メジャー1stアルバム『Midnight Sun』をリリースし
リリース記念ワンマンライブ“Set off Jam”を開催!
Kenta Dedachi、大阪公演ライブレポート
4月にシングル『Fire and Gold』でメジャーデビューし、待望のメジャー1stアルバム『Midnight Sun』を7月にリリースしたKenta Dedachi。今作のリリース記念ワンマンライブ“Set off Jam”が東京と大阪で開催された。ライブはKenta Dedachiがこれまでのレコーディングやライブで親交を深めてきた国内外に様々なルーツを持つミュージシャン/プロデューサーが加わったバンド編成で繰り広げられた。また、アルバムに収録されている『Better days』にEGで参加したMichael Kanekoをゲストに迎えてカバーとそれぞれのオリジナル合わせて3曲で共演が実現。国際色豊かなミュージシャンが奏でる豊潤なサウンドと共に、Kenta Dedachiというフレッシュな才能が生み出す新世代ポップの素晴らしさを存分に体感させてくれた。ぴあ関西版WEBでは7月に行ったインタビューに続き、今回は8月23日にumeda TRADで行われた大阪公演のレポートをお届けする。
35度を超える猛暑の中でも体感温度を10度以上下げてくれるような清涼感があり、心の浄化作用も感じさせてくれたKenta Dedachiのメジャー1stアルバム『Midnight Sun』。そのリリース記念ライブ“Set off Jam”は、アルバムと同じく表題曲『Midnight Sun』で幕開けた。最初は自身の声が多重録音された音源をオープニングSEとして流し、Kenta Dedachi本人がステージ上に現れると澄んだ歌声をアカペラで会場内に響き渡らせる。その祈りを込めた讃美歌のような雰囲気から2曲目『Fire and Gold』では一転してダンサブルな様相に。生ドラムではなく、シンセパッドによるビートで明るく軽やかな景色に塗り替える。一曲目でじっと聴き入っていた観客もハンドクラップで加わり、開放的な空気が広がっていった。そんな対照的な2曲を歌って、Kenta Dedachiは、「ハロー、Good evening!」と挨拶し、「人生で初めてワンマンライブを行ったのが大阪だった」と振り返り、「今回はメジャー1stアルバムのローンチ・パーティーですね。本当に楽しんでいきたいと思ってます。準備はいいですか?」とみんなに声をかけてフレンドリーな雰囲気で引き込んでいく。とはいえ、単純に明るい曲調が続くわけではない。中には『Green Eyed Monster』のようなヘヴィな心情が投影された楽曲もあり、歌の世界観もサウンド感も多彩で奥行きのある構成となっていたように思う。
Kenta Dedachiがアコースティックギターを奏で、やさしくナチュラルなボーカルを聞かせてくれた5曲目の『Rewind』。「ここからはアコースティックバージョンで何曲かお届けしたいなと思います」と言って、バンドメンバーを一人一人紹介していく形で進行。その際、それぞれのバックグラウンドや出会いについても触れながら和やかに会話していたのが印象的だ。例えば、「レナート(・イワイ)さん(ベース)はブラジルのサンパウロ出身。ブラジルのルーツがあるから、(自分では)いつも作らないようなビートを感じる」というような感じで。
ギタリストのエリアス・チアゴとギター2本のデラックスバージョンで披露された『Dandy Lion』。本人曰く、「ビタースウィートな」内容を極めて繊細に表現する。歌い終わるとフロアからも大きな拍手が湧きおこっていた。
次にキーボディストの大樋 祐大 (SANABAGUM.)を紹介すると、大樋が大阪出身ということで関西ノリの展開に。Kenta Dedachiはお好み焼きソースが大好きで、トーストもそのソースで食していたことなどを打ち明ける場面も。端々に愛されキャラが滲み出てきて、自然とみんなが笑顔になっていく。そんなトークとは真逆のしっとりとしたピアノバラードに陶酔させてくれた『Jasmine』。歌詞の中に日本の四季を織り交ぜた『Stay with me』は心の機微に触れてくる歌声に息を呑んだ。
中盤には、Michael Kanekoを迎え入れて3曲で共演するブロックが用意されていた。二人の交流についてしばしトークが弾み、その一曲目にはなんとMaroon5のカバー『Sunday Morning』が披露されて観客も歓喜する。フロアからの手拍子も加わってピースフルな雰囲気に。続いて、Michael Kanekoのオリジナル曲『Through The Fire』では声質の異なる二人がアコースティックギターを奏でつつ、心地よいハーモニーを響かせて親密さを共有させてくれた。その後、再びバンドメンバーのレナート・イワイ/エリアス・チアゴ/大樋 祐大、さらにインディーズ時代からKenta Dedachiのプロジェクトを支えてきたKOSEN(Colorful Mannings)が加わって『Better days』を演奏。「アルバムの中でエモさを追求した曲」と本人が明かしていた同曲は、この日のハイライトともいえる豊潤なバンドサウンドで圧倒的な感動を与える一曲となった。「どうですか?エモかったですか?」と観客に声かけ、「昨日はプライベートで初めて大阪をストロールしてました」と嬉しそうに話しだす。ちなみに、FLAKE RECORDSに行ったり、アメ村で服を買ったりしたそうだ。
そして、「よっしゃ、ここからたくさん歌いますよ!」と気合いを入れ直して、『Alright』からライブは後半戦に突入。明るくテンポアップしていき、フロアのオーディエンスも一緒に体を揺らして熱気がグングン上がっていく。シュワっと軽やかに弾けるKenta Dedachi流のサマー・ソング『Sparkling Lemonade』ではユーモラスな振りを入れて歌っていたのが印象的だ。
レナート・イワイのベースを効かせた攻めの『Beau』、エリアス・チアゴの熱いギターソロが唸りを上げていた『Step by Step』と続き、体でグルーヴを感じるように力強いアクションで歌う姿に場内もさらにヒートアップしていった。「もう一度壊してよ」と歌う刺激的なワードにドキッとさせられる『Strawberry Psycho』はエフェクトをかけたボーカルで甘くキケンなムードに誘う。こんな一面もあったのか!と思わせる、Kenta Dedachiの意外性に触れた瞬間だった。
本編最後の曲となったのは『Tattooed Hollywood』。その前に、「今日はみなさんにクラップしてもらいたいなと。ちょっとデモンストレーションしましょうね」と促して、観客と一緒に数回練習する場面も見られた。そして、イントロから軽快なクラップで滑りだし、この日一番の明るくリズミカルなナンバーでみんなの心をひとつにした。
熱気に満ちた本編を終えて、アンコールで再びステージに戻ってきたKenta Dedachiは、自らキーボードの弾き語りで『Where We Started』をしっとりと歌い上げる。この曲は完全生産限定盤のCDのボーナスディスクにアカペラバージョンで収録されているナンバーだ。そして、力強いビートに乗って飛んでいくような爽快で力強い『Fly Away』でフィナーレを飾る。客席に手を振り、動きながらリズムをとって気持ち良い歌声を高らかに響かせた。
音楽性が広がり新たな引き出しが増えたニューアルバムの楽曲群。細やかな表現力にグッと引き込まれる曲もあれば、生の躍動感が溢れ出すシーンもあり、予想を超えたエモーショナルな歌やパフォーマンスで魅了してくれた。
今回のツアータイトルには“何か新しいことを始める”という意味が込められている。MCの中でコロナ禍の自身の体験を振り返りつつ、「ある意味、(今は)新しい時代に行く前の乗り換えの時期なのかなと。みなさんの中で何かが始まるようなライブになれば…」と話していた。Kenta Dedachiはこのライブの後、LAの大学に復学するが、12月には卒業して音楽活動に専念するという。『Tattooed Hollywood』を歌う前に、自身が18歳でLAに行った時のことを振り返って、「やること全部が新しく無限大の可能性を感じた」と話していた。そんな“無限大の可能性”が、今まさに開花中だ。ポップシーンを切り開く新たな逸材として、これからさらに活躍の場を広げていきそうだ。
Text by エイミー野中
Photo by 松本いづみ:Izumi Matsumoto
(2022年9月 9日更新)
Check