「沖縄の風を伝えて、カバーアルバムの曲を歌って、 最後はみんなで踊ってひとつになりたい」 『夏川りみコンサートツアー2021 あかり』のファイナルを飾る 大阪公演がまもなく開催! 夏川りみインタビュー
今年3月にリリースされた夏川りみの新たなカバーアルバム『あかり』。先行配信された玉置浩二のカバー曲『しあわせのランプ』を含む全8曲は、一曲目の『うたのうた』(BEGIN)からラストの『いのちの理由』(さだまさし)まで軸となるテーマは“家族”。夏川りみの澄んだ歌声に癒され、時代を経ても色褪せない名曲の素晴らしさと人の心にそっと寄り添い温めてくれる歌のやさしさに救われる。このアルバムに伴う『夏川りみコンサートツアー2021 あかり』のファイナルを飾る6月26日の大阪公演を前にリモートでインタビュー。レコーディングでの微笑ましいエピソードやコロナ禍でのライブについて、さらに、リリースから20周年を迎える大ヒット曲『涙そうそう』にも言及。この曲が自身に与えた影響とルーツとなる沖縄の島唄に対する思いまで柔らかに語ってくれた。
“いのち”という言葉も多く出てきている
あたたかい気持ちになれる曲が集まった
――3月に新しいカバーアルバム『あかり』がリリースされました。カバーされている曲はどのように選曲されたのですか?
「みなさんからのリクエストが多い曲や、“夏川りみの声でこの歌を聴きたい!”というまわりのスタッフさんからの意見をもとに選曲させていただきました。今作のテーマが“家族”なので、“家族愛”が感じられる楽曲が集まったらいいなと思っていたのですが、(選曲した歌詞の中に)“いのち”という言葉も多く出てきているので、全体を通してあたたかい気持ちになれる曲が集まったなと感じています。本当に今伝えたい想いが詰まった曲がたくさん収録されています。皆さんが口ずさめる曲も多いと思うので、本当ならライブ会場で一緒に歌いたいところですが、今は(お客さんが)声を出すのは難しいので、それはまだ先になりそうなのですが…」
――そうですよね。ちなみに夏川さん自身が楽曲を選ぶ時に重視したことはなんですか?
「やっぱり歌詞ですね。この内容は伝えたいなぁと思った楽曲が集まったなと思います」
――今作で初めて歌われて、新鮮に感じられた曲というのはありますか?
「玉置浩二さんの『しあわせのランプ』(M-2)がそうですね。スタッフさんから、“この歌を夏川りみが歌ったらどうなるのか聴いてみたい”と提案されたことがきっかけなんです。玉置浩二さんの楽曲は歌うのが難しいんじゃないかなというイメージがあったのですが、自分の声を1コーラス乗せて歌ってみたら、“すごく新しい夏川りみという感じがするね”と言われまして、歌うことになりました。歌詞もすごく素敵な内容なんです。実際にこのカバーを聴いてくれたファンクラブのかたが、“りみが歌う『しあわせのランプ』を聴いて好きな人に告白したいという気持ちになりました”と言ってくれました。“応援するから頑張ってねー!”と伝えたら、“実際に告白して付き合うことになった”という幸せなお話が聞けたんです。良かったなぁ~と思って嬉しくなりました」
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――とてもハッピーなエピソードですね! この『しあわせのランプ』の中で、夏川さんが特に好きなフレーズは?
「冒頭から出てくる、“幸せになるために生まれてきたんだから、好きな人と一緒にいなさい”とか、“大切なことなんか分かってくるんだから、好きなことをやっていきなさい”という言葉は、ああそうだなあ…と感じました。やっぱり名曲と言われている曲は本当に素晴らしいなぁと感じながら歌わせていただきました」
――玉置浩二さんの歌は難しいと思っていたというお話しされていましたが、レコーディングの時はいかがでしたか?
「本当に素敵なメロディーと歌詞だなと改めて実感しながら歌わせてもらいました。でも、あんまり何回も歌い直しをしてしまうと、歌い回しがちょっとこなれてきて、新鮮味がなくなるのも嫌だなと思いまして。なるべく自然体の夏川りみが出せたのかなと思っています」
――そこに変な気負いがないからこそ、聴く側も自然に曲の中に引き込まれていって、穏やかな気持ちになるのかもしれませんね。そのほかに新鮮に感じた曲はありますか?
「『結婚しようよ』(M-5)ですね!」
――ああ、やはりそうですか! 吉田拓郎さんの大ヒット曲ですね。
「はい。夏川りみって、スローでしっとりした曲のイメージが強いのかなと思って。あえて、“エッ、こんな曲を歌っているの?”、“夏川りみが歌うとどうなるの?”って思ってもらえるような意外性を狙いました(笑)」
――歌そのものが持つ力や、そこに込められた根源的な愛を感じる『うたのうた』(M-1)は本当にジーン…ときます。
「素敵な曲だなぁと思います。これは、もともとBEGINさんが歌っているのを聴いて知りました」
――この曲のレコーディングでは夏川さんのだんな様と息子さんが参加されているのも素敵です! これはどういった経緯で実現されたのですか?
「今回のカバーアルバムのテーマが“家族”ということで、スタッフから“家族でレコーディングしてみてはいかがですか?”と提案されたんです。私の10歳の息子がドラムをやっているので、こんな話があるよと聞いてみたら、ものすごく喜びました。とはいえ、実際にレコーディングする時は緊張するんじゃないかと心配していたら、緊張するどころか、嬉々としてドラムを叩いてる姿にちょっと感動しましたね。本当にドラムが好きなんだなということを実感しました」
――息子さんがレコーディングに参加されてそれが夏川さんのアルバムに収録されるのは今回が初めてですか?
「はい、初めてです! イイ経験をさせていただきました。いつの日か、家族でステージに立てたらいいなっていう思いがあるのですが。このまま音楽が好きでいてほしいなぁ…って願ってます(笑)」
――息子さんも将来はミュージシャンを目指しているのですか?
「そうですね。将来はドラマーになる!と言っています。ギターも好きみたいで、うちの旦那さんが好きなロックバンドのKISSに、息子もいつの間にかハマっていて。自分で(KISSの曲の)ドラムを叩いたり、ギタリストのマネをしながら弾いてるんです。その姿を見てると、本当に音楽が好きなんだな~と思います。普段から歌うことも大好きで。朝から晩まで歌を口ずさんでいます。私も“普段はどんな歌を聴いているんですか?”と聞かれることもあるんですが、私の場合は息子が歌う曲を聴いていることが多いですね(笑)」
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沖縄の良さを改めて教えられた『涙そうそう』
いつか島唄だけのアルバムも作りたい
――3月からツアーがスタートしていますが、カバー曲だけでなく、沖縄の曲やこれまでの夏川さんの代表曲も聴けるのですか?
「はい! 沖縄の風を伝えて、このカバーアルバムからの曲を歌って、最後は沖縄の曲でみんなで踊りたいと思っています。もちろん『涙そうそう』もやります。今年で20年を迎えさせていただきましたので、『涙そうそう』もみなさんに聴いていただけたらなと思っています」
――2001年にリリースされてから20年という長きにわたって歌ってこられた『涙そうそう』に対してはどんな思いがありますか?
「20年歌わせていただいて、ありがたいことに今では海外でも『涙そうそう』を聴いてくださるファンの方がすごく増えました。ミャンマーや中国といった、いろんな国の言葉でカバーされて歌われているというお話もたくさん聞いています。ホントに、この曲に出会わなかったら今の私はないさーねーって言っています。今まで何回も歌わせてもらってて、まわりから、“もう飽きたでしょう?”って言われることもあったんですけど、全然そんなことなくて。毎回毎回、一言一言、相手に手渡しするような気持ちで大切に歌わせてもらってますし。この『涙そうそう』という曲はいつまで経っても色褪せずに、私の中で本当に新鮮なまま在ります」
――いつまでも新鮮な気持ちで歌える一番の理由はなんだと思いますか?
「小さい時から歌手を夢見てきて、平成元年に今とは違う名前でデビューした頃は、沖縄色をあまり出さないという方向性だったのですが、『涙そうそう』という曲に出会った時にすごく衝撃を受けたんです。それまで自分のために用意された曲を喜んで歌っている自分がいたんですけども、自分の中から、“ああ、こういう曲が歌いたい”って感じたのは『涙そうそう』が初めてだったんです。やっぱり自分の中に沖縄はあるんだなあと感じました」
――やはりそこにご自身のルーツを感じられたのですね。
「そうですね。『涙そうそう』に沖縄の良さを改めて教えられた気がしています。そこから三線にも興味を持って自分で弾きはじめましたし、今では沖縄の古典民謡がすごく大事だなと感じるようになりました。私は沖縄の方言はあまりしゃべれないのですけど、島唄もすごく大事にしなきゃいけないし、沖縄の古典民謡がなくならないように、私の島唄というのを残したいなと思って。今の目標は、島唄だけのアルバムを作りたいなと思っています。それがいつになるかはまだわからないのですけど。近いうちに作りたいなと考えています」
――そんな曲がライブでどんな風に歌われるのか楽しみですね。夏川さん自身がライブをする時にいつも心掛けていることはありますか?
「みなさんが緊張せずに、リラックスして聴いてもらえたらいいなぁと思っていつもやっています。全体的にゆったり目の曲が多いので、中には眠たくなったりする方もいるので(笑)。“我慢することないよ、眠たくなったら寝ててねーって。起こす曲を用意してるから大丈夫だよ~”と言ってます(笑)」
――いいですねー。なんだかホッとさせられます。
「そうやって寝てもらうこともあるけれど、最後は起こしてみんなで踊って終わるっていう感じですね。やっぱりライブでみなさんの顔を見ながら歌えるのが幸せなんです。今回はツアーのファイナルを大好きな大阪で行えるというのも楽しみなんです! 沖縄の楽曲を歌う時は、いつもお囃子で一緒に参加してもらっていたのですが、今回はそのようなことがちょっとできないので。その代わりに踊りを覚えてもらって会場でみんなとひとつになれたらいいなぁって思ってます。沖縄の踊りでカチャーシーというのがあるんですけど、そのカチャーシーの振りを、わかりやすく(ライブで)教えるようにしています。そうすると、それまで恥ずかしそうにしていた人も一斉にやってくれて、みんながひとつになれる感じがあって。ステージから見ていてもすごく気持ちが良くて嬉しいなぁって感じています」
――最後に、お客様にメッセージをお願いします。
「みなさんいつもたくさん応援していただきまして、ありがとうございます! 大阪のみなさんは一人一人が、“今日は楽しむよー!”っていう気持ちがステージまで伝わってくるので、逆にみなさんのそんな気持ちをパワーにして私も頑張れています。当日もみんなと心をひとつにして楽しい時間を過ごせたらなぁ~と思っているので、ぜひ皆さん生の声を聴きにきてください!」
Text by エイミー野中
(2021年6月10日更新)
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