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結成20周年を迎えるための準備
人気曲『間の季節』を10年越しに再録
the chef cooks meインタビュー

the chef cooks me(以下、シェフ)が11月30日、シングル『間の季節 (feat. ayU tokiO, KONCOS)』を配信リリースする。この曲は10年前にライブ会場限定で販売していたEPに収録されていた人気曲をリアレンジ&再録したもの。メンバーが脱退し、1人になって制作した2019年の4thアルバム『Feeling』以降、TVアニメ「東京24区」ED曲の作詞作曲・サウンドプロデュースやASIAN KUNG-FU GENERATIONが担当した劇場版『僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE ワールドヒーローズミッション』の主題歌と劇中歌の共同プロデュース、LiSAの10周年記念ミニアルバム『LADYBUG』収録楽曲の編曲、家入レオへの楽曲提供など、幅広いアーティストと共に制作に携わり、活動の幅を大きく広げた。現在はコロナで中止を余儀なくされていた『Feeling』のリベンジツアーを2年越しで終えたばかり。『Feeling』以降のクリエイティブを振り返ることで、下村亮介(以下、シモリョー)の想いと行動、『間の季節』に込められた意味をより深く知ることができた。来年の結成20周年へ向けて動き出したシェフの音楽と人に対する情熱をぜひ感じて欲しい。なお、年内最後のライブは12月8日(土)大阪LIVE HOUSE Pangeaでの自主企画イベント『ARROW of time #2』。

『The Music』と『Ticket is a Love』。コロナ禍で歌った音楽の愛。


――2019年の4thアルバム『Feeling』以来の登場なので、『Feeling』以降のクリエイティブを少し振り返ろうと思います。2020年12月14日にシングル『The Music』がリリースされましたが、"誰も音楽を奪うことはできない"と歌う楽曲で、コロナ禍も関係していそうかなと感じました。

「もう本当おっしゃる通りで、直接そこに起因して作曲した楽曲ではあります」

――強い想いがこもっている曲ですね。

「それこそ『Feeling』のリリースショーケースが、2019年から2020年1月にかけて東名阪を、年明けの2020年3月27日から7〜8カ所を廻る予定だったんですよ。そんな最中のパンデミック。海外の時世やニュースを調べる限り、おそらくツアーはできないだろうなと判断して、ツアー初日の千葉LOOKの公演を思い切って配信ライブでやらせてもらったんです。どうなっていくかも分からない中で、せっかく自分の中で思い入れのある作品ができたのに、"また足元すくわれたな"みたいな気分でいたんですけど、楽しみにしてくれてる人もいるし、結構自分のリスナーさんに、ご家族に体の弱い方やお仕事が医療関係の方、保育関係の方が多かったみたいなので、その人たちに"待っててね、しばらくライブできないけど一生懸命やるから、とりあえずこんなライブやる予定だよ"と配信ライブで1回伝えて、残りは延期させてもらったんです。その時の配信ライブが僕の中で印象に残っていて。カメラの向こう側に見てる人がいて、本当色んなものが渾然一体となって演奏中に心を動かされたんです。あと下北沢のLIVE HAUS代表のスガナミユウさんや色んな人の意図や気持ち、声を聞いた上で、自分のライブの時の感覚とお客さんの気持ちも察するに、自分がこういうことを歌うべきなんじゃないかなと思って作ったのが『The Music』なんですよね。だからすごくぐちゃぐちゃにはなってるんですけど、結局のところ僕はミュージシャンで音楽しかできないので、その時自分が思ったことは絶対歌にしようと思って作りました」

――ぐちゃぐちゃになってたというのは感情? それとも状況?

「どっちかというと感情ですね。やっぱりあの時って誰しも何が正しいか分からないし、人によって不安も怖さも違うじゃないですか。それは未だに変わってないと思うんですけど。色んな人の気持ちに寄り添うとか、色んな人の視点からものを見ようとすればするほど、自分の中で正しいことや絶対的なもの、信頼できるものは何だろうと。崩壊してたわけでは決してないんですけど、多分あの時は皆同じだったんじゃないかなと僕は思ってます」

――2021年2月には『Ticket is a Love』を出されました。作詞はマツザカタクミ(元Awesome City Club)さんですね。

「はい、お願いしました」

――なぜマツザカさんに。

「『The Music』と『Ticket is a Love』は同時進行で、トラック自体は2020年2月ぐらいにレコーディングしてた曲なんですよ。歌詞は録り終わってゆっくり書こうと思っていたんですけど、3月になってコロナでツアーが中止になるというので、前まで書こうと思ってたイメージで歌詞が書けなくなって。どうしても音楽のことを歌いたいけど、同時進行でタッチの違う2曲がある時に、僕が書いたら『The Music』と同じようなことを言っちゃうというか、切り分けて考えられないと思って。で、彼のAwesome City Clubでの作詞がすごく好きだったので、事情を説明してマツザカくんの解釈で音楽のことを、時世も併せて作詞してもらえないかなと相談しました。音楽のことを同軸に語るなら、別の人の視点で作詞してもらったものを歌いたいと思った感じです」

――歌ってみた感覚としてはどうでしたか。

「今まで8〜9割自分の作詞なんですけど、何曲か別の方に書いてもらってる曲があって、それってやっぱり自分のことを思って書いてもらってるから、自分が歌っても全然乖離しないのでより大事に歌おうと思えて。もちろん自分が書いた曲も大事に歌うんですけど、僕の性格上、人が書いてくれたものを絶対邪険にできないので。丁寧に読み解いて解釈する行為が多分すごく楽しいのかなと思ってます」



人と一緒に何かをすることがどれだけ美しいかを教えてもらった


――シェフの作品以外にも多くのプロデュースやアレンジ、編曲などをされていますが、その経験はシモリョーさんにとってどんな意味がありましたか。

「その時々で人も違えば、ミッションや目指すところも違うし、環境も役回りも違うんですが、僕が自分の良いとこだなと思うのは、多分皆俺が一生懸命やってくれる人だと理解してくれてるから、お願いしてくれるんだろうと。才能がどうたらとか、サウンドが作曲能力がどうたらというよりも、"多分この人だったら一生懸命向き合って丁寧にやってくれる"と思ってくれてるからだし、何ならそこしかないので。"どうなるかわかんないけど、僕一生懸命やります"と、いつでも言うようにはしていて。各々の人との出会いや作業から得たものや、もらったプレゼントは全部違うけれど、今の自分にとっては寄り添う能力をより高めてくれたのかなと思ってます。もちろん技術的なところで積み重ねたり、鍛錬させてもらったこともあるんですけど、それ以上に人と一緒に何かをすることがどれだけ美しいか、楽しいかを皆さんに教えてもらいました」

――めちゃくちゃ良い話。シモリョーさんご自身が楽しんで大切に思う在り方だからこそですね。プロデュースをする側、される側でも見える景色は変わりますか。

「例えば2021年に編曲をさせてもらったLiSAさんの『Letters to me』は、デビュー10周年記念のタイミングでご本人が10年前の自分に手紙を書くというテーマで作詞された曲なんですけど、僕、その時初めましてだったんですよ。いわゆるLiSAさんのサウンドイメージからは僕の作る曲って結構遠いんじゃないかなと思ってたんですけど、僕に話を振ってくれたのは"シモリョーさんなら絶対に曲を大切にしてくれるから。ちゃんと気持ちに寄り添って理解してやってくれる。エゴや自己表現がない人ではないけど、それも含めて良い具合に曲をアレンジしてくれると思ったから"というのを、ちょうど昨日依頼してくれた人と話す機会があってそういう話をされて。タイムリーだったので、ちょっと今言ってみました」

――やっぱりすごく伝わってますね。

「そうですね、でLiSAさんご自身もずっと曲を大事にしたいと思ってますと、年賀状に書いてくれて」

――年賀状!

「もう、皆が好きになる人なんですよあの人。それぐらい素敵な人で。『Letters to me』はある意味節目というかランドマーク的な曲になったと思うんですけど、今までのLiSAさんとこれからのLiSAさんで、どこにどういうアプローチをしたらファンの人に1番喜んでもらえるかなとか、不自然じゃなく、でもちょっと新しい演出ができるかなということも考えました」

――うんうん。

「ASIAN KUNG-FU GENERATIONで言うと、今まで関わってきた時間と関係値もありつつ、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールドヒーローズミッション』という映画からアジカンにオファーがあって。僕はアジカンのことをジャパニーズロックヒーローだと思ってるんですけど、そんなアジカンに曲を書いてほしいと。アジカンはアニメとの親和性もあってタイアップも散々やってきたけど、望まれるのは『リライト』や『遥か彼方』みたいな曲だというのは、やっぱり本人たちもわかっていて。その中で両者の間に入ってどっちの期待にも沿って、アジカンも"この曲でタイアップ使ってもらえるなら俺たちも嬉しい"と言えるように、アジカンの良いとこも崩さず、楽しんでもらえるように、間を取りながらバランサーとして機能していたのかなと思います」

――バランサー、本当にすごい才能ですよね。

「音楽も価値も、実際やったことに対して点数がつけられないじゃないですか。何でもかんでもヒットすればいいとか、再生数が多けりゃいいってことではないので。もちろんビジネスする方は数字があった方がいいんだけど。でも僕が関わる人たち、僕に依頼してくれる人はそこじゃないんですよ。総じて僕は関わらせてもらって良かったと思ってるんですけど、正解のなさは毎度悩みますね」

――なるほど。でもお仕事の幅はかなり広がってらっしゃいますよね。

「ちょうど先日、家入レオさんのプロデュースと楽曲提供、共同作詞をさせてもらった『かわいい人』がリリースになったんですけど、家入さんも全く接点のなかった方なので」

――家入さんはどこからお話が?

「家入さんのレーベルの担当の方から。彼女も10周年なんですよ(笑)。10周年で知らない人に曲預けんの、やめてもろて(笑)」

――(笑)。

「俺は嬉しいけど、プレッシャーは高いです」

――まあ、そうですよね。

「作業に入る前にちゃんとその人のことを勉強し直すんですけど、とはいえもっと身近にいた人の方が手に取るようにわかったりするんじゃないかと思うんですけど、そういうことじゃないみたいですね。節目って回顧することもあるけど先も見てるから。まさにそういう感じで、家入さんは今まで歌ってこなかったメッセージを、歌ったことがない曲でやってほしいですと。『Feeling』に入ってる『Now's the time 』やアジカンのカバー『踵で愛を打ち鳴らせ』を聞いて、僕の曲自体はポジティブで明るくて開けてる感じがするんだけど、歌詞を追うとすごく陰な部分とか、決して両手放しにハッピーですということではない情緒があると言ってくれて、それが家入さんが今歌うにちょうどいい温度感なんじゃないかなと思ってるんです、と最初にお会いした時に言われました。それから彼女の過去の曲を聞いて理解できた部分があったりしましたね」

――刺激や新しい視点みたいなものをもらえたりもします?

「もらえますね。LiSAさんの年賀状の話じゃないですけど、人気があってたくさんのファンの方がいるってことは、きっと色んな人に愛されてるし、多分すごく大事にしてるからその関係が大きくなっていってるんだろうと。LiSAさんと対峙してみて、色んな人に気遣いができるところを垣間見たりもしましたし、家入さんもそういう人でした。すごく丁寧な人で。歌詞を一緒に書くにあたって、心を打ち明けてくれる作業が必要だったんですけど、初対面の人に心を開くのって、なかなかできないじゃないですか。でもすごく丁寧に話をしてくれたし、強い気持ちで"こういうことを歌いたい"と伝えてくれた。自分もそれに呼応するので、うまくキャッチボールさせてもらって歌詞ができたんです。最終的に僕、関わった皆のこと大好きになるんですよね。それには理由がいっぱいあるんですけど、LiSAさんと家入さんは僕に"歌を歌うことはこういうことだ"と教えてくれました。僕の歌とは到底違うので全然比較対象にはならないんですけど、メンタリティや心の持ち様はすごく影響を受けるというか尊敬しましたし、こういう人ってやっぱり人がついていきたくなるよねと思ったりしました」



延期していた『Feeling』ツアーを2年越しに実施


――今年は8月に『ARROW』を出されて、10月2日から11月12日まで先ほどお話いただいた『Feeling』の延期されたツアーがありました。そして11月30日に『間の季節』をリリースということで。

「『ARROW』に関しては、それこそ『Ticket is a Love』から色んな楽曲に関わらせてもらっていたので、自分の曲を書くところにうまくスイッチが入りきらなかったんですけど、今年2月末ぐらいだったかな。マネージャーの室田さんに"やろうよ"と言ってもらって。室田さんは『Feeling』リリース後の2021年4月からついてもらうようになったんです。彼は僕の高校の同級生で、彼も仕事へのターニングポイントがあり、タイミングが合って僕がお願いしてマネージャーをしてもらうことになったんですけど、コロナ禍でライブしようにもできない凪以下の状態というか。僕のバンドの成り立ち上、サポートメンバーが6人いて、東京だと動員自体は200〜300人のライブハウスがちょうどいいぐらい。ただ、それだと公演として成り立たないんですよね。ただ赤字になって終わる。皆にしっかり素敵な演奏をしてもらった分のサラリーを僕は絶対払いたいんで、そういうことをちゃんと考えていくと、300人だとチケット代をめっちゃ上げないと、もれなく赤字なんですよ」

――ああ......。

「これは隠すことじゃないし、むしろ伝えるべきことだと思ってます。そんな中でライブできずにずっと『Feeling』というアルバムの締めを作れないまま新しい曲を書くのも難しくて。結構色んなミュージシャンがそういう悩みを抱えてたんじゃないかなと思うんですけど、そんな中で、"今年やろうよ"と室田くんが言ってくれて、"じゃあやろう"と『Feeling』のリリース日の10月2日からツアーを開始することになって。10月に向けて動いてくぜという空気も出したいし、時世自体がモヤッとしてたからそんな空気をぶち抜くぐらい自分の1番得意なポップソングを書いてみたのが『ARROW』ですね」

――そんな経緯があったんですね。『Feeling』は終われましたか。

「無事に終われました(笑)」



やりきれなかった音楽の続きを、成長した相手と自分でもう1度やりたい


――『間の季節』は、2012年のライブ会場限定リリースされたEP『門の中』に収録されていたものをリアレンジ&再録された曲なんですね。

「なぜ今?」

――はい、そうですね(笑)。

「『門の中』は2012年の『回転体』をリリースする前に手作りで会場で売ってたEPなんですよ。『間の季節』はriddim saunterという僕と同い年の大好きなバンドが解散して始めたKONCOSと何かポジティブに前を向いて一緒にやりたいと思って作った曲なんです。そのEPはあっという間に売り切れて、持ってる人しか聞けない状況になってるのも申し訳ないなと思ってて。サウンドクラウドには今も上がってるんですよ」

――そうか、そこで聞けるんですね。

「『間の季節』は今でも定期的に演奏してる大事な曲だし、所々で色んな人たちがシェフのファンになってくれて『間の季節』に辿り着いた時に、"再発しないですか?"みたいな声をすごくいっぱいもらってたし、ここ最近のシティ・ポップムーブメントが海外にまで波及して、海外のリスナーの人たちがサウンドクラウドでめっちゃ聞いてたりするんですよ」

――へえ。

「そういう面白みもあるし、再録して面白くする可能性があると思ったからやろうとなったんです。今回シェフに在籍してたayU tokiO(猪爪東風)くんがやってるCOMPLEXというレーベルから出すことになって。で、"曲も一緒にやってくんない"と話をしたら快く引き受けてくれて、ayU tokiOくんにプロデューサーとして参加してもらいました」

――どうリアレンジしたいというのは、猪爪さんに完全にお任せされたんですか。

「そもそも『間の季節』が彼に向けた曲だったんですよ。不仲で辞めたわけじゃなくて、僕自身彼と一緒にものを作るのがすごく楽しかったし、彼がバンドメンバーになってくれたことによって、"まだこのバンドやっていける"と思わせてくれるぐらいの人だったんですよ。志半ばで彼は自分がリーダーであるバンドを引っ張ってかなきゃいけなくなってシェフを離れざるを得なくなっちゃったんですよね。僕は残念だったんですけど、まあしょうがないよねって。『間の季節』はその後に書いた曲。結局彼が戻っていったバンドも空中分解しちゃって。そういう話ももちろん本人から聞いたし、めげないでやってほしいなというエールの気持ちもあって東風くんの名前を歌詞に入れて。"だからこの曲は東風くんに託したい。大きく変える必要はないけど東風くんが今ベストな形でやってくれたら嬉しい"とお願いしました。すごく久しぶりにプロデュースされました」

――どうでした、される側。

「楽しいってか、楽ですよね」

――どう楽ですか。

「彼、"こっちとこっちどっちがいいですか"とか細かく気を遣ってくれるんですよ。繊細な人だったのでものすごく楽でした」

――レコーディングもスムーズに?

「ミックスに関しては、僕の趣味と彼が目指してるものが良い意味で全然違ったので、そこはしっかり相談しながら話を聞いて、"こういうことがしたい、でもここは残したい"とうリクエストをいくつかさせてもらいました。でも8割ぐらいお任せしてました」

――完成してみてどうですか。

「シェフが来年結成20周年で、志半ばで離れてた猪爪くんとまた一緒に音楽を違う形でやれるというのは、多分自分の中で節目を迎える準備をしてると思うんですよ。今までの活動の中でちょっとモヤッとしてることや、僕や相手が不本意な形で離れてしまったことがあって。でも今の自分なら、今の相手ならより良くできるんじゃないかなと。だから20周年を迎えるにあたり、しっかりもう一度手を取り合って一緒に作ってみて、"今やれて良かったね"ということを増やしていきたい。新しい人と出会わせてもらう喜びもちろんあるけど、コロナもあって、今まで自分の出会った人や、手を伸ばせば手を握り返してくれる距離の人たちを大事にできなきゃ、世の中のリスナーの気持ちを動かすことや背中を押すことなんかできっこないと気付いてたのもありますね。だからできる範囲で色んな人と一緒にもう1回音楽をやりたいなって気持ちになったと思います」

――モヤモヤしていることをクリアにしていく感じですか?

「"もうちょっとやってみたかったよね"とか"もしそのままやってたらどうなってたんだろう"みたいな。それこそ妄想的な話じゃないですけど、今ならポジティブに持っていける可能性がある。過去を清算するというよりは、諦めたことややりきれなかった続きを成長した相手と自分でもう1回やる、割とポジティブな気持ちかもしれません」

――なるほど。今は来年に向けた気持ちが強めですか。

「やっぱり20周年だし『回転体』リリースから10周年だし、そういうファクターはありますね」

――20周年でやりたいこと、考えてることは?

「めちゃくちゃあるんですけど、どこまでできるかは世の中との戦いになるからちゃんと考えなきゃいけない。具体的には『回転体』再現ライブ。当時もやりたかったけどできなかったことをやりたいと思っていたり」

――他には?

「アルバムを出す予定なんですけど、この間『Feeling』のツアーファイナル(11月12日@ダンスホール新世紀)で、ゲストに後藤正文さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)やYeYeさん、世武裕子さん、imaiさん、TENくん(n3q?)、アルバムに参加してくれた人に来てもらって、本人の曲も演奏してもらったんですよ。自分のワンマンなのに(笑)」

――ツイートで拝見しました。

「それって日本でやってる人がいないから。シェフのライブでゲストの持ち曲をやってもらう。YeYeさんであれば引き語り、imaiさんであればインストのトラックを爆音でぶちかますみたいな激盛り上げるパフォーマンスをしてくれて、Gotchさんはソロで僕が楽曲提供した曲をシェフバンドの皆に演奏して歌ってもらって。世武さんはピアノの引き語りを持ち曲でしてもらったんですけど、僕はこれ絶対面白いなと思ってたんですよ。1回1回他のメンバーが掃けるんじゃなくて、ステージ上で聞いてりゃいいじゃんって。その場で聞いてることも1つの瞬間の演出として、逆に僕はすごく愛しいんじゃないかなと思ってて。そしたらまさにそういう空間になって、今までやってきた中で1番良いライブができたと本当に思って。彼らの演奏を含め、音楽好きとして愛してる自分としても、"この人やっぱ好きだな"と再確認できたり、お客さんもその意図をしっかりキャッチしてくれたから、2時間半ぐらいだったので相当疲れたと思うけど、終始めちゃめちゃ良い空気で時が流れていったんですよね。どうしても今コロナもあってパイが狭いじゃないですか。誰が1番かを決めるようなライブやリリースチャートがあるけど、本質的には豊かじゃない。音楽と豊かさは誰かが数字で決めるものじゃない。演奏する側と聞く側がいて、それによって生まれる唯一の豊かさがあるのを僕は知っていて、それがようやくできたから1番良いライブだったなと思ったんです。次のアルバムは多分、僕が歌う割合がもっと少なくなってくと思うんですよ。好きなボーカリストをぼんぼん入れて、そういうことを狙っていて」

――確かにシモリョーさんの歌う分量が徐々に少なくなっていってると思っていました(笑)。

「(笑)。俺が自分の曲を好きでいたいし、ライブ中も楽しんでいたい瞬間を増やすのは、好きな人に演奏してもらうことに尽きるんですよね。まだ全容はできてないので何とも言えないですし、方向転換することもあるかもしれないけど、アルバムも作って、この間よりもっと面白い、シェフじゃないと見れないライブをするだけと思ってます」

――年内最後は12月8日(土)の『ARROW of time #2』。LIVE HOUSE Pangeaで自主企画イベントがあります。新しい企画を始められたんですね。

「今のところ大阪でしかやらないイベントなんですよ。#2はYMBに出ていただきます」

――大阪でしかやらないというのは、なぜ?

「東京でライブをやるとどうしても分母が多いから1番お客さんは集まってくれるんですけど、Spotifyの都市別グラフを見ると大阪が東京に次いで多いんですよ。自分も両親のルーツが大阪にあったり、好きなライブハウスも好きな人もいっぱいいるから、もうちょっとそういうところを大事にしていくことはありなんじゃないかと」

――嬉しいですね。YMBは年内で活動休止のようで。

「そうみたいですね。お誘いして受けていただいて、知らないうちに活動休止になっていたから驚いたんですけど。まだお会いしたこともないんですよね。Pangeaのナカイさんというスタッフの方が僕らが結成したての時にいろんな形で関わってくれた人で、そういう縁もあって。ナカイさんがYMBがシェフがすごく好きでやってほしいと言ってくれたので。休止になっちゃうから寂しいですけど、気持ちはわかるし、初めて一緒にやるので楽しみです」

Text by ERI KUBOTA




(2022年11月29日更新)


Check

Release

10年ぶりにリアレンジ&再録された人気曲『間の季節』 をデジタルリリース! 12/3レコードの日に7インチ発売!

『間の季節 (feat. ayU tokiO, KONCOS)』
2022年11月30日(水)デジタルリリース
https://FRIENDSHIP.lnk.to/aidanokisetsu

【7インチ】
2022年12月3日(土)リリース
AICP030
2200円(税込)

Side A 01. 間の季節(feat. ayU tokiO, KONCOS)
Side B 02. 愛がそれだけ(feat. ayU tokiO)

Profile

2003年結成。ボーカルソングライティング、キーボード・シンセサイザー奏者、アレンジメント、ビートメイキング、リミックスまでこなし、近年はLiSA、ASIAN KUNG-FU GENERATION, Gotch(後藤正文)などのプロデュース・編曲・サポートなどで活躍する、シモリョーこと下村亮介によるバンド。幾度かのメンバーチェンジの後、2013年9月、ASIAN KUNG-FU GENERATION,後藤正文プロデュースのもと3rdアルバム『回転体』をリリース。2019年10月2日に前作『回転体』から実に6年振りとなる4thアルバム『Feeling』をリリース。2020年、新型コロナウィルスの影響によりアルバム『Feeling』のリリースツアーが中止となり、同年3月27日千葉LOOKで開催予定だったツアー初日をいち早く「配信ライブ」として無観客で実施。2020年12月14日にはアルバム『Feeling』リリース後の初となるシングル『The Music』、2021年2月24日には「Ticketis aLove」をデジタルリリース。2022年8月3日にはtccmとして約1年ぶりとなる新曲『ARROW』をリリースした。並行して、TVアニメ「東京24区」ED曲「255,255,255」の作詞・作曲・サウンドプロデュースやASIAN KUNG-FU GENERATIONが担当した劇場版「僕のヒーローアカデミアTHE MOVIE ワールドヒーローズミッション」の主題歌と劇中歌の共同プロデュース、LiSAの10周年記念ミニアルバム「LADYBUG」収録楽曲の編曲、最近では2022年11月16日リリース家入レオの新曲「かわいい人」で作曲・編曲・共同作詞を務めるなど幅広いアーティストとの楽曲制作へ参加している。

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Live

「ARROW of Time #2」

チケット発売中 Pコード:228-708
▼12月8日(木) 19:00
LIVE HOUSE Pangea
前売-4000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[ゲスト]YMB
※3歳以上チケット必要。
[問]LIVE HOUSE Pangea■06-4708-0061

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