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自らの過去も引き連れ鳴らすTHE BACK HORNからの希望のギフト
名演連発の予感漂う新作『アントロギア』ツアー真っただ中に語る!
山田将司(vo)インタビュー
「ここでくたばっていられないという気持ちになれた」 自らの過去も引き連れ鳴らすTHE BACK HORNからの希望のギフト 名演連発の予感漂う新作『アントロギア』ツアー真っただ中に語る! 山田将司(vo)インタビュー
前作『カルペ・ディエム』(’19)のリリースツアーは山田将司(vo)の喉の不調を受け中止に。その振替公演もコロナ禍により断念するなど、20年を越えるキャリアで過去最大の危機を迎えていたTHE BACK HORNに再び光が差したのは、’20年5月の緊急事態宣言直後。「コロナ禍でお客さんや知り合いにもなかなか会えなくなってしまった気持ちも、自分にポリープができてステージに立てるかどうか分からない気持ちも全部入れた曲」と山田が吐露した『瑠璃色のキャンバス』が、共に生きてきたオーディエンスに、そしてTHE BACK HORNのハートに火をつける。“魂の歌を歌おう 僕らの場所で”と締めくくられた同曲を復活ののろしに掲げ、無観客配信ライブや3本の全国ツアー、『希望を鳴らせ』『ヒガンバナ』『ユートピア』『疾風怒濤』といった怒涛の先行配信を経て、この春にはついに13thアルバム『アントロギア』をリリース。不穏な時代にみずみずしくも自由に音を奏で、サルサやジャズ、カントリーなど多彩なジャンルにも挑戦した意欲作に仕上がった。そんな最新作を引っ提げ、現在は『THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」〜アントロギア〜』を展開中のTHE BACK HORNを代表し山田将司が語ってくれたインタビューでは、何度も“うれしい”という言葉が顔をのぞかせ、積み重ねてきた時間と絆がこのバンドを前進させていることを思い知る。そう、いつだって、そして今こそ、THE BACK HORNの音楽が必要だ――!
「アハハ!(笑) 一回、メキシコに旅行に行ったときに覚えて、そこからよく家でも作ってますね。大好きで結構食べてます。食べる料理の国の音楽をかけながら食事するブームが自分の中にあって、それこそトルティーヤを食べてるときにサルサをかけてたんですよ。それを聴きながら、こういう曲調がTHE BACK HORNにもあったらいいなと一人で作り始めた曲が『深海魚』で。アルバムを作ろうと決めた段階でもうできていた曲で、他にも『ネバーエンディングストーリー』(M-6)と『夢路』(M-7)が最初にあって、それ以外の曲をどんどん作っていった感じですね」
――それは年を重ねたからこそ得た感覚と景色で、THE BACK HORNが続いてきたからこその財産ですね。
「そうですね。同時に、この期間に感じたことも深みという意味では無駄ではないですよね。そう考えたら絶対に前には進んでるし、歌を歌うときに向き合っていれば自然と出てしまう、自分の過去も全部引き連れて歌いたいと今は思っているので。そこをお客さんもちゃんと受け取り続けてくれてるから、THE BACK HORNにリアリティを感じてくれてるのかなと思って。その信頼は感じますね」
「栄純がストリングスを自分でサンプリングしたものを持ってきたのは初めてだったけど、THE BACK HORNの世界観にすごく合うなと思いました。元々THE BACK HORNにはちょっとイカれた曲とか変態っぽい曲もあるし(笑)、この曲は深さも暗さもどっぷりあるので合うねって」
何が起こるか分からない将来への不安があると同時に
どんないいことが起きるか分からない気持ちは持っていいはずだから
――去年、a flood of circleの『GIFT ROCKS』('21)にTHE BACK HORNが『星屑のレコード』を楽曲提供したじゃないですか? そのインタビューでも、“THE BACK HORN自体もやらないようなジャジーな曲をフラッドに振ってきたぞ!”みたいな話を佐々木亮介(vo&g)くんとして(笑)。そうしたら今回の『戯言』(M-4)ではTHE BACK HORN自らそれをやってたから、あれは壮大な布石だったのかと。
――それもあって、今作は『深海魚』から『戯言』の流れが最もインパクトがありましたね。4人がここにきて豊かに音楽で遊べている感じがするし、山田さんも“何をやってもTHE BACK HORNになる安心感”を感じてるみたいで。
「それはありますね。あと、自分が感じる、“これはTHE BACK HORNっぽいな”をクリアしたらみんなに聴かせるようにしているので、去年は3本のワンマンツアーで過去の曲たち=自分たちらしさを改めて認識しながら、“じゃあ新しいアルバムを作るならどういう曲を書くのか?”を常に考えてライブができたのは大きかったなと思いますね」
「本当に仰られた通り、一番ハードルが高かった曲ですね。『瑠璃色のキャンバス』で終われるアルバムでもあるのに、その先を描こうとなったので、最後まで作詞担当のドラムのマツ(=松田晋二)と一緒に悩み続けて…マツも“このアルバムをまとめる言葉、最後を飾るにふさわしい言葉がなかなか見つからない”と。俺も曲調が全然思い浮かばなくて、本当に最後の最後でできた曲というか。『瑠璃色のキャンバス』で見えた夜が明けていくあの景色からのグラデーションを作りたかったし、俺はU2のアルバム『The Joshua Tree』('87)の、『Where the Streets Have No Name(約束の地)』の始まり方が好きで。あのイントロはすごく長いですけど、あれくらい何かが始まるワクワク感が欲しいなと思って。『JOY』はオルガンの音色のフェードインで始まるので」
――ベースラインも含めて、淡々と、でも力強い感じはまさにですね。
「あと、命を祝福するような讃美歌のテイストも欲しくて、中盤のコーラスワークとかはそれも踏まえて」
――『瑠璃色のキャンバス』も大きな愛の詰まった曲ですけど、そこにさらに愛を重ねてきた圧巻のエンディングだと思いました。『瑠璃色のキャンバス』のラスト一行、“魂の歌を歌おう 僕らの場所で”も相当なキラーワードですけど、『JOY』の最後にしてアルバム全体を締めくくる、“長い夜が明けたその時は/きっと会いにゆく”という言葉は…最後にこうやってTHE BACK HORNが約束してくれるのは頼もしい限りで。
「だからこそ絶望をちゃんと見つめて、そこから希望を描いたアルバム『THE BACK HORN』('07)も過去に作って…。希望の描き方にどれだけリアリティを持たせられるかは、メンバー全員がずっと意識してきたことだと思うんですよね。その後に東日本大震災もあって、コロナもあって…そのときそのときの気持ちを素直にアルバムに落とし込んできたからこそ、言葉の説得力みたいなものが生み出せてるのかなと」
――音楽だけじゃなくて行動というか、THE BACK HORNが続けてきたこと自体がメッセージだとも思うし、メンバーが誰一人も欠けずにここまで来れたのもいいですね。
「ですよね。しかも、みんなが詞曲を書いてるのもいいなと思ってますね。この4人が絡み合うからこそTHE BACK HORNが存在するということを、みんなが確認できてるから。それがTHE BACK HORNの強みであり、誇りだなと」
「もう未知数ですよ(笑)。でも、このアルバムをしっかり昇華したツアーが終わったとき、自分たちがTHE BACK HORNで何をしたがるのか? それは自分たちにも分からないんで、ちょっとワクワクしてますね。不安な世の中がまだどれだけ続くのかも分からないですけど…音楽は心の栄養を絶対にくれるはずだし、それが何よりの免疫だと思うので。心の免疫を上げにぜひ、THE BACK HORNのライブに遊びに来てください!」
ザ・バック・ホーン…写真左より、岡峰光舟(b)、菅波栄純(g)、山田将司(vo)、松田晋二(ds)。’98年結成。“KYO-MEI”をテーマに、聴く人の心を震わせる音楽を届けていくという意思を掲げ精力的に活動中。’01年、シングル『サニー』でメジャーデビュー。『FUJI ROCK FESTIVAL』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』等でのメインステージ出演をはじめ、近年のロックフェスでは欠かせないライブバンドとしての地位を確立。さらには、スペインや台湾のロックフェスへの参加を皮切りに、10数カ国で作品をリリースするなど海外にも進出。黒沢清監督映画『アカルイミライ』(’03)主題歌『未来』をはじめ、紀里谷和明監督映画『CASSHERN』(’04)挿入歌『レクイエム』、乙一原作『ZOO』(’05)主題歌『奇跡』、アニメ『機動戦士ガンダム00』(’07)主題歌『罠』、水島精二監督映画『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』(’10)主題歌『閉ざされた世界』、熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画『光の音色 -THE BACK HORN Film-』(’14)など、そのオリジナリティ溢れる楽曲の世界観から映像作品やクリエイターとのコラボレーションも多数。’18年には結成20周年を迎え、海外公演や日本武道館公演を含む全21公演からなるアニバーサリーツアーを開催。以降も、’19年には12thアルバム『カルペ・ディエム』を、’20年には作家・住野よるとコラボレーションした小説×音楽の話題作『この気持ちもいつか忘れる』をリリース。’21年3月からはコロナ禍の影響により延期していた全国ツアー『「KYO-MEIワンマンツアー」カルペ・ディエム〜今を掴め〜』の振替公演、5月からは9thアルバム『リヴスコール』(’12)を中心に構成した全国ツアー『「KYO-MEIストリングスツアー」feat. リヴスコール』、10月からは2度目のツアー形式となるスペシャルイベント『マニアックヘブンツアー Vol.14』と3本の全国ツアーを開催。同年12月には4年5カ月ぶりとなるニューシングル『希望を鳴らせ』を、そして’22年4月13日には13thアルバム『アントロギア』をリリースした。
【広島公演】 ▼7月18日(月・祝)広島クラブクアトロ 【茨城公演】 ▼7月23日(土)水戸ライトハウス 【石川公演】 ▼7月30日(土)金沢EIGHT HALL
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ライター奥“ボウイ”昌史さんの オススメコメントはコチラ!
「全人類がコロナで人生についていろいろと考えさせられたと思いますけど、THE BACK HORNはさらに助走があったというか、ボーカリストの喉の不調という危機があって。でもやっぱり、このバンドはそんなことでは終わらなかった。何でしょうね、この信頼感は。もう真っすぐ鳴らしてくれるだけで刺さる。ちなみに取材中にも話に出たa flood of circle佐々木くんは、山田さんが着目したフラッドのロマンチストたる部分が、最新作の『伝説の夜を君と』にも生かされたと話してましたよ。今やオーディエンスのみならずミュージシャンにも影響を与えちゃうTHE BACK HORN。さらには、取材終わりに会話を録音していたiPhoneを止めたら、なぜかU2の『Songs of Innocence』(’14)が突如流れ始め、それが山田さんがメキシコ旅行中にちょうどよく聴いていたアルバムだったというミラクルも! 何気に初インタビューでしたが、思い出深い時間となりました。リリースツアーも大いに楽しみ!」