「ライブでもらってるパワーって、とんでもないものだったんだ」 『THE VOLCANOES -EP-』に込めた想いと、 ライブへのエネルギー。BRADIOインタビュー
「日常に彩りを加えるエンターテインメント」をコンセプトに結成された3人組ロックバンド・BRADIOが2月16日、NEW EP『THE VOLCANOES -EP-』をリリースした。BRADIOといえば、自他共に認めるライブバンド。最高にファンキーでソウルフルな楽曲と、魂と情熱(そして愛嬌)のこもったパワフルなパフォーマンスは、一度触れたら虜になってしまう。コロナ禍でライブができなくなったことは彼らを苦しめたが、それによりライブがかけがえのないものだと実感したという。昨年4月に発表したメジャー2nd フルアルバム『Joyful Style』を経た今作は、2021年7月、11月、12月、そして2022年1月1日に配信リリースしたシングル4曲に、新曲2曲を加えた1枚。ロックあり、ファンクあり、ソウルあり、ポップスありと、ジャンルをクロスオーバーさせたBRADIOらしい6曲が詰まっている。今作を作り「ライブをやりたい気持ちに拍車がかかった」とインタビューで語った真行寺貴秋(vo)。彼の言葉からライブと楽曲への熱意を感じてほしい。
自分たちの想いがホットなうちに曲を出したかった
――前作のアルバム『Joyful Style』リリース後、7月に『夏のエンジェル』(M-5)、11月に『トロフィー』(M-4)、12月に『Yours』(M-6)、そして2022年元日に『瞬き羽ばたき、故に繋がり』(M-2)と、配信シングルを4曲出されています。今作のEPが出るまでの流れは?
「『Joyful Style』を去年の春に出して、次は配信をしていきたいなという流れがありました。配信だと、自分たちが今思ってること、バンドがやりたいサウンドやトレンドをタイムリーに出せるので。アルバムはアルバムでじっくり作り込める良さがあるんですけど、今回は自分たちの想いが熱いうちに曲を届けたかったので、4曲出させてもらいました」
――ではストックというよりは、その時々で作った曲を素早くリリースされた?
「ストックだった曲もあります。でも歌詞は書きかえていますし、新規に作った曲もあるのでごちゃまぜですけど、新規の方が多いですね。最初に『夏のエンジェル』を出したことも、今作の1つのきっかけだったのかなと思います」
――というのは?
「『夏のエンジェル』は結構昔からあった曲で。タイミングを見計らってずっと出せないまま来てたんですけど、『Joyful Style』を出した後、コロナ禍というのもあって、“今年の夏こそちょっとハッピーにいきたいな”と思って、季節的にもタイミングが良かったので、じゃあ配信で出そうよとなりました」
――今作のEPを見据えた配信だったんですか?
「当初はあまり見据えてなくて。とにかく配信をどんどん出していこうみたいな話になったんですけど、途中からやっぱり盤にしたいという想いも生まれたので、新曲を2つ作りました。これまでアルバムやミニアルバムは、コンセプトを持って作ったり、後付けながらも曲順やタイトルに意味を持たせてきてたんですけど、今回は何も考えず、今の感情やホットなもの、やりたいことを形にする感じだったので、良い意味でコンセプトはありませんでした」
――なるほど。『夏のエンジェル』は本当にハッピーな曲ですよね。サザンオールスターズを彷彿とさせるような。
「まさにその通りです。以前何かのアルバムの制作の時、結構ギュッと詰め込んで色んな曲を作っていたんですけど、ライトなトラックが上がってきて、息抜きがてら、適当に歌詞を書いてメロディーに乗っけてみたんです。サーフっぽいサウンドだったので、俺はやっぱりサザンや桑田さんがすごく好きだし、ああいう歌い方に憧れるし、“桑田さんだったらこんな感じでやるんだろうな~”って、ちょっと実験でやってみたら、普通に良い曲ができて(笑)。最初は息抜きだったので、リリースする気持ちはなかったんですけどね。歌詞は、当時書いた仮の歌詞からほぼ変えてないです。遊びの延長線上で何も考えずにできた曲で、本当にピュアに音楽を楽しめた。だからすごく良い状態で作りました。本当に素敵な1曲ができたと思います」
――『Boom! Boom! ヘブン(メジャー1stフルアルバム『YES』収録)』も、サザン的な要素があったと思いますが、今回はより振り切っていますね。
「“もう本当にやっちゃおう!”って、自分の中にあるサザンっぽさを探しながら作りましたね(笑)」
コロナ禍でわかった、ライブは“生きている”と感じられるもの
――今作は前作に比べ、どこか肩の力が抜けている1枚だと思いました。『Joyful Style』はコロナ禍での制作だったと思いますが、前作を経たことで、今作に活きた部分はありますか?
「『Joyful Style』の制作時(2020年)は正直な話、なかなかライブができなくて、くたばってた感じはありましたね。配信ライブも純粋に楽しみながらできてはいましたけど、どうしてもへこたれてしまった部分がありました。2021年に入って、『Joyful Style』の制作が一段落した頃、やっと前を向き出して。それこそ自分たちが作った『Joyful Style』に背中を押されたんです。『Joyful Style』を出して喜んでくれる人たちがいることも再確認して、“俺たちがまず笑っていたい”という感覚が芽生えて、ポジティブな方向に矢印が向くようになってきて。2021年は、自分たちの中でもポップな気持ちで音楽制作やライブに取り組めた年でした。多分それが、今作の制作や楽曲に色濃く出てるのかな」
――やはりライブがなくなったのはこたえましたか。
「正直キツかったですね(笑)。配信ライブとかをやって、“俺たち元気だぜ”という姿を見せつつも、やっぱり配信ライブを“ライブ”と呼びたくない感覚もあって。2021年はライブの本数も増えて、ファンの皆さんと会う機会も増えてきたので、徐々にそこからエネルギーをもらってるのは確かにありました」
――今のBRADIOにとって、ライブはどういう存在ですか?
「純粋に“生きてる”と感じられるもの。ライブができなくなってくたばった時、本当に“俺らって脆いし弱っちいな”と思ったし、逆にライブでもらってるパワーって、とんでもないものだったんだなと、まざまざと見せつけられました。全く知らない人たちが、ひとつの空間に集まって、何だかよくわかんないけど繋がっている。口に出さなくてもそういうものがある。とにかく“今ここで生きてる”と感じられるライブ独特の雰囲気に、俺らも生かされてたなと、すごく感じました」
――お客さんは声が出せない状態ですが、それでもやっぱり目の前にお客さんがいるのと、配信は違いますか?
「もう全然違います(笑)。何なんでしょうね、あれ。僕らはコールアンドレスポンスとか、公演にもよりますけど客席に降りて“ふれあいタイム”とか、ファンの人と繋がる時間を大切にしてきたので、声が出せる出せないとかよりも、そこにいてくれるだけでいい、みたいな感覚があります。もちろん声出してほしいですけど(笑)。黄色い声が聞きたいですけど(笑)。ファンの人が“BRADIOが見たい、BRADIOの音楽が聴きたい”と会場に来てくれている時点で、ライブとしては1個完成してる感じはありますね」
「THE VOLCANOES」はファンの人も含めたチーム名
――ではリード曲で、タイトルにもなっている『THE VOLCANOES』(M-1)のお話を聞かせてください。
「この曲は『トロフィー』と同じスタジオでセッションをした日に作りました。曲の大元はギターの(大山)聡一が持ってきてくれて、そこから皆でセッションして作っていきました。『トロフィー』と『THE VOLCANOES』は同じ時期にできて、立て続けに配信する予定だったんですよね。でも『THE VOLCANOES』だけ、自分が塞ぎ込んで歌詞を書けない時期があったので、完成が遅れて、最新曲になりました」
――そうなんですか。
「『Joyful Style』が終わってから、1年近くは歌詞が書けない時期があったのかな」
――それは、メンタル的なことで?
「メンタル的にですね。何を書いたらいいのか分からなくなっちゃって。レコーディングも飛ばしましたし(笑)。でも、本当に周りに支えてもらいつつ。だいぶ待たせたり、気を遣わせたりしちゃいましたけど、皆で掘り返してくれました」
――歌詞の中に“チーム「THE VOLCANOES」”と出てきますが、まさに周りと一緒に乗り越えた経験があったんですね。
「そうですね。あとは何だかそういうエネルギーを曲から感じたんです。この曲は、コロナ禍で筋トレを始めた聡一が、フィットネスをやってる時にアッパーな曲が欲しくて原型ができたと言っていたので、サウンド的にも結構エネルギーがあって。ライブでもすごく活きそうだったから、ライブをイメージしました。ロックアンセムじゃないですけど、皆で胸の中に沸々と煮えたぎっている、解放したい想いを一気に解き放てるような曲になったらいいなと思って作りました」
――解放したい想い。
「“チーム「THE VOLCANOES」”に繋がるんですけど、野球やサッカー、スポーツの団体競技って、すごくファンキーだと思ってて。で、音楽とスポーツってマインド的に近いのかなと。ひとつのことを皆で一緒にやる、ひとつの楽曲を皆で演奏する。キメがくると皆で合わせる。キメが終わるとそれぞれの演奏に入って、またキメが来ると皆でガチッと合わせる。ファンの人たちとチームを作ったら、デカい1個のエネルギーになって、すごく良いものができるんじゃないかなと想像しました。ファンクにも色んな意味がありますけど、僕らがやりたい“ファンク”って、そういうこと。それぞれの価値観や1人1人を尊重しながら、1個のことにエネルギーを費やして、そのエネルギーを爆発させる。BRADIOのライブでもそこを目指したいです。皆でチームを組んで、一緒に声出して騒いでライブやって、同じ時間を共有したい。タイトルは“火山”という意味があるんですけど、自分の中では火山よりもチーム名。“ザ・なんとかズ”みたいな。ラグビーとか、スポーツチームのロゴが頭に浮かぶようなタイトルにしたいと最初から考えていました」
――もう1つの新曲はファンキーな『Frisbee』(M-3)ですが、新曲を足すにあたり、全体のバランスを見られたんですか?
「バランスは全然考えてなかったですね。逆にこのEPがバランスが良いと言われたら、“あ、良かったんだ”という感覚です。今回は最終的にコンセプトをつける着地がなかった。本当にやりたいことをやってるもんだから、たまたまバランスが良くなったのかな」
VIDEO
人との本当の繋がりを歌った曲
――『瞬き羽ばたき、故に繋がり』は年末年始ドラマ『夜光漂流 MIDNIGHT JELLYFISH』のOP主題歌でした。
「ドラマ用に書き下ろさせていただきました。監督から、ドラマに対する想いをしたためた、A4用紙2枚ぐらいの熱いメッセージをいただきまして。その中に“フィジカルでなかなか会えない世の中になってしまって”、という文句や、“孤独な中でも期待感が見えるように”という言葉があったので、人との繋がりや、“この曲を聴き終わった時が始まりだよ”、という期待感をすごく意識して制作しました。さっきのライブの話じゃないけど、僕もキャンペーンとかしてて思うんです。今は取材もリモートで繋がれますけど、それって本当に繋がれてるのかなって。やっぱりこうやって顔を突き合わせて話すことで、初めて繋がれている感覚がある。監督のメッセージと自分の考えが結構リンクした部分が多かったので、だいぶ書きやすかったです。素の自分のままで、監督の想いも乗せられた感覚はありましたね」
――ラストの、少し上昇するグッドメロディ感が最高でした。
「めちゃくちゃ嬉しいです。そこは当初からどうしてもやりたかったところで。曲の中では1サビと2サビで“マタタキ”と“ハバタキ”が離れてるんですけど、最終的に言葉をくっつけたかったんです。だから最後のサウンドも突き抜ける感じにしました」
――“瞬き羽ばたき、故に繋がり”は格言のようですが、真行寺さんのオリジナル?
「これはオリジナルです(笑)。タイトルはとにかく韻を踏みたくて、かつ意味もある程度欲しくて。瞬きは漢字で言うと“瞬間、今”。“この瞬間羽ばたいたり、自分でムーブして行動を起こせたら、故に誰かと繋がれるよ”という意味を込めました」
ライブだからこそ、アップデートする楽曲たち
――今作で特にトライしたことはありますか?
「歌詞で言うと、結構リズムボーカルに重点に置いたかなと個人的には思っていて。『トロフィー』や『THE VOLCANOES』の歌詞も、最初は仮で適当な言葉やニュアンス重視のメロディーを入れて、それに近い言葉をどんどんはめていきました。そういう作業が今回は多かったです」
――歌詞の意味よりも、はまり方を重視した。
「『Joyful Style』の時は、“その言葉が来ることによって見える景色”を意識していました。今回は何て言ってるか分かんなくてもいいから、リズムがとにかく気持ち良いところをはめようとしていましたね」
――1人のボーカリストが歌っているとは思えないほど、曲によって声色が変わりますね。
「よく言われます(笑)。楽曲の性格ってあるじゃないですか。僕は結構流されるタイプで、曲の雰囲気で歌詞も書くし、曲の雰囲気で歌い方も変える。だから『Frisbee』は詰まったような声で歌ったり、『THE VOLCANOES』はちょっと突き抜ける感じを意識したり、『夏のエンジェル』は柔らかさを意識しました。良くも悪くも色んなものに手を出したいんですよね、きっと」
――個人的には感動しました。ライブだとより感情が動きますよね。
「その場の空気で歌い方が変わっちゃうのは全然ありますね。昔の曲も“あの時はこう歌ったけど、今はこう歌いたいからライブでこう歌う”みたいな、ライブでのアップデートが結構あります。聴いてる人は音源と同じものを聴きたいと思うけど、個人としては、変化する方が音楽的に面白いと思う。それはライブでしかない体験なので」
――今作、改めてどういう作品だと思われますか。
「BRADIOらしさが色濃く出せた6曲だと思います。いつもそういう訳じゃないけど、今作は“届けたい、聴いてもらいたい”という想いがより一層強くなったし、ライブがやりたいという気持ちには、相当拍車がかかったのかなと思いますね」
――3月6日(日)にZepp Osaka Baysideでライブがあります。意気込みをお願いします!
「ライブハウスは久しぶりですね。触れ合えない、声が出せない中で、気持ちと気持ちでぶつかり合りあいたいです。今、絶賛セットリストを作ってリハをしている段階なんですけど、かなりエネルギッシュなものになるのかなと。逆に俺たちの体力大丈夫かなっていう。それぐらい熱いものが届けられると思います。曲もライブも聴くだけで終わらず、その先の一歩を踏み出せるバンドになれたらいいなという想いは変わらずあるので、今回もその気持ちを強く持っていきたいです」
Text by ERI KUBOTA
(2022年2月28日更新)
Check