メジャーデビュー30周年を迎えたT-BOLAN
昨年から続く全国ツアー『T-BOLAN LIVE HEAVEN 2020
「the Best」~繋~』に新曲『愛の爆弾=CHERISH』が
初披露される新たな追加3公演が開催!
T-BOLANの森友嵐士インタビュー
1990年代初頭に登場してミリオンセラーとなった名曲と共に音楽シーンに伝説を残してきたロックバンド、T-BOLAN。ヴォーカル・森友嵐士の心因性発声障害から一度は解散するが、森友は再び声を取り戻して完全復活を遂げる。そして、今年メジャーデビュー30周年を迎えた。昨年からスタートしたツアー『T-BOLAN LIVE HEAVEN 2020 「the Best」~繋~』はコロナ禍により中止や延期を余儀なくされたが、今年の2月から再開、この秋は新たに追加3公演が開催されることに。さらに今回の追加公演ではファン待望の新曲『愛の爆弾=CHERISH』がライブで初披露されるという! そんな注目のライブ直前にT-BOLANのヴォーカル、森友嵐士にインタビュー。現在の活動への思いから“愛の爆弾”にまつわる意外なエピソードまで、大いに語り尽くす!
アインシュタインの言葉にインスピレーションを感じ誕生した
待望の新曲『愛の爆弾=CHERISH』
――デビュー30周年おめでとうございます! これまでの活動を振り返って、森友さん自身はどのようなことを感じていますか?
「ありがとうございます。いろんなことがあったバンドですけどね…、表立って活動したのは実質3年半ぐらいじゃないですかね。99年に一度解散してるんですけど、実際に活動してたのは95年の秋ぐらいまでなんですよ。なぜかというと、94年の秋頃から僕の声の不調が始まっているので…。結構自分でストイックに追い詰めて次に行くタイプだったので。音楽以外のものは本当に犠牲にしてきたし…。だけど、やっぱり生身の人間なので心身のバランスを崩して、一番大事な声を奪われてしまうようなことになったのではないのかなと思います」
――森友さんがヴォーカリストとして復活するまで、10年以上かかったんですよね?
「14年かかりましたね。自分の声を取り戻していく中で出会ったボイストレーニングの先生が、“歌というのは体と心の総合芸術なんだ”と教えてくださったんです。心の世界って見えないけど、その目に見えないものの中に僕らが生きていく中で大事なものがたくさんあるんだなとすごく感じました」
――実際、どのようなことが回復に繋がっていったのですか?
「その先生のところに通っていた時、自分のことを色々聞かれるだけで、肝心の歌のレッスンをしてもらえなくて…(苦笑)。ある日“魚釣りにどんどん行ってください”と言われたんです。“森友さんが夢中になって話すことはいつも魚釣りなんです。多分、一番嬉しい瞬間があるのが森友さんにとって魚釣りなんで、その時間があなたの心のバランスを直す一番の時間になります”と。自分の復活を待ってくれてるファンや、メンバーやスタッフのことを考えると、魚釣りに行ってていいのかなと罪悪感もあったんですけど、その先生の言葉を信じて腹を括って、行きました。結局、それは遠回りのようで近道だったんです」
――そうだったんですね。
「だから今は音楽だけじゃなくて、他にもいろんな活動もしていて。縁が繋がって、自分の心が動くことにはなんでも参加してみようと思うようになって、田植えを始めたりね(笑)。ただ、音楽人であることは変わらないので、自分のパワーが一番強いものは音楽を通してやることだなと思ってますけど。どんな形でも届けたいものを届けられればいいのかなと」
――ちなみに音楽とそれ以外の活動はどういうペース配分で行っているのですか?
「ベースは音楽活動なので、それはいつも頭の中にあることなんですけど、京都の丹後でやっている米作りでは田植えの時期に田植えをして、稲刈りや草刈りもするし、日本酒の仕込みもしたりしています。仲間との学園祭のノリですね(笑)。生産性とか効率性を無視して楽しむっていうことを一番大事にしています。大人たちが共に一緒になってものを作る喜びを表現する。それを子供たちに見せたいだけなんです。そういう活動の中で、いろんな考え方が生まれてきて、それがまた音楽に繋がっていくわけなんです。(新曲の)『愛の爆弾=CHERISH』がまさにそうですね」
――“愛の爆弾”ってとてもロック的な表現だなと思ったのですが。
「(諸説あるんですが)これはアインシュタインが娘に残した最後の手紙の中で書いている言葉なんです。アインシュタイン曰く、“科学や物理で証明されたいろんな法則があるけれども、地球上にそれをはるかに超えるすごい力が一つある。それは人間の心の中にある。それが愛だ。ただ、今はまだ、人間はこの愛の爆弾を受け取る準備ができてない。だから、それをあなたに託します”というような内容です。で、僕はそれが今だと思っているんですよ(笑)。それをT-BOLANがパイプ役としてみんなに届けたいなと思って」
――なるほど! そこでT-BOLANとアインシュタインが繋がったのですね!
「はい。そして、実は僕はアインシュタインのひ孫と友達で、魚釣り仲間なんですよ。さっき話した米作りで知り合ったんです。人の出会いって、わかんないものですよね(笑)。何かの目的のためというより、楽しむために動いていると、こういうことがいっぱい起きるんです」
――そんな意外なサイドストーリーがあったとは、びっくりです! ところで、昨年からスタートしたツアーの追加公演のタイトルの中に、“愛の爆弾=CHERISH”と掲げられています。この“CHERISH”というワードに込められているのはどんな思いですか?
「“CHERISH”って相手を思いやるということですよね。要するに、相手を思いやる先に生まれてくるいろんな形や思いが“愛の爆弾”なんです。感染対策ひとつにしても、自分のためにやる感染対策と相手に感染させないためにやる感染対策とは違うわけです。世界は今まで経済成長を最優先して、ここまで進化してきたけど、生産性や合理化ではないものを大事しないといけないときに起きたのが新型コロナのパンデミックだと思うんです。経済より愛をまず考えると手間も時間もかかる。だけど、生産性だけでは手に入らないものもある。それに切り替えなきゃいけないときに来ているんじゃないですかね。それが“愛の爆弾”から始まったら最高の世の中になるのでは?と思ったんです」
エンターテインメントは心の食糧
感染対策を万全にしてライブができることを証明
――昨年から行われていた『T-BOLAN LIVE HEAVEN 2020 「the Best」~繋~』は、コロナ禍となって残念ながら中止や延期となった会場もありますが、今年になってどのような思いで再開されましたか?
「(コロナ禍の)初期の頃は感染した人がすごく責め立てられていたので、ライブが人の諍いを作る種になってしまうなと。それで、やむなく(ツアーの)延期や中止を選択してきたんです。コロナの感染拡大状況というより、僕ら人間の心の状態がそれを受け入れられるような準備が整わないと、(本来の)エンターテインメントの良さに繋がっていかないだろうなと。1年経ってもなかなか終息しなくて、どんどんみんなの楽しみが奪われていっている中で、止めることばかりでいいのかなと考えるようになりました。(人間は本来)心の状態がすごく大事だと思っています。心が傷ついてたら、食欲さえわかないじゃないですか。エンターテインメントって心の食糧だと思っているんです。そんな心の食糧であるエンターテインメントまで止まってしまうようでは…、このままじゃだめだと思い始めて。コロナの感染に対する不安や心配からやめるという選択ではなくて、感染対策を万全にした上で、やリ方を進化させればいい。それを証明したいと思ってスタートしたのが、今年2月のツアーの再開だったんです。(コロナ禍でもライブはできるということを)一緒に証明しようぜ!という話を、まず(ライブの)初っ端に話しています」
――なるほど、安全にやれる方法を証明しようという強い思いがあって。
「はい。バンドの楽曲やエネルギーとみんなから生まれるエネルギーとが合わさって一緒に作るのがライブなので。(ファンのみんなも)いろんな問題や不安も抱えてたけど、“来て良かった!”と言ってもらえた。そんな中でもいろんな事情で中止を選ばないと行けないところもあったので、もし追加で行ける場所があるんだったら追加公演したいよねということで、今回の3公演に繋げることができました」
――『愛の爆弾=CHERISH』という新曲は今回の追加3公演で初めて披露されるんですね?
「そうです! “愛の爆弾”の構想は去年の11月頃ぐらいにあって、レコーディングが終わったのが今年の8月ぐらいです 」
――今回の追加公演はどのようなステージになりますか?
「基本的にはこれまで行ってきた“繋ツアー”のセットリストがメインになりますが、数曲だけ別の曲に入れ替えたりしています。僕はMCが長いんですけど(笑)、今までと違うのは、『愛の爆弾=CHERISH』という新曲を引っさげて行くことなので、少し“愛の爆弾”に寄せて、今みんなに伝えたいことを話すと思います!」
――今はまだ観客は声を出せませんが、同じ空間でライブを体感できるのはやっぱり嬉しいですよね!
「声は出したいだろうなと思います。ちゃんとマスクをして、声を出さずに、心の声で叫べ!ってMCで言ってますけど、マスクしてても、盛り上がってくると、一瞬“うわっ!”と声が出そうになることがあって(笑)。僕がシーってやってやると、それでまたみんなにこやかになって(笑)。できないことが増えたから楽しくないかというとそんなことはなくて。それをうまく受け止めて、お互いうまく協力しあえれば、大丈夫!楽しめる!っていうことが一番大事なんです」
――追加公演は10月10日の広島からスタートして、17日の大阪がファイナルとなります。
「実は、T-BOLANにとって記憶に残る大きなことが大阪にはたくさんあるんです。今までのツアーでもファイナルを行うことは結構多くて。95年に(活動休止前の)最後のライブをやったのも大阪の厚生年金会館(現在のオリックス劇場)だったんですよ。そこで一度バンドが止まったんです。で、復活する時もそこでやっている思い出の場所なんです。そもそも『離したくはない』という楽曲は、大阪のUSENからまず火が着いたんですよ。その後も大阪のUSENで1年間、ずっと一位。そこから全国に広がったんです。多分、T-BOLANのカラーみたいなものは大阪の方々の感性と合うんだろうなと思います。それと90年代にリリースした『愛のために 愛の中で』という曲があって、これは今、僕がすごく届けたい曲なんですが、この曲のMVも大阪で撮影しているんですよね…。大阪の淀川の朝日を撮影しています。夜明けの撮影だったので、僕は寝ないでそのまま撮影に行きました(笑)。大阪にはそういう節目節目の深い記憶がありますね」
――そうだったんですね。では、最後にお客様に向けてメッセージをお願いします。
「ライブ会場で会えることを一番楽しみにしていますが、いろんな事情でライブに来れない人もいると思います。離れていても心は繋がっているから、また会えるタイミングが来た時に会えばいいんです。今、ライブに行きたいけど来れないという人は自分の生活圏の中で心が喜ぶことを見つけて、自分の心に与えてあげてほしいなと思います。何よりもみんなが元気であることが大事なので。みんな楽しいことを探して心を元気にしましょう!」
Text by エイミー野中
(2021年10月13日更新)
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