった曲なんです。この手応えを発展させて、アルバムを今年中に作ろうと2020年の時は思ってた(笑)」

――社会情勢がさせてくれなかったんですね。では満を持してという感じですか。

「そうですね、うん......これは何とも難しいな。満を持して、と言われると、いろんな分断があったって感じるから、まだやっぱり納得いってない部分もあるしね」

――もっとその時に広めたかった。

「そう思っちゃう時は時々あります。もし『駆ける』が、もう少しちゃんと広まっていたら。皆落ち着かない時期だったからだとは思っちゃいますね。そういうifは考えちゃう(笑)」

――<諦めて前を向くよ>という歌詞も印象的です。

「そういうのがね、妙に現実味を帯びちゃって。昔から自分の曲は少し後ろ向きな言葉を使うので、それが今の状況を歌ってるように当てはまっちゃうのが本当に嫌だったんですよ。それでちょっと心が閉じていった感じはありますね。どの曲を歌ってもコロナの状況を歌ってる気がするというか」

――聞く側が結びつけたくなってしまう気持ちもわかりますが、違って受け止められ続けるのも辛いですよね。

「自分がそう思っちゃうのがかなりキツかったですね。その時は"もうおしまいだ"と思っちゃったので。そうならなくて良かった。今は全然大丈夫です」



稲垣吾郎さんの佇まいに向けた『窓辺にて』




――今泉力哉監督の映画『窓辺にて』の主題歌『窓辺にて』(M-12)についても聞かせてください。稲垣吾郎さんの佇まいや映画の雰囲気もあると思いますが、どんなふうに書いていかれましたか?

「今おっしゃられた通り、まさに稲垣さんの佇まいを目がけて曲を書きました。物語に沿った歌詞を書くこともできたのかもしれないけれど、そうじゃなくてあの稲垣さんの佇まいに何を投げかけるかを考えていましたね」

――今までもたくさん映画の主題歌を書かれていますが、そういう書き方をしたのは?

「初めてかも。登場人物に沿ってみたいなことは、今まではないかな。"物語の終わりとしてこの曲を添えさせてください"みたいなことが多かった。今回もそういう気持ちはあるんですけど、それよりも何を目がけて書いたかというと、稲垣さんかなと自分では思っています」

――登場人物を元に曲を書いてみる経験はいかがでしたか。

「出来上がったものを見ると、僕としてはそんなに変わらなかった気もしますね。でも気持ちの上で、稲垣さんの演じる市川茂巳さんの役に投げかけることが、この映画に対する僕なりの誠意かなとは思ってましたね」

――最後の<空白を迎えようにも ひとりじゃ抱きしめられない>という一節が本当に印象的ですが、歌詞はどんな感じで書いていかれたんですか。

「どうだったかな~。でも歌詞もやっぱり稲垣さんがメインでしたよ。僕の性質上、"こういう映画だからこういうお話だったよね"みたいな歌詞には絶対できないんですよ。だから、彼らが抱える胸の内に少し触るかもしれない言葉を選んだつもりではあります」

――今泉監督の作品は余韻がものすごく残りますし、帰ってからもずっと考えてしまいます。

「そうそう。そういう感じをなるべく出したいと思って。映画を見た時にこの曲はイントロがあった方がいいなと思いました」



綿密に作り込まれた楽曲たち


――新曲は『粗悪な月あかり』(M-4)と『Aを弾け』(M-8)、『私が夢からさめたら』(M-9)ですね。

「ノンタイアップという意味ではそうですね」

――『私が夢からさめたら』は文学ムック『ことばと』に寄稿した詩が元になっているんですね。

「そうです。その時はとにかく曲を書く方法を忘れてたんですよ。"曲ってどうやって書いたらいいんだっけな"というのがまずあって」

――スランプの時期に書かれたんですね。

「そう、歌詞だけ書いてて。それこそ『背を撃つ風』(M-10)、『海岸線再訪』(M-13)、『この夜に向け』(M-5)はいっぺんにオファーが来たんですよ。全部受けたけど、"曲の書き方覚えてねえな、どうしよう"と思って。僕、小学生の時にクラスメイトが書いた詩に曲をつける遊びをしたのが、初めての作曲だったんですよ。僕自身、詞先で曲を書くのがすごく好きで。初期はもっと多かったんですけど、だんだん減っていって。今でもアルバムに1曲は詞先の曲を入れたいなと思ってるんです。そういう経緯もあり、ちょっと肩鳴らしをしようと思って生まれた曲が『私が夢からさめたら』です」

――スカートの曲は、言葉は少なめで音で膨らませる楽曲が多いと思いますが、この曲もそうだなと感じました。ラスサビ前の間奏で鳴ってるのは何の音ですか。

「あれね、メロトロンという楽器です。それのフルートとチェロの音ですね。わかりやすく言うと、ビートルズの『Strawberry Fields Forever』の"ファーホーファーホーファーフォーホー"という部分。サンプラーの元祖みたいな古い楽器で、実際に演奏者が演奏したものをテープに吹き込んで、それを1鍵盤ずつに振り分けるんです。本当は実機でやりたかったんだけど、さすがに現存してるものがなくて、シュミレーションでやりました」

――不思議な音色が出るんですね。

「これは僕も気に入ってますね。間奏のフレーズまでは自分で考えてたんですけど、そこから先にメロトロンの音がないのは嫌だな、でも自分じゃ思いつかないなと思って佐藤優介くん(カメラ=万年筆)にアレンジしてもらいました」

――曲順的にも良いところに収まっていますね。私、後半の流れがすごく好きなんです。

「わかります、僕もそうです。後半『Aを弾け』や『背を撃つ風』みたいな短い曲がバンバンバンと続くのが結構気持ち良くて、自分でも良いなと思ってます(笑)」

――『Aを弾け』は1分54秒の短い楽曲ですが、曲名通りAコードを鳴らしているんですか?

「全く。いかにもAを弾いてそうなイントロなんかはDフラットです(笑)」

――Aというのはどこから?

「ずっとノートの隅に、気になる落書きとして"Aと言われたらAを弾くだけ"ってフレーズがあって、一生使わないだろうなと思ってたんですけど、書いてたら意外とハマって。じゃあこれを元に歌詞を書こうみたいな感じでしたね」

――自分にギターが弾けたらこの曲の魅力がもっとわかるのにと思いました。

「全然、全然関係ないです。しかも純粋なAは1回も弾いてないです。Aメジャーセブンスは1回だけ弾いてます(笑)」

――どこで弾かれているんですか。

「<Aと言われたら>のところですね。かなり気に入ってます」

――『Aを弾け』はいつ頃できた曲ですか?

「本当に最後の最後です。『ODDTAXI』をボーナストラックにしようかなと思ってた話があったと思うんですけど、ボートラにしないとなったら何か1曲足りないなと思って、突貫工事で作りましたね。完成して4日後にはレコーディングしてました(笑)。メンバーに付き合わせるのは申し訳ないと思って、ドラムもベースも1人で録りました。歌詞は2日ぐらいで書いたような気はする」

――<きっと 私は 今でも君のこと 許せてはいないんだ 呪いのように 巡る>というフレーズが気になります。当時何か許せないことが......?

「全然ないです(笑)。自分の楽曲はフィクションだって気持ちがあって、その中の1割ぐらいに自分の言いたいことがあるのが、自分の中の理想のバランスですね。あとはやっぱりポップミュージックとして、音に乗った時の面白さも優先したいので。ちょっと難しい話を始めちゃうんですけど」

――ぜひお願いします。

「音節の頭にくるのが、母音の"あ"と"お"だと、結構ワッと開かれる感じがあるんですよ。それで、"の"と音が開いたのに、言葉を聞くと"呪い"だったりする。そういうおかしさみたいなものを、自分の中では狙ったりしてます」

――なるほど、1音目が。

「1音目です。"い"、"う"、"え"だと、ちょっと上滑りするんですよね。"あ"や"お"はバンッと打つ感じになる。実はそういうことを考えて歌詞を書いたりもしてます」

――すごく面白いです。もう1曲の新曲は『粗悪な月あかり』。この楽曲に関しては、暗い曲がなくて作ったと。

「どの曲も暗いんですけどね(笑)」

――ご自分的にはどうですか。

「気に入ってますよ。最初はもっとストレートにギターを弾いてたんですけど、もっと変な響きにした方がいいなと思って、だんだん変えていきましたね」

――間奏の没入感のあるギターソロですね。

「そうです。ギターのコードも変わってて好きです」

――気にいってる曲ばかり。

「本当に! 毎回そうなんですけど、今回は特に捨て曲ないなと思ってますね。改めて良い曲ばかりだなと思っちゃいます(笑)」

――個人的に『海岸線再訪』が1番好きなのですが、この曲は"ここ数年のスカートを象徴する曲"と言っておられました。どういうところでそう思われたんですか。

「曲の抜け感が良い。そこに尽きますね。でも歌詞を読むと全然抜け良くない、みたいな(笑)。そのアンビバレンスな感じがスカートらしいなと思って。僕も大好きな曲です」



今のスカートを見てほしい。大阪の皆さんには期待しています!


――『SONGS』というタイトルは、音楽家の方にとって意味が大きそうですね。

「シュガー・ベイブの唯一のアルバムのタイトルが『ソングス』ですから、悩んだんです。最初はすごく後ろ向きでしたよ。要はタイトルを決めなきゃいけない頃は、タイアップ曲ばかりになっちゃって1枚のアルバムとしてまとまらない、落ち着かないアルバムができるかもしれない危機感があって。だからといって、例えば『窓辺にて』を推したいから『窓辺にて』というアルバムにしようとはできなかった。"これはあくまでアルバムというよりか"ソングス"なんですよ。バラバラのものを1つの箱に詰めて皆さんにお出ししてます"という姿勢を形にしたのが今回のパッケージです。最初は後ろ向きな意味合いがあったんだけど、出来上がってみると全くそうはならなかった。すごく純然な意味で『SONGS』という言葉になったなと今は思っています」

――変わっていったんですね。

「だと思いますよ。タイトルを決めた頃は多分『十月(いちおう捨てるけどとっておく)』(M-1)も『粗悪な月あかり』も録音までいってなかったんじゃないかな。ベーシックは録っていたけど、歌詞が書けてないとかそういう状況だったかもしれないですね。『Aを弾け』は影も形もない時でした(笑)」

――今はしっくりこられて。

「だいぶきてますね。自分の中では、これはもう『SONGS』としか言いようがないと思っています」

――スカートの作品は毎回ジャケットが素敵で、楽しみにしてる方も多いと思います。

「そうだと嬉しいです」

――本当に芸術作品を見ているような感覚なので。

「嬉しい。何て言ったってポップアートだと思ってますから」

――今回に関しては?

「イラストはyasuo-rangeさんですね」

――どういうオーダーをされたんですか。

「色んなタイアップがあるアルバムなので、少し社会性のあるジャケットにしたいとお伝えしました。『トワイライト』みたいなジャケットのぽつねんとした感じじゃなくて、もう少し関係性があるような、複合的なものがいいとお願いしましたね」

――人が走っているようにも見えるけど、幾何学的にも見えますね。

「街のようにも、公園のようにも見える」

――数字のようにも見える。

「色んなものに見える。スカートの音楽においてもそれがとても大事だと思ってたので、ジャケットが出来上がった時は興奮しましたね」

――今のスカートはどんなモードですか。

「どんなモードなんだろう。考えたことなかったですね。僕ら『トワイライト』ってアルバムを出した時に、ライブバンドとしての手応えがすごくあったんですよ。これからはライブだと。しかも皆でワイワイやって楽しいライブじゃなくて、見に来た人を1人ぼっちにさせるようなライブができてる謎の手応えがあって。これを発展させていこうと思ってた矢先のコロナだったので、ライブバンドとしては1回ご破算になっちゃったんですよね。だからライブバンドとしてもう一度出直したいという気持ちもあるし、1回ライブを諦めた分、そんなに易々と"もう1度ライブバンドを1から目指します"とは言えないな、とも思ってるんですよね。ハッキリ言って、この2~3年で未来には期待しないことを自分の中で明確にしちゃった部分があるので。どういうフェーズかはちょっとわかんないですね。後ろ向きかと言うよりかは、今を生きるための最善の選択として、未来に期待しないことを選んだ感じです(笑)」

――今を生きる。でも今を生きてる人って少ないかもしれないなと感じます。過去か未来に囚われている人が多いような。

「そうですね、難しいです。私も合ってる気がしない(笑)」

――来年のスカートとしてのビジョンはありますか?

「不思議とすぐに次の作品を作りたいなと思ってます。昔はアルバムを作り終えたら、"もう無理です、お疲れ様でした"みたいな感じだったんですけど(笑)、今回は割と自分の中で"今回がこうだったら次はこうできるかもしれない"というのが幾つか出てきてて。それに向き合いたいなと思ってますね」

――3月からは梅田クラブクアトロから始まる東名阪クアトロツアー『スカートライヴツアー2023 "SONGS"』が始まります。意気込みは?

「『SONGS』を軸にしたライブにしようと思っています。でも2年前に出した『アナザー・ストーリー』のアルバムが、リリースするだけしてツアーも廻れなかったんですよ。だから弔い合戦じゃないですけど、このままだと『アナザー・ストーリー』も浮かばれないので、これを機会に『アナザー・ストーリー』の曲も多めに選ぼうかなと。あのアルバムは古い曲のリレコーディング盤なので、かなり昔のスカートと今のスカートが極端に交差するような楽しいライブにしたいと思っています。だから見に来た人を1人ぼっちにさせるようなライブには今回はならないかも(笑)」

――なるほど。

「でもやっぱり大阪のお客さんには期待したいです!(笑)。僕ら、すごく良いライブの思い出が幾つもあるんですけど、その中の1つにトリプルファイヤーってバンドと一緒にやった『20/20』のツアー(『20/20 VISIONS TOUR』)のShangri-laでの公演が、忘れられないぐらい良いライブだったんですよ。あの気持ちをもう一度皆さんと共有できたらいいなと思ってます」

――ちなみにどういうところが良かったんですか。

「何かもう完璧な夜だったんですよね」

――お客さんの反応がですか?

「そうそう。どの曲やっても盛り上がってくれるし。それまでスカートって大阪で正直そんなに盛り上がるバンドじゃなかったんですよ。でもそれこそFM802のヘビーローテーションに選んでもらったりして、こんなにスカートを聞いてる人いたんだと思って。それが自分の中ではとても美しい思い出としてあるので、大阪の皆さんにはぜひ今のスカートも見てほしいです」

――会場は違いますが、素晴らしい夜になると思います。

「『トワイライト』のツアーも、大阪マジで最高だったんですよ。ただお客さんが全然いなかった(笑)。大阪の人は見放すのも早ぇのかと思ったんですけど(笑)。もう所謂旬のバンドじゃないんですけど、楽しく見れるように頑張ります」

――クアトロツアー、パンパンにしましょう!

「頑張りたいです。ぜひご協力ください!」

Text by ERI KUBOTA




(2022年12月14日更新)


Check

Release

3年半ぶりのオリジナルアルバム。豊穣の全13曲

Album『SONGS』

【初回限定盤】(2CD)
3850円(税込)
PCCA.06170

【通常盤】(CD Only)
2860円(税込)
PCCA.06171

《初回限定盤 特典CD収録内容》
「SING A SONGS」
アルバム全編弾き語りヴァージョンを収録

《収録曲》
01. 十月(いちおう捨てるけどとっておく) 
02. 駆ける
03. ODDTAXI feat. PUNPEE 
04. 粗悪な月あかり
05. この夜に向け 
06. 標識の影・鉄塔の影
07. 架空の帰り道
08. Aを弾け
09. 私が夢からさめたら
10. 背を撃つ風
11. しるしをたどる
12. 窓辺にて
13. 海岸線再訪

Profile

スカート…どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド。2006年、澤部渡のソロプロジェクトとして多重録音によるレコーディングを中心に活動を開始。2010年、自身のレーベル、カチュカ・サウンズを立ち上げ、1stアルバム『エス・オー・エス』をリリースした事により活動を本格化。これまでカチュカ・サウンズから4枚のアルバムを発表し、2016年にカクバリズムからリリースしたアルバム『CALL』が全国各地で大絶賛を浴びた。そして、2017年にはポニーキャニオンからメジャー1stアルバム『20/20』を発表。2020年にはインディーズ期の楽曲を再録音した『アナザー・ストーリー』を発表し、その楽曲の芯の強さを見せつけた。その他も数々のアニメーション作品、映画、ドラマの劇伴、楽曲制作に携わる。また、そのソングライティングセンスからこれまで藤井隆、Kaede(Negicco)、三浦透子、Adieu(上白石萌歌)などへの楽曲提供も行っている。更にマルチプレイヤーとして澤部自身も敬愛するスピッツや川本真琴、ムーンライダーズらのライヴやレコーディングに参加するなど、多彩な才能、ジャンルレスに注目が集まる素敵なシンガーソングライターであり、バンドである。2022年11月30日、メジャー4枚目となるオリジナルアルバム『SONGS』をリリース。3月からは東名阪クアトロツアー『LIVE TOUR 2023 SONGS』を行う。

スカート オフィシャルサイト
https://skirtskirtskirt.com/


Live

「スカートライヴツアー2023“SONGS”」

Pick Up!!

【大阪公演】

1月28日(土)一般発売
Pコード:232-087
▼3月20日(月) 19:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※小学生以下は入場不可。中学生以上は有料。危険行為・迷惑行為の禁止。開催におけるガイドラインをご確認の上、お客様への当日のお願いごとを十分にご周知頂いた上でのチケットお申し込みをお願いいたします。【新型コロナウイルス感染防止対策ガイドライン】https://smash-jpn.com/guideline
※販売期間中はインターネット(PC・スマートフォン)でのみ販売。1IDで1回のみ2枚まで購入可。
[問]SMASH WEST■06-6535-5569

【愛知公演】
▼3月21日(火・祝)
名古屋クラブクアトロ

【東京公演】
▼3月25日(土)
渋谷CLUB QUATTRO

チケット情報はこちら