「大変だった一年の最後に、
幸せな音のシャワーを浴びて帰っていただきたい」
デビュー15周年記念ライブが12月23日に大阪市中央公会堂で開催!
“ポップスヴァイオリン”を軸にした唯一無二のヴァイオリニスト
NAOTOのインタビュー&動画コメント
'05年のデビューから今年で15周年を迎えたヴァイオリニストのNAOTO。10代からジャンルを問わず、数多くのアーティストのサポートとして活躍し、作曲家として手がけてきた楽曲はドラマやCM、舞台音楽など多岐にわたっている。“ポップスヴァイオリン”を軸にクラシックの楽器のイメージが強いヴァイオリンの既成概念を打ち破り、ライブにおいては華麗なパフォーマンスを繰り広げる。今年は未曾有のコロナ禍で予定されていた15周年記念のツアーは中止や延期を余儀なくされたが、10月に東京で開催された15周年記念公演がライブDVD『NAOTO 15th Anniversary Live-The New Black-』(完全生産限定)となって、2021年1月下旬にリリースされることが決定!また、12月23日には大阪市中央公会堂で『NAOTO 15th Anniversary Classical Concert』と題されたスペシャルな公演が開催される!大阪では久々となる待望の有観客ライブに向けての意気込みはもちろん、コロナ禍の2020年をどのような思いで過ごしてきたのか、デビュー15周年を迎えた現在の心境も含めて率直に語ってくれた。
こんなにも人前でヴァイオリンを弾かなかったことは人生初
誰かとアンサンブルをすることの楽しさに改めて気づいた
――まず、この大変な1年となった2020年を振り返っていかがですか?
「そうですね…、2月の終わりからライブは全部なくなりましたからね…。6月に無観客のライブ配信するまで、丸4ヶ月…。僕は、18歳からプロのヴァイオリニストとして活動していますが、子供の頃も含めて、今までの人生の中でこんなにも人前でヴァイオリンを弾かなかったことは、たぶん無かったと思います。最初は何をしていいかわからないので、インスタライブしたりしていましたが、プロが無料でヴァイオリンを弾いて一般の人に観せるというのは、ちょっと違う気がしていて…。でも、ファンの方々に聴いてもらう機会がなくなっちゃっているから、なんとかしないといけないなと。はじめはひとりでヴァイオリンを弾いてYouTubeでやってみたり、仲の良いミュージシャンとオンラインでセッションしてやってみたりと、いろんな形を模索しながらやっていました」
――なんらかの形で聴き手に音楽を届けようという思いから?
「そうですね。そうやってお客さんのことを考えてやっていたんですけど、自分が誰かとアンサンブルをするというのがこんなにも楽しいんだなということにも気づきましたね。6月の配信ライブの前にメンバーとリハーサルもしていたのでその時に、4ヶ月ぶりぐらいに音を合わせたんです。自宅でレコーディングはやっていたけど、他の人の演奏はずっとヘッドフォンやスピーカーからしか聴けてなかったので、ちゃんと耳で直に聴けるというのは嬉しかったなぁ…(噛みしめるように)」
――HPで8月のバースデーライブ(*東京限定の『NAOTO BIRTHDAY LIVE 2020 “SUMMER”FULL BLOOM』)の映像を拝見しました。NAOTOさんがなんともいえない幸せそうな表情でヴァイオリンを弾いているのがとても印象的でした。
「あのライブが初の有観客ライブですね。6月の配信ライブもメンバーと一緒に音を出せたことは楽しかったんですけど、いかんせんお客さんが目の前にいないので…、どうしていいものやらと。聴いくださっている方とキャッチボールができないので。会場の中ではスタッフも人数制限しているから、僕がトークで何か言ってもそれに反応している暇がないんですよ。それで、面白くなかったかな?とか、弾き終わったときに拍手もないから。どっか間違ったかな?とか思ったりして…。心が強くないとできないですね。慣れたくなかったけど、それも慣れました(笑)。」
――今まで経験したことがないような状況下でのライブですもんね。
「そうですね。今までずっと楽しく音楽を表現してきたつもりなのに…。なんだか、昔経験したコンクール会場みたいな感じを思いだしました。コンクールのときは先生たちも拍手しちゃいけないので」
――コロナ禍での有観客ライブではお客さんの声出しはNGですが、拍手は大丈夫なんですよね?
「はい。そういう中で、最近はライブの楽しみ方も変わってきました。お客さんは声を出しちゃいけないけど、楽しんでもらえているかどうかは、マスクをされていても、目や顔の表情だけで十分伝わってきますよ。本当はダメかもしれないけど、ふいに声がもれてしまうようなしぐさをされた時に、僕はよし勝った!って思っています(笑)。」
――(笑)なるほど。たとえ声出しはNGでも、生の場合はお客さんからなんらかの反応はありますもんね。
「はい。反応があると嬉しいですね」
ヴァイオリンの技術面での集大成が『Shining』で
『Stay With Me』は作家としての集大成
――デビュー15周年記念日となる4月6日にシングル『Shining』と『Stay With Me』を2曲同時配信されました。あの2曲は今年になってから作られた新曲ですか?
「そうですね。曲を書いたのは2月の終わり頃で、3月頭にレコーディングして、その数日後に緊急事態宣言が発表されたんですよ」
――『Shining』はバンドサウンドの明るく軽快な曲調、『Stay With Me』は美しいバラードと、まったくタイプが異なる2曲ですね。
「僕はデビューの時からヴァイオリンでダンスミュージックを弾くということと、ヴァイオリンらしい綺麗な音色が映えるようなバラードを書くという二極化で挑んできました。デビューアルバムの中の『Sanctuary』という曲もロックバラードはアコースティックなアレンジにして、『Si-So♪ Dance』という曲では四つ打ちのダンスナンバーをやっています。そういうことをずっと意識して、どのアルバムもその2パターンは入れてきたんです。その『Sanctuary』のイメージが強くて、ずっとバラードの癒し系のアーティストと言われ続けていたんですけど、NHKの『スタジオパークからこんにちは』のテーマ曲『HIRUKAZE』がみなさんの耳に届くようになってからは明るいダンスナンバーもやっているということがようやく伝わるようになりました。今年はデビュー15周年ということもあって、原点に帰りつつも進化する方向を見せないといけないなと思って。どちらも自分の中では新しいチャレンジの作曲とヴァイオリンの表現を織り交ぜたつもりです」
――『Stay With Me』は澄んだアコースティック楽器の音色を際立たせてしっとり聴かせつつ、徐々に力強さを増してゆくような展開で。コロナ禍で落ち込んだり孤独を感じている人に希望を抱かせるように感じます。
「基本的にバラードを環境音楽的なほわ~っとした曲にはしたくなくて。この曲はカルテットとピアノだけで成立しているんですけど、僕のイメージはロックバラードなんですよ。楽器の編成によってクラシックっぽく聴こえるんですけど。僕が作曲をした時は(自分の中で)ドラムとベースが鳴っているんです。どんなバラード曲でも熱いロックバラードのように盛り上げないと!って思って。そのために、曲に起承転結っていうのは絶対必要だと思っています」
――今の言葉でいうと、“エモい”っていう感覚でしょうか?
「そうですね。基本的にエモーショナルなものを作ることが大事だと思っています。もうひとつの『Shining』に関しては、僕が大好きなダンスミュージックではあるけれど、今回はどこか古めかしさを残すフュージョンの流れを取り入れたくて。難しそうには聞こえないかもしれないけど、実はすごく難しいことをやっています。あのリズムの配置を音符できっちり表現するというのはすごく大変なんです。最近は耳馴染みの良い曲を書いてくださいと言われることが多くて、自然にそうしてたんですけど。こういう状況で出すのなら、自分勝手にやりたいようにやってしまおうと思って(笑)。逆にこんなチャンスないし。それで、僕の好きな方向で久しぶりにやろうと思いました。それと、この15年で培った経験と自分の中で確立してきたヴァイオリンの技術や発音の仕方だったり、自分の中で完成してきたものをかっちり出したいなと思ってああいう曲になりました」
――NAOTOさんの15年の活動の集大成的な一曲になったんですね。
「そうですね。技術面での集大成が『Shining』で、作曲家としての集大成『Stay With Me』ですね」
今まで以上に感情が揺さぶられることをやらないといけない!
――改めてお聞きしたいのですが、今年デビュー15周年を迎えてどのようなお気持ちですか?
「あっという間でした。まず、15年続くとも思ってなかったですしね」
――え、そうなんですか?
「18歳からポップスのレコーディングやライブのバックで弾くようになって。フロントにいらっしゃる方を支える側にいたので。アーティスト活動というのがどれだけ大変なことかというのはわかっていました。ソロデビューさせてもらえる機会もあったのですが、自分の思い通りにはやらせてもらえないように感じたのでお断りしていたんです。30歳を超えてからは、ようやく自由に好きなことをさせてもらえそうだったので、それなら一枚作ってみようかなと思ってソロデビューすることを決心しました。でも、数年活動したらまた今までの(サポートミュージシャンの)仕事に戻るんやろうなって…。それが、気がつくと15年続いてます(笑)」
――これまで、『のだめカンタービレ』などの有名なドラマの曲、NHK『スタジオパークからこんにちは』のテーマ曲『HIRUKAZE』やMBS毎日放送のお天気テーマソング『ハレナハレ』など、NAOTOさんが手がけた曲はいろんなところで耳にしてきました。
「それはありがたいですね。自分では考えつかないことを提案してもらっているので、本当に周りの方々に助けてもらっています。ひとつの仕事が次につながっていくことがすごく多いですね。NHK『スタジオパークからこんにちは』のテーマ曲を手がけることができたのもそうです。そのだいぶ前に広島のイベンターさんが“広島のテレビ局のテーマ曲を書いてみませんか?”と声をかけてくださって。それで、テレビの情報番組の音楽ってどうすれば視聴者の耳に残り、愛される曲になるんだろう?といろいろ研究しました。大泉洋さんが所属するTEAM NACSさんの舞台音楽を作曲した時は、演者さんの邪魔にならず、よりシーンを引き立てる音楽を書くにはどうしたらいいか、ヴァイオリンをどの程度フィーチャーすればいいのかバランス感をすごく考えました。“NAOTOさんはいろんなことできますよね”ってよくいわれるんですけど、いろんなことができるようにさせてもらえてきただけです。僕はヴァイオリンを弾き続けられれば、それが一番ハッピーです」
――軸にあるのはNAOTOさんのヴァイオリンへの愛なんですね。
「はい、もうそれしかないですね。だから、たとえどんな状況でも、僕はヴァイオリンを弾けばなんとかなる!と、以前なら、そう断言できましたし、今でも軸はそう思っています。でも世間がエンターテインメントに関して、以前より後ろ向きになっているように感じます。それを回復させるのはすごく大変なことかもしれない。でも、僕はヴァイオリンを弾き続けることで何か変えられるかもしれないという可能性を信じて、これからも弾いていこうと思っています。」
――でも、ライブのあの生の空間でしか体感できない音楽が与える感動って絶対にありますからね。
「そう!だからそこをちゃんとやり続けないといけないし、それぞれの事情で大変な中、ライブに来てくれたお客さんが、今まで以上に感情が揺さぶられるようなことをやろうと気合が入ります。僕も含めて、全アーティストがテキトーなライブを一回やってしまって、もうライブに行くのはもうやめようって思われるようなことはしてはいけない。それが一番大事なことですね」
今後に向けての所信表明的な思いが
ライブのセットリストにも反映されている
――1月下旬にはライブDVD『NAOTO 15th Anniversary Live-The New Black -』がリリースされますね。
「これは10月に東京でやった15周年記念のライブ映像です。楽しかったですね。今年4月に予定されていましたが延期になっていたので、セットリストは全て変更しました。当初考えていたのは、この15年間をファンの皆さんと一緒に振り返るような内容だったんですが、心境の変化もあって、この15年間でヴァイオリンを演奏しながら考えてきたこと、今までとこれからのことを皆さんと共有できるような内容にしたいと思ったんです。自分がやりたいのはこういうことで、今後5年、10年、やっていこうと思っています!という所信表明的なライブになればという思いがセットリストにも反映されています。それは、12月23日の中央公会堂のライブ(『NAOTO 15th Anniversary Classical Concert』)もそうです」
――そうなんですね!
「“Classical Concert”というタイトルなので、厳かでクラシカルなイメージがあるかもしれませんが、まったくクラシックじゃないんです(笑)。実はスタンダードのクラシックの曲はやらない予定です。ちょいちょい(クラシックの)エッセンスは入れていますけれど」
――開催されるのが12月23日のイブイブということで、クリスマスにちなんだ曲もされるのかなと?
「ちょっとは、クリスマスソングをやりますけど(笑)。めっちゃクリスマス~!には寄らないです。…寄ったほうがいいのかな(笑)」
――レトロな趣で伝統がある中央公会堂が会場ということで、どんな雰囲気のライブになるのかとても興味深いですね。
「デビュー前に(28歳ぐらいの時に)演奏したことはありますが、それ以来なのでとても楽しみですね。この日は通常、僕がバンドでやって盛り上げている曲をアコースティック・ヴァージョンに変えて演奏します。今までやったことがないので、とても面白いと思います。以前ならこういうアコースティックな編成になるとゆったりとしたバラードが多くなってたかもしれません。10年前まではテンポ感がある曲をこの編成でどう表現すればいいのかノウハウがなかったのですが、この4、5年でなんとなくわかったことをちゃんと出そうと思ってます」
――NAOTOさんにとって、地元大阪でのライブはやはり気分が違いますか?
「そうですね。気分はぜんぜん違いますね。本番前に母に会わないといけないので(笑)。僕はあまり(ライブ前に)緊張はしないんですけど、イイ緊張感を持ってやりたいじゃないですか(笑)。そういう時に普通のテンションで、“元気?”って来られるのはちょっと…(笑)」
――良い感じですね(笑)。では、最後にお客様に向けてメッセージをお願いします。
「まず、10月に大阪でライブができなかったこと、本当に申し訳ありませんでした。東京まで観にきてくれた方もいらっしゃると思いますが、東京だから行けなかったという方もたくさんいらっしゃって、とても残念だったという声も届いています。だから、年内にどうしても大阪でやりたかったんです。10月に東京で開催したライブとはまた違う趣のヴァイオリンの演奏を観せられると思います。それを大阪だけでできるというのは嬉しいですね。そういう環境を与えてもらってとても感謝しています。今年いろんなことがあってみなさん大変だったとは思いますけれども、最後に幸せな音のシャワーを浴びて帰っていただきたいです。このような状況なので、行こうかどうしようかと迷ってらっしゃる方は本当にご無理をなさらず。そして、ご来場いただいた皆様には、セットリストを考えた段階ですごく大事なコンサートになることは確信できたので、“これを聴けて良かったね”って思ってもらえるライブにしたいなと思っています。当日は感染拡大防止対策をして万全の態勢で臨みますので、どうぞよろしくお願いします!」
Text by エイミー野中
(2020年12月17日更新)
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