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「僕にしか歌えない世界観がまだまだあると思う」
2023年のデビュー40周年を前に
『嘉門タツオ 39(サンキュー)ライブツアー 2022~2023』
開催迫る! 嘉門タツオインタビュー

「歌があった方が良いことには歌を」という姿勢で、音楽と笑いの融合表現を追求し続けて、2023年にはデビュー40周年を迎える嘉門タツオ。デビュー曲『ヤンキーの兄ちゃんのうた』に始まり、『ゆけ!ゆけ!川口浩!!』『替え唄メドレー』『鼻から牛乳』といった初期の代表曲から、近年では終活をテーマにしたアルバム『HEY!浄土~生きてるうちが花なんだぜ~』をリリースし、介護やコロナ禍の看護の現場の歌もYouTubeで発表。SNSも自在に駆使して、止まることなく精力的な活動を続けている。 11月には、今年9月に亡くなられたアンチエイジング専門医で妻の鳥飼こづえさんのメッセージと意志が込められた『アンチエイジング 入門編 ドクター・こっこ』(※作詞は鳥飼こづえさんで、嘉門タツオ自身が作曲)の動画をYou-Tubeで発表。今回のインタビューでは奥様のエピソードと共に現在の心境を吐露。そして、まもなく開催される『嘉門タツオ 39(サンキュー)ライブツアー 2022~2023』に向けての構想、さらにデビュー40周年の抱負まで存分に語ってくれた。

だんだん心が整理されてきている最中にいます


――まず、11月に嘉門さんのYouTubeチャンネルで発表された『アンチエイジング 入門編 ドクター・こっこ』のことからお聞きしたいと思います。これは元々は2017年に制作されたのですね。

「そうです。レコーディングも'17年に終わってて、動画を撮ったのは去年(2021年)の8月なんです」

――アンチエイジングのスキルがわかりやすく伝わる歌詞は奥様が書いて、作曲は嘉門さんがされたそうですが、ちょっと懐かしさを感じる昭和ちっくな曲調ですね。

「彼女にどんな曲調にする?って聞いたら、『想い出の九十九里浜』みたいなのがいいって言ったんですよ。"アンチエイジング"という言葉そのものがすごいキャッチーなので、その言葉が最初にくるようにサビ頭にしました」

――奥様が歌っている臨場感ある映像は、ちょっとファーストテイク風というか?

「そうそう、ファーステイク風です(笑)。あれを撮る時、"ヘアメイクはもちろんつけてね!これ私の遺影になるから"って言ってたから、自分がいつどうなるかわからないっていう危機感は常に持っていたと思います。あんまり表に出さない人でしたけどね...」

kamontatsuo221219-1.jpg――奥様は歌を歌われるのもお好きだったんですね。

「カラオケでよく一緒に歌ったけど、知り合う前はもっとハードに動きもつけて、洋楽とかバリバリ歌ってたみたいです(笑)」

――ちなみに、今回が"入門編"ということは、"続編"もあるんですか?

「彼女はアンチエイジングの専門医として、まずは入門編を作って、"次はビタミンの歌を作りたい"とか言ってたんで、構想はあったみたいですけど、残念ながらそこまでは至らなかったですけどね...。他の人ができないことができたのかなぁと思って」

――奥様はびまん性星細胞種という脳腫瘍のご病気だったんですね。

「今年の頭ぐらいから、どうなるかわからない状態でしたね。(腫瘍が)9センチになったので、手術して腫瘍を取ったことでステージ2からステージ4に上がったんです。そこから抗がん剤も効かなくなって、最後はもう手の打ちどころがないと先生に言われました」

――嘉門さんはご自宅で奥様を看取られて?

「はい。最後の21日間は160人の見舞い客がきまして。前半の宴会では本人もワインを飲んでましたが、後半は本人もほぼ意識がない状態だったんですけどね...。お互いの意思でそんな花道を作りました。彼女が亡くなったということも含めて、すごく意味があったことなんだと...時が経つとともに、こっちもだんだん(心の中が)整理されてきている最中にいます」

――そんな大変な1年を送られてきて、今に至ってるということですよね...。

「そうですね。デビュー35周年の時に、祝還暦で、『HEY!浄土~生きてるうちが花なんだぜ~』という就活3部作(『墓参るDAY♪』『旅立ちの歌』『HEY!浄土』)を収録したアルバムを(奥様と)一緒に作ったんです。3年前に彼女の母が亡くなった時と、去年うちの母が亡くなった時、出棺の時に"『旅立ちの歌』と『HEY!浄土』を歌ってあげて"って彼女が言っていたので。実際に(葬儀で)歌ったら、すごく相応しかったんですね。そういうことがあったので、きっと本人も(葬儀で)歌ってほしいんやろうなって思って。僕は涙ながらに歌いまして。自分の歌に感動するというのもちょっと野暮な話ですけども...。納骨の時に『旅立ちの歌』のCDをお墓に持って行って、それが流れる時に線香がふわぁ~って風に舞って広がって...、独特の体験をしました。また、納骨の次の日が西本願寺での親鸞聖人850年の対談の仕事で、お坊さんと喋ったりしましてね。...いったいどうなってんねん...っていう(苦笑)」



歌う方がわかりやすいことは歌にする
まだもっとできる!
それはこの10数年の間に確信を得ています


――身内や大切な存在を亡くすという体験は本当に辛いものですが、おかしみと温かみがある嘉門さんの歌によって辛い喪失感も昇華されるように思います。音楽ってそういう力がありますよね。

「はい。そう思います。まだもっとできると思うんです。歌う方がわかりやすいことって、まだまだあるんじゃないかと。元からそう思ってやってるんですけども、なんとか歌にならへんかなと、まず、そういう思考回路があって。それはこの10数年の間に確信を得てますね」

――これまで制作されてきた膨大な数の歌があると思いますが、オリジナル曲ってどれくらいあるんでしょうか?

「JASRACに登録してるので、750曲ぐらいかな。替え歌ですぐ終わってしまうやつとか、今の世の中で起きてることをどんどん歌にするけど、鮮度が落ちてしまうから...。(※持ち歩いているネタ帳を開いて目を通しつつ)出来ても、3日経ったらあかんな...とか、そんなんがいっぱいありますからね。替え歌とか含めて、2万曲ぐらいはあるんちゃいますかね」

――常に生まれてくる歌を書き止めるという作業をずっと続けてるんですね。

「そうですね。(時事ネタなども)どう歌うかということが一番大事なんでね」

kamontatsuo221219-2.jpg――ちなみに、嘉門さんはスランプになることはないんですか?

「いや、振り返ると、あーもう無いん違うか...とか、過去に自分が作った曲と比べて、例えば『あったらコワイセレナーデ』のほうがオモロイわ!とか、そんなことも多々あります(笑)。もう半年ぐらいあえてなんも作らなかったこともありますけどね。でもまた、なんか歌ができてくるんです。ちょっとした代表曲みたいになってる『明るい未来』っていう曲は、デビュー20周年で作った歌なんですよ。 その前の5年ぐらいはね、ロクな歌ができてなかった(笑)。いや、振り返ったら(良い曲も)あるかもわからんけど。あれも最初からああいう形じゃなくて、Aメロしかなかったけど、"サビ作って"ってプロデューサーに言われて作って、セリフ入れようってなって...。振り返るとそんなことの繰り返しですよね。歌で歌えることは歌っておこうと。テレビ番組観てたら風呂入ってるシーンのバックには"♪いい湯だな~"って、絶対流れでしょ。 スーパーの魚売り場では、"♪さかな、さかな、さかな~"って流れるようなやつを。そのテーマの時はこれ流れるみたいなものを、もっと自己発信で作っておいたらね。世間の認識が上がっていくと、それがスタンダードになって残っていくんでしょうね」

――生きてる限りは何かこうネタを見つけて、歌になってしまうっていう感じで?

「そうなんです。39年やってると、"子供の時に家族で聞きました"とか言われるんです。その人が子供の時に聞いた音源は、今から30何年ぐらい前に作った曲でも、音源を聞くことによってまた笑ってもらえるんですね。水増しせずに、そぎ落としたアレンジで音楽として昇華するっていう意味合いがそこにはあって。だから、ちゃんとした音で レコーディングしなければいけないし。それで現在まで残ってるのかなと思います」

――嘉門さんの歌はどこかで耳にしていて、いつまでも覚えてますもんね。出だしから笑えるし。音楽性もクラシックから、フォーク、ロック、ポップスまでかなり幅広いですよね。

「そうです。 20代の頃によく歌ってた『恋人は新興宗教の教祖』は、この25年ぐらいまったくウケなかったんやけど、最近またこれがウケ出してて(笑)。それは『恋人がサンタクロース』(松任谷由実)のパロディーで。昔、隣のお姉さんのところに男が毎週やってきて、お姉さんの目付きが変わってきた、恋人が新興宗教の教祖っていう歌詞で。それを昔、ユーミンさんの前で歌ったら覚えててくれてましたわ(笑)」



バイオリンと二人で立つ、Zepp Namba
来年のアルバム用に作ってる歌も発表予定


――年末年始には『嘉門タツオ 39(サンキュー)ライブツアー 2022~2023』が開催されます。12月30日のZepp Nambaの見どころを教えてください!

「今度のZepp Nambaは、初期に『小市民』ぐらいまで一緒にやってたバイオリンの中村太地と2人で立ちます。1994年ぐらいまで、主旋をバイオリンで入れてた時期があってね。この間、久々に東京のライブに来てくれた時に、また一緒にやろうや!ってなったんです。となったら、"葉加瀬太郎メドレー"を作らなあかんなとか(笑)。『情熱大陸』のメロディーはみんな知ってるから、あれにピッタリな日本語をはめたら絶対オモロいでって(笑)。今、考えてます。バイオリンもふんだんに使うし、『ハンバーガーショップ』のイントロとか、バイオリンで行けるからやってみようかと。あれは1990年ぐらいに作ったけど、今でも圧倒的に人気があるんですよ。それから、来年のアルバム用に作ってる歌も発表しようと思ってます」

――来年の40周年に向けてはどのような抱負がありますか?

「今ちょうど、来年のデビュー40周年に向けて、『食のワンダーランド~食べることは生きること~其の二』っていうのを作ってるんです。彼女の意見もふんだんに入ってます」

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――次のアルバムのテーマは"食"なんですね。

「6年前に『食のワンダーランド~食べることは生きること~其の壱』っていうのを作ったので、その第2弾ですね。(アルバムの)ボーナストラックに『アンチエイジング~入門編』も入れようと思ってます。(近作の)アルバム3枚はほぼ一緒に作ってきたので。新聞の連載や小説書いた時も彼女がチェックしてくれてたんですよ。"句読点が多すぎるよ"とか言われてて(笑)。ラストに税関通すみたいなもんです(笑)。根本的な内容が変わることはないけど、奥さんと一緒に作ってきた世界観っていうのも、オリジナリティがあるところまでは持ってこれたかなっていう実感もあるので。来年の夏sには40周年のライブもやります!ここまで続けてやってきて、僕にしか歌えない世界観がまだまだあると思うので。それは40周年超えた後もずっとね...」

――楽しみですね! ありがとうございました。

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Text by エイミー野中




(2022年12月20日更新)


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Profile

かもんたつお…本名は鳥飼達夫(とりかいたつお)。大阪府茨木市出身。フォークと深夜放送ラジオの影響を受けて、13歳からオリジナル曲をカセットに録音。高校在学中に16歳で笑福亭鶴光師匠に入門するも、21歳で破門となって流浪の旅に出る。1981年、サザンオールスターズの桑田佳祐と出会い、彼の別名“嘉門雄三”から姓を受けて、「嘉門達夫」と命名。1983年7月21日、『ヤンキーの兄ちゃんのうた』でレコードデビューを飾る。同年、YTV全日本有線放送大賞新人賞受賞。TBS日本有線大賞新人賞受賞。1985年6月12日にファーストアルバム『お調子者で行こう』リリース。2017年3月、さらに“フットワーク軽く、貫禄をなくすため”、「嘉門タツオ」と名前の表記を改名して現在に至る。2023年にはデビュー40周年を迎える。

嘉門タツオ オフィシャルサイト
http://www.sakurasaku-office.co.jp/kamon/


Live

「嘉門タツオ 39(サンキュー)ライブツアー 2022~2023」

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:228-877
▼12月30日(金) 15:00
Zepp Namba(OSAKA)
全席指定 大人-6000円(ドリンク代別途要)
全席指定 小中学生-2500円(ドリンク代別途要)
※未就学児ひざ上無料。ただし、お席が必要な場合は有料。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は12/23(金)朝10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

【東京公演】
チケット発売中 Pコード:230-366
▼1月8日(日) 16:00
SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
全席指定-6000円(1ドリンク付)
※3歳以上はチケット必要。車椅子でご来場の方は事前にディスクガレージ 車椅子来場フォームまでご連絡ください。車椅子スペースには限りがございます。満席の際はご利用が出来ません。状況によりステージが見えづらくなる場合がございます。公演内容に関する詳細はhttps://info.diskgarage.com/まで。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。
[問]ディスクガレージ■050-5533-0888

【愛知公演】
チケット発売中 Pコード:230-873
▼1月14日(土) 17:00
ボトムライン
全席指定-6000円(ドリンク付)
※チケットは、インターネットでのみ販売。1人4枚まで。
[問]サンデーフォークプロモーション
[TEL]052-320-9100

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