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誰でも歌える歌じゃなくて、雨のパレードだから歌える歌を
逆境の中でつかみ取った個性と音楽を福永浩平(vo)が語る
『Face to Face』インタビュー&動画コメント
「自信を持って過去最高のアルバムだと言える」 誰でも歌える歌じゃなくて、雨のパレードだから歌える歌を 逆境の中でつかみ取った個性と音楽を福永浩平(vo)が語る 『Face to Face』インタビュー&動画コメント
コロナ禍にただただ翻弄された’20年が終わろうとしている。全人類に、全音楽人に突き付けられた大いなる課題に、途切れぬ配信ライブで声を届け続ける者、ひたすら沈黙を貫く者、絶望の果てに歩みを止める者、そして、作品で回答する者…。雨のパレードが激動の1年の終わりに世に放つのは、今年2枚目のアルバムリリースとなる意欲作『Face to Face』だ。前作『BORDERLESS』(’20)を携えた全国ツアーを道半ばで断念せざるを得なくなるという逆境の中で、メンバーが膝を突き合わせ、今一度音楽を奏でる喜びと意義、それを求めるリスナーやオーディエンスとの絆と向き合った今作は、さまざまな実験と挑戦と再認識を経由し、雨のパレードが新たなるビジョンとタフネスを手に入れた自信と輝きに満ちている。フロントマンの福永浩平(vo)が、心境の変化も、秘めたる想いも、余すことなく真摯に語ってくれた『Face to Face』という頂の全貌がここに――。
僕たちもつながっている感覚が欲しかった
――今年1月にリリースされた4thアルバム『BORDERLESS』('20)に続いて、12月には早くも5thアルバム『Face to Face』をリリースするに至った理由を聞いておきたいなと。
「やっぱりコロナの影響で、『BORDERLESS』のツアーが途中で中止になったのが大きくて。僕たちもすごく楽しみにしていたし、ちょうど改めてライブに力を入れ始めた時期だったから、その出鼻をくじかれた感覚もあって。それによって、お客さんと実際に顔を合わせるフィジカルな場が全くなくなって…僕たちもつながっている感覚が欲しかったんだと思うんですよね。そんなとき、多分みんなが今一番喜んでくれるのがこれ=『Face to Face』かなと思って。あとは、“今年中にもう1枚出してやる!”みたいな、自分の中での挑戦もありました(笑)」
「そうですね。前作『BORDERLESS』は、蔦谷(好位置)さんと一緒に作った曲と、亮ちゃん(=是永亮祐・元b)がいた頃のストックから作ったんですけど、今回は『IDENTITY』(M-4)以外は7月頭にメンバーと会えるようになってから作ったものなので、純粋に3人で0から作ったアルバムは、『Face to Face』が初めてになりますね」
「今までではミックス後の短い期間でエンジニアの方とイメージを擦り合わせなきゃいけなかったのが、ミックス前どころかレコーディング前に自分たちである程度形にできるようになったので、全てが健康的というか、エンジニアの方もやりやすくなったと思いますし。曲作りの段階でいろいろ詰められたので、『Face to Face』はいい作品になったと思うし、自信を持って過去最高のアルバムだと言えると思います」
このアルバムを通して、自分にしか歌えない歌を追求していきたいなと思った
――アルバム冒頭の『scapegoat』(M-1)からもそのムードと自信はビシビシ伝わってきて。
「それこそ1stアルバムの『New generation』('16)とか2ndの『Change your pops』(’17)の頃は、フェスで4つ打ちバンド勢が台頭していたので“絶対に負けねぇ!”と思っていたし(笑)、もちろん当時も自信を持ってやってはいたんですけど…やり方がちょっと独特だったが故に立ち位置も独特になり。でも、今改めて、正攻法で自分たちのやりたい音楽にグッと近付けている感覚があるんですよね」
「今回は嬉しいことにどの曲をリードにしようかすごく迷って、『Dear Friend』も選択肢の1つでもあったんですけど、自分で作っておきながらまだちょっと早いかなと思って(笑)。聴き心地も結構ローファイな感じにしているので。今は自宅でも普通にきれいな音で録れる時代だから、サブスクで全然知らないアーティストの音源を聴いてもすごくクリアなんですよ。だからこそ、ローファイがちょっと目立ってくるというか、昔のアナログ機器を通してノイズが乗っている音が珍しかったりもして。カニエ・ウェストのゴスペル一発録りアルバム『JESUS IS KING』('19)も、ほぼライブ音源で音のバランスもめちゃくちゃだけど、すごく新鮮で何かいいんですよね。エンジニアの片岡恭久さんとは前作でも数曲一緒にやらせてもらったんですけど、元々は機材マニアでアナログ機材もたくさん使うタイプの方で、今回はあえてノイズを残している曲も結構あって。でも、そこが僕たちとしては光るポイントというか、グッときたりもするので。レコードもノイズが乗っているからこそよく聴こえたりもするし」
「前作だと『Summer Time Magic』(’19)とかを片岡さんにやってもらっていて、あの曲はむしろハイファイなんですけど、クオリティの高いハイファイな音をちゃんと作れるエンジニアの方って、バンド界隈だとなかなかいないと思うんですよ。それもできた上で、なおかつアナログの良さも心底分かっている方なので、このアルバムは片岡さんに全曲やってもらいました」
Album 『Face to Face』 【初回限定盤】 発売中 3000円(税別) ビクターエンタテインメント VICL-65458 ※初回限定盤はボーナストラック1曲を収録。
【通常盤】 発売中 3000円(税別) ビクターエンタテインメント VICL-65459
<収録曲> 01. scapegoat 02. Strange GUM 03. if 04. IDENTITY 05. Have a good night 06. resistance 07. Dear Friend 08. partagas 09. Flash Back 10. one frame 11. Child’s Heart
Profile
あめのパレード…写真左より、大澤実音穂(ds)、福永浩平(vo)、山﨑康介(g)。’13年に結成、’16年にメジャーデビュー。80sポップ、インディR&B、エレクトロハウス、アンビエントなど様々なジャンルと洋邦の枠を超えた音楽性と、アナログシンセやサンプラー、ドラムマシーンなどを取り入れた、バンドという形態にこだわらないサウンドメイクを武器に新世代のポップスを提唱。そのボーダレスな音楽性に、アジアを中心に海外からの注目度も高まっている。’19年に入り現在の3人編成となり、4月にシングル『Ahead Ahead』をリリースし第二章の幕を開けた。続いて7月に『Summer Time Magic』、9月に『Story』を配信。’20年1月には4thアルバム『BORDERLESS』をリリース。同年2月よりスタートしたツアーが、東京・大阪・福岡・鹿児島公演を残す形で、新型コロナウイルスの影響により中止となり、8月に初の配信ライブ『ame_no_parade DIGITAL LIVE 2020 "BORDERLESS ver.2.0"』を開催。同月に「IDENTITY」を配信、12月23日には今年2枚目となるニューアルバム『Face to Face』をリリースした。
「雨パレの取材は結構久々で、2ndアルバム『Change your pops』('17)以来。あの頃は正直、自分たちの音楽性×野望の実現×シーンとの親和性のさじ加減に葛藤しまくりの印象でしたが、3年の時を経た『Face to Face』はその全てが絶妙にアップデートされていて、何より福永くん自身がより音楽を楽しめているのが、音源からも会話からも分かりました。あふれる創作意欲に身を委ねた新作ですが、音楽的欲求を満たすだけじゃなく、社会を、時代をより良くしたいという願いみたいなもの…福永くんの芯にある熱さは相変わらずだなと思えたのもうれしかったな。それでいて業界を生き抜く処世術を少しずつ身に付けている感じもするし、この期に及んでまだまだ伸びしろを感じる。海外のトレンドを巧みに取り込んだアーティストが存在感を増す昨今、雨パレにも改めて勝機があるんじゃないかな。個人的にはa flood of circleの佐々木亮介(vo&g)くんとか、ROTH BART BARONの三船雅也(vo&g)くんとかと接触してほしいなと思う。何か通じるアンテナがあると思うんだよな~」