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グッドメロディに牙も潜ませた待望の1stアルバムを引っさげ
仕掛けたっぷりのワンマンへ。ぜったくんインタビュー

現在、人気上昇中の“巣ごもり系マイルドラッパー”・ぜったくんが、8月31日に1stアルバム「Bed in Wonderland」をリリース。今作でも彼の半径1.7m内を描くポップで心地いいヒップホップは健在だが、飛行機で飛んでいったり、レンタカーで高速を走ったりと、脱“巣ごもり系”?と思える変化も。そこで今回は本人へのインタビューでこの変貌の真相を解明。さらに経歴や内面についてもゴリッと掘り下げさせてもらった。

――まずはプロフィールのおさらいから。幼少期はピアノを習い、大学ではバンドを組んで、大学卒業後は企業に就職したものの1時間で退職。その後はラブホテルでアルバイトをしながら音楽を続け、オーディションでグランプリを獲得してデビューへ。なかなか経験豊富ですね(笑)。
 
「豊富なのかな(笑)? 普通ではありたくないみたいなのが大学生の頃からあって。でも方向性はまったく定まらないまま、とにかく人と違うことをしてみたいし、それがカッコいいと思ってたんですよ。そこから始まってだんだんと本格的にそれてきたっていう感じですね(笑)」
 
――しかし大学在学中に学祭テーマ曲に選ばれるなど、早い段階で頭角は現れました。
 
「正直、自信はありました。テーマソングは応募曲から投票で決まるんですけど、投票段階で応募曲も過去の応募曲も聴けたんです。それで聴いてみた感想が、あ。いけそうだなって(笑)。ただあまり経験とかもなかったから、めっちゃ頑張って音源化して、いろいろロビー活動というか宣伝もして、ちゃんと頑張って勝ち取ったっていう感じです。でもその頑張りを見せないことがカッコいいと思ってました(笑)」
 
――ちなみに曲も広報活動も、ち密に計算して票につなげたんですか?
 
「そこまでの計算はなかったんですけど、メロディラインを作るのは非常に得意だったので、みんなが好きそうなメロディラインの曲にして、一番気持ちいいタイミングで高音が来るとか、それを3回繰り返すとか、そういうロジカルさはありました」
 
――それは誰かに教わったんですか?
 
「特に教わったことはなく、SMAPさんとか、ゆずさんとかを聴いて育ったので、たぶんその地盤がそうさせてると思います。(リアルタイムで聴いていた)当時はそういうこと(人気のある曲の分析)をしていたわけではないですけど、自分で曲を作り始めてから、あ。こういう構造になっていたのかっていうのに気づいた感じです」
 
――しかし大学時代に組んだバンドもその後に組んだバンドも解散し、ラッパーとしてソロ活動をすることに。大胆な方向転換ですね。
 
「自分的には結構ぬるっと方向転換したと思ってて(笑)。バンドは僕しかやる気がなくて、曲作りもアレンジも1人でなんとかしなきゃいけなかったので、パソコンの中だけで完結できるようにいろいろ勉強したんですよね。それがぜったくんとしての走りで、バンドっぽい曲はもう作れるようになったから、新しい要素を足していこうって思い始めて、で、中学・高校とずっとヒップホップが好きだったから、それを混ぜてみようかなって、ちょっとずつ混ぜていって今の形にいたります」
 
――ソロを選んだのは、ピン(1人)の方がよかったから?
 
「絶対的にピンです(笑)。予定を合わせなくていいから。リハの予定とか合わせるのは面倒でしたね。あと、自分でスタジオ取ったり録音の日決めたり、ブッキングも自分でやってたからライブハウスに連絡したり。全部やってたんで、ピンになると急に作業が半分ぐらいになるんですよ(笑)」
 
――人望があるから任されていたのでは?
 
「いや、(バンドの)発起人で音楽を一番頑張ってたからだと思います。単純に熱量が一番あっただけ。全然リーダー気質じゃないですもん。だからつらくて(笑)。今はもう1人だから1人分のプレッシャーしかないけど、バンドだとみんなの期待じゃないけど、いろいろ背負ってる感じもあって性に合ってなかったです」
 
――今は楽しそうでよかったです(笑)。
 
「楽しくやらしてもらってます。でも、もしそこ(バンド)でそう(楽しく)なってたらずっとバンドをやっていた可能性もあるので、リーダーとしてずっと苦しんでいたかもしれないですね(笑)」
 
――そうなると会社も1時間で辞めてよかったですね(笑)。
 
「そうですね(笑)。でも会社で勤める人生も悪くないなっていう気持ちもあって、きっとそっちはそっちで全然楽しいことがあるはずって。俺は今こっちに来ちゃってるから、こっちが一番楽しいと思いたいですけど、あっちはあっちでいいんじゃないかと」
 
――ちゃんとポジティブ。
 
「ポジティブに考えないと損!みたいなマインドが働いちゃって。ネガティブな時ってだいたい意味ないじゃないですか。何か解決するとかだったらいいですけど、大体解決しないイメージがあるんで。基本的にマイナスなことでも、どこかにチャンスやいいことを見つけていった方が楽しい気がしますね。そういうところの貧乏症みたいなのがあるんですよ。全部つかみ取りたいというか、拾っていきたいというか」
 
――そんなぜったくんにとっても下積み時代はつらいものだったんですよね。どう乗り越えたんですか?
 
「当時は全然評価されなくて……というか、みんなに届いてないなって感じがしてて、届いてないがゆえに承認欲求のリターンもなかったんですよね。それが苦痛とまではいかないけど寂しいなっていう。この先音楽でやってはいきたいけど、一寸先どころか1cm先すらも闇みたいな。その時はそういう気持ちで生きてましたね。だから乗り越えるとかはなかったです。ただただ過ごしてたっていう(笑)。あとラブホのバイトとかも割と楽しくて。一緒に働いてた人たちが変わった人が多かったんです。芸人さんとか、金持ちだけどリタイアした人とか、世界旅行して帰ってきた人とか。あと清掃の人は中国とフィリピンの人で、結構バチバチに中国とフィリピンの“内戦”みたいなのもありました(笑)。それでその人たちとも話をして、こっち(日本)で働いたらすぐに向う(母国)で家が建つらしく、“(写真を見せながら)これが私の家!“、‟めっちゃでかい家建てたんだ!”みたいな。いろんな人がいるんだっていうことを知れたのがデカかったですね」
 
――そんな時期を経てオーディションでグランプリを獲得。バイトを辞めた朝に寿司を食べて音楽で生きる腹をくくったと聞きましたが、グランプリを獲得してなかったら、また普通に仕事をすることも考えていたんですか?
 
「それはありました。グランプリをとってなかったら、にっちもさっちもいかなくなる瞬間が絶対来るなと思ってて、その(決断する)基準とかはなかったんですけど、普通に働くんかもなって思いながら。それこそ、ラブホのバイトで一緒だった人も植木屋さんになったりして、こういう風になるのかもなって思ったりしてました」
 
――冷静。自分を俯瞰しています。
 
「あ、それは得意な方ですね。なぜかひとごとみたいな時はありますね」
 
――それは心の痛みを軽減させるため?
 
「そう言われたら、そうかもしんないですね。直接くらいたくないから上から見てる」
 
――であれば繊細。
 
「確かにそうかも。繊細だから俯瞰してる可能性はありますね」
 
――少し心配になりますが(笑)、アルバム「Bed In Wonderland」の話へ。そもそもぜったくんは“巣ごもり系”ですが、今作の新曲は家から……。
 
「……出てますね、完全に。それは……『ゆるキャン△』っていうアニメを見たからです(笑)。キャンプいいなってなって、外でご飯を食べてみたらめちゃくちゃうまかったっていう。最近はアウトドアをディグって器具も買ったりして、シャウエッセンを焼かさせてもらってます(笑)」
 
――影響されましたね(笑)。
 
「されちゃいましたね。『ゆるキャン△』はがっつり見るというより、ちょっと流して見てたんですよ。女の子たちが自分でキャンプをできるようになるまでや、キャンプの楽しいところを見て癒されるなって。それが普通にハマっていって、実際に自分も外に出てみたらさらにどハマりするという。でもウインナーを焼くのも1人だし、部屋だったのが外になったっていうだけ(笑)。ワイワイしている感じはなくて、自分の中で楽しんでるっていう感じの外ですね」
 
――でも、ぜったくんの曲には生活の音が多くあって、それが曲の雰囲気を生んでいる気も。それらの音は自身の生活の変化で変わりますよね?
 
「曲によって変わりますね。(今作収録の)『ビュンビュン逃飛行✈』には飛行機の機内の音とか入ってるし。でも、曲調や好きな感じのメロディは変わらないですね。ただ単純にテーマが外になったっていう」
 
――ちなみに効果音は日常的に集めているんですか?
 
「そうです。最近、奨学金の事務局に電話したんですよ。その時、電話口で非常に待たされて10分ぐらいは保留音が流れてたから、録音してサンプリングして刻んでやろうって(笑)」
 
――刻んで使ってやるっ!……と。リリックでもそういうヒリッとする部分が時々ありますよね(笑)。
 
「平然としてヒリッとすることを言います。さりげなく結構ひどいことを言ったりする人種です(笑)」
 
――だからパンチラインではなく、しれっと入っている(笑)?
 
「個人的には、パンチラインだ!っていう感じでの使い方はあまりしたくないですね。ラップでも韻のところを強調してバーンッて歌う文化もありますけど、自分的にはあまりハマらなくて。歌ってんだけど今踏んでるくらいにサラッと韻を踏むのがカッコいいと思ってます」
 
――個人的に今作でヒリッとしたのは1曲目の「ビュンビュン逃飛行✈」の領空の話や、7曲目の「Baby」のひと言です。
 
「(『ビュンビュン逃飛行✈』の)“ぶっ飛んだ国”のところ。センシティブですからね(笑)」
 
――「Baby」は、“しんでどっかいってっなんて”のところです。
 
「ひどいですよね(笑)。僕は言わないですけどね。この話がリアルだとしても時折空想を混ぜて……です。でも『Baby』は自分でもめちゃくちゃいいと思うんですよね」
 
――ファンにも人気。
 
「僕の恋愛系の曲が好きっていう人は結構いますね」
 
――今作だと2曲目の「Man Say Bien」や3曲目の「Midnight Call」も恋愛の曲。以前ラジオ番組で恋愛の曲は男女を逆にして書いているという話をされていたような。
 
「逆にしてます。これ、最近言い始めましたけど、相手と自分を逆にしてるというか、付き合ってる人がいたとして、その人のことをその時に一番理解できてるのは自分な気がするから、その人がどう思っているのかを想像するっていう、とんでもないことをしてます」
 
――そのきっかけは?
 
「僕はそんなに、会いたい!会いたい‼って思うことがないから、会いたい!会いたい‼って(相手に)言われると、なんでそんなこと思ってんだろうな?っていうのを想像するというか……そういう風になるロジックを考えるというか」
 
――想像して相手の気持ちはわかりました?
 
「いや、わかんないです。人の気持ちって100%わかることがないから楽しい。それがコミュニケーションの楽しいところです」
 
――確かに。冷静で、時に切り込み、かと思えば10曲目の「WAKE me UP!!! feat. はんにゃ金田哲」では遅刻常習のダメ人間的な面も。なんかいわゆる男性的ですよね。
 
「(『WAKE me UP!!! feat. はんにゃ金田哲』は)本当に遅刻する曲ですからね(笑)。でも男っぽいのかな?」
 
――自分のテリトリーやルールには強いこだわりがあるような。
 
「最近思うことがあって……出会った人たちのことはすごく大切にしてて、チームの人も本当に大切に思ってるんですけど、知らない人に対してはマジでどうでもいいと思ってる。人類はみな友だち!みたいな感じは一切なくて、僕は周りの人たちが幸せであればほかはどうでもいい……っていうところが、かなりオス感があるなって思います」
 
――ではそろそろ9月に控えるワンマンライブのことも。ウワサでは糖質制限や水泳で体調管理をされているとか。
 
「糖質オフはやってますね」
 
――ワンマンに向け万全を……。
 
「……期してると思います(笑)。夜に糖質を抜くっていうのはプラセボ効果かもしんないですけど、体調がよくなってるなっていう気はする」
 
――ほかにも夜型から朝型に変え、対戦ゲームもやめたそうで。
 
「そこ(対戦ゲームをやめたこと)がメンタルヘルス的に一番デカいです。対戦ばっかしてると本当に疲れる。勝った時はうれしいですけど、人対人で負けると本当に負けたって感じがあるんですよ。競争社会で負けたみたいな。なんでこんなこと言うんだ!っていう悪口を小学生に言われたりするし(笑)」
 
――つらい(笑)。で、健康体で挑む次のワンマンはフルバンド。
 
「ひと言で言うと、めちゃくちゃ楽しいと思います。もちろん『Bed In Wonderland』の曲をたくさんやるし、アレンジもその時しかできないことをめちゃくちゃやります。曲中でガラッと変わったりとかいろいろ。僕もバンドもいっぱい仕掛けを用意してるので楽しくできたらなと」
 
――昨年11月の初ワンマンのレポートによると、バンドメンバーと号泣……と。
 
「そうですね(笑)。昔からやってきたメンバーたちがそろってるので」
 
――次も同じメンバー?
 
「はい。でもさすがに泣かないと思います(笑)」
 
――また大阪では7・8月にもライブがあったうえ、10月も「FM802 MINAMI WHEEL 2022」に出演されるので……。
 
「大阪、4か月連続ですね。すごい、すごい」
 
――もう大阪が好きということで……。
 
「……よいです(笑)」
 
――では最後に“大阪情報”を。今作の4曲目は「味噌つけてキュウリ食べたい」という曲ですが、大阪の人はキュウリに味噌をつけて食べないらしいです。
 
「え、食べないんですか?」
 
大阪出身のスタッフ「店では食べます。でも家でそういう習慣はないですね。つけるならマヨネーズ」
 
「(関東では)味噌がなかったらマヨ……ぐらいかな。『マヨつけてきゅうり食べたい』のリミックス出さないと(笑)!」

Text by 服田昌子



(2022年9月15日更新)


Check

Movie

Release

Digital『Bed in Wonderland』
配信中
Virgin Music (JPN)
ユニバーサル ミュージック合同会社

《収録曲》
01. ビュンビュン逃飛行✈️
02. Man Say Bien
03. Midnight Call
04. 味噌つけてキュウリ食べたい
05. sunday sunday
06. なんて日だ
07. Baby
08. レンタカー
09. orange juice
10. WAKE me UP!!!
11. Gaming Party Xmas

Profile

東京都町田市生まれ。ごく普通にSMAPを聴き、ゲームをしながら幼少期を過ごす。大学にてギターを始め、卒業後には就職した会社を入社わずか1 時間という早さで電撃退職。さらに作曲とDTMを勉強しながら、作詞作曲を手がけるバンド・201号室での活動を始める。その傍らぜったくんとしてソロで楽曲制作も開始。2018年ラストラム主催の新人オーディション「ニューカマー発見伝」にてグランプリを受賞し、2019年7 月にデビューデジタルシングル「Catch me, Flag!!?」をリリース。そして2020年10月にはデジタルシングル「Midnight Call feat. kojikoji」でメジャーデビューを果たす。また翌2021年4月に「Man Say Bien」をリリースし、同年夏にはワンマンライブ未経験にもかかわらず初のライブ映像「Strings Live Sessions」をYouTube にアップして話題に。加えて11 月には初のワンマンライブをソールドアウトの大成功に収め、勝負の年・2022年に突入。8月31日には1stアルバム「Bed In Wonderland」をデジタルリリースしたばかり。

ぜったくん オフィシャルサイト
https://www.universal-music.co.jp/zettakun/


Live

【東京公演】
チケット発売中 Pコード:220-882
▼9月16日(金) 19:00
LIQUIDROOM
全自由-4000円(ドリンク代別途必要)
※3歳以上はチケット必要。公演内容に関する詳細はsevens@sevens-softhouse.comまで。
※チケットは、インターネットでのみ販売。店頭での受付はなし。1人4枚まで。

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:222-978
▼9月18日(日) 18:00
心斎橋JANUS
全自由-4000円(ドリンク代別途要)
※3歳以上は有料。
※販売期間中はインターネット販売のみ。1人4枚まで。チケットの発券は9/11(日)10:00以降となります。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888

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