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Absolute area・山口諒也が『サマソニ』出演で経験した
打ちひしがれた気持ち「フェスで勝てる曲ってなんなのか」

スリーピースバンド、Absolute areaが12月4日、ミニアルバム『Future』をリリース。そして同作を引っさげて、12月4日に渋谷WWW X(東京)、7日に心斎橋VARON(大阪)でワンマンライブ『Absolute area one man Live 2022「Fighter〜未来への架け橋〜」』をおこなう。オーディション「出れんの!? サマソニ!? 2022」で出演権を獲得して『SUMMER SONIC 2022』のステージに立つなど、大きな飛躍を遂げたAbsolute area。同バンドにとって2022年はまさに「未来への架け橋」となった1年だった。今回はボーカルの山口諒也に、あらためてAbsolute areaの楽曲性について語ってもらったほか、「未来」についても話を訊いた。

――今回のミニアルバムのタイトルにもなった「Future=未来」という言葉はいま、すごく重要な言葉になっている気がします。コロナ禍という時代性もそうですし、日本の経済的状況も含めて多くの人が「未来」について不安をかかえ、敏感になっているのではないでしょうか。

僕たちもまさにコロナ禍に入ったとき、バンドとして先が見えませんでした。その時期、以前の所属事務所も辞めて「これからどうしよう」と不安があったんです。「とにかく、曲を作ることしかできないな」と。ただ、ライブができるようになった時期から「良い方向へ行けるかも」と未来も見据えることができたんです。このミニアルバムもそのモチベーションのあらわれのひとつになっています。

――そういう意味では『SUMMER SONIC 2022』への出演は、未来が大きくひらけた出来事だったのではないでしょうか。

出演できた喜びもありましたが、打ちひしがれた気持ちの方が強かったです。最前線で活躍しているミュージシャンのライブを見て「これは勝てない」と感じてしまったんです。ただ、それを肌で感じることができて本当に良かった。たしかにそれはネガティブでマイナスな感情かもしれない。だからこそ「じゃあフェスで勝てる曲ってなんなのか、盛り上がれる曲を意識して作るためにはどうすれば良いのか」と考えるようになりました。

――どういう部分で「これは勝てない」と感じたんですか。

自分たちらしい演奏や楽曲を誇りを持って届けるという意味では、できることは全部出しきることができました。でもフェスでの演奏って独特の雰囲気があって、あの場所で印象づけるためには、自分たちらしさだけではなく「お客さんと一緒に盛り上がること」も大事な気がしました。その点で「もっと盛り上がれる曲を意識しよう」って。もしまた呼んでいただけることがあれば、そういう課題と向き合いながら準備をしていきたいです。

――『Future』はその第一歩になりそうな作品ですね。興味深いのは「未来」を題材にしながら、「過去」について歌っている曲が多いこと。これはAbsolute areaのこれまでの楽曲の特徴でもありますが。

未来と過去ってつながっていて、過去の積み重ねが未来になりますよね。あと未来の自分って、過去の経験から作られていくと思うんです。自分の感性のなかには、過去と向き合う意味みたいなものが常にあります。

――Absolute areaはそのなかでもよく恋愛に焦点をあてられていますよね。これは人によるところもありますが、過去の恋愛を思い出したくない人も多い気がするというか。そのなかで「山口さんはよくこんなに、過去と向き合うことができるなあ」って!

え、本当ですか(笑)。自分にとって過去の恋愛って、ものすごく存在が大きいんです。それを「嫌だな」と思う理由のひとつは、別れ際に出てしまった自分の本性じゃないかなって。「人は別れ際や別れ話のとき、自分の本性がもっともあらわれる」というのが持論なんです。

――分かる気がします。

あと、別れたあとですよね。そういう時期って自暴自棄になったりしませんか? 人に見せたくないような自分が出てしまう。だけど失恋って、あらためて自分自身と向き合うきっかけにもなる。良くなかったところを見直せるし。そういう意味で「失恋」というものは、経験としてすごく大事なのかもしれませんよね。

――別れ際がスマートな人ってたしかにすごいですよね。最後に「あなたの将来の幸せを願っている」とか、なかなか言えるものではないというか。

今まで優しくしていたのに急に冷たくなっちゃうとか、そういうことの方が多いですよね。自分も別れ際を振り返ると、「ダサかったな」と感じたりします。たとえば相手がほかの方を好きになってしまった場合。それって仕方がないことですよね。だけどそういう状況に必死に抗ったりして。僕もそういう経験があるので、いま思い出すとちょっとかゆい気持ちがあります。

――Absolute areaの楽曲の多くは、そういう人と人の気持ちの距離感が表現されています。今回の6曲もそうですし、アルバム『無限遠点』(2019)も象徴的です。

恋人って誰よりも近い存在であるはずなのに、心のどこかで遠い存在のように感じることが僕が多かったんです。人って誰にも踏み込まれたくない領域を持っているはず。その深さ、暗さは計り知れないものがある。僕は相手のそういう部分に触れたい気持ちがあった。近づきたい一心だったんですよね。でもいまは考え方がちょっと変わって、相手との距離感覚を意識するようになった。それが曲としてあらわれているんです。

――収録曲「橋を越えれば」はまさにそういう内容です。

そうですね。相手の存在自体は遠い。だけど心の部分では近いものがある。そういうときって、曲の主人公=自分はどんな心境になるのか。配信シングル曲「70cm」(2022年)も、傘をさしながら一緒に歩いているシチュエーションなので存在自体は近い。だけど、相手の方に傘を傾けてしまっているから自分が濡れてしまっている。そういう状況で主人公はどんな想いに駆られるのかとか。

――Absolute areaの楽曲って、人と人の距離感が情景として浮かびやすい。とても映像的なんですよね。その理由はなんなのか考えると、人と人を繋ぐためのアイテムが曲のなかに出てくることなんです。話に出ていた、橋や傘など。そうやって自分と相手を結びつけるアイテムが楽曲のなかで効果を放っているのではないでしょうか。

たしかに、歌詞を書くときはすでにシチュエーションが定まっているのですが、そのなかに固有名詞を出すように心がけています。以前までは結構、抽象的な表現が多かったんです。だけどおっしゃるように、聴いている人に情景を浮かび上がらせたりすることの大切さに気づくようになり、できるだけ固有名詞をいれるようにしています。これは極端な例ですが「ジュース」だけではなく、「ジュースのメーカー名」まで出した方が聴き手に響きやすいのではないでしょうか。そのジュースを飲むときに曲を思い出したりしますし。「70cm」も、コンビニなどで売っている傘をさしたとき、曲を思い出してほしいなって。

――12月4日には東京、7日には大阪で今作にちなんだワンマンライブ『Absolute area one man Live 2022「Fighter~未来への架け橋~」』が開催されますが、どういった公演内容になりそうですか。

新しいアブソの姿を見せることができるんじゃないか、と思います。東京公演ではキーボードとギターのサポートを加え、大阪でもキーボードを入れた体制で演奏します。これから先のアブソのライブ像みたいなものを12月に披露できるはず。僕の音楽のルーツはMr.Childrenさんなのですが、ミスチルさんもサポートメンバーを加えることでライブでの音楽性をふくらませていらっしゃいます。僕らもいつかそういうスタイルでやってみたかった。次のワンマンライブでは、自分たちが思い描いているライブ像に近づける第一歩になるので楽しみにしてほしいです。

取材・文:田辺ユウキ




(2022年11月11日更新)


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Profile

アブソリュート・エリア…山口諒也(ボーカル)、萩原知也(ベース)、高橋響(ドラム)からなる3ピースバンド。2014年に結成し、2018年に1stミニアルバム『あの夏の僕へ』をリリース。翌年には2ndミニアルバム『無限遠点』を発表し、収録曲「遠くまで行く君に」のミュージックビデオがYouTubeにて500万回以上の再生回数を記録。2022年8月、オーディション『出れんの!? サマソニ!? 2022』を経て、ロックフェス『SUMMER SONIC』(大阪)に出演した。

Absolute area オフィシャルサイト
https://absolutearea.themedia.jp/


Live

Absolute area one man Live 2022「Fighter~未来への架け橋~」

【東京公演】
チケット発売中 Pコード:222-102
▼12月4日(日) 17:00
WWW X
スタンディング (立ち位置自由)-3500円(ドリンク代別途必要)
※未就学児は入場不可。7歳以上はチケット必要。2枚購入の場合、隣並びでのお席の用意ができない可能性があります。オフィシャルHPに記載の注意事項を確認の上ご購入下さい。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。発券は11/27(日)10:00以降となります。
[問]クリエイティブマン プロダクション■03-3499-6669

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:229-473
▼12月7日(水) 19:00
心斎橋 VARON
スタンディング-3500円(ドリンク代別途要)
※未就学児は入場不可。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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