ホーム > インタビュー&レポート > “色んな引き出しを引っ張って、 歌い方や表現の仕方をどれだけ見せていけるか” シングル『レモンの木』が見せる景色とは。 みらんインタビュー
ギター1本で歌う姿に憧れて、シンガーソングライターの道へ
――みらんさんはいつ頃から音楽を本格的に始められたんですか。
「中学生の時にK-POPにハマって、K-POPアイドルになりたいと思って、高校の時にボイトレやダンスを習うスクールに通ってたんですけど、授業の中に歌の練習や歌詞の書き方もあって。高校の途中で藤原さくらさんがドラマ『ラヴソング(2016年)』に出ていて、それを見てギターを弾いて歌いたいなと思って、ギターを手に取って音楽を始めました」
――藤原さくらさんがキッカケだったんですね。
「はい。それで藤原さくらさんのライブを見に行った時に、竹原ピストルさんやLOVE PSYCHEDELICOさんも出ていて、竹原ピストルさんにガッと心を掴まれて。余計に自分で歌を作りたいという想いが強くなって、ライブを見に行った次の日に曲を書きましたね。高校を卒業したら1人で本格的に活動したいと思って、大学には行かずライブに出始めた感じです」
――竹原ピストルさんのどんなところに惹かれましたか。
「ギター1本で大きいステージに立ってるのがすごくカッコ良くて。私もその方向性でやっていきたいとその時に決めた感じです。確か高2ぐらいだったと思います」
――曲作り自体はスクールで習ってから書き始めるようになったんですか。
「初めてオリジナル曲を書いたのも高2ぐらいです。学校の国語の授業で詩を書いたり、読書感想文を書くのが割と好きだったので、言葉を書くのは何となく苦手ではないという感覚があって、抵抗なくスラッとできた気がします。自分はメロディーの方が難しくて、言葉が先かな」
――いつも詞先で制作されていますか。
「でも最近はメロディーが苦手だからこそ、メロディーと言葉が相まった曲を目指したいと思って、なるべく同時に作ってますね」
――曲作りはスマホでされているとインタビューで拝見しました。
「1stアルバム『帆風』の頃はパソコンを持っていなくて、スマホしかなかったのでGarageBandというアプリで作っていました。最初は弾き語りでも曲を作って、それを録音してどんどん音を加えていく感じでやってましたね」
――今は違うんですか。
「今はバンドセットでレコーディングをするようになりました。弾き語りで曲を作るところは変わっていなくて、私が弾き語りを録って、何となく"こういうイメージの曲を作りたい"というのを、Special Favorite Musicの久米(雄介)さんに共有して、久米さんがアレンジを考えてくれて、バンドでレコーディングするという流れです」
――シンガーソングライターになった当初は、どういうことを歌いたいとか、どんなアーティストになりたいといった想いはありましたか。
「その時ハマったのが竹原ピストルさんや石崎ひゅーいさんで、結構1人で孤独を背負って歌うアーティストだったんですよね。私も当時17~18歳で、学校にそんなに楽しさを感じていなかったし、"1人だな"と感じていた時だったから、寂しくて。寂しいから曲を聞いてほしいみたいな気持ちが強かったです。曲を聞いて楽しませたいとかじゃなくて、本当に自分の心の中の気持ちを聞いてほしいみたいな、わがままな歌を歌ってました。ライブもしてたわけじゃなかったから、人に聞かせるよりかは、自分の心を昇華するための歌。その時は曲を作ってても結構トゲトゲしてたと思います」
――自己表現のための歌だったんですね。確かに『帆風』の宅録バージョンは今とサウンドが違いますね。
「1人感が強いですね」
――孤独が制作活動の源になっていたのは少し意外でした。今は明るくポップで周りにたくさん人がいるイメージなので。
「あ、本当ですか。今音楽活動5年目ぐらいですけど、1年単位ぐらいでサウンドが変わっていってるなという感じです(笑)」
――ご自分でそう感じますか?
「そうですね。変わっていくのを恐れないで、自分が今楽しいと思っている音楽をやりたいなという気持ちです」
――歌詞の書き方や音作りが比較的短いスパンで変化している?
「1年というか、作品を出すごとにというか。その時に関わってる人の影響もありますけど、最近はライブをたくさんするようになって、ライブで聞いてくれる人が目の前にいるから、その人をちょっと意識するようになりました」
――自分の気持ちを歌うための曲が、目の前のお客さんに向けた曲に変わっていった。
「はい」
――先ほどお名前の出た久米くんはバンドのサポートメンバーで、シングル『夏も僕にも』のプロデュースで関わっておられますが、どのような経緯で知り合ったんですか。
「出会ったのは最近なんです。特にSpecial Favorite Music(以下、スペシャ)の音楽をめっちゃ聞いてたわけでもなく、東京にライブで行った時にたまたま近くでスペシャのライブがあって、マネージャーやバンドメンバーが皆久米さんと知り合いで。スペシャのライブを覗きに行って、初めましての挨拶をしたんですけど、それが今年の春ぐらい。私は春に『Ducky』というアルバムを出して、次の作品に取りかかりたいなというタイミングだったんですけど、自分の力だけで次の作品を仕上げていくのがちょっと自信がなくて。誰かいい人いないかなとマネージャーとも話してて、その時にタイミング良く挨拶して、『Ducky』でミックスやマスタリングをしてくれたエンジニアの荻野真也さんも久米さんがいいんじゃないかなと勧めてくれて。そこからトントンと話が進んで、今は色んな作品を一緒に頑張って作ってます」
――荻野さん経由だったんですね。人との繋がりで制作の幅が広がっているイメージがありますが、どう感じられますか。
「シンガーソングライターとして1人でやってる身としては、そこが面白いところなのかなと。バンドメンバーもその都度自由だし、色んな場所に行って、出会う人に興味を持ってもらって、"一緒に音楽しませんか"みたいな感じでできるのがすごく楽しい。手を取り合って色んな曲を作っていくので、聞いてもらえたらすごく嬉しいですね」
『レモンの木』を歌うことで、自分が導かれる感覚がある
――今作のシングル『レモンの木』も久米くんのプロデュースですが、『夏の僕にも』のプロデュースが良かったから今回も引き続きという流れになったんですか。
「『夏の僕にも』を一緒に作って、1曲だけよりももうちょっと色んな曲を一緒に作りたいなと思って。まだ皆には言えないんですけど、次の作品も全体的に久米さんにサポートしてもらおうかなと思っています」
――良いですね。『レモンの木』は5分を超える長めの楽曲です。サウンドはガットギターとバイオリンとボーカルのみというシンプルさ。
「そうですね」
――どういうキッカケでこの曲を作っていかれましたか。
「前回の『夏の僕にも』は、夏に出したい曲として、夏をテーマに作ったんです。次のリリースタイミングが冬だというのはあらかじめ決まっていたので、冬の曲を出せたらなと思ってて。実は『レモンの木』は『夏の僕にも』より前からずっと、"この曲は良い曲になりそうだな"と思いながら時間をかけて作ってた曲なんです。それを冬のリリースのタイミングでできたらいいんじゃないかなと思って仕上げました。バイオリンとガットギターと声だけというのは久米さんと話してて、そういう流れになりました。色んな音を加えても良かったんですけど、最初に弾き語りで共有した時にメンバーからも"弾き語りで十分良い曲だね"となったし、私もあくまで弾き語りメインでライブをしているところもあるので、その良さを出せたらなということで、シンプルな構成になりました」
――アコースティックギターじゃなく、ガットギターなんですね。
「お家にガットギターがあるんですけど、ガットギターの方が手に取りやすくて、普段もガットギターで曲を作ることが多くて。家の中なので音もこじんまりしてて使いやすいんです。ガットギターって音がめっちゃ温かくて、その温かさが『レモンの木』にすごく合ってるなと思ったから、今回はガットギターで弾きました」
――本当にシンプルですけど、じんわり入ってくるというか、歌い方も静かなようで抑揚もついていて。声の響きが美しいなと思って聞いていました。
「ありがとうございます。レコーディングの歌録りの時は、私と荻野さんと久米さんの3人だけだったんですけど、3人で録りたてほやほやの歌を聞いた時に、バイオリンと歌声とガットギターの包まれる感覚がすごく良かったので、聞いてくれる皆さんも静かな落ち着いた場所で、集中して聞いてほしいですね」
――サウンド面でこだわったところはありますか?
「『レモンの木』に限らずなんですけど、自分は言葉がとても好きだから、言葉を大事にして曲を作りたくて。『レモンの木』は今まで書いた詞の中でも1番上手く書けた感覚があったので、とにかく自分にできることは歌詞を感じ取ってもらう歌い方をすることだと思ったので、久米さんにはそれを伝えた上で、バイオリンの音作りに集中してもらいました」
――なるほど。歌詞で上手く書けたというのは、どういうところが上手く書けたと思われますか。
「表現の仕方なんですけど、最近になって結構小説を読むようになって、1つの曲の中でも小説のような展開作りというか、曲の中で物語が見えてくるような歌詞が出たんじゃないかなと。できた時に自分の中でも"あ!"みたいな感覚を感じました」
――スラスラ書けましたか。
「いや、この曲は本当に時間がかかって。『夏の僕にも』の前からちょっとずつ、ワンフレーズずつぐらいで進めていって、半年ぐらいは時間を設けたんじゃないかな。最初の<僕の強気 君を困らせるなら我慢する>というフレーズだけが最初にあって、弾きながら出てきた言葉をどんどん繋げていった感じです」
――長所と短所を受け入れ、折り合いをつけて暮らしていく、2人の暮らしをイメージさせる歌詞です。みらんさんの歌詞は生活の空気が感じられるものが多いですが、この歌詞は特に繊細だなと思います。
「そうですね、『Ducky』の時は繊細というよりかは勢い重視で、曲もパッと作って出してみたいな感じだったので。今回は時間の余裕があったので、繊細な部分が出てきたかなと思います」
――余白があって想像も書き立てられるような歌詞ですね。『レモンの木』というタイトルはいつ決められたんですか。
「タイトルは曲が完成してつけました。レモンって私的には爽やかな夏のイメージがあったんです。でもレモンがの旬が冬だということを最近知って。レモンの瑞々しさは冬からきてるんだという発見が嬉しかったので、ぜひ冬のシングルでレモンを入れたいと思ってタイトルをつけました」
――みらんさんの中でどんな1曲になりましたか。
「今までの曲は、完成したら自分の子どもみたいな感じで、可愛がりたいなと思う曲が多いんですけど、『レモンの木』は独り立ちしているというか、大人な雰囲気を出してる1曲になったので、"私がついていきます"みたいな(笑)。多分今後歌う時は、私が"歌わせてください"みたいなポジションになりそうな曲です」
――曲に連れていってもらう。
「『レモンの木』を歌うことで導いてもらえる感覚がありそうだなと、何となく今感じています」
――冒頭で作品ごとに音楽が変化しているというお話がありましたが、今のみらんさんの制作はどんなモードですか。
「シンガーソングライターの今、自分の曲作りで大事にしたいところは、どれだけ色んな表情を見せられるかだと思ってて。バンドだったらサウンドの方向性が一作品ごとにあるんじゃないかなと思うんですけど、自分は音作りのこだわりがあまりなくて。弾き語りで曲を作って、その曲をどれだけ膨らませていけるかなので、『レモンの木』に限らず、今作ってる曲では色んな引き出しを引っ張って、歌い方や表現の仕方をどれだけ見せていけるかを大事に制作しています。『レモンの木』はその中の1つの見せ方という感じですかね」
自分が前に出て、自分の歌をしっかり歌う
――今後、どんなシンガーソングライターでありたいですか。
「最近バンドでライブをする機会が増えてきて、ライブの後に感想を伝えてくれるお客さんがいるんですけど、"佇まいがカッコ良い"と言ってくれる方が多くて、それも自分的にはしっくりきていて。"佇まい"という言葉がキーワードだなと思ってます。自分の在り方とか、ライブ前に"今日はこういう雰囲気で皆にこう伝えよう"みたいなことも考えるんですけど、考えるだけであまり実践できたことがなくて。結局自分が前に出て、自分の歌をしっかり歌うのが大事で。ありのままバンッと自信を持って出たらクリアできていく感覚が、最近ようやく掴めてきたので、とにかく今は佇まいを大事にして、堂々と自分の曲を歌っていきたいですね」
――具体的に2023年にやっていきたいことはありますか。
「2022年の1年間で、結構自分の歌い方や表現が確立できてきた気がするので、そこは自信を持って、次の作品を作っていきたいです。歌への表現は自分の感覚に任せてやっていこうと。なので色んな表情を見せる曲を作って、実際にライブでもそこを意識して、どんどんステージに立っていけたらと思ってます」
――ライブをたくさんされるわけですね。
「私、弾き語りがめっちゃ好きで(笑)。最初に弾き語りから入ってるし、弾き語りで曲も作ってるので、弾き語りでライブをしている時は、曲を作ってる時の感覚に近いんです。バンドだと出来た曲を聞かせる感じなんですけど、弾き語りはもっと内側から曲を作った時の感覚を取り戻すような感じで歌える。だから曲に寄り添って歌う姿を絶対大事にしたい。来年はお客さんにもそこを感じ取ってもらえるライブをしたいです」
――今作品を作ってらっしゃるということですが、来年もリリースを期待してもよろしいのでしょうか。
「めちゃくちゃ期待しててほしいです(笑)。もう何か止めたくないなこの勢いという感じで、来年に限らず再来年も見据えてやってます」
――ご自身でもスピード感に乗れている感覚がありますか。
「そうですね。本当に『Ducky』が早くいきすぎたので、大事に曲作りをしつつ、ちゃんとスピード感を持って、バランスを考えてやっていけたらいいなと思います」
――早くいきすぎたというのは、曲作りの時間が短かったということですか。
「めちゃくちゃ短かったです。『低い飛行機』が映画で流れることがキッカケで、そこに合わせてアルバムを作ろうとなって、一気に曲を揃えたので。よくやったなと思います(笑)」
――締め切りがある中でやり抜いたんですね。
「キツかったけど出来てしまったから"出来るんだ私"みたいな。おかげで"無理かもしれない"と思うよりも、"出来るかもしれない"と思えるようになりました。完成した後に"出来た"という感覚を獲得できるとすごい自信に繋がるから、自信をつけていきたいですね」
――うんうん。
「1人だと絶対にやらないんですよ(笑)。ペースがゆっくりではあるので。今は色んな人が関わってくれて出会う人も増えて、すごく支えられているから、そういう人たちと一緒にやるのが単純に楽しい。楽しさで活動できる部分がたくさんあります」
――2023年はどんな年にしたいですか。
「2022年は音源を聞いてくれてライブに来てくれた人や、初めて来てくれる人が次また来たいと思えるようなライブができてたかな?と振り返ることが多かったけど、最近ちょっとだけわかってきた感じがあるので、来年は力を入れてライブをやっていきたいですね」
Text by ERI KUBOTA
(2022年12月14日更新)
Single『レモンの木』
発売中 NOTT-008
《収録曲》
1. レモンの木
https://friendship.lnk.to/LemonTree
1999年生まれのシンガーソングライター。包容力のある歌声と可憐さと鋭さが共存したソングライティングが魅力。2021年にはシュウタネギ(WANG GUNG BAND、ex.バレーボウイズ)とのEPや 1st AL『帆風』のCD化、EP『モモイロペリカンと遊んだ日』、猫戦のボーカリスト・美桜との共作カセットシングルなど精力的にリリースを重ねる。2022年3月16日(水)に、監督:城定秀夫×脚本:今泉力哉、映画『愛なのに』の主題歌「低い飛行機」(プロデューサー:曽我部恵一)を含む2ndアルバム『Ducky』をリリース。9月にはSpecial Favorite Musicの久米雄介をプロデューサーに迎えてシングル「夏の僕にも」を配信リリース。引き続き久米のプロデュースで、12月14日にはシングル『レモンの木』を配信リリースする。
みらん オフィシャルサイト
https://miram-official.studio.site/
チケット発売中 Pコード:227-986
▼12月16日(金) 19:30
440(four forty)
前売-2800円(ドリンク代別途必要)
※公演内容に関する詳細はnott.label@gmali.comまで。
【愛知公演】
▼2月10日(金) 19:30
K・D Japon
前売り-3800円 U25割チケット-2800円
[ゲスト]秋山璃月
※未就学児童は入場不可。ドリンク代別途必要。公演内容に関する詳細はnott.label@gmail.comまで。
【京都公演】
▼2月11日(土・祝) 19:30
UrBANGUILD
前売り-3800円 U25割チケット-2800円
[ゲスト]リコ
※未就学児童は入場不可。ドリンク代別途必要。公演内容に関する詳細はnott.label@gmail.comまで。
【東京公演】
▼3月3日(金) 19:30
AOYAMA 月見ル君想フ
前売り-3800円 U25割チケット-2800円
[ゲスト]有
※未就学児童は入場不可。ドリンク代別途必要。公演内容に関する詳細はnott.label@gmail.comまで。