ホーム > インタビュー&レポート > 「こんな曲、自分にしか書けないだろうなという確信があった」 活動休止~復活の真相、異端の新作『PROJECT』の制作秘話、 ツアーファイナル12/18(日)大阪・umeda TRADに向けて語る! Hello Sleepwalkersインタビュー&動画コメント
やっと分かってきたというか、人間に戻りつつあります(笑)
――'21年に復活してもう一年が経ちましたね。
「まぁ復活したてのときはまだ感覚を取り戻していなかったというか、やっと分かってきたというか、人間に戻りつつあります(笑)。ずっと部屋にこもりっきりだったんで、最初は外を歩くだけで足が痛い、人の体ってこんなに鈍るんだ、みたいな感じだったんですけど」
――アハハ!(笑) そりゃ、'18年から3年も休止していたらね。そもそも前回の休止前のインタビューでは、"常に悩みはつきまとっていたけどようやく抜けられた"みたいな話をしていたのに、なぜ休止してしまったのか。
「根がネガティブなので、結局また悩んじゃったのと、タイミング的にもマコト(Ba)が"一回沖縄に戻ろうかな"みたいなことも言ってたんですよ。あと、当時は(レーベル・事務所を離れて)自分たちでライブを仕切っていた時期だったんで、それもいろいろと大変で。じゃあ考え直す期間にしますか、ということで活動休止になったんですけど」
――バンドも長らく活動してきてちょっと消耗してきたタイミングで、拠点を地元に戻そうかなと思うメンバーもいて。ならちょっと様子を見ようかと。
「でも、僕は発散する場所がライブしかなかったもんだから、さらに内に内に入っていって...あの3年間は、ほとんど自分としか関わってなかったですね」
――正直、最初に活動休止すると聞いたときは、事実上の解散なのかと思って。だから、復活して逆に驚いたというか。休止したからと言って復活が約束されるわけでもないし、その期間も決まってはいなかったんですよね?
「いつから再開しようという話し合いも特になく、僕がやろうと言ったときがそのときだと。他のメンバーも、僕がやる気にならないと、というのは薄々感じていたと思うし。あの頃はそれまでのことが全部夢みたいで、"本当に自分のことだったのかな?"みたいな感覚で。非生産的な毎日を過ごしていたから、復活してこうやって活動しているのが今でも不思議というか、すごく恵まれているなと思いますね」
――もう本当に引きこもりみたいなもんですね。
「マジでそうでした。音楽に対するモチベーションも、なくなったとまではいかないですけど、徐々に弱くはなっていましたから。ただ、いずれまたやるだろうなという予感はずっとあったので」
――音楽を聴くのがしんどくなったり、ライブを見ていられなくなる人もいますけど、そうはならなかった?
「そういう時期もありました、ていうか、ほとんどそうでした。活休の前半はゲームしかしてないですから(苦笑)。またやろうと思ったきっかけは、地下アイドルのブッキングとかもやってる沖縄の高校からの友達が、"何か曲書いてみる?"みたいな感じで誘ってくれて。趣味程度でもう一回始めたら、違うジャンルだし抵抗もなくて、音楽ってやっぱり面白いなと思えた。そこからそのリファレンスを含めてちょっとずつ音楽を聴き始めて」
――そして、シュンタロウくんが動くならと、新ユニットYamato(.S)やTHE ORAL CIGARETTESの『MACHINEGUN』('21)のプロデュースの話が舞い込んだり。それにしても、音楽を取ったら何が残るんだという人が、よくやらずにいられましたね(笑)。
「アハハ!(笑) でもやっぱり、何も残らなかったです。他のことに手を出すモチベーションすらないというか」
――休止中に新しいことを初めて、時にそっちがうまくいくバンドマンもいますからね。となると、"いや、もうバンドに戻るのは..."みたいな話も出たりするし。
「幸運にも誰もうまくいきませんでした(笑)。あと、僕がすごく落ち込んでいるときに、(元いたレーベル・事務所の)A-Sketchの方がメシに連れて行ってくれて、"お前らみたいに変わったバンドはいないから、また好きなことを、面白いことを一緒にやろうぜ"と言ってくれて...それはめちゃくちゃありがたかったです。そこからメンバーに話してみて、ちょっとずつ気持ちの整理をしてというのが、復活の半年前とかだったかな」
――デビュー10周年を迎えた昨年10月に復活、12月に前アルバム『夢遊ノ果テヨリ』('21)をリリースして。今春にはそのツアーもありましたけど、待ってくれていた人がたくさんいましたね。
「何だか不思議な気持ちになりました。3年間が長かったのか短かったのか。毎日同じようなことを繰り返していたんで、記憶はほぼ残ってないけど、世界は365日が3回も過ぎていた。それなのに、待っていてくれた人があんなに...しかもライブに来てくれたのはまた一段階上の話だと思うんで、めちゃくちゃうれしかったですね」
休止を挟んで、お互いの人生がより音楽に乗っかってきている
――前作は3年間の活休が如実に作品に反映されたと思いますけど、今作の『PROJECT』は?
「前のアルバムの時点でストック=出したい曲はいっぱいあって、そこからどれを選曲してブラッシュアップするのか、みたいな感じだったんで、新しく書き下ろした曲は、『最終兵器』(M-5)と『終止記号の先へ』(M-7)ぐらいですね。あとはAメロだけとかサビまでとかがあったりして」
――ハロスリはワンアイデアで一曲作るんじゃなくて、100アイデアを一曲にぶち込むようなモンスターサウンドだから(笑)、そういうパーツもたくさんあったと。そんな中で、今作の方向性を示すような曲はあった?
「まず『流浪奇譚』(M-1)は客観的に見た僕らっぽいイメージだと思ったから主軸に置いて。逆に『プロジェクト』(M-2)が今までと一番違うんで、これをリード扱いにしたのは攻めたというか、挑戦したところですね。『プロジェクト』は何年も前から眠っていた曲で、ずっとカッコいいなと思っていて。こんな曲、やっぱり自分にしか書けないだろうなという確信があったし、思いはめちゃくちゃ詰まっています。ただ、タイトルに関してはくだらなくて、例えば新規フォルダを作ったとき、"名称未設定"みたいな仮タイトルが出るじゃないですか? Logic Proという作曲ソフトでは、それが"プロジェクト"って出るんですよ。名前を付けるのが面倒だから、とりあえず『プロジェクト』のまま歌詞を書いていくうちに、だんだんと内容もそっちに寄っていったという(笑)。曲自体はいつも通り頭から順番に作っていったんですけど、曲が持っている景色がどんどん見えてきて、最終的にはうまくまとまったのかなと」
――ハロスリのリアルとファンタジーの境目がないような世界観が、コロナ禍を挟んだことによって、妙に真実味があるようにも響きますね。あと、このピアノのフレーズも、BPM的にも再現可能なのかというすさまじさで。
「人間じゃ弾けないフレーズ、もし弾けても(必死過ぎて)見た目がカッコいいのかという(笑)。元々『プロジェクト』は、好きだけど誰の評価も得られないからサウンドクラウドか何かに勝手にデモだけ上げてたんです(笑)。その頃のアレンジはちょっと穏やかというか、アグレッシブさは今の方があって、かなり進化したと思います。自分だけじゃなくて、バンドが演奏することを前提としてアレンジし直した感じですね」
――復活後はYouTubeチャンネルもマメに更新し、メンバーと歴代の作品の楽曲解説をしているのを見て、このサウンドを具現化しようと思ったら、やっぱりこのメンバーじゃないとなと思いました。うまいだけではこうはならないというか、シュンタロウくんの意図をくむのもそうだし、5人の関係性がこの変態音楽を成立させている感じが(笑)。
「それは大いにあると思いますね。しかも休止を挟んで、お互いの人生がより音楽に乗っかってきているというか」
――今改めて、運命共同体じゃないけど。
「元からそのつもりではいたんですけど、そのつなぎ目の強さみたいなものが変わってきてる感じはしますね」
僕がリードにしようと言って、メンバー全員に反対されたのがこの曲です(笑)
――3年間の休止を経た変化は、『トワイライト』(M-3)や『生活RHYTHM』(M-4)からも感じられます。『トワイライト』はとりわけパーソナルだし、曲自体はキャッチーなエレクトロポップなのに、歌っている内容はどん底(笑)。
「フフッ(笑)。確かに休んでいたときの色が強い曲ですね。でも、その方が面白いかなとも思ったし...こういう曲が残せてまだよかったというか」
――ぶっ壊れて失ってただ3年過ぎただけじゃなくて、それを新しい音楽にできたなら。『トワイライト』の歌詞はある種、ハロスリビギナーにも理解しやすいでしょうね。
「それに比べて、『流浪奇譚』の視点は相変わらず意味が分からないですよね?(笑) "彼は天涯孤独"という紹介から入って、サビは謎の神視点なんで。それに比べたら『トワイライト』や『生活RHYTHM』はモロ僕でしかない」
――『生活RHYTHM』のカオス具合、この発散できさえすればいい、投げっぱなしブレーンバスターな感じ(笑)。
「ちなみに僕がリードにしようと言って、メンバー全員に反対されたのがこの曲です(笑)」
――アハハ!(笑) サウンド的には今のハイパーポップな感じが出ていますね。
「あまりやったことがないことをやったし、特にラップみたいなパートはフザけまくって」
――"99,800円"の絶叫、耳に残るな~(笑)。
「僕のイメージ的に、"大腿部に挟まれ死にたい/胸部の隙間で瞑想したい"という願いは、だいたい99,800円ぐらいかかるだろうと(笑)。語呂的に言いたいだけなのもありますけどね」
Hello Sleepwalkersの音楽をもっともっと鳴らせるように
――『或る星とモノローグ』(M-6)は、ナルミ(Gt&Vo)さんがメインボーカルで。
「これは1stアルバム『マジルヨル:ネムラナイワクセイ』('12)っぽい雰囲気で作りたかった曲ですね。途中まで歌詞を書いたときにふとそれを思いついて...自分の音に懐かしさを感じたのはちょっとあります。今聴くと歌がのっぺりしてるあの頃の自分に向けて(笑)、あえてそういうニュアンスも入れたり。青さを忘れないというか」
――シュンタロウくんの歌い方が優しげに感じたのは、そういうところもあるのかも。
「そうですね。特にBメロはそんな感じがすると思います」
――最後の『終止記号の先へ』は『トワイライト』の先の未来というか、希望もちゃんと感じさせる曲です。"誰かの呼吸を真似して生きていただけだった"という一節は、ズッシリきますね。
「どこまでテンションが落ちられるんだろうとも思ったし、良くも悪くも沈むことも大事だなと分かったというか。この曲はアルバムの一番最後にハマったピースで、他の曲が出そろった後に、そういう経験を持って次に向かおうという気持ちで書きました。バンドを復活させて、ちゃんと続けられるのかという心配もありましたけど、Hello Sleepwalkersの音楽をもっともっと鳴らせるように」
――それはファンにはうれしい言葉でしょうね。そういう意味でも、アルバムの最後にふさわしい曲で。休止期間を経てメンバーは何か変わりました?
「どうなんだろう? ただ、一旦みんな演奏がヘタになってました(笑)。最近はちゃんとやってますけどね」
――ハロスリのライブって、ちょっとアスリート感がありますからね(笑)。そして、リリースツアーは12月18日(日)大阪・umeda TRADがファイナルということで。
「大阪のファンのみんなは、いつもめちゃくちゃ熱いんだよな。ノリが合うのかな?」
――沖縄と関西のソウルが近いのかな?(笑)
「それもあるかもしれない。フィーリングが合うというか、シナジーが高まるというか。こっちもやっていてすごくアガりますから。前作は休止していた過去を清算するアルバムでしたけど、『PROJECT』はそこからまた一歩踏み出して、新しいHello Sleepwalkersを届けられるんじゃないかとワクワクした作品なんで、たくさん聴いてもらって、またみんなとライブで遊びたいですね」
――デビューから10年を超えて、今でもワクワクできるのは最高ですね。
「結果、この世界線でよかったなと思います(笑)。いろんなことが重なり合って、今があると思ってますから」
Text by 奥"ボウイ"昌史
(2022年12月16日更新)
Album
『PROJECT』
発売中 2500円
A-Sketch
AZCS-1109
<収録曲>
01. 流浪奇譚
02. プロジェクト
03. トワイライト
04. 生活RHYTHM
05. 最終兵器
06. 或る星とモノローグ
07. 終止記号の先へ
ハロー・スリープウォーカーズ…写真左より、マコト(Ba)、ユウキ(Dr)、シュンタロウ(Vo&Gt)、タソコ(Gt)、ナルミ(Gt&Vo)。男女ツインボーカル、トリプルギター、音楽への無尽蔵の探求心を秘めた5ピースバンド。’08年に沖縄で結成。’11年にタワーレコード限定シングル『センチメンタル症候群』をリリースし、’12年1月にアルバム『マジルヨル:ネムラナイワクセイ』でメジャーデビュー。’14年1月にリリースしたシングル『午夜の待ち合わせ』は、アニメ『ノラガミ』のオープニングテーマとなりスマッシュヒット。YouTubeの再生回数は4135万回を超える(’22年12月現在)。’17年にミニアルバム『シンセカイ』をリリースし、翌’18年に活動休止。3年の時を越え、’21年10月に活動を再開。12月にはアルバム『夢遊ノ果テヨリ』をリリースした。最新作は、’22年11月2日リリースのアルバム『PROJECT』。
Hello Sleepwalkers オフィシャルサイト
https://hellosleepwalkers.com/
『Hello Sleepwalkers ONEMAN TOUR「PROJECT」』
【福岡公演】
▼11月23日(水・祝)福岡Queblick
【北海道公演】
▼11月27日(日)BESSIE HALL
【愛知公演】
▼12月4日(日)ell.FITS ALL
【東京公演】
▼12月11日(日)渋谷CLUB QUATTRO
チケット発売中
※販売期間中はインターネット販売のみ。
▼12月18日(日)18:00
umeda TRAD
整理番号付き自由(当日引換券)5500円
キョードーインフォメーション■0570(200)888
※小学生以上チケット必要、
未就学児童は入場不可。
※公演当日、開場時間より当日券窓口にて入場チケットと引換えいたします。お渡しするチケットは先着順ではございません。
「だいたいね、いいバンドほど活動休止とか解散するんですよ。ハロスリがそうなったときも正直、"またか"と。不謹慎にもそう思ってしまいました。何でしょう、このあらがえない虚無感。シーンへの絶望感。でも、彼らには通例や常識が通用しないことを忘れていました。本当に休んで復活してきました(笑)。久々にライブを見たら、相変わらず唯一無二でした。唯一無二という言葉を安易に使うのにこんなに気を遣わないバンドはなかなかいません。だって本当のことだから。最新作『PROJECT』では、彼らにとって王道で、世間にとってお口ポカーンのハロスリっぽい曲すら、ゴリゴリに攻撃力を増したように重くて速い。新境地の『生活RHYTHM』にいたってはもうやりたい放題。でも、これを形にできたのはデカい。次回作はさらにタブーなしになっちゃうぞこれ(笑)。そんなキレキレの新作を携えたツアーファイナルは大阪。彼ら自身もその親和性に気付き驚いているぐらいの聖地でのフィナーレ、盛り上がらないわけがありませんよ!」