ホーム > インタビュー&レポート > デビュー15周年目を迎えて この時代を乗り越えていくパワーソングが詰まった 7枚目のフルアルバム『Changing Point』リリース 藤澤ノリマサインタビュー
ポップオペラを封印して
ポップスの作品を作ることに取り組んだ
――藤澤さんの音楽歴は、クラシックからスタートされているのですか。
「そう聞かれるとすごく迷っちゃうんですけど、ジャンルを超えていろんな音楽を聴いてきました。クラシックとかポップスとか、分けて聴いたことがなくて、大学は武蔵野音大の声楽科を専攻したんですけど、オペラコースには行ってないんです。父が同じ音楽大学の声楽専攻で、高校の音楽の先生をやっていて、クラシックもジャズもシャンソンも好きでしたね。母はカラオケ教室の先生をやっていたので、本当にボーダレスというか...」
――ポップオペラという独自のスタイルが生まれたきっかけは?
「僕がポップオペラをやるようになったキーマンはセリーヌ・ディオンなんですよね。高一の時、カナダにショートステイで1ヶ月間だけ行ったことがありまして。それが1998年なので、ちょうど映画『タイタニック』が公開されて、セリーヌが歌う主題歌が世界的に大ヒットした頃です。そこで洋楽を知っちゃって、もう人生が変わった感じです(笑)。それまでは演歌かクラシックしか聴いてなくて、洋楽とか英語圏の曲は聞いてなかったんですよ。 だから、もしかして、高校の時にカナダに行かなければ、演歌オペラになってたかもしれないですね(笑)。セリーヌ・ディオンを聞いてから、R&Bとかものすごく好きになりました。セリーヌ・ディオン、マライア・キャリー、ホイットニー・ヒューストンって、やっぱり 90年代~2000年代初頭を代表する3大ディーバですよね。そこからビリー・ジョエルとか。エルトン・ジョンとか、洋楽をめちゃくちゃ聴くようになりました」
――そうだったんですね。2008年のデビューから来年で15周年を迎えるということで、この15年を振り返ってどのようなことを感じていますか。
「もうそんなに経ったのかっていう気持ちと、まだそんなもんかっていう気持ちが交錯してる感じがするんですけど、本当に濃い中で15年が経ったなっていう気持ちが大きいですね。たくさんの方々に出会ってきたので。スタッフも含めて、ファンの皆さんに支えられてきた15年だったなと思います。支えてくださるプロデューサーのみなさんやミュージシャン、オーディエンスのみなさんがいなければ、何もできないんだなと。自分の無力さを感じて...、やはり、みんなが作ってくださった藤澤ノリマサなんだなとすごく強く感じた15年だったなと思っています」
――藤澤さんは音大のご出身ですし、音楽的な基礎はしっかりと備わっていると思いますが、ご自分の無力さを感じたというのは、特にどういった点で?
「やはりまだまだ知らない音楽の世界があるなと。もっとどん欲に音楽を聞かなきゃいけないなと思いますし、自分のステージとか、レコーディングとか、満足したことが1度もないので...。やっぱり満足しちゃったら、それで止まっちゃうとも思うんですよね。だから、常に上を向いて、さらに上の階段を上っていかないといけないなっていうことを今すごく感じています。たかが15年、されど15年で、進化し続けていかないといけないとも思うし、 変わらなきゃいけない部分と変わってはいけない部分が基本的にあると思ってるんですけれど、根底にある歌に対する情熱や方向性は2008年4月30日のデビュー日から変わってはいないですね。むしろ、それよりもっと音楽に対する情熱が増えたかもしれないです」
今作は曲のバリエーションに力を注いで作った
――前作『La Luce -ラ・ルーチェ-』から、作詞家の松井五郎さんをプロデューサーに迎えられて、ご自身が全曲作曲されています。歌い手としてだけでなく、作曲家として新たに進化されてきたと思いますが、やはり松井さんから受けた影響も大きかったのですか。
「そうですね。松井先生と出会ってから10年以上経つんですが、がっつりプロデュースしてくださり、全作詞で携わってくださったのは前作『La Luce -ラ・ルーチェ-』からなので。やっぱり先生と出会って世界観が変わったというか、自分の世界観を作って歌うというソングライターとして、 松井さんが僕を作曲家に導いてくれたっていう部分が大きいですね」
――歌唱法も変化しましたね。
「ポップオペラというジャンルでデビューしたので、それが僕の原点でもあるんですが、 ポップオペラの歌い方を封印してポップスの作品を作るということに取り組んだのが前作『La Luce -ラ・ルーチェ-』からで、今回の『Changing Point』もそういうアルバムになりました。初期から応援して下さる方から、"ポップオペラはもうやらないんですか?"っていう質問があったんですが、 やっぱりポップオペラでデビューしたので、ポップオペラも並行して続けていきたいっていう気持ちはものすごくあります。今回は15周年記念アルバムとうたってるんですが、これはもう通過点にしか過ぎなくて...」
――作曲にはどのように取り組まれたのですか。
「今回のアルバムは特にいろんなバリエーションの 曲が入っています。松井先生が僕の中の開いてなかった引き出しみたいなものを開かせてくださったというか。そういう意味では、僕にとって新鮮でした。曲を作る楽しみや曲のバリエーションに力を注いで作ったアルバムでもありますね。似たタイプの曲がひとつもなくて、レゲエから、ジャズテイストのスイング系だとか、本当に1枚通して飽きさせないような構成になってると思います」
――確かに、全14曲の大作となっていて、音楽的なバリエーションにも富んでいます。レゲエのテストとおっしゃっていたのはちょっとラテン系の異色な曲調の『パンドラの耳打ち』(M-6)ですか。
「そうですね、レゲエ系ですね。これはジェイソン・ムラーズのような曲調にしたくて。メロディアスで、ちょっと僕っぽくない感じかなと。新境地ですね。歌い方もすごいダメ出しされた覚えがあって(笑)、"綺麗に歌いすぎ"...みたいに指摘されて。綺麗なものほど落とし穴があるみたいな内容の歌詞なので、僕がすごく綺麗に歌ったら、"いや、そこは悪魔のささやきみたいに歌って..."と言われたんです。それでちょっと語尾を放つように歌ったら、それがOKになったんです」
――『花の音』(M-8)という曲にはオリエンタルなテイストを感じました。
「そうですね、これは二胡奏者のウェイウェイ・ウーさんが弾いてくださってるんです。僕の(曲の)バリエーションの中に、今まで"和"っていうものが全くなかったので、切なさや懐かしさが感じられて、季節感があるオリエンタルなものを作ってみたいなと。松井先生にその話をしたら、この『花ノ音』の詩が送られてきたんです」
――日本人の心の琴線に触れるような曲ですね。歌詞も含めて藤澤さんの方から提案されて生まれた曲なんですね。
「そうですね、AORとか、シティポップとか、そういう(洋楽テイストの)中にこの曲を挟むことでちょっとバリエーションもまた変わってくるので。でも、僕が言ったことを、具現化するのは松井先生なんです。僕が3ぐらい言ったことを100ぐらいにしてくださるので、やっぱり天才ですよね。安全地帯をはじめ、今まで3200曲以上も書かれているので、僕と書いてる時は、"藤澤ノリマサになりきってるんだ"って松井先生がおっしゃったことがありました。だから、(このアルバム制作では)松井五郎と藤澤ノリマサのユニットで、2人でシンガーソングライターっていう感じですね」
――それは、コラボレーションとはまた違うのですか?
「コラボはコラボなんですけど、やっぱり音楽におけるパートナーというか、 松井先生っていうのは、僕にとって本当に大きな存在です。曲を書く時に松井先生といろんなディスカッションしながら作っていったので、(お互い意見を出し合って)ぶつかることもありましたが、そういう(濃密な共同作業の)中で 、2年連続2タイトル作ることができました。 産みの苦しみの部分もあったのですが、楽しかったですね」
――なるほど、歌詞の世界観、ストーリーやメッセージ性を元に曲を作っていかれたのですね。
「そうですね。このプロジェクトはほとんどが歌詞が先です。松井先生の詩の中に、メロディーはこういう方向っていうのを書いてあるような気がするんですよね。それに誘われていくというか、アイディアもすごいあるので、松井先生自体も"こういう感じはどうだろう?"と提案してくださるんです。僕は曲を作り出すとすごい早いんですけど、作るまでが結構時間がかかるんです。その中でいろいろ試行錯誤しながら、本当に1年がかりで作ったアルバムなんで、苦戦した部分もありますが、新しい 藤澤ノリマサがまたひとつ生まれたんじゃないかなと思いますね」
何か変えていけば、そこから見える景色も
ちょっと変わっていくんじゃないかな
――今作が『Changing Point』というタイトルになったワケは?
「やっぱりコロナ禍を意識して書いたものばかりなので、リモートで人と人が簡単に繋がれて便利になったんですけど、ちょっと寂しかったりするじゃないですか。当たり前のことができなくなっちゃった世の中なんだけども。 そこから一緒にこの時代を乗り越えていくための変化点というか、 何か変えていけば、そこから見える景色もちょっと変わっていくんじゃないかなぁ...という思いもあって。皆さんが曲を聴いて、皆さんの人生の中に寄り添えるパワーソングを作りたいなっていうところから、松井先生と僕とで作ったアルバムなので。みなさんにとって、音楽が少しでも心の処方箋になってくれればいいかなと思います」
――最後に、2023年に向けての抱負を聞かせてください。
「僕は2008年の4月30日がデビュー日なので、来年の4月30日からアニバーサリーイベントをやろうと思っています。この『Changing Point』をひっさげての15周年のアニバーサリーコンサートも開催予定です。今のところ東京、大阪、札幌と決まってるんですけども。それ以外にもいろんなところに行って、この『Changing Point』を届けられたらいいなと思っております。来年は、久々の大阪公演も行う予定なので気合が入っております!どうぞご期待ください!」
Text by エイミー野中
(2022年12月 6日更新)
Album『Changing Point』
【初回限定盤】(CD2枚組)
4620円(税込)
FRCA-1316/7
【通常盤】
3520円(税込)
FRCA-1318
《CD収録曲》※共通
01. Changing point
02. Yes I do - キスはまだ終わってない
03. 海がくれたバイオリン
04. さよならを言うだけで
05. 愛するかたち
06. パンドラの耳打ち
07. 琥珀のとき
08. 花ノ音
09. 窓辺の羽根
10. Chistmas Wishes
11. Ambivalence
12. Behind the sky
13. Return to Life
14. 君を愛してる
《得点ディスク収録曲》※初回限定盤のみ
「La Luce クラシカルコンサート」のライブ音源
01. Song Is My Life
02. 僕らはこの星で暮らすんだ
03. 橋-iL Ponte-
04. 漂泊
05. La Luce
06. VINCERO-ビンチェロ-
07. 希望の歌~交響曲第九番~
ふじさわのりまさ…声楽家だった父と歌の先生だった母との間に生まれ、幼少の頃から歌に溢れる家庭に育ち、自然と人前で唄うことに興味を持つ。小学校一 年生の時、テレビで歌を唄う歌手を見て「自分も歌手になりたい」と思うようになり小学校三年生の時、初めてステージで歌を唄い、それ以来人前で歌を唄うことが好きになる。2 0 0 1年武蔵野音楽大学入学のため上京。卒業後、ソロアーティストとしてデビューを目指し更に精力的に曲作りとライブ活動を行い、2008年にドリーミュージックよりデビュー、アーティスト藤澤ノリマサが誕生。1曲の中にポップスとオペラの歌唱を融合させた独自の“ポップオペラ”というスタイルで活動を続けている。2016年ワーナーミュージックに移籍、2枚のアルバムをリリース。2021年5月19日、作詞家の松井五郎氏をプロデューサに迎え、初めての全曲自身作曲となるアルバム『La Luce ‒ラ・ルーチェ‒』発表。2022年11月23日、前作に引き続き松井五郎プロデュース作品第二弾となる『Changing Point』がリリースされた。2023年は5月に新作に伴う全国ツアー開催予定。
藤澤ノリマサ オフィシャルサイト
https://www.fujisawanorimasa.net/