「曲を深く届けるためには、言葉が重要になるフェーズが来た」 音楽の聞かれ方が変わり出した時代に見出した アイドラ的新しい音楽の作り方・届け方というチャレンジ I Don't Like Mondays. YU(Vo)&KENJI(Ba)インタビュー
4人組ロックバンドI Don't Like Mondays.。洋楽的アプローチを取り入れた洒脱なサウンドと、言葉の響きを楽しむような英語も日本語も取り入れた歌詞の世界、そして圧倒的なライブパフォーマンスで人気を揺るがないものにしてきた彼ら。昨年のコロナ禍において、I Don't Like Mondays.もアルバムのリリースや全国ツアーが中止となった後、「こんな状況でもハッピーなニュースを」と8月から12月まで5カ月間に渡る連続配信リリースを敢行し話題となったことも記憶に新しい。そのリリースを終えてなお果敢に配信リリースを続け、前作『FUTURE』後に発表されたシングルの曲数は13曲。それらを全て収録したベストアルバム的意欲作『Black Humor』がこの夏リリースを迎えた。ままならない環境で歌詞にも、サウンドにも、バンドにも起こったさまざまな変化や新しいチャレンジが詰まった作品は、どのように作り上げられたのだろうか。今回はYU(Vo)、KENJI(Ba)のふたりに話を聞いた。
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みんながパニクっていて希望が必要な中で
自分たちができることは作品を作って出していくこと
――2021年も気づけは夏ですが、どんな夏を過ごされていますか?
KENJI :少し前、コロナの状況が一時よくなった時にイベントに出演させていただきました。いろいろと制限がある中で、激しめの曲のセットリストでやらせてもらったんです。僕らも久々のライブだったしみなさんの熱量も大きくて、ライブを見たい気持ちと僕らのライブをやりたい気持ちがぶつかり合ったすごくいい時間でしたね。
――今年の夏は久々のアルバムリリースですね。心境はどうですか?
YU :「ようやく出せた」っていうのはありますね。ありますけど、特殊な環境に自分たちも慣れたっていうこともある中で、これまで配信でリリースしてはきましたけど、やっぱりアルバムを出すっていうのは僕らにとっても区切りだなと。リリースしてツアーをまわると、自分たちも次に切り替えられるんです。今までもそうやって進化してきたと思っていますし。
――「特殊な環境に慣れた」というのは、この状況下で新しい活動のやり方を見出せたということなのか、この環境にとりあえず適応できたということなのか…。
YU :僕としてはライブも大事だしやっていきたいけど、なかなかライブをすることが難しいのでそれなりに適応していかないといけないなと。今回のアルバムの歌詞でも書きましたけど、悲観していても仕方がないので何かできることをやりたいなというマインドですね。
――この1年半ほどでとにかくエンタメはあり方を問われたなと思うんです。届け方も含めて今も問われ続けていると思うんですが、自分たちの音楽で何ができるかみたいなことはメンバーで話をされたりしましたか?
KENJI :もちろんじっくり話をしました。
YU :でも、僕ら切り替えは早かったかもしれません。東京で1回目の緊急事態宣言が出た頃、前のアルバムのツアーをギリギリ終えられて、この後僕らはどうするかっていうことを話し合った時、今までみたいなことをやっていても仕方がないよねってすぐに結論が出ました。そこから大きく変えたのは音楽の作り方やスタンス…僕は歌詞を書くんですが、書き方も含めて今まではライブを中心に考えながら作詞作曲して一緒に盛り上がって踊れるような共有のための音楽の作り方をしてきました。でもこういう時代になったので、みんなで聞くというよりは、イヤホンやヘッドホンで聞くっていうかなりパーソナルな音楽の聞かれ方になっているし、これからもっとなっていくと思ったんです。今までとマインドを変えずに制作しても時代とギャップができると思ったので、歌詞はパーソナルなことにフォーカスしたアプローチというか、内面にアプローチするやり方にトライしました。
――それはメンバーの総意で?
KENJI :そうですね。少し前からYUはそういうモードになっていたと思うんですけど、この状況をきっかけに新しい方向で作ってみるねってなった時に、今までのようにライブにフォーカスした楽曲作りではなく、ひとりで聞く音楽としてどういうものがマッチするかっていうことはみんなで話し合いながら作っていきました。
――そもそも今回のアルバムを語る上で、去年8月にスタートした5カ月連続配信リリースの話は欠かすことができないと思うんですが、それをやろうと思ったのは?
YU :僕たちについてきてくれていたファンも、音楽業界がすごく混乱している中で僕らが活動を止めてしまうと不安になっちゃうだろうし…。みんなそれぞれパニクっていて希望が必要な中で、僕らができることは作品を作って出していくことだけかなと。5カ月連続で出しますよっていうだけでも何か楽しみがあるというか、混乱しているけど頑張ろうっていう気持ちになるかなって思ったんです。
――去年の夏はフェスやライブの中止も含めてハッピーなニュースはなかったですもんね。
YU :ホントに。でも「ヤバい、5カ月連続って言っちゃったわ…」っていうところはありましたね〜。
KENJI :めちゃくちゃ大変じゃんって(笑)。
YU :でも、やってよかったなと思います。5カ月連続リリースがきっかけで僕たちの音楽を聞いてくれるようになった人もたくさんいますしね。
――ちなみに5カ月という数字になった理由はありましたか?
YU :実はそこに深い意味はなくて…8月くらいには第1弾が出せるから、今年いっぱい出し続けようかって。本当は4月にアルバムを出すはずでそれができなくなってしまった分、それを1回忘れてシングルを出そうと。元々アルバム用に準備していた曲もあったんですけど、新しく曲作りもしてようやく8月からリリースをスタートしました。
――コロナ以前にアルバム用に準備されていた曲は、この状況になったことでフィットしなくなったりしたのでは…?
YU :そういう理由でボツになった曲もあります。この頃自分たちがブチ上げ系の曲を聞きたかったかっていうと、そういうテンションじゃなかった。そういう曲を採用すると制作に無理が生じるし、せめて自分たちが聞きたいと思うものを作りたい気持ちでしたね。
KENJI :じっくり聞きたいモードでした。
YU :今回はアルバムを通していわゆるアゲ曲があんまりないんですよ。僕らは4人集まって曲作りをするんですけど、あの時は早いBPMの曲を作ろうっていうテンションじゃなかったというのはあります。
KENJI :うん、それはすごくありました。
YU :個人的にも「なんで音楽やってるんだっけ?」とか「なんでバンドをやらないといけないんだっけ?」って考えていた時期がすごくあって。でもそれによっていろんなことに気づいたというか、今まで当たり前だったことが当たり前じゃないとかそういうマインドが5曲には反映されていったかなと思います。
――その5曲に共通するテーマみたいなものは、制作前に設定されていたんですか?
YU :今まではどちらかというと人間の綺麗な部分を歌ってきたんですけど、逆に人間のあまり見たくない、言いたくないところをテーマに作ろうと思ったんです。詞の世界はそれをテーマにしたイメージですね。
――そういうマインドになれたのは…。
YU :今まではみんなで曲を作って僕が歌詞を乗せるっていうやり方で、やっぱりライブで気持ちよく演奏できることや、言葉も音楽の一部として考えていたので、いかにみんなで作ったサウンドをよりよく響かせるかということにフォーカスした言葉選びをしていました。でも音楽の聞かれ方が変わっていく中で、今までのやり方だと所詮BGMで終わっちゃうっていう葛藤もあって…。作った音楽をさらに奥底まで届けるためには言葉が重要になるなって。この状況になった時に、言葉っていうのはすごく強いパワーを持っているなと改めて思ったんです。
――日本人は音楽を「歌詞で聞く」って言われていますよね。
YU :逆にあまりトラックを聞いていないというか…。日本の音楽って小説的というか物語的で、欧米はやっぱりエンターテインメントとして聞かれている感じがするんです。僕たちは洋楽的なアプローチをしてきたのでその両方ができたらいいなと思ったし、環境の変化もあったから新しいアプローチもトライしてみたいと思ったのが一番のきっかけかもしれません。
――先ほど「音楽の聞かれ方が変わってきた」とおっしゃっていましたが、そうなると音のあり方もどこか変化を求めたところはありましたか?
YU :うーん…音というよりは曲調、ですかね。今はこういう曲が聞きたくなるよねっていうサウンドを作って、そこにサウンドを引き立たせるためではなく独断と偏見で今僕が強く歌いたいことを乗せて。それがハマっていなかったらメンバーに曲の再アレンジを依頼するっていうやり方をしました。
KENJI :ある程度歌詞の土台ができたところから曲作りも進めて、歌詞と曲を一緒にした時にこれだと合わないから再アレンジをしてくれっていうやりとりは今までなかったですね。
YU :今まではトラック至上主義だったので。
――じゃあ初めての試みになったと。
KENJI :そうですね。あと、メロディも完全に決めすぎずに置いておきました。5カ月連続の最後にリリースした「ミレニアルズ 〜just I thought〜」っていう曲は、最後にちょっと歌詞を足したりもして。とにかく歌詞に比重を置きました。
YU :8:2とか9:1でサウンド寄りだったものが、半々ぐらいにはなったかな。
KENJI :そのやり方は今の歌詞の書き方にマッチしているなと思いましたね。
YU :このやり方を突き詰めていくことで、より独創性が生まれるのかなと思っています。ここ数年で洋楽的アプローチのバンドやシンガーソングライターがめちゃくちゃ増えたと思うんです。僕たちも初めはそういうジャンルでやっているだけでオリジナリティが出たんですけど、今はそういう音楽が増えて埋もれてしまう怖さや、今までのスタイルのままだと誰でも作れるようなものになっちゃう怖さがあって。
――何か新しいことをしないと、と。
YU :そう、一歩先に行かないとマズいって。僕らは「すごいおしゃれだよね」とか「作業の時に聞いてるよ」ってよく言われるんです。もちろんすごくうれしいんですけど、その反面おしゃれであるとかBGMとして聞かれているって…僕らは苦労して作ってるのにな、ちゃんと聞いてほしいなっていう思いもある。僕らのアプローチの仕方が耳障りにこだわりすぎているからこそ、BGMとして聞かれているのかもしれないって気づいたら、やっていることと望んでいることが違うなって思いました。
――それこそトラックを重視していた結果、そういう聞かれ方をしたのかもしれませんよね。
YU :これまでは僕が歌詞を書いて、耳に触る音をメンバーに手直ししてもらっていたんです。でもそれをやりすぎて綺麗な丸になっていた結果、耳障りのいいBGMになっちゃうんだって。
KENJI :音楽がひとりでじっくり聞く時代がきているのだとしたら、逆に耳に触って食らいついていきたいですよね。
YU :これはアルバム制作の途中からですけど、今までメンバーにサウンドを綺麗に手直ししてもらっていた工程をなくしました。勇気はいりましたけど、僕らが目指すものはそもそもおしゃれなBGMではなくて、聞いてくれた人の価値観を変えたいとか人生に残るような音楽なんです。それを目指すならある種の荒さも大事になってくると考えた上での決断です。
アルバム制作を前に改めてメンバー・スタッフで考えた
「I Don't Like Mondays.とは何なのか」
――ある意味の覚悟を含んだ5曲をリリースして手応えはありましたか?
KENJI :うん、それはありましたね。
――その手応えを持ってアルバム制作に入っていくと思うんですけど、何からスタートさせたんでしょうか。
YU :一番初めのステップで言うと…アルバムには「MR.CLEVER」をキーにしようっていうところかな? 1回目の緊急事態宣言前後から作り始めていて、一旦何も考えずに言いたいこと言ってみようって作ったのが「MR.CLEVER」で、僕らの中ではリードとして甘い部分もあるんですけど、新しいアルバムを作ると決まった時にこの曲がすごくしっくり来ていて。
――それは歌詞が?
YU :歌詞もサウンドも、ですかね。今までなら「踊ろうぜ、ベイビー」みたいなことを歌詞にしていたけど、「MR.CLEVER」はすごく皮肉なことを歌っていて。これって自分たちの性格と合っているし、これぞ自分たちのバンドの曲ですと言えるなっていうことに気づかされたっていうんですかね?この曲を軸に発展していったのが、今回の『Black Humor』に収録している他の曲たちです。
――でも今回のアルバムは5カ月連続リリースやその前後のリリースのシングルも全て収録されていて、もはやベストアルバムですよね。
KENJI :確かに! 17曲入りだし、かなりのボリュームですよね。
YU :前回のアルバムから2年半ほど空いているからこそのボリュームっていうのはあります。「gift」っていう曲が今回のアルバムの中では一番古参なんです。その「gift」を作った時に『Black Humor』を想定していたかというと、全く想定していなかったんです。
――「gift」のリリースはコロナ流行以前ですもんね。
YU :そうです。でも「MR.CLEVER」からの派生で『Black Humor』っていうアルバムタイトルが出てきた時に、このタイトルなんでもありじゃん!この状況になる前の曲も収録できるって思ったんです。
――そのタイトルが出てきたのはどういう経緯で?
YU :メンバーやスタッフ含めて「I Don’t Like Mondays.とはなんぞや?」みたいな僕らを表すワードを書き出して、自分たちにフィットする言葉ってなんだろうってトコトン考えましたね。それで出てきたのが『Black Humor』っていうワードで、この言葉だけだと狂気的な笑いとか皮肉的な響きのあるものなんです。僕らがそういうものが好きっていうのが大前提で「MR.CLEVER」ができているんですが、加えて僕らのテーマカラーもブラックだよね、それでいて去年のツアーやフェスとか何もかもがなくなったっていうのは音楽業界からしてみれば悪いジョークだよねと。
――本当、悪い夢でした。
YU :これをどう表現しようって思った時に、『Black Humor』という言葉なら全てを内包できるって、満場一致でアルバムタイトルが決まりました。
――ブラックユーモアっていう言葉を調べていたら、ブラックジョークとかブラックコメディとかダークユーモアとかの方が目につきました。
KENJI :その言葉も候補にあがっていましたね。
YU :僕の中では、I Don’t Like Mondays.がI Hate Mondays.じゃないのと同じだなと思っていて。僕らは“Hate”ではなくて、あくまでも“Don’t Like”なんですよね。感覚的に少しオブラートに包んでいるというか。ブラックジョークっていうと直接的だけど、ブラックユーモアだともう少し枠が大きいイメージでどうとでも取れる自由度もあるかなと。
KENJI :その言葉が出てきた時点で、今の自分たちのテーマがバシッと見えた感じでした。
YU :毒づきたい時もあれば、僕はすごくピュアなものやピュアな恋愛も好きなんです。なので『Black Humor』っていう枠組みがあればその中に「Sunflower」みたいな恋愛の曲があってもしっくりくるなと思いました。
――アルバムの1曲目として「Black Humor」というタイトル曲を聞いた時に、なぜこの曲には歌詞がないのかなと疑問に思いました。前作の『FUTURE』も同じアプローチではありましたけど。
YU :それでいうと2曲目の「MR.CLEVER」がガッツリアルバムの裏テーマ曲なんですね。「Black Humor」はそのための序章っていう位置付けなんです。
KENJI :「MR.CLEVER」のためのイントロですよね。
――そういうことなんですね。ちなみに「Black Humor」のメロディーのバックにコーラスが入っていますよね。あれは何を歌っているんですか?
KENJI :それ、すごくよく聞かれるんですけどね…。バンド名を言っているぐらいで、実は特に意味はないんです。
――アルバムタイトルがタイトルだけに、コーラスで歌っている何かがアイドラ的ブラックユーモアなのかも…何を言っているんだろう? って裏読みしちゃいました。
YU :(笑)! 全然大したこと言ってないです!
――(笑)! 実際完成した作品を客観的に見てみてどうですか?
YU :単純に客観的に見たら、すごくいろんな曲を作ったなと思いますね。たくさん作ったけど『Black Humor』に合わないのもあったし、ちょっとでも引っ掛かりがあるとリリースしようっていう思いにもならないというか。
――それは「今じゃない」って感じですか?
KENJI :今でもないし、この先にもないというか。お蔵入りの可能性もあります。
――その今回の『Black Humor』に合う合わないみたいなところは、言葉にできますか?
YU :他の曲とのバランスですね。『Black Humor』を箱と考えて今までの曲で入れられそうなものを入れていって、じゃああとここにどういう要素があったらいいんだろうって。
KENJI :箱の中には「MR.CLEVER」を軸にリリースしたシングルは全て入れると想定して、他に何を足して何を引くかですね。
YU :僕らはいつも次の曲を作る時に、今までの曲を並べるんです。で、この要素はないよねとかこんな曲はこの曲とかぶるよねとか、メンバー全員の意見を反映しながら作ります。
――逆に言うとバンドだけにメンバーの気分がバラバラなこともないですか?
YU :めちゃくちゃあります(笑)。バンド内では感性で話すと意見が通らないんですよ。理論武装して戦わないと。
KENJI :だからみんな理詰めで行くのが鉄板です。こういうロジックだからやるべきだと思うよって。
YU :納得できればいいんです。逆に今回は感性で作りたい、今1曲も感性で作った曲がないから1曲ぐらい感性で作った曲があってもいいでしょって言われたら「確かにそうかも」ってなるんですよ。でも何も考えずにやりたいっていうと「時間の無駄じゃん」って。
――そういうのがバンドの面白さであり、難しさですよね。ちなみにアルバムの制作を通して、バンドが変わったなみたいな手応えを得られた曲はありましたか?
YU :個人的には「地上を夢見る魚」ですね。今までこういうテイストでショートムービー的な歌詞というか気づきのある作品を作りたかったんですけど、以前の作詞マインドだったら存在しなかった。でも5カ月連続リリースではあえてそういうことに取り組んで曲を作るたびに反省があって、「地上を夢見る魚」はひとつ自分の中でクリアできた曲かな。その喜びは、Twitterでつぶやきました。できた!って。
KENJI :コロナ禍で曲の作り方が変わって、自分たちだけで作っていたのがいろんなプロデューサーの方を入れたりアレンジお願いしたりいろいろある中で、5カ月連続配信も終えて「馬鹿」や「独り占め」を作った時に、歌詞だけじゃなく楽曲もJ-POPのシーンに寄り添えるような方向でトライしてみようってなったんです。そこにトライして試行錯誤した結果、最後に「ノラリ・クラリ」と「MOON NIGHT」っていう曲ができました。やっぱり改めてこの環境が僕らを成長させてくれたんだなって思えるような曲になったんですよね。だから特に「ノラリ・クラリ」は改めてカギになったのかなと思います。改めてI Don’t Like Mondays.っぽさみたいなものを4人でもう一度構築した時に、自分たちがやりたかったことにより近づけている気がするというか。
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KENJI :自分たち以外の引き出しからいろいろ吸収できたのもこの時期だったからこそかも。
――でも外のスタッフさんのアイデアを取り入れるのも、今までやっていないと大きな挑戦ですよね。
KENJI :かなり挑戦でした。
YU :何年も自分たちでやってきたっていうバンドはやらないことなのかもしれないですね。バンドで完結できるだろうし。でも特に僕は飽き性だから、同じ時間に同じ場所に行って同じ作業をするっていうのがすごく苦手なんですよ。インスピレーションの幅が狭くなっちゃう気がして。だからこそこれまでアルバムの制作の場所も毎回変えていたんですけど、去年はそれができない分、何かやり方を変えないとって。その試行錯誤のうえで外のスタッフのアイデアを取り入れたのは、本当にいい刺激になりましたね。
9月から始まるツアーでは横ノリ曲をどう聞かせるか
バンドが本物かどうか試されることになる
――9月にはライブツアーが始まりますけど、考えていることはありますか?
YU :僕らは今まで横ノリの曲もあるけど、ライブは限りなく縦ノリだったので…この状況ではライブでは縦ノリの曲はあまりできないかなと。
KENJI :半キャパになる分、純粋に公演数が増えて、現実的には体力の問題もあるし、その中で最高のものを届けるためにどういうセットリストで行くかを話しています。
YU :そういう横ノリ曲だけで約2時間を飽きさせないためには、最終的にグルーヴを気持ちいいサウンドで演奏し続けられないと思っています。そのためにはスキルアップが必須ですね。
KENJI :そうそう、より本物かどうか試されちゃうし。
YU :でも、それもまたバンドのポテンシャルが上がると思うんですよ。そういう力を身につけた上でアッパーな曲がやれる環境が戻ってきたら、かなり強いですよね。
――これからはスキルも試されると予想する中で、バンドとしてこれからの世の中をどうサバイブしていこうとかイメージはありますか?
YU :世界がこうだから自分もこうしようというよりは、自分が目指すところがあるので、もうそれを突き詰めていくだけって考えておけば世界に左右されないのかなと思っています。
KENJI :グラついた時も、芯がないと軌道修正できないもんね。
YU :自分があれば絶対に対応できる。社会や時代を見てから対応しようとすると惑わされるけど、自分主体で生きていたらあまり関係ないかなって思うんです。このコロナ禍ではそれを経験できたかな。それでも去年は僕もやべーってなりましたけど(笑)。でもなんでやべーって思うんだろうって考えた時に、それは受動的だったからでした。自分が主導権を持っていれば、世間が変わっても意外とイケる。バンドも同じだなと思っています。
Text by 桃井麻依子
(2021年8月23日更新)
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