結成20周年&デビュー15周年を飾るDef Techの 『Powers of Ten』 コロナ禍でとっぷり疲弊した心と体に寄り添う 錆びることのない極上のミュージックを詰め込んだ 10thアルバムが完成! Microインタビュー
Def Techにとって2020年は、結成20周年とデビュー15周年の節目を刻む年。その年に、10枚目のアルバム『Powers of Ten』が完成した。先にデジタルリリースされていた『Like I Do』(M-3)を筆頭に、オールドスクールのマナーと今のスタイルが融合した『Make Some Noise(Feat.YAY)』(M-8)や、コロンとした軽やかなウクレレの音色と、ひざを突き合わせて語り合うかのようなメッセージが溶け合うラストの『All I Want Is Your Love』(M-10)まで、ShenとMicroならではの磨き上げられたハーモニーがぎっしり。先ごろ公開された『Surf Me To The Ocean』(M-1)のミュージックビデオではプロサーファーの小林直海や松岡慧斗、大橋海人、大野修聖をフィーチャー。スマートフォンの画面いっぱいに広がる海の深い色合いも、襲い掛かるような白い波頭をアクロバティックにライドするサーファーの姿も圧巻の迫力。インタビューで「何が起きても海とともに暮らしてきた」とMicroは語っていたけれど、静かに打ち寄せる波は穏やかで、猛々しくうねる波はこちらを駆り立てるようで、まるでDef Techの音楽同様に聴き手にさまざまな想いを抱かせる。20周年、15周年のアニバーサリーにこれ以上ないほどの気持ちを詰め込んだ新作についてのインタビュー、いつもながらどこを切ってもパンチラインだらけのMicroのトークをお楽しみください。12月21日(月)にはHYとの共演によるライブ『GREENS Presents HAPPY MUSIC LOVERS』も開催!
――そうなんですよね。このエッジィな『Make Some Noise(Feat.YAY)』が、続く『Best Days』(M-9)に込められた歌心や、1曲目『Surf Me To The Ocean』の音の持つ柔らかさや温かさをより引き立たせている。10曲を通じて、鋭さと穏やかさのどちらの良さも感じることができます。
「僕も『Surf Me To The Ocean』が大好きで、このアルバムは1曲目のこの曲があることで全部のパーツがはまっていった気がします」
――アルバムはいつ頃制作されていましたか?
「9曲目の『Best Days』は5年前から制作に入っていたもので、Shenの歌詞も固まってきてはいたんですけど、僕自身のリリックが全然仕上がらなくて。5年前はアーニー・クルーズJr.さんがセッションの時スタジオにいてくれたんですけど、そのアーニーさんが4年前に亡くなられて。自分のメッセージも含め、そういう生と死の問題もここにきて自分の中で消化できて、5年かかって紡ぎ出せました。そういう曲もあれば『Surf Me To The Ocean』とか『Face 2 Face』(M-2)はダダッと2~3日で仕上げて去年のうちには完成していました。けど、コロナに入ってから本当にこの曲で歌っていることは正しいのか?これは今みんなが聴けるメッセージなのかということを考えて。3月頃だったら『Face 2 Face』は聴けなかったかもしれないし、人と会っちゃいけない時期にはこのアルバムは出せなかったかなって。だから、時を待ちました。今の11月という時にこのアルバム全体が聴けるものになったなって」
――5曲目の『I Like Me(Day Time)』と7曲目の『I Like Me(Night Time)』はアレンジは違いますが歌詞はまったく同じで、この2曲の間に『The Wheel of Fortune』(M-6)が入ることでとてもドラマチックな流れを感じます。決してハッピーなストーリーではなく内省的な曲ですが、この3曲が生まれたいきさつは?
「『The Wheel of Fortune』は叩き台としてはできあがっていたんですが、歌詞があまり進まなくて完成を見ないままだった曲で。その間に『Surf Me To The Ocean』や『Face 2 Face』のデモに取り掛かり、その時にNight Timeのデモもできあがったので先にそっちを完成させて。それからプロデューサーのNagachoと作業していく中でDay Timeが上がって。そしたら昼と夜で世界観がまったく違うし、僕の大好きなビル・ウィザースの『ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス』、『ラブリー・デイ』とか、自分の中にずっとあったエッセンスをNagachoが引っ張り出してくれたんですね。それで、“2曲あるけどどっちにする?甲乙つけがたいね”なんて話しているうちに『The Wheel of Fortune』の歌詞も固まってきて、1曲目の『Surf Me To The Ocean』から順に並べてみると、間に1曲挟んだだけで歌詞も同じなのにまったく世界観も違って、刺さり方も違って」
――何度も聴きましたが、違うテイクかなと思いました(笑)。『I Like Me』のストーリーはとても意味深で切なくもあって、その間にある『The Wheel of Fortune』は、『I Like Me』の歌詞に込められた物語をより深める作用があるように感じました。出会った君と僕の間には思うに任せない現実があって、その中で内に向かっていく心情が痛いほど赤裸々に綴られていて。この3曲の流れは、まるで小説を読むような感覚です。
「確かに歌詞の言葉数も多いですしね。僕は特に『I Like Me』のサビが好きで、“君といる時のこの僕が好き 僕といる時の君も君は好き、ねえ?”っていうところですね。若い時って、相手のことが好きな自分を好きなのかもわからず、相性が合うのかもわからないまま“好き”って気持ちだけが先行して、恋に恋しちゃっている。でもそれがずっと続くわけじゃなくて、いつかどこかで歯車がかみ合わなくなってきたり、ちぐはぐになってしまう。だんだん成熟してくるにつれて、“この人といると居心地が良い”とか、“この人といる時の自分がいい感じなんだよな”という見方ができるようになってくる。そう思える関係って、夫婦であれ親友であれいいなと思うんですね。この曲は自己投影みたいなものもあるし、俺やShenの恋愛ソングというよりも、男女でも同性同士でも人間同士の関係性とか、その中にある感情の動きを書いていますね」
――タロットカードにWheel of Fortune=運命の輪というカードがありますね。カードの絵柄には人生の浮き沈みを含めた運命が集約されていて、出会いやすれ違い、変化などのキーワードがあって。『I Like Me』のサビが、幸せなようで報われない切なさを感じる歌声に聴こえたり、一見すると逆の意味に思えるキーワードを含むカードを連想させるような余白が『The Wheel of Fortune』にはあって。そういった1つ1つがこの3曲の持つドラマ性をより色濃くしている気がします。
「『The Wheel of Fortune』は、このアルバムを通して一番ネガティブな自分をさらけ出していて。歌詞にもある、幼い頃から自分の中に刺さっているトゲ。それは何かと言えば、親が厳しく育ててくれて、その厳しさがありがたいのはわかっているんだけど、たとえば“お前は歌がうまくない”とか“背が小さい”とかの何気ない言葉なんですよね。親にしてみればそこまで本気で言ってないんでしょうけど、子供にとってはそれが刺さったままだったりして、そういうのって幼少期の人格形成にかかわっていたりするんですよね。自分にとってこの曲はセラピーのような、自己分析のようなものですね」
「HYは沖縄の風、僕らはハワイの南国の風を運んで大阪の空気がさらに温かくなるような、それぞれに違う情緒をお届けできたら。HYの世界、僕らの世界へお客さんを連れ去れるようなライブにしたいですね。12月末にはBillboard Live Tokyoでライブもあるので、そちらも楽しみにしていて欲しいです!」
《収録曲》 01. Surf Me To The Ocean 02. Face 2 Face 03. Like I Do 04. Instabation 05. I Like Me (Day Time) 06. The Wheel of Fortune 07. I Like Me (Night Time) 08. Make Some Noise (Feat.YAY) 09. Best Days 10. All I Want Is Your Love
Profile
デフ・テック…中国生まれハワイ育ちのShenと、東京生まれMicroによる2人組。ユニット名の名付け親は旧友のJESSE(RIZE)で、“テクニックをひけらかさない”の意味から来ているという。ヨコハマタイヤのCM曲となった『My Way』をきっかけに、’05年リリースの1stアルバム『Def Tech』が250万枚を超える空前の大ヒットを記録。同年インディーズアーティストとして初の『第56回 NHK紅白歌合戦』に出場。価値観や音楽性の違いにより’07年に解散するものの、’10年に約4年ぶりのアルバム『Mind Shift』を携え活動再開。Micro、Shenそれぞれに他アーティストへの楽曲提供やミュージカル出演などソロでも活躍。’14年4月、Microが日本初のラップミュージカル『IN THE HEIGHTS』に主演。全国30公演を走破。これまでハワイや台湾、香港や中国でのライブを行っている。’20年9月デジタルシングル『Like I Do』リリース。この曲はハワイのサーフィンの歴史をたどるドキュメンタリー『WORLD SURF JOURNEY ~ROOTS OF HAWAII~』テーマソング。同番組ではMicroがハワイサーフィンの歴史とハワイアンにとってのサーフィンの意義を探り、伝説のサーファーたちにインタビュー。トロントビーチ映画祭Best Surf Film特別賞に輝いた。11月18日には2年ぶり10作目となるニューアルバム『The Powers of Ten』をリリース。12月22日には、『Def Tech』から『Cloud 9』までのオリジナルアルバム9作品と、過去のライブ映像を収めたスペシャルDVD2枚をセットした『Def Tech Special Box Set』をWEB限定でリリース。12月21日(月)オリックス劇場で開催される『GREENS Presents HAPPY MUSIC LOVER』にHYとともに出演。12月28日(月) Billboard Live Yokohama/ 12月30日(水)にはBillboard Live Tokyoにてライブも決定。