“最高にアガるポップスでありたい。今回のアルバムがその真骨頂であるように” 19枚目にして新しい。変化し、フィットしたアルバム『FIT』 堂島孝平インタビュー
シンガー・ソングライター堂島孝平が、2年9ヶ月ぶりにアルバム『FIT』をリリースした。近年、KinKi Kidsの共同プロデュースをはじめ、藤井隆やSexy Zone、アンジュルムらへの楽曲提供やCM楽曲などで、幅広く活躍し続けてきた堂島。そんな彼が通算19枚目にリリースしたアルバムは、長い音楽生活の中で抱き続けた音楽への意欲とアップデートが込められた全9曲が収録されている。中でも、これまで自身で手がけてきた作詞を初めて他の人に委ねたことは大きな変化。その相手は坂本真綾と土岐麻子という同時代を見つめてきた友人であり、偉大なミュージシャン。さらに、弾き語りトラックメイカーアイドル・眉村ちあきとのデュエット曲も収録。また本文には入りきらなかったが、ONIGAWARAの斉藤伸也がアルバムの編曲に携わっていたことも、今作にとっては大きな支柱だった、とも語っていた。彼らミュージシャンとの関わりを語る中で頻繁に飛び出したのは“親和性・シンパシー”という言葉、そして感じたリスペクト。変わらずに音楽を続ける中で自ら変化を選択すること、そこに見えるものとは。堂島の今の想いを語ってもらった。10月には東京と大阪でアルバムリリースを記念したバンドツアー『堂島孝平 × A.C.E TOUR 2022「Best FIT」』が、9月からは全国9箇所を廻るソロツアー『堂島孝平 × SOLO TOUR 2022「Fitting journey」』が行われる。「変化しながらFITする」彼の姿をぜひ目撃してほしい。
自分の音楽で1番好きだなと思ってるのは、常にアップデートしていくところ
――アルバム『FIT』が完成して、今のお気持ちはいかがですか?
「めちゃくちゃ嬉しいです。前作のアルバム『BLUE FANTASIA』から2年9ヶ月ぶりに、という喜びも勿論あるんですけど、デビューして27年、曲を作り始めたアマチュア時代まで考えると30年ちょい。その年月を経てすごく自分にフィットするアルバムができたのが嬉しいです。音楽をやってる以上、ピュアさや新鮮さには抗えないところがあるので」
――今作は堂島さんの中でピュアさ、新鮮さがある作品だと感じられた?
「作品のテーマは全然別なんですけど、音楽をやり続けてきて、さらにまだ自分でも思ってなかったような良さをキャッチできた、そういうピュアな喜びがありますね」
――“自分にフィットした”という部分をもう少し詳しくお聞きすると、どんな感覚でしょうか。
「毎回作るたびにその感覚はあるんですけど、今回はどうやって臨むかという姿勢の部分で、自分にとって良いものにするためには、“いかに自分に捉われないか”がキーになると思ったんです。先ほどの話の続きにもなるんですけど、これだけの間音楽をやり続けてこれてすごく幸せだなと思っている反面、やっぱり続けるとそれだけの蓄積がある。経験、曲の作り方、自分の特徴や得意なもの、備わってるもの。それらを持ってアルバムを作ることは自然なんですけど、自分が自分の音楽で1番好きだなと思ってるのは、常にアップデートしていくところなんです。何かしらの発明が必要だと思ってる。そこを目指すためには、今までやってるもので補うようなアルバムじゃなく、土台はそこだとしても、なるべく自分がまだ到達出来てないものにしたい。そのためには自分で思いもよらないものにしないといけない。今回はそこができて、さらにフィットしたことがすごく嬉しいです」
――今回アップデートしたところで言うと、坂本真綾さんと土岐麻子さんへの作詞の依頼と、眉村ちあきさんとのデュエットになるのでしょうか。
「分かりやすくいうと、まずその点はありますね。タイアップや企画モノではなく、自分でリリースする作品で作詞をお願いするのは初めてのことだったので」
――坂本真綾さんからお話をお聞きしたいのですが、『Latest Train』(M-8)、本当に良い曲ですね。
「ありがとうございます。真綾さんに聞いてもらった時も、“この曲本当に好きです”と言ってくださって嬉しかったです。元々真綾さんとは、お互いに同じイベント(音楽プロデューサー&ドラマーの矢野博康氏企画のライブイベント『矢野フェス』)に出てからの付き合いで。僕は真綾さんのことをすごい人だなと思うんですけど、真綾さんもそういう気持ちでいてくれるようなところがあって。いつか歌詞を書いてもらいたいと思っていたんです。近年、KinKi Kidsの共同プロデュースをやってるんですけど、自分の作品よりも先にKinKi Kidsの作品で一度歌詞を頼んだりもしていて」
――『光の気配』(2019年発売のシングル)ですね。
「その時も素晴らしい歌詞を提供してくださって。あとは2年前に真綾さんの25周年ライブ(『坂本真綾 25周年記念LIVE「約束はいらない」』@横浜アリーナ)に呼んでくださって、その前にデュエットアルバム『Duets』でもお話をくれて。ご一緒すればするほど、“また次やりたいな”と思わせてくれる方です。今回、自分以外の人に歌詞を頼んでみようかなと思えたのは、真綾さんがいたからというのは大きかったですね」
――なるほど。
「真綾さんとは活動年数も近いんですけど、全然違う持ち場でやってきて、活動20年近くなって初めて一緒になったというのも面白いんですよね。それぞれで培ってきたものに非常にシンパシーを感じたりもして。勿論やり方や発信されるもの、表現には違いがあるんですけど、その良さに嬉しくなっちゃう。今回の歌でも、真綾さんにはそういうお話しをしました。色んな歌詞を書かれる中でも、その場にはいない人に思いを馳せるような歌詞が、僕はめちゃくちゃ好きで。一緒にいて何かが起きている歌詞ではなく、主観なんですけどその人が何かを思って相手が存在していたり、その規模が非常にデカいものだったり、はたまた人生訓みたいに思えたり。そういう広がりを見せる真綾さんの歌詞がすごく好きなんです。今回は曲をお渡しした時に“沁みるものがいいです”とお伝えして書いていただきました」
――真綾さんの反応はどうでしたか?
「その時は“分かりました”という感じだったんですけど、アルバムが完成した時にコメントをいただいたら、“お題が難しかった”と。歌詞をお願いしたタイミングでは、“最近歌詞を書いてなくてちゃんとできるか分からないので不安もありますけど、堂島さんに言っていただけて嬉しいのでやらせてもらいます”というお返事のされ方で。“真綾さんの時間の中で無理なく書いてください”と言ったんですけど、第一稿を送ってくださった時に“これで違うなら早く言ってください、ボツにしてください”と潔い感じで。でも、最高でした。言葉を生み出す人としてやっぱり素晴らしいなと思いましたね」
――タイトルは歌詞の中から付けられたんですか?
「真綾さんが『Latest Train』と付けてくださって。僕も“こういうタイトルの方がいいんじゃないか”というのがあれば言おうと思ってましたけど、バッチリでした」
――世界観が堂島さんと少し違いますね。
「これは土岐ちゃんもそうなんですけど、書いてもらった歌詞だけど歌ってみたらすごくしっくりきたところもあり。不思議だな~と。真綾さんにしても土岐ちゃんにしても、ご本人が歌っている言葉にも見えるんです。それがその人たちの色、ということなのかなとも思いましたね」
自分は、哀愁やブルースというものから音楽を作ってる人間なんだ。
――土岐さんは『Yellow Shadow』(M-4)を作詞されました。土岐さんには何かテーマはお伝えされたんですか?
「この曲を聞いてもらった時、すごくざっくりと“表情がコロコロ変わるとか、そういうのがいいなぁと思ってるんだよね”みたいな会話をしました。真綾さんの遠くの相手を思うみたいなことではなくて、ふと見た時の人の表情がいいなと思ったり。もっと言うと、“違う人といる時には全然違う顔するんだなこの人”みたいな。そういうのに気付くのが最近面白いなと思ってるんだよねと話して。歌のテーマというよりは雑談ぽい感じで始まっていきましたね」
――なるほど。
「そう言ったのは理由があって。例えば相手が、自分といる時と、別の人といる時で全然違う人間になってるみたいなことってすごくあるし、僕自身にもある気がしていて。そういうことを考えていくと、人格を絞りたくないなと思ったんですよ。それはアルバム全体についての話でもあるんですけど、たとえば男性であることや女性であること、何歳である、そこを限定することはあまり意味がないなと思ったり」
――意味がない、というのは?
「僕が今やる音楽として性別を個性にするということではなく、逆に言うと、曲を聞けば性別関係なく“人間の歌”になってる方が大事だなと。だから男らしさや女らしさみたいなものはやめたい。“俺”とか“僕”と言わない、ということじゃないんだけど、性別という属性に縛られないポップスをやりたいなという感じですかね」
――今のお話、ダイバーシティの時代にマッチしているような気がします。
「そうかもしれないですね。多様性を歌いたいということでもなかったんですけど。“多様でなきゃならない”と歌うより、そもそも歌の主人公が男だ女だ何人だ、というのがいらないんじゃないのかと」
――確かに。
「土岐ちゃんにそんな話をして出来た歌詞が『Yellow Shadow』。すげえキレキレで、本当にすごいなって。土岐ちゃんはミュージシャンの中でも付き合いが古くて、同い年でお互い23~24歳くらいから知ってるかな。20年ちょいほぼ同じ時代を見てきて、そんな中で2人とも日本のポップスがすごく好きで。僕が土岐ちゃんを信頼しているのは、山下達郎さんには吉田美奈子さんの歌詞があったり、女性が書く男性シンガーソングライターの歌詞の面白みが、シティポップとして性別に捉われない部分で感覚として分かってくださっている。『Yellow Shadow』にもそういう匂いはしましたね」
――そして土岐さんの歌詞も真綾さんの歌詞も、美しく切ないですね。
「そこは頼んでないのに、2人ともうまくいってない人の歌になるのが、すごく面白いなと思って。僕にとって、すごく近い2人なので、“あ、そう見えてるんだな”と」
――堂島さんの曲ならと。
「あと、多分歌う人間のことを考えて書いている。僕もきっとそうします。人のイメージを落とし込む。ライブもよく一緒にやっているので、僕の声もライブにおけるキャラクターも知ってくれているんですけど、その2人がブルージーなものを書いてくれたのが、すごくしっくりきたんですよね。僕も前作『BLUE FANTASIA』の時に痛感したんですけど、やっぱり自分は哀愁やブルースというものから音楽を作ってる人間なんだなーと常々思うので。キャラクターが明るくて、パフォーマンスが陰と陽なら陽なので、全然伝わらない人には伝わらないんですけど、発信の軸としてはそっちにあるんだなって、2人のフィルターを通してもそうなっているのを見て、また痛感しました」
――改めてご自身のことも感じられた。
「やっぱりそれでいいんだなって。それこそ20年近く携わってるKinKi Kids、2人と自分が今でもフィットしているのは、そういう部分があるのかなと。決して暗いわけではないんですけど、歌を通すと出てくるというか。自分の作り手としての資質がマッチするのかなと思ったりもしましたね」
眉村ちあきさんは、“本物”
――ブルージーな曲が多い中で、眉村ちあきさんとのデュエット曲『てんてん』(M-3)はキュートでテンポが良くて、耳馴染みが良いですね。
「ありがとうございます。この曲はまさに今おっしゃっていただいた通りで。アルバムを作る中で“こういうのが足りないな”という感覚があって、エイトビートのアッパーなものがほしいなと思って1番最後に作ったんです。最初からデュエット曲にしようと思っていたわけではなく、“ちょっとリズムがあって気持ち良いものを作りたい、でも普通にエイトビートじゃなくアガる曲ができたらいいな”というところでサビの断片ができて、これは面白いものになりそうだと。最後ギリギリのタイミングでデモテープが出来たのが始まりでしたね」
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――そこから眉村さんにオファーされた経緯は?
「眉村さんとこの2年弱で知り合って、何度かステージを共にしていく中で、眉村さんは僕が今1番シンパシーを感じるようになったミュージシャンなんですよね。僕が今までライブ中に大切にしてきたことを眉村さんにも感じて。作り手としてではなく、パフォーマンスの部分で思いつくことや面白味にすごくシェアできる感覚がある人。曲自体も良い曲が多いし、歌声は最高だし、化け物級だと思っています。“本物”というか。それでいつかご一緒できたらという気持ちがあったんですね」
――なるほど、シンパシーが。
「今回ゲストボーカルに来てもらう前に、眉村さんがご自身のアルバム(『ima』/2022年リリース)の『フリースタイルハンドメイド』で僕をゲストボーカルに呼んでくれて、その後大阪でライブがあったんですけど、2人でやってめちゃくちゃ面白かったんです。ちょうどその時『てんてん』を作っていて、オクターブ上は元々自分の裏声でやろうと思って作っていたんですけど、眉村さんを目の当たりにした時に、一緒にやってもらうのが1番いいかもと思ってお願いしました」
――堂島さんの声は高めだと思いますが、それよりも少し高い眉村さんの声がマッチしてて素敵でした。
「嬉しいです。僕は声が明るいタイプで、割とファニーな声をしてるので、めっちゃキーが高く思われがちなんですけど、そうでもないんですよね。若い時はもっと高いキーで歌ったりしてたんですけど、20周年以降はなるべく自分の低い声の良さも歌に取り入れられないかなと思っていて。特に今回のアルバムでは割と低いレンジのメロディーを作る工夫をしていたんですけど、『てんてん』もそういう良さを出そうと思って、オクターブ下の低いラインが聞こえる作り方をしていました。眉村さんが入ってくれたことによって、自分の歌のラインもすごく活かされてるし、眉村さんの歌もバッチリだし、最高の仕上がりになって。眉村さんがこないだ自分のラジオで『てんてん』をかけてくれたみたいなんですけど、お互いに感覚がシェアできる感覚を眉村さんも話してくれていて。“生き別れの兄だ”みたいなことを言ってて(笑)。面白いなと思って」
――感覚が近いんですかね。
「何なんでしょうね。ずっと自分でやり続けていたら知らない間にできてる流儀みたいなものがきっとあるじゃないですか。僕は特にライブのやり方において。眉村さんを見た時にそれが間違ってなかったんだなと思ったんですよね。ただ僕が先にデビューしただけなんですけど、眉村さんが出てきてビックリしている人を見ると、自分まで嬉しくなっちゃいますね」
――今年5月に心斎橋JANUSで行われた『堂島孝平×眉村ちあき なにわ友あれ』に来ていたお客さんの感想ブログをたまたま読んだのですが、アンコールで『フリースタイルハンドメイド』を歌わなかったと。それがすごく面白かったと書いてらっしゃいました。
「めちゃくちゃですよね(笑)。その日、ライブの順番が眉村さんが先で、僕が後だったんですけど、眉村さんはとんでもないライブをやって、最後フリースタイルで即興で歌を歌いながらMCしたり、ほんとすごくて。それを受けてのライブで、自分は演奏しながら“歌いそうで歌わない”というのをやってたんですよ。それを眉村さんがめちゃくちゃ気に入っちゃって。アンコールでお互いのライブの感想を伝えて、“あれマジで本当にやばいです!”、“ほんとしょうもないよね”とひとしきり喋ってからの『フリースタイルハンドメイド』だったんです。眉村さんがトラック流して、歌い始めも眉村さんなんですけど、歌わなかったんです」
――(笑)。
「それでお客さんがすごいウケちゃって。僕も“嘘でしょ!? 初披露だよ!”と言いながら結局ずっと歌わなかったんです。本当にめちゃくちゃだったんですけど、あれはなかなか他では見れないものだと思います。お客さんも面白かったでしょうし、僕も眉村さんも波長が合うなと思った出来事でしたね」
ポップスでどうやって人を湧かせるか、人の心にどうやって火をつけるか。
――アルバムを提げてのライブも行われますね。
「前作『BLUE FANTASIA』からバンドで録音する手法ではなくて、トラックメイキングで曲を仕上げる方法をとっていて。今回は『存在』(M-9)という曲だけはベース、ドラム、鍵盤が生演奏なんですけど、ライブではトラックメイキングの曲をどうやって生で聴かせていくかというところですね。『BLUE FANTASIA』のツアーもコロナでできなかったので、トラックの曲をライブでまだやれてないんですよ」
――そうなんですね。
「何曲かトラックを使いながらやってる曲もあるんですけど、1枚のアルバムをライブでどうしていくかは経験としてできてないので、やってみないとわからないけど楽しみです。ライブではやっぱり生としての変化をつけたいなと思っているので、音源にはない音やアレンジになっている、そんな場面があってもいいかなと考えていたりしますね」
――音源とライブで見せ方が変化していくかもしれないと。
「そう思います。あとは、自分でも自然なことになってきてるので、あまり言葉にしなくなっちゃってるんですけど、やっぱり自分はライブにおいても、ポップスというものでどうやって人を湧かせるか、人の心にどうやって火をつけるかが好きでやってるんだなと。いつもライブで味わってもらえたら最高にアガるポップスでありたいと思っているんですけど、今回のアルバムがその真骨頂であるようにと思って作っています。騒げる、踊れる、沁みる、泣ける、泣きながら笑えるというような、堅苦しくなく、でも人間である1番大事な温もりに直結することを歌っていきたいと思って作ったアルバムです。それがライブではよりダイレクトに伝えられたらいいなと思ってますね」
――関西のライブ予定で言うと、10月7日(金)の大阪・umeda TRADはバンドセットで、11月23日(水・祝)の京都・磔磔はソロライブです。
「バンドとソロで人数が違うのは、大きな面白みとしての違いだと思います。だけどライブを見ていただいた後味としては、バンドもソロも変わらないものができているという自負があります。それがさっき言ったようなポップスです。ポップスは定型であることが結構美しさだったりしますけど、そういうところに留まらないライブでありたい。それがソロでもバンドでも同じです。あとはソロだと選曲も少し変わります。特に今回、バンドセットはアルバムリリースツアーなので『FIT』の曲がメインになります。ソロツアーでアルバムの曲もやろうと思ってますけど、そもそもソロツアーはコロナ前から行ってたもので、バンドよりもフットワーク軽く色んな街に行って、自分の中のレパートリーで時代に偏らず色んな曲をやりたいという、オールタイムベストみたいな感じで取り組んでいるので、そういう面白みはあると思いますね」
――A.C.Eのバンドメンバーもお付き合いが長いと思いますが、時を重ねて変化したことはありますか。
「ちょうど昨日、バンドメンバーの鹿島(達也/b)さんとNONA REEVESの2人(小松シゲル/ds、奥田健介/g)と僕でリハをしたんですけど、会うのが2月の生誕祭(『堂島孝平生誕祭 -2022-』@東京・LIQUIDROOM)以来で、バンドでのライブの回数がかつてよりも少なくなってきたからか、集まって何かやってるだけで楽しくなっちゃって。でもこれは感覚がぬるくなったわけじゃなくて、ご褒美なんだなと思いましたね」
――ご褒美。
「『FIT』もそうなんですけど、自分で音楽をやること、自分が作ったものや誰かと何かをやることにワクワクする。そういう感覚で音楽と向き合えたり取り組めることが、とってもご褒美なんだなと思いましたね。やり慣れてつまんなくなっていくことが1番の恐怖なので。ライブも今までやったことだと、ワクワクしなくなるじゃないですか。初めて見た景色が良いなと思っても、何度も何度も見てるうちに普通になってきちゃう。そこで自分が変化をもたらすのが皆大事だと思ってると思うんですけど、自分で生み出すものにワクワクを感じたいというのはなかなかの拷問なので。自分で変えたいと思ってできる変化と、時間が経ったからこそ起こる変化があるんだなと。長年やって気心知れてる人と初めてのような感覚でやれるのはすごく嬉しいことなので、そのフレッシュさを音に反映していくことは、今後のアンサンブルの上で大きな鍵になるなと思ってますね」
VIDEO
Text by ERI KUBOTA
(2022年8月22日更新)
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