「『Bursty Greedy Spider』で歌った通り
“ピンチこそ楽しむ!”という気持ちでやっていきたい」
ニューシングル『Bursty Greedy Spider』をリリースした
鈴木このみインタビュー
2022年のデビュー10周年に向けて精力的に活動中の鈴木このみ。5月7日にリリースされたニューシングル『Bursty Greedy Spider』はアニメ『蜘蛛ですが、なにか?』の4月からの2クール目のOPテーマとして痛快なインパクトを与えている。原作はシリーズ累計300万部突破の超話題作で、女子高生だったはずの主人公が、突然ファンタジー世界の蜘蛛の魔物に転生してしまい、凶悪な魔物が跋扈するダンジョンで、人間としての知恵と尋常でないポジティブさだけを武器に戦い抜く迷宮サバイバルストーリーだ。今作はサウンドプロデューサーに草野華余子氏を迎え、コロナ禍の不穏な空気を吹き飛ばす鈴木このみ最大出力のボーカルで圧倒! 声帯結節の手術を乗り越え、さらにレベルアップした歌声で爆走する鈴木がここに至る道のりと現在の心境を熱く語る。今回はリモートでのインタビューとなったが、画面越しからもしっかりと伝わってくるポジティブなオーラを放っていた。
「本当に完全復活ですね!」という言葉を
たくさんいただいて、すごく嬉しかった
――昨年、声帯結節の手術をされましたが、現在の体調はいかがですか?
「回復するのにどれぐらいかかるのか、すごく心配していたんですけども。4月に行ったツアーも無事に終えることができました。特に最後は大阪と名古屋の2DAYSだったので、それがやり切れたことで、“できるじゃん!”という自信につながりました! 手術後に2時間フルで自分のライブをするのはあのツアーが初めてだったんです。しかも全会場配信も行ったので。余計にすごくドキドキしてステージに立った記憶がありますが、初日の東京が終わってから、一気に肩の荷が降りたなという感じがします」
――そうなのですね。ちなみに、4月10日に行われたZepp Osaka Bayside でのライブはいかがでしたか?
「大阪は地元なのでスタッフさんからも、“今日は好きにやってきてイイから”と、送り出していただいて(笑)。すごくのびのびと、やりたい放題に暴れたなという感じですね(笑)。どの会場よりもMCが一番長くなりました。大阪にはなかなか帰れてなかったので、自分の中にもいろんな思いが溜まっていて、ついついいっぱい話してしまって…。もちろん歌も魂込めて歌ったんですけど」
――鈴木さんが無事にステージに復帰されるまで、ファンの皆さんも心配されていたと思いますが…。
「はい、手術前からファンの方が自分のことのようにずーっと見守ってくださっていて。ライブを観た方から、“本当に完全復活ですね!”という言葉をたくさんいただけてすごく嬉しかったです!」
――そんな大変な手術を乗り越えられて、今年は心機一転、生まれ変わったような気持ちで活動されているのでは?
「そうですね(笑)。すっかり心が晴れやかな状態です。声帯結節を持って歌ってきた4年間というのは、その時のベストは尽くしていたけど、これがなければもっと歌えるかもしれないのに…という気持ちがどこかしらに付きまとっていたので。そういう気持ちがなくなって、今はとにかく歌うのが楽しい!(実感込めて)という時期になりました!」
――本当によかったですね! 実際、手術の時はどのような覚悟で臨まれたのですか?
「なかなか手術ができなかった理由はいくつかありますが、手術をすることで自分の声がどう変わるかわからないということが一番不安だったんです。特に私はハイトーンボイスで早口で歌う曲が多いので。そういう曲を手術をした後も同じように歌えるのだろうか? みんなが好きな鈴木このみの歌というのを裏切ることにはならないのかな?と、すごく考えました。それと、私は本当に歌うことが好きで歌手になったので、手術をして何ヶ月か歌えなくなって、その間はお仕事もキャンセルしたりしなきゃいけないのかな?と考えたりすると、なかなか踏み切れないところがあったんです。でも、デビュー10周年が目前ということが私の中ではすごく大きくて。これだけ長く歌ってきてもまだまだ足りないってすごく思ったんです。特に、コロナ禍で歌える場所が減ってきているので、自分が思っているより、もっともっと歌いたいんだ…ってすごく思って。これからも長く歌っていくためにはこの喉の状態ではダメだと。そこでようやく決心できました。今は歌うのがめちゃくちゃ楽しくて、本当に手術してよかったなと思います」
MVはスタジオからライブをお届けしている雰囲気
ありのままの鈴木このみで勝負する!
――5月7日にはニューシングル『Bursty Greedy Spider』がリリースされました。このMVはライブ感が溢れる映像ですね。どういったテーマで制作されたのですか?
「ありがとうございます! 鈴木このみはライブで歌っている時が一番生き生きしている人なので、今回は鈴木このみのライブを実際に観たことがない人も、歌っている姿を予想しやすいようなMVを作ろうということでああいう映像になりました。あのMVに出演してくれているバンドメンバーとは実際にツアーを一緒に回っているので。現場の雰囲気も、スタジオからライブをお届けしているような雰囲気になったと思います」
――鈴木さんの衣装やヘアスタイルもロックな雰囲気で、今までのMVとはかなり印象が異なります。
「衣装はその時々のライブのコンセプトで違うのですが、あのMVではすごく潔い衣装にしようと思って。あんまり装飾の多くない、ありのままの鈴木このみで勝負するというところをお届けできたんじゃないかなと思います。楽曲の打ち合わせをした時にデビューの頃からずっと見てくれているスタッフさんが、ポツンと、“王者の帰還みたいな感じにしたいね”と言ってくれたんです。それはすごくいいキーワードだなと思いまして。カッコいい曲だけど、ずっとキリッとした顔で歌うのではなく、笑ってしまってるところもあります(笑)。これは意図的ではないのですが、術後、初めてバンドメンバーと会って、スタジオに一緒に入ったので、自然と笑顔が溢れてきてしまって(笑)」
――へー、そうだったのですね。
「はい、本当はもうちょっとクールにキマってる映像っていうイメージだったんですが、もう抑えられなかったんです。メンバーと、“おかえり!”“ただいまー!”っていうセッション感がすごく楽しくて。ついつい笑顔がいっぱい溢れ出たなという印象です」
――作られたものじゃなくて、ありのままの今の感情があのMVに映し出されているのですね。
「そうですね。本当に今のありのままの自分だなと思います」
アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』の主人公は自分と重なる
ピンチを楽しんでいるような瞬間がすごく似てるなと思った
――今回のニューシングル『Bursty Greedy Spider』はアニメ『蜘蛛ですが、なにか?』の主題歌となりましたが、このアニメはどのように受け止めていますか?
「まず、この主人公が私に似てるというところが面白いなと思いました。このアニメの内容は人間の女の子が蜘蛛に転生してしまって、リアルな生存競争を必死で生き抜いていく物語なんです。この物語の後半クールになると、主人公はどんどんスキルをゲットして進化して強くなっていきます。そして、戦いの時にたとえピンチになっても、“やってやるわ!”っていう感じで楽しんでいるような表情をチラッと見せたりして。自分から先手を打って戦いに挑んでいくんです。その姿は、声帯結節の手術をやるぞ!って決めた時の自分とぴったり重なったように感じました。私自身も手術をするまではすごく不安でいろんな葛藤があったんですけど。この声帯結節が無くなることで、もっともっと自由に歌えるんじゃないか、もっともっと歌が好きになれるんじゃないかというワクワクの方が大きかったので。(主人公が)ピンチを楽しんでいるような瞬間がすごく似てるなと思ったんです」
――お話をお聞きしていると、こちらもとても勇気づけられます!
「ありがとうございます!私も、“やったるわ~!”っていうタイプの人間なので(笑)。この主人公が頑張って生き抜いていく姿がすごくまぶしく見えるし、自分も勇気づけられて、こうであろうって思わされます。私自身もアニメに救われて、アニソンシンガーになろう!と思った一人なので。そういう気持ちがなければ、今のアニソンシンガーとしての鈴木このみはきっと存在しないだろうと思うと、すごくアニメやアニソンに愛情を感じています。今はコロナ禍でみなさん大変だと思いますが、どこかにそういうたくましさを持って、何があっても絶対に生き抜いてやるぞ!という気合いをみなさんにお届けできるんじゃないかと思います!」
――「運命は自分次第」「一度しかない人生さ」「まだまだ終われない」といった歌詞が耳に残りました。鈴木さんが気に入っているフレーズは?
「この曲は草野華余子さんが書き下ろしてくださいました。華余子さんとお仕事するのは今回が3回目で、これまでにもたくさんお話をしてきた方なので。私自身のことを全部受け止めてく歌詞に書いてくださいました。なので、私自身は好きなワードが選びきれないのですが(笑)、あえて選ぶとすると、“普遍性などクソ食らえですね”っていうワードです。そこはすごく開放感があって好きなんです(笑)。普段なかなか言えない言葉じゃないですか?」
――確かにインパクトありますね!
「そうなんですよ(笑)。レコーディングの時に華余子さんに聞いてみたら、“このみんが絶対好きだと思って入れてみたの”って言われて。“まさにその通りです!”と答えたエピソードがあります(笑)」
――ちなみに、“普遍性などクソ食らえ” というのは、言い換えるとどういったことでしょうか?
「(笑)うーん難しいですね…。正解かどうかわからないんですけど、私自身の解釈としては、いろんな人がいろんな正論を持っているけれど、それを決めるのは自分だから、いろんな人が言っている普遍性とか正論って関係ないでしょっていうことなのかなって」
――なるほど、ご自身の軸を大切にしていて、とてもたくましい姿勢ですね!
「今回はレコーディングする前に、自分のために歌おうって決めていたんです。デビューしてから出会う人の数も増えたし、自分に力を貸してくれる人や応援してくれる人もいるし、そういういろんな人との関わりの中で嬉しい荷物を背負わせてもらってる感覚がありました。単刀直入に言えば、誰かのために歌いたいっていうことだと思うんですけど。人との関わりの中で背負ってきたものがあることで、背中から後押ししてもらっているような感覚でずっと歌ってきたんですけど。今回は、(手)術明け、一発目なので、“これから自分がたくましく生き抜いていくために歌おう!”って決めていました。だから、ずっと一貫して本当にたくましい歌になったと思います」
――聴いている方も煽られるし、すごく鼓舞される迫力満点の一曲ですね。
「ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです!」
――ディストーションが効いた攻めのロックチューンという印象ですが、サウンド面で特に鈴木さんが気に入っているポイントは?
「やっぱりイントロ、アウトロに入っているギターリフが気持ちがいいなと思いますね! ドラムも歌に合わせてサビ前の、“最強 御免あそばせ”っていう、セリフのようなワンワードに合わせてとキメてくれているので、歌っていてもすごく爽快感があります!あと、ボーカル的にも結構遊び放題な楽曲になっています。手術の一週間前にレコーディングした術前ラストの歌声なので。どうせ手術するし、ここで喉が枯れてもいいから全部出し切っちゃおう!ぐらいの気合いを入れて歌ったのを覚えています」
――ということは、この曲のレコーディングは手術の前で、MVは手術の後に撮られたのですね。ちなみに、4月のツアーでも披露されたのですか?
「はい、バンドで披露しました! お客さんは収容人数の半分で声も出せないという制限があった中でやったのですが、それでもお客さんを目の前にして歌うこの曲は格別だなぁ~と思いました。マスクしてるけど伝わってるよーみたいなワクワクした顔でみんなが観てくれていて。ほんとにすごいライブ映えする曲だな~と感じました」
――そうなのですね。またいつか全ての制限を取っ払ってパフォーマンスされる日が待ち遠しいですね!
「そうですね。この曲は特にサビの部分でみんなとコール&レスポンスできる曲なので、コロナが終息して開放された瞬間にはぜひ皆さんにいっぱい声を出して一緒に盛り上がって欲しいなと思います!」
表題曲は自分のために
C/Wの『Crossroads』は誰かのために歌った曲
――カップリング曲の『Crossroads』はどんな気持ちで歌われましたか?
「この曲は『Re:ゼロから始める異世界生活 禁書と謎の精霊』(以下、リゼロ)というアプリゲームの主題歌になっています。『リゼロ』の主題歌はこれまでに何度も担当させていただいて。絶望に抗い、もがいてもがいて希望を掴むんだ!みたいな曲をずっと歌ってきたので。最初に聴いた時に、こういうちょっと明るいタイプの曲を『リゼロ』で歌わせていただける日が来たんだなということに、ちょっとびっくりしました!」
――鈴木さんにとっては新鮮な一曲だったのですね?
「そうですね。『リゼロ』に関しては、とにかく一貫して主人公のスバルくんの想いを代弁して歌ってきたつもりなんですけど。ずっと大切な誰かを守るために、自分が苦しい思いをしてもがいていくような感じで、苦しいところをずっと歌ってきたので。今回、ようやくちょっと肯定的な歌を『リゼロ』で歌わせていただいたなという感覚ですね。それを任せていただいたのがすごく嬉しかったんです」
――ロック的な疾走感がありつつ、緩急自在な曲調で、表題曲の『Bursty Greedy Spider』とはまたタイプが違いますね。
「同じバンドサウンドという共通点はあるので、一枚のCDとしてすごくいいものができたなという達成感があります。両方タイアップものということで、事前に打ち合わせをたくさんしまして、仕上がりとして、すごくバランスの良い一枚に辿り着いたなと。この2曲の違いとしては、表題曲が自分のために歌って、カップリングの『Crossroads』は『リゼロ』の主題歌として誰かのために歌った曲かなと思います」
10周年目の目標は日本武道館のライブ
そのために必死で頑張りたい!
――まだしばらくコロナ禍は続きそうですが、今後ライブに来られる方に向けて伝えたいことはありますか?
「なんだろうなぁ…、ライブに来ることもきっと正解の一つだし、来ないという選択も正解の一つだと思います。なので、“来てください!”とは安易に言えないかなと思うんですけど。やっぱり私としても今まで何回もライブをやってきましたけど、ひとつのライブに対する熱量が私もお客さんもそれぞれに上がっているんじゃないかと思います。来てくれた方に精一杯お返しするというのが私の役割だと思うので。今後も2時間のライブをすごく大事に作っていこうと思っています!」
――来年2022年に迎えるデビュー10周年に向けては、どんな思いで活動されていますか?
「デビュー当初は自分がこんなに長く歌っていられるとは…、そうありたいなとは思っていましたが、本当に想像できていたかと言われたら、どうなのかな?というぐらいだったので。今までずっと歌ってこられたことが嬉しいなと思いますし、支えてくださる皆様にとても感謝しています! 私自身は歌手なので、歌で何かを伝えていく人だと思うので、これからも歌で皆さんに恩返ししていきたいなと思います。目標として、10周年目に日本武道館でライブをやりたいというのを掲げているので、そのために必死で頑張りたいと思います!」
――記念すべきステージになりますね!
「はい、武道館のステージにはイベントでもまだ一度も立ったことがないので。そこからの景色を見てみたいなと思っています」
――そこに向かう過程として、今年はどんなことをしていきたいですか?
「今までのようにライブができなくなったので、今は制作に力を入れています。自分自身でも曲を作っていたり、本当に自分ができる精一杯のことをやっていこうと思っています。この1年はデビュー10周年に向けての一年になると思うので、みんなにどんどん楽曲を届けていきたいなと思いますし、水面下で着々とその準備をしていきたいなと思います!」
――ということは、次も間隔を開けずに新曲が届けられるかもしれない?
「頑張ります! まだ具体的にどうなるかは分かりませんが、歌いたいものが次から次に出てくるので、やりたい!と思ったことは行動していきたいなと思っています! コロナ禍で、昨年はライブツアーが延期になってしまったり、ファンクラブイベントができなくなったりと、残念なこともありますが、『Bursty Greedy Spider』で歌った通り、“たくましく生きる!”と決めたので。“ピンチこそ楽しむ!”という気持ちで、やっていきたいと思います!」
Text by エイミー野中
(2021年5月26日更新)
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