「思っていること・体験したことしか歌にできない」
この2年を生き抜いてきたからこそ紡がれた
人生の喜怒哀楽が詰まった10曲――HONEBONEインタビュー
今こそ彼らの音楽が必要なのではないだろうか。昨年初めてHONEBONEのライブを見た時に、直感でそう思った。誠実に生きていきたいと思っても、世界に、社会に起こるさまざまな事柄によって、その思いがうまく行かなくなる時だって往々にしてある。その状況を捻り潰して前に進みたい。前に進むなら楽しい方がいい。そんな人生の悲喜こもごもをストレートな言葉で叫び歌い、奏でているのがフォークデュオ・HONEBONEだ。日米ハーフのボーカル・EMILYと彼女の驚くほど伸びやかな歌声にピタリとギターで寄り添うKAWAGUCHI、ふたりが展開するライブではまるでチャキチャキとしたトーク&ソングのギター漫談のようだとも言われているのも特徴だ。そんな彼らが2月にニューアルバム『SURVIVOR』をリリースした。彼らの新作に込めた想いを、しかと届けたい。その前に…もし可能なら『SURVIVOR』に収録されている「バカとはしゃべりたくない」を聴いてからこのインタビューを読んでみてほしい。そうするとEMILYとKAWAGUCHIがどんな口調でこのインタビューに答えたのか、驚くほど容易にイメージしていただけると思う。
HONEBONEは、ライブありきで活動が続いている
――去年11月に開催された『STYLE PARK』で拝見したHONEBONEのパフォーマンスに心を掴まれまして、ライブの後すぐインタビューオファーをさせていただいていたので、実現できて光栄です。あの時のライブはどうでしたか?
KAWAGUCHI:ありがとうございます! 『STYLE PARK』はあんなに大きな会場でライブができることもなかなかないですし、いいパフォーマンスをしようと気合いが入っていました。
EMILY:なんばHatchだもんね。
――あれだけの大きなステージに2人きり、なおかつコロナ禍でさまざまな制限もある中で、できる限りお客さんに近寄っていく漫談みたいなMCとパフォーマンスは圧巻でした。
EMILY:手応えはすごくありましたね。出て行ったら拍手が起こったので、大阪のお客さんが温かいのがわかったから雰囲気作りの必要もありませんでした。
――ライブレポートでも書かせていただきましたが、個人的に心がえぐられるほど響きまして…。
EMILY:いいですね~そう言っていただけるのがうちのウリですね~。
――そうやってライブを先行して見せていただいた中で感じたことではあるのですが、HONEBONEは音源以上にライブを大事にされているのかなという印象を受けました。ライブに対する考え方を聞きたいのですが…。
EMILY:HONEBONEはライブバンドだと思っているので、音源も大事ですけど私たちの優先順位としてはライブの方が上ですね。ライブありきの活動ということがコロナ禍で露呈したというか。配信や無観客でのライブもやってきたけど、やっぱり有観客に変わるものはないと気づいて。それで去年からは、どんなにお客さんが少なくても有観客にこだわってきました。
――有観客ライブのどんな良さに気づいたのでしょう?
EMILY:空気ですね。そこにしかない圧、匂い、生ということですね。配信では得られない生ものの良さを改めて感じてしまったし、お客さんも感じたんじゃないかな。
――なるほど。HONEBONEのライブは、どんどんお客さんに話しかけながら巻き込んでいくようなスタイルが特色だと思うんですが、あの形になったのは?
EMILY:あれは、私たちが緊張しちゃうからですね。私たちが緊張したままライブを始めるとお客さんも緊張して、お互いが固いままライブが終わっちゃうんですよ。ほぐしほぐされて、ライブを始めましょうっていう。
――芸人さんの前説的ですね。
KAWAGUCHI:ホントそんな感じです。
EMILY:ミュージシャンならかっこいいSEをかけて、黙って出て歌い始めるべきなんでしょうけど、それをやることを考えたら無理!ってなっちゃいます。
KAWAGUCHI:昔はそういうやり方でライブを始めていたんですけど、結果的に今のスタイルに辿り着きました。ライブはお互いリラックスしたうえで、お客さんに反応をもらってこそ楽しいし。
――反応がなくて良ければ配信でもいいですしね。
EMILY:そうそう。あと最近はライブで泣いている人がいたりするとイジりますね。
――HONEBONEのライブで泣く人は本当に多いでしょうねぇ。
EMILY:はい。だからこそ泣いている人は本当に大事にしたいんです。「泣いてんの? いいよ! 泣きなよ!」って。
KAWAGUCHI:「泣いてる人、写真撮らせて!」って。
――それ、OKもらえます?
KAWAGUCHI:大抵OKですね。
――すごい(笑)。私はなんばHatchでのライブを拝見して、すごく「ミナミのスナックでライブしてみて欲しい」っていう思いになりました。人生の喜怒哀楽を歌っているし、おふたりのMCもライブハウス以上に近い空間で見てみたい。それにスナックのドアを開けて「どーもどーも! 歌います」っておふたりが入ってくるのが想像できるというか。
KAWAGUCHI:へー! 面白いですね。
――HONEBONEの本拠地である高円寺でそういったライブは?
EMILY:いや、ないですね~。私、ノリ良さそうに見えて、ノリ悪いんですよ。すごく明るそうに見えるだろうし、誰とでも友達になれそうって思われがちで「一緒に飲みに行きたい」とか「友達になってほしい」とかもよく言われます。でも実は私、狭く深くなんですよね。
KAWAGUCHI:EMILY、知り合いは多いけど友達が少ないタイプで(笑)。人間関係の距離の取り方が下手くそなので、一歩間違うとお客さん全員と超仲良くなっちゃいそう。リミッターが外れて、お客さん全員親友! みたいな。
EMILY:そうすると、仲良くなりすぎて言っちゃいけないことも言うようになっちゃうので、そこはちゃんと線を引いています。自分の住所とかもうっかり伝えちゃいそう! 私と真逆でKAWAGUCHIはお客さんのこと大好きですよ。
KAWAGUCHI:そうですね、大好きです。物販でお客さんとじっくり話したりしますね。お客さんが伝えてくれたライブの感想なんかを、僕がEMILYに伝えています。
この2年をサバイブしたからこそ生まれた約20曲
――2月にニューアルバム『SURVIVOR』がリリースされまして、手元に届いている反応はどんな感じですか?
KAWAGUCHI:反応・手応え共に過去一番ありますし、自信のあるアルバムができました。お客さんの感想も過去一番いいですね。意図していたものが伝わった気がしてものすごく嬉しいです。
――前のアルバムから2年ほど空いていて、その間コロナ禍になったり、ライブができずに配信になったり、EMILYさんは映画に主演したり、HONEBONEがその映画の音楽も手がけたりいろんなことがあったと思うんです。その数々の出来事はニューアルバム制作に影響を与えたましたか?
KAWAGUCHI:もう、影響しかなかったですね。単純に曲を作る時間がすごく増えたので、前作までよりもちゃんと考えて作ることができました。これまでは自分たちで発売日を設定して、そこに向けて制作を追い込んでいくスタイルでした。10曲収録するなら10曲ギリギリしか作れなかった。でも今回はいつ発売するかを決めないで、とにかく曲を作れるだけ作って…今回は20曲強作れたんですよ。その中から選んで収録したので、そもそも作り方が違いました。
――それってスタートは「とりあえず作ってみようか」なのか、「こんなテーマで曲を作っていってみようか」なのか、どういう始まりだったのでしょうか。
KAWAGUCHI:あいみょんさんが2週間に1回曲を持ってきてチームで会議するっていう噂を耳にしたんですよ。彼女がやっているのに、僕らがサボってるのはおかしいだろ! って、僕らも1週間に1回曲を持ち寄っての会議を始めたんです。
EMILY:何かの番組で見たのかな。それを聞いてハッとして、マネしよう! って。
――その新しいスタイルを採用してみてどうでしたか?
KAWAGUCHI:なんか、自由でしたね。「アルバムに収録するからこうだ」みたいな固定観念がない曲がどんどんできました。
――今だからこそ歌いたい曲をどんどん作れた?
EMILY:そうですね。伸び伸びと作れたかな。
KAWAGUCHI:僕達はインディーズなので発売日も自分たちで自由に決められるのに、なんで今まで首を締めるような作り方をしていたんだろうって思いますね。
EMILY:バカだったね(笑)。
KAWAGUCHI:新しいやり方を手に入れなければ、今もヒーヒー言って作っていたと思います。
――そのやり方だったからこそ生まれた今回のアルバムに収録されたという曲はありますか?
EMILY:「なんにもない一日」かな?
KAWAGUCHI:うん、そうだね。
EMILY:新しいやり方で生まれたっていうのはもちろん、この曲のテーマはコロナ禍の1日だし、今じゃないと生まれなかったし採用されなかった曲かな。実は一度ライブで披露してみたんです。お客さんに新曲だけを披露する会っていうのをやって「どれかをアルバムに入れようと思ってる」って話したら、この曲がすごく人気だったんです。私たちとしてはあまり収録するつもりがなかったけど、お客さんの声を受けて入れようかと。そういう選び方もしたりして、すごく自由スタイルで今回はアルバムを作ったんです。そういう意味でも新しいやり方だったかな。
――発売日を決めていなかったからこそ、そういうやり方もできた。
KAWAGUCHI:うん、それはすごくあると思います。
――いただいた資料では「バカとはしゃべりたくない」も収録予定がなかったって…。
KAWAGUCHI:それは収録予定どころか…元々捨て曲として作りました。
EMILY:ふざけてたんだよね。
KAWAGUCHI:そしたらお客さんの評判が良くて。それこそ発売日が決まっていたら、あの曲は作りもしなかったかもしれないですね。「なんにもない一日」と「バカとはしゃべりたくない」は僕らの自信がなかった曲(笑)。
――テーマなく作りたい曲を作った中から10曲を選抜して、そこに『SURVIVOR』というタイトルがついたわけですけど、そのタイトルに担わせたかったことっていうのは?
KAWAGUCHI:ズバリ、コロナ禍を生き抜いてきたっていうことですね。この2年間、自分たちは自分たちのやり方で生き抜いてきたし、これを聴いてくれる人もその人なりのやり方で生き抜いたからこそこの作品に出会ってくれたわけです。本当は僕らとあなたたちという意味で『SURVIVORS』って複数形にしたかったんですけど、語感を重視して『SURVIVOR』に落ち着きました。…ここに辿り着くまでに僕らの周りのバンドがどんどん辞めていった時期があったんです。コロナが理由っていうのが大きかったと思うんですけど、運営も大変だしライブバンドはライブができなくて…っていうこともたくさん聞いて、知り合いがどんどん音楽を辞めていく2年間でした。でも僕らはなんとか生き抜いてきたよ! って。
――コロナ禍をサバイブしながら歌いたい曲・作りたい曲を作る過程って、その時の気分をすごく色濃く反映するのでは? と思うのですが、制作期間はそれぞれどういう気分でどんな毎日を過ごされていました?
KAWAGUCHI:制作期間が長かったので、本当にその時々で気分は変わったかな。それこそコロナの初期は、ふたりともすごく反骨精神に満ち溢れていましたね。「配信でバッチリやっていくでしょ!」みたいな感じで。
EMILY:しゃかりきになっていました。
KAWAGUCHI:2021年で息切れして、また夏あたりから盛り返すっていう。
――制作期間が長いだけにアップダウンしていたというのがなるほど!と思えるほど、『SURVIVOR』というアルバムはすごく抑揚のあるアルバムだなと思います。お互いの作ってきた曲で「今これが出てきたか!」みたいに驚いた曲はありましたか?
KAWAGUCHI:あんまり驚きはなかったですね。EMILYとは普段からめちゃめちゃ話をしているんです。全てのモードを共有しているので、話した内容がそのまま曲になってくる。だからこそ、曲を聴いた時に「こんなこと考えてたの?」ということはないですね。
EMILY:私は結構びっくりすることがあって、「ロンリーボーイ」っていう曲はKAWAGUCHIが主体で作ったんですけど、「こいつこんな感じで仕上げてきたわ~」って。この曲はKAWAGUCHIも知っている私の親友についての曲なんです。
――歌詞に出てくる「当の本人」っていうのは、EMILYさんの親友を指しているんですね!
EMILY:そうそう! KAWAGUCHIも仲良いから、そうか~そんなふうに思ってたのね~引導を渡すのね~、あぁ、この問題に取り掛かろうとしているのねって(笑)。
KAWAGUCHI:曖昧なままだった関係を言葉にしてしまったっていう。
――ちなみにおふたりとも、思っていることや体験していること以外は歌詞にならない感じですか?
KAWAGUCHI:うん、そうですね。
EMILY:はい、絶対に出ちゃいます。
――だからこそ4曲目の「捨てられない花」は、昨年のライブでも「聴き手がどう感じるだろうか」とMCでもおっしゃるほど、収録曲の中でもかなり大切なテーマ(プロレスラーの木村花さんがSNS等での誹謗中傷を受けて自死をした件)を扱われていると思うんです。この曲に取り組もうと思われたのは…。
EMILY:木村花さんの事件はかなりショッキングな事件でした。そしてものすごくあの事件が怖かった。その日にKAWAGUCHIに「怖くてたまらない」という話をしていて、あの頃からコロナ禍での芸能人の方の自死も目立つようになって、自分もそうでしたけど…家にこもっていたこともあって孤独を感じやすい時期でもありました。私も弱い人間だからSNSを見ていると嫌な言葉を向けられているという時もあって、逃げられないテーマではあると思っていました。HONEBONEとして一度は歌わないといけないことだと思って形にしました。
――この曲がどうして作られたのかとかおふたりの真意をこうやってインタビューで私たちがしっかりと取り上げることで、HONEBONEの想いがもっと広がるのでは? ということをライブのMCを聞いて思っていました。より真意を伝えられるというか。
KAWAGUCHI:あぁ、それはすごく嬉しいですね。すごく奇跡的というか運命的なことがあって、たまたま東京のライブで「捨てられない花」をやった後、女性が話しかけにきてくれました。実はその方は木村花さんの幼馴染みだったんです。「時間が経つと彼女のことを忘れていく人が多いけれど、こうして歌ってくれることが嬉しい。歌い続けてください」って言ってもらって。実はこの曲を作ってライブでやることが怖くなった時期もありました。僕らはご本人に面識があるわけでもなくて、勝手にこんなことしていいのかな…って思っていましたが、お声をいただいて僕らも救われた。歌っていく意味があると思えました。
――特にHONEBONEは本音を曝け出すし、心の底に沈めたいことも言葉にすることが良さだと思うんです。でもその一方で時代的に「本音を晒す」ってすごく大変ではないですか? 今は正しいことを言っても叩かれてしまう時代でもありますし…。発信すること、言葉を使うことの難しさもあると思うんですが。
EMILY:かなり迷いますね。曲はまだいいですけど、Twitterでの発信に関してはすごく言葉を選んでいます。本当はもう少し軽い気持ちでやりたいけど、誰もがそういう気持ちでやっていると大変なことになると思うし。だからこそ、考えるべきでしょうね。それと、HONEBONEでいつも気をつけなくちゃいけないと思っていることが言葉選びです。過去の失敗でもあるんですけど、悪口になっちゃうだけの曲…実は経験あるんですよ。とにかく自分が未熟で、聴く人に不快な思いをさせてしまった。それは自分の言葉のチョイスミスやセンスのなさ、うまく言えなくて悪口になってしまいました。誰かが聞いた時に「私には言えないけど、代わりに言ってくれてスカッとした」くらいで留めておかないと、物書きとしてどうなの? って。言葉選びは相当難しいといつも思っています。
――それって、作品として世に放ってみないと自分では気づけないこともありますよね。
EMILY・KAWAGUCHI:そうですね、本当に。
――でも今回の『SURVIVOR』のセルフライナーノーツではEMILYさんが「私、大人になった」ってちょこちょこ書いていたのがすごく印象的でした。
KAWAGUCHI:あははははは!
EMILY:書きましたねぇ。
KAWAGUCHI:さっきの話じゃないけど、過去の失敗があったからこそだと思います。曲を作ったことによって人を傷つけたことがあって、ちょっとああいうことをするのは意味がないしやめようって気づいた上で曲作りができたのは成長かなと思いますね。『SURVIVOR』も、もう少しして「この曲はちょっとどうかと思う」っていう反応が出てきたらきちんと次に生かしたいと思います。
――正直すぎる歌詞を書くがゆえに、トライ&エラーで成長していくしかない。
EMILY:うん、そうだと思います。出した時はいいんですよ。「尖ってる」みたいになってその場はやり過ごせるんですけど、少し時間が経ってみるとよくなかったかなって思ったりすることもあります。想像の幅を広げて言葉を選んでいきたいですね。
2022年に生まれたHONEBONEの最高傑作
――今回は20曲近くを作り上げてそこから10曲選抜されたと伺いましたが、選抜基準はどういうものだったんでしょうか。
KAWAGUCHI:単純にいい曲…20曲をランキングで並べて、上から10曲を採用したっていう感じですね。
――中でも『SURVIVOR』の核になった曲はありますか?
KAWAGUCHI:7曲目の「メロディ」かな。アルバムの中で「リスタート」と「チェイス」は、映画の曲だったりゲーム実況者の方に提供した曲で、外の力もプラスして広げていただいたので核になるかなと思っていたんですけど、その2曲はアルバムを作る前にはリリースされていたので実際には核にはならず…。お客さんが初めてアルバムを聴いた時に「いい曲が入ってるね」って思ってもらえる曲が欲しいなとは思っていました。その頃に「メロディ」が自分たちにとって強めの曲として出来上がって、この曲があるならいけるなって思えましたね。いいアルバムになるって。
――コロナ禍ならではの喪失感をテーマにした「メロディ」が核っていうのは、納得と言えば納得、意外と言えば意外です。
KAWAGUCHI:ふふふ、そうですかね?
――私はこれから初めてHONEBONEの音楽に触れる人に聴いてもらいたいと思ったのは「バカとはしゃべりたくない」でした。
EMILY:おー!
――ライブの感じもリアルに伝わるし、HONOBONEらしさというか世界観がバチっと見えてくる感じで。
KAWAGUCHI:嬉しいですね。
――でもこの曲がラストに配されているのは意外でした。HONEBONEらしすぎるから1曲目でもと。
KAWAGUCHI:実はおっしゃる通り「バカとはしゃべりたくない」の曲順はかなり迷って。この曲は、僕たちのいじわる兼照れ隠しの曲なんです。「リスタート」は壮大なメロディの映画のエンディングテーマだったので最後の方に置きたいとは思っていたけど、ちょっとこれで終わるのは僕たちらしくないかもなあっていうことで、その後に「バカとはしゃべりたくない」を置いて締める形になりました。
――確かに「リスタート」で終わると、すごくロマンチックな余韻が残るというか…。
KAWAGUCHI:そうそうそう!
EMILY:ちょっと「嘘ぴょーん!」みたいな終わりにしたかったんだよね。
KAWAGUCHI:「バカとはしゃべりたくない」は本当に捨て曲として作ったのに、お客さんの反応が一番良かったんですよ。
――言っていいのかわからないけど、タイトルはもちろん歌詞を聴いて「マジそれな!」って思いました。歌ってくれてありがとう! みたいな。
EMILY:それ、聴いた人みんな言ってますね~。
KAWAGUCHI:実は周りには「そんなこと言うもんじゃありません」ってすこーしだけ怒られました(笑)。
――でも、みんなが心のどこかで思っていることをよくぞ言葉にしてくれました! 感があります。
EMILY:そんなことでよかったんだね~。
KAWAGUCHI:ある意味「みんなが言いたくても言えないこと」シリーズで言うと、2016年にリリースした「生きるの疲れた」の第二弾って感じです。タイトル以上のことは何も言ってない曲ですけどね。
EMILY:出オチ?
――(笑)! いや、でも出オチ以上に歌詞の内容も素晴らしかったです、本当に。実際にアルバムが完成して、どうですか?
EMILY:私は過去イチの最高傑作ができたなって思ってますよ!
――これまでのアルバムと違う点を言葉にできますか?
EMILY:圧倒的に歌のクオリティが上がったので、自信が出ました。実はポリープを手術してボイストレーニングを変えたので、物理的に声が変わったんです。今までは自分たちのCDは大嫌いで聴かなかったんです。出したい音も出せないし、レコーディングが苦手で。でも今回は自分の出したい理想の声が録音できました。今まで「HONEBONEってライブいいのにCD残念だよね」って言われていたんですよ。それは自分でもわかっていて…。でも今回はCDとライブが同等になるほどの作品ができたので、すごく自信になりました。
KAWAGUCHI:ライブとCDのクオリティが一致しないことがここ7~8年の課題でした。どうやってあの感じを出そう? と試行錯誤してきたことが、今回はクリアできたかな。
――「CD残念だよね」はライブのクオリティの高さの証明でもありますよね。
KAWAGUCHI:もちろん褒め言葉として言われてきたんですけど、僕らとしては「じゃあ音源は?」って。でも今回やっと納得できるものができましたね。
――『SURVIVOR』から入った人がHONEBONEのライブに来て、おふたりの漫談みたいなライブを見たら、それはそれで驚くでしょうねえ…。
EMILY:でも「バカとはしゃべりたくない」の最後の最後まで聴いてもらえたら、ライブの感じもわかってもらえると思うんです。スパイスで入れておいたしゃべりの部分があるので。
KAWAGUCHI:そもそも入れるつもりがなかった「バカとはしゃべりたくない」を収録すると決まった時点で、遊びの部分を入れた方がいいんじゃない? って。
EMILY:うっかりバンドサウンドが続いたから、しゃべりを入れておいた方がライブに来る人がびっくりしなくていいよねって。
KAWAGUCHI:あと、アウトロ考えるのが面倒だったのもあるし!
――そんなHONEBONEは、春にツアーがあるんですよね?
KAWAGUCHI:ツアーは関西からスタートします。半年ぐらいかけて、中国、北海道、九州、東北と回っていく予定です。『SURVIVOR』の曲は全てやろうかなと。
EMILY:全員泣かせるつもりでやります!
――「バカとはしゃべりたくない」聴きに行きたいですね~。
KAWAGUCHI:すでに何度かライブでやっているんですけど、かなり進化を遂げているので、「バカとはしゃべりたくない」は乞うご期待です。ぜひ、泣くつもりでライブに来てください!
取材・文/桃井麻依子
(2022年3月16日更新)
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