オリジナルもカバー曲も「“LOVE IS MUSIC=音楽を楽しもう”
という気持ちでお届けします!」
全国ホールツアー2022『LOVE IS MUSIC』開催中の
クリス・ハートインタビュー
日本人の心に響くJ-POPスタンダード曲のカバーやオリジナル曲を歌い、日本の音楽ファンの心を掴んできたクリス・ハート。2018年から約2年活動を休止していたが、2020年に活動を再開。翌2021年7月14日には5年ぶりのオリジナルアルバム『COMPLEX』が発表された。初のセルフプロデュース作品となったこのアルバムには、“自分らしくありたい”“ありのままの自分でいい”というメッセージが込められている。「自分の弱いところを見つめ直して、今までできなかったことや、挑戦するのが怖いなと思っていたことにもチャレンジした」という。この作品が生まれた経緯、さらに4月から開催中の全国ホールツアー2022『LOVE IS MUSIC』について今回はリモートでインタビューを行った。新たな扉を開くきっかけとなったコロナ禍での体験、音楽活動の原動力にもなっている家族のことにも触れつつ、気さくな素顔を覗かせてくれた。
聴く人の力になるアルバムを作りたかった
――昨年7月にリリースされた5年振りのアルバム『COMPLEX』はクリスさんにとって初の全曲セルフプロデュースとなる作品になりましたね。制作過程で今までと何か違いはありましたか。
「このアルバムはコロナ禍になってから、制作を始めたので、全ての曲がリモートレコーディングでした。ボーカルのレコーディングや編曲も自宅のスタジオで行いました」
――クリスさん自身はどんな作品にしたかったのですか?
「“聴く人の力になるアルバムを作りたいな”と思っていました。コロナ禍になってから、それまであたりまえにできていたことができなくなりました。ステイホーム期間中、お母さんたちは子供たちとずっと家に居て大変だったと思うし、僕も妻と喧嘩することがありました(苦笑)。そんな時、“今の嫌な気持ちをぜんぶ曲にしてください!”と妻に話したんです。それがきっかけとなってできた曲が『ちゃんと~mother's blues~』(M-4)です。この曲は妻が歌詞を書いています。コロナ禍になって、お母さんたちの負担も大きくなって、妻も悩んでいたと思うけど、子供の前では暗い顔や疲れている顔は見せないようにしてました。そんなふうに一生懸命がんばっている姿を見て、もうこれ以上がんばらなくていいよっていうメッセージをどうしても伝えたかったんです。それが世の中のお母さんたちにも届けば、きっと力になるんじゃないかなと」
――確かに『ちゃんと~mother's blues~』という曲はアルバムの中でもポイントになっている曲ですね。
「アルバムが『COMPLEX』というタイトルになったのもこの曲がきっかけです。僕は妻と二人でさまざまなコンプレックスの話をして、いろんなことを考えながら一曲一曲を作っていきました。妻も僕もお互いに言いたいことや伝えたいことを全部歌詞にすれば、僕も今まで以上に妻のことが理解できるかなと思ったし、それを歌にすることでいろんな人の力になれるかなと思って、正直な気持ちを書きました」
――この曲はピアノやバイオリンの音色も美しいですね。
「音の方はちょっとヒーリング・ミュージックに近い感じにしたいなと思って。音楽仲間のお母さんたちに頼んでピアノとバイオリンを弾いてもらいました。歌詞にもあるように、子供たちが寝た後、お母さんたちが1日の終わりにこの曲を聴くとリラックスできるかなと思いました」
――なるほどね。そういうお母さんたちに向けた曲もあれば、『大人になっていく』(M-13)はお子さんへのメッセージを込めた曲なんですね。
「そうですね。コロナ禍の影響で休校になったり、予定していたことができなくなったりしたので。子供たちもとても不安な気持ちでいたと思います。それで、今すぐにはできないこともあるけど、元気でいれば、また絶対にチャンスがくるよっていうメッセージを伝えたいなと思いました」
――クリスさんは活動を休止されていた時に、お子さんがご自身の曲を歌っているのを聴いて、また音楽活動を再開させようと思ったそうですね。
「活動休止していた時は2年間、子供とずっと一緒に過ごしてて、僕の曲を歌ったりしていました。(復活した2020年以降は)コロナ禍の影響で予定していたツアーが延期になったりしたので、また活動休止のような感じになりましたが。また子供と一緒に過ごせて、さらに音楽へのパッションが深くなっているなと感じました。娘は歌がすごく好きになったし、長男はピアノレッスンをするようになったんです。うちの娘は『ドリームガールズ』っていうミュージカルの曲がすごく好きで、毎日それを歌っていたので、自宅はすごくうるさくて大変でした(笑)」
――まさに音楽ファミリーですね!
「(笑)そうなっちゃいました! 子供達に夢があるなら、僕もこれからもっと応援したいし、娘と一緒にボイストレーニングとかしようかなと思ってます」
『コンプレックス』では何も隠さず
ディープなことまで正直に歌にした
――アルバムの話にもどりますが、タイトル曲でもある『コンプレックス』(M-9)はクリスさん自身のリアルな気持ちが歌われているんですか?
「はい。妻と話して、この制作では何も隠さずに、ディープなところまで正直に歌にしようということに決めました。活動を休止していた時に、歌手じゃなくて、これからプロデューサーをやるべきか、シンガーソングライターとしてやっていくべきか、自分は一体どうするべきなんだ…?とすごく考えたんです。復活してからもコロナ禍の影響で思うように活動できなくて、僕は何をやっているんだろう?って、自分に自信がなくなった時があったんです。その気持ちを全部、この曲で表現しました。たぶん、自分と同じような悩みを抱えている人もいるんじゃないかと思って…」
――この『コンプレックス』という曲の後に『波(Feat. Nathan East)』というインスト曲が入っているのもいいですね。心が浄化されるように感じます。
「ありがとうございます。この曲に参加してくれているNathan Eastさん(※世界最高峰のベーシスト)の素晴らしいプレイをみなさんに聴いてほしかったし、僕もソングライターとして感動的なインストの曲を作りたかったんです。この曲もヒーリング系で、ちょうどアルバムの真ん中でリフレッシュできる曲があればいいなと思って作りました。この『波~(Feat. Nathan East)』から曲調も少しずつ明るくなっていくような流れになっています。『コンプレックス』で自分が抱えている悩みを全部吐き出して、『波~(Feat. Nathan East)』でちょっとスッキリして、『Breathe Again』(M-11)からは、“これからがんばろう!”っていう気持ちになれるような流れを作ろうと思いました」
――このアルバムをリリースして、ファンの方からはどのような反響を受け取っていますか?
「TikTokやインスタなどでもすごく良いコメントをいただいています。今回のツアーでやっと生で歌えることになったのですごく嬉しいし、ファンの皆さんからも、“待ってました!”っていうメッセージをたくさんいただきました。アルバムをリリースしてから1年間も空いたのは初めてなのですが、やっとライブで歌える状況になったので、とても楽しみです!」
今までカバーした曲も再アレンジして
新たなカバー曲を初披露するサプライズも
――『LOVE IS MUSIC』と題された今回のツアーはどのようなツアーになりますか?
「なかなかライブができなかったので、“音楽を楽しもう”というテーマで、“LOVE IS MUSIC”というツアータイトルになりました。ライブではアルバム『COMPLEX』の曲もたっぷり歌います。今までカバーした曲も再アレンジして歌いますし、サプライズとしてカバーしたことがない曲もライブで初披露する予定です。僕がギターを弾いている曲も多いし、バンドにはコーラスとサキソフォンが入って、ここでしか聴けない曲やパフーマンスを披露します!」
――アルバムではけっこうシンセを多用している曲もありましたが、ライブでは生音を重視したサウンドになるんでしょうか。
「『COMPLEX』というアルバムはシティポップスのイメージで作ったのですが、ライブではシンセサウンドもありつつ、生ドラムや生ベース、ギターが入った編成で演奏します。中でも『Flashback』(M-3)という曲はライブのためにリアレンジした新しいサウンドになっていて、サキソフォンが入ったフルバンドの生音ですごい盛り上がります!」
――では、ライブを楽しみにしているお客さまに向けてメッセージをお願いします!
「ホールツアーをやるのは久々ですし、初めて行く会場もあるので、どんな音になるのかすごく楽しみにしています。コロナ禍でライブに行けない日々が続いて、ずーっとライブに行きたい!と思っていた方にぴったりのライブになっていると思うので、最近の曲も昔の名曲も、僕のオリジナル曲も、“LOVE IS MUSIC”として、“音楽を楽しもう”という気持ちでお届けしますので、みなさんと一緒に楽しみましょう!」
――最後に、『COMPLEX』というメッセージ色の強いアルバムをリリースして、新たな一歩を踏み出したクリスさんが次に目指していることは?
「次のステップはまだ決まってないけど、これからまたセルフプロデュースしたアルバムを作りたいし、カバーシリーズもセルフプロデュースでやってみたいですね。そこからまた新しいサウンドができたらいいなと思っています。『COMPLEX』では、自分の弱いところを見つめ直して、今までできなかったことや、挑戦するのが怖いなと思っていたことにもチャレンジしました。まだ発表できないこともあるんだけど、みなさん、これからの新しいクリス・ハートを見ていてください!」
Text by エイミー野中
(2022年6月20日更新)
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