「ライブに来て少しの変化でも感じてくれたら嬉しい。 気分転換するような感覚で楽しんでもらえたら…」 2022年第一弾となるデジタルシングル『アルペジオ』をリリースし ツアーがスタート! Homecomingsインタビュー&動画コメント
京都の大学で出会ったメンバーで結成され、2019年からは東京を拠点に活動している4人組のバンド、Homecomings。時代を超えてリスナーに愛されるメロディセンスやギターサウンド、気負わず繊細な優しさが滲み出すような歌声も心地よくずっと聴いていたくなる。そんなタイムレスな音楽性に加えて、実は社会派のメッセージ性がある歌詞も聞き逃せない。2022年は1月14日に昨春のメジャーデビューアルバム『Moving Days』以来となるニューデジタルシングル『アルペジオ』をリリース。そして、2月22日から待望の全国ツアーが展開されている。今回は3月20日に迫る大阪公演を前に、ボーカルの畳野彩加とギターの福富優樹にインタビュー。ライブのことはもちろん、根っこにはパンクがあるというバンドの基本姿勢まで踏み込んで語ってくれた。
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今年は新しい配信シングルを季節ごとに出していく
――1月に最新曲の『アルペジオ』(※Amazonプライム独占配信『失恋めし』主題歌)がリリースされましたが、バンドの新曲として配信限定で発表するのは初めてなんですね。
福富優樹(g) 「はい。今年は曲がいっぱいできていくような感じがしてたんで。配信シングルを季節ごとに出していくというのを一つの楽しみとしてやってみようと思っています。それが、Homecomingsの今年の活動の軸みたいになって、来年の今頃、アルバムが出せたらいいなと思ってます」
――Homecomingsの曲は季節の変わり目や変化に気づかせてくれるような繊細な感性が感じられます。
福富 「そうですね。夏真っ盛りというより、夏から秋に変わっていって、ちょっと涼しくなっていく…、あの夏が終わる瞬間の寂しさとか、春になっていくちょっとふわふわした気持ちとか、そういうのに合ってるというか…、自分たちがそういうのに敏感というのもあるんですけどね。間の季節に合ってるような気はしますね…。それが畳野さんの声にも合っている気がしてて…。ちょっと不思議な声だと思う」
――畳野さんはいつもどういう気持ちで歌っていますか?
畳野彩加(vo&g) 「曲作りの時はいつも福富くんが歌詞を書いて、私が曲を作るっていう順番なので、軸となる歌詞の世界観をもとにして、歌い方はそこに寄せて、優しい歌い方だったり、暖かくなった時期に合わせた曲だったらもう少し明るめの印象にするとか、曲によって二人で話してやっている感じですね」
――気負い過ぎてない優しい歌声が心地良いです。
畳野 「多分、自分が好きなアーティストがそういう人が多いからかなと思うんですけど…。昔から好きなスピッツだったり、くるりだったり、GOING UNDER GROUNDだったり…、音楽を始めたぐらいの頃から聞いてたバンドの曲を今でもすごく聴くので。やっぱりそういうところからの影響が体にすごく染み着いている気がして…」
――なるほどね。スピッツというのが一番ピンときました!
福富 「僕も本当にスピッツ・チルドレンっていうか…、僕らは91年生まれなのでスピッツのデビュー年と同じなんです。だから周年も同じなので嬉しいですね(笑)。スピッツを聴いて音楽というものに出会ったという感じなんです」
暮らしを歌うことで社会が浮かび上がる
――ところで、バンド名にちなんで、Homecomingsにとってのホームとは何なのか? お聞きしたいなと。
福富 「自分にとってのホームっていうのは、“町”って感じ。自分が育ったところ、住んでたところ、今住んでるところもどっちもすごいホームっていう感覚がありますね。僕が京都で住んでた町もホームだし、石川に帰った時もホームに帰ってきたなと思います」
畳野 「私もホームって、人でもないし家でもないけど…、実はあんまり意識したことなかったなぁ…。Homecomingsって元々、好きなバンドの曲名からとってるので。The Teenagersっていうパリのバンドの『Hpmecoming』っていう曲がすごい好きで。それが由来なので…」
――そうなんですね。
福富 「僕はHomecomingsっていう言葉と自分たちが“町を歌ってる”っていう感覚は自分の中ではリンクしてる。Homecomingsっていうバンド名で良かったなって、ずーっと思ってますね」
――“町を歌ってる”というのは理由があるんですか?
福富 「町の中には暮らしが含まれているような気がしてて…。暮らしを歌うことで社会が浮かび上がるという気がしてます。“個人的なことが政治的なこと”っていうのが自分の中ですごくあるので。暮らしをちょっと変えることとか、暮らしの中で自分が意識を変えることとか。そういうところから始めたいみたいなのがすごいあるんです。隣の人に優しくすることから始めるみたいなこととか…、そういうのが結果として大きな流れが変わるきっかけになるような気がしてるんです」
――2月22日からHomecomings TOUR 2022 『Somewhere In Your Kitchen Table』が開催されていますが、このツアータイトルも気になります。
福富 「僕らのツアータイトルとかイベントタイトルはいつも予告編みたいになってて。前のアルバム『Moving Days』に入ってる『Blanket Town Blues』とか『Pet Milk』という曲とかは、リリース以前に企画したライブの名前にしていたタイトルなんです。だからこういうツアーの名前とかが次のアルバムの曲名になってたりするので…、それはお楽しみにということで(笑)」
――そうなんですね。実はちょっと曲名っぽいなって思ってたんです(笑)。それと、アルバム『Moving Days』の中に『Tiny Kitchen』という曲があって、そこにも“Kitchen”というワードが出てきますが。何か関連性があるのかなって?
福富 「それはちょっと…秘密ということで(微笑)」
――えー、意味深ですね。ちなみに、その『Tiny Kitchen』の中で歌っている、「わたしと同じだ 名前のない料理」とか「わたしと同じだ 名前のない気持ち」「~名前のない一日」というフレーズが心に残っているのですが。
福富 「ああ…、それは例えばこういうコロナ禍の中で、なんもしない日とかあるじゃないですか…? 僕はそれで落ち込んだりすることがあったんですけど。なんもせんかっても、すぐ夜になるなぁ…みたいなことがあって…。それで、特に何もなかった一日のことを、“名前のない一日”みたいな感覚で曲を書いているんですけど。それでも別にいいんじゃないかな…みたいな気持ちがあったりして…。あと、分類していくこと、細分化していくことにちょっと違和感があって…。別に名前をつけなくてもいいこともいっぱいあるなぁみたいなことは、結構一貫して思ってるところですね」
――コロナ禍で先が見えなくなって、自分はどうなってしまうんだろう?みたいに不安な気持ちが続いている時に、“何もない一日があってもいい”と言われると、ちょっとほっとします。話しは戻りますが『アルペジオ』の歌詞に、“いつものように物語のかけら 集めてそっとうたにする”と歌っていますが、こういうところにも歌に対する姿勢が感じられます。
福富 「『アルペジオ』は『失恋めし』というドラマの曲で、あのドラマはご飯屋さんで誰かが話してることを聞いて漫画にするという作品なんですけど。自分も暮らしの中で見つけた何かを集めて曲にしてるみたいな感覚があって…。そこはドラマの内容とリンクさせて書いたって感じですね」
――なるほどね。物語とリンクさせて福富さん自身のことも歌に込めているんですね。
福富 「そうですね。『アルペジオ』という曲はちょうど去年の秋頃に書いてた曲で。(4月に緊急事態宣言が初めて発令された時期から数ヶ月経って)動き始めてるところもあれば、止まってるところもあるっていう状況になってて…。逆にその方がしんどいこともあるじゃないですか。まわりで動いてるものもあるけど、自分は止まってるみたいな時って…。それで、一旦立ち止まってるところを描いた曲って感じですね。“名前がない一日でもいい”というのもそういうこととつながっています」
――畳野さんとはそういうお話しをよくしているんですか?
福富 「メンバー4人ともそういう話はよくするんで、それを共有できてるのはバンドとしてすごい大きいかなと。僕だけがそういうことを思ってて、それを歌わせている…というのではないんで。みんなでそういう話を日々してるので。ちゃんと伝わってるなと思うし、そこは信頼しています」
新旧織り交ぜてバランスよく、
なおかつ自分たちがやりたい曲をやる
――実際に、今回のツアーではどんな手応えを感じていますか?(このインタビュー時点では京都までの4公演を終えている)
福富 「ワンマンのツアーというのが本当に久しぶりなので、結構久しぶりに行く街が多くて。今まで以上に“来てくれてありがとう!”みたいな、お客さんの思い(待望感)をすごく感じてます”!前は物販にも自分たちが出ていって直接ファンの方と話しをしたりすることもあったんですけど、今はそれができないし、お客さんはマスクしてて声も出せないけど。それでも今回のツアーが一番、待ってました!っていう感じを肌で感じる気がしてて。ステージから見るフロアに不思議な熱量がありますね。拍手の音とかにすごい感じます!特にツアー序盤で僕の地元である石川とバンドの地元の京都が続いてたので、余計にそういうのを感じましたね」
畳野 「うん。(2019年の終わり頃に上京して)今、東京に住んでいるので、京都を離れてから京都でのワンマン自体が初めてだったので。いっつもやってた場所なのに、すごく新鮮な気持ちでできました。京都のバンドとしてちゃんと認められたような、“帰ってきてくれている”っていうような雰囲気がお客さんからすごく感じられました…」
――同じ関西ですが、大阪はどんな印象ですか?
畳野 「京都と大阪は同じ関西とはいえ、やっぱちょっと違う感じがします。良い意味でお客さんの雰囲気がぜんぜん違うので、それが面白いですね」
――今回のツアーではどのように選曲にしているんですか。
福富 「今回はアルバムのリリースツアーではないので、新旧(の曲を)織り交ぜてやってみようと思ってます。バランスよくいろんな曲をやって、なおかつ自分たちがやりたい曲をやろうと思って。ちゃんとツボは押さえつつ、ちょっと意外な曲もやっているっていうツアーですね。だから、自分がファンやったら、ちょっと嬉しいなと思うような(笑)。スピッツのライブを観に行った時に、(ライブでやるのはレアな)ちょっと変な曲とか、昔のアルバムの曲をやってくれるのが嬉しいタイプなんで(笑)。そういうセトリに近いかもしれないですね。10年ぐらい前の曲を唐突にやってみたり、と思ったら新曲をやったりして…。とはいえ、流れがちゃんとあるので。ここまでやってきてすごい良いセットリストだと思います」
――では最後に、ライブに向けてお客さんに伝えたいことがあればお願いします!
福富 「今回は、新旧の曲をやるし、もしかしたら大阪で初めてやる曲もあるかもしれないので、お楽しみに! まだライブで直接話したりはできないんですけど、それでも何か伝わるものがあればいいなと思っているので、ぜひ来てほしいです! でも第一にみんなに健康でいてほしいので、どうか無理なさらずにという思いもあります」
畳野 「まだコロナ禍が続いている状況で、最近のテレビやニュースを見てても気持ち的に明るくなれない方が多かったりするかもしれませんが。そういう気持ちのまま生活してると、あまりよくない方向に行ってしまう可能性もなきにしもあらずなので。ライブに来てもらって少しでも前向きな気持ちになってくれたいいなと思って歌っています。無理にそうすることもないんですけど…、ライブに来て少しの変化でも感じてくれたら嬉しいなと思っているので、気分転換しにくるような感覚で楽しんでもらえたらいいなって思います」
Text by エイミー野中
(2022年3月17日更新)
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