“新世代インスト・ジャズ界のオールスターチーム”
POLYPLUSが東名阪クアトロツアーを開催!
初日、東京公演のライブの模様をレポート
“新世代インスト・ジャズ界のオールスターチーム”として音楽ファンの注目を集めているPOLYPLUSが、東名阪のクアトロツアー『POLYPLUS QUATTRO TOUR 2022 -the summit-』をスタートさせた。今回のツアーでは、POLYPLUSのメンバーの所属しているバンドと初共演が実現。初日(8月30日(火))の東京公演のゲストは、fox capture plan。高い演奏技術と独創的な音楽性、そして、メンバー同士の熱気溢れるインタープレイがせめぎ合う、圧巻のステージが繰り広げられた。


先に登場したのは、fox capture plan。POLYPLUSのメンバーでもある岸本亮(Piano)、カワイヒデヒロ(Double Bass)、井上司(Dr)によるピアノ・トリオ・バンドだ。3人が音を鳴らした瞬間、幅広い年齢層の観客が大きな拍手で応え、会場はいきなり心地よい一体感に包まれる。オープニングは、彼らのライブアンセムの一つである「Attack on fox」(2ndアルバム『BRIDGE』/2013年)。さらに「Butterfly Effect」(4thアルバム『BUTTERFLY』/2015)、「疾走する閃光」(3rdアルバム『WALL』/2014年)などの代表曲をシームレスにつなぎ、オーディエンスの熱気を一気に引き上げていく。ジャズの素養を身に着けたうえで、エレクトロ、オルタナティブロックなどのテイストを織り込んだアンサンブルは、さらに進化していた。爆発的なダイナミズムと緻密なリズム感覚を併せ持った井上、ミニマルかつメロディアスな鍵盤を響かせる岸本、二人のプレイを有機的につなげ、楽曲の軸を担うカワイのトライアングルはやはり最強、そして最高。約1か月ぶりのライブとあって、メンバーのテンションも最高潮だ。「We Are Confidence Man」(ドラマ『コンフィデンスマンJP』サウンドトラック/2018年)では、POLYPLUSのTSUUJII(Sax)が登場。キレ味鋭い音色でメインの旋律を響かせ、観客も体を揺らしながら拍手を送った。


21時を少し過ぎた頃、ついにPOPYPLUSのライブがはじまった。メンバーのTSUUJII(Sax/from Calmera)、YUKI(Ba/from JABBERLOOP)、MELTEN(Key/from JABBERLOOP,fox capture plan)、Gotti(from Neighbors Complain)、そしてサポートドラムの横田誓哉が姿を見せ、お互いにアイコンタクトを交わした後、最初の楽曲「quarter」(アルバム『move』2021年)を放つ。“ダンサブルなバンド・グルーヴ×キャッチーなサックスの旋律”というこのバンドのベーシックなスタイルを端的に提示した楽曲によって、会場は一瞬にしてダンスフロアに変貌。さらに軽快なギターカッティングに導かれた「ratz」(アルバム『debut』/2018年)、ファンキーなベースライン、煌びやかな鍵盤のフレーズ、ヘビィネスとしなやかさを共存させたリズムが絡み合う「m‘n’dass」(アルバム『debut』)を披露し、気持ちいい高揚感が広がっていく。
“フロアを躍らせるセッション”を掲げている通り、メンバー個々のプレイヤビリティを活かした自由な演奏を交わしながら、観客をノセまくるのがPOLYPLUSのライブのスタイル。メインのテーマと即興的なソロを組み合わせた構成はオーセンティックなジャズにも通じているが、ロック、ファンク、ソウル、ラテンなどを自在に取り入れ、生々しさと豊かな色彩を併せ持ったサウンドに昇華させている。超キャッチーなTSUUJIIのサックスのフレーズを含め、“初めてこのバンドのライブを観た”という人でも何の抵抗もなく盛り上がり、楽しめるはずだ。
メンバー全員にそれぞれ華があり、キャラ立ちしていて、プレイスタイルも派手。観客のなかにはグッズのペンライトを振っている方もいて、誤解を恐れずに言えば、アイドルグループのライブのようでもある。このエンタメ感もまた、POLYPLUSのステージの魅力だろう。


ライブの最初のピークは、アヴィーチーの2013年のヒット曲「wake me up」のカバー。ダンス、ポップ、カントリーの境界を超越したこの楽曲を彼らは、原曲へのリスペクトを込めながら、生演奏ならではの躍動感とともにプレイ。後半の爆発的な盛り上がりは、インストバンドの無限の可能性をはっきりと証明していた。
7曲をノンストップで、まるでDJプレイのようにつなげたあと、TSUUJIIが観客に向かって話しかける。2014年にこのバンドをはじめて、とにかく自由に、好きなように活動してきたこと。メンバーの脱退や離脱・復帰などを経験してきたこと。今年、ドラマ「クロステイル~探偵教室~」のオリジナルサウンドトラックを手がけたことをきっかけに、“上”を目指そうと決めたこと。『POLYPLUSは武道館に立つバンドになるし、スタジアムが似合うバンドになるし、世界に羽ばたくバンドになります。』という宣言の後は、ドラマ「クロステイル~探偵教室~」のメインテーマ「close tail」を披露。気合の入った演奏からは、POLYPLUSの未来にかける思いが強く伝わってきた。
ライブ本編はロックテイストを押し出した「limiter」(アルバム『debut』)で終了。大きな手拍子に導かれ、再びステージに登場したメンバーは観客、スタッフへの感謝を表し、煌びやかな音とフレーズが共鳴する「silhouette」(アルバム『move』)でライブはエンディングを迎えた。
9月12日(月)の名古屋クラブクアトロはJABBERLOOP、Neighbors Complain、9月13日(火)の大阪クラブクアトロにはCalmeraが出演。どちらの公演でも“the summit”(=新世代ジャズシーンの“頂上”)というタイトルにふさわしい熱演が繰り広げられるだろう。TUSUUJIIが語っていた通り、POLYPLUSはここから、さらに上を目指すことになる。その起点となるライブをぜひ、現場で体感してほしいと思う。

Text by 森朋之
Photo by 黒木治(Mellow)
(2022年9月 7日更新)
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