「他のインディーズバンドと違うことをしたい その軸だけを、ずっとブれずにやっていきたい」 新レーベルLukie Wavesから、大阪北摂発のバンドRe:nameが 初の全国流通盤『postmodern indie』をリリース!
2016年3月、高木一成(b&vo)、Soma(g&cho)、ヤマケン(ds&cho)によりに結成された大阪北摂出身のスリーピースバンド、Re:name。これまでにEP3枚、シングル3枚(デジタル含む)、アルバム1枚を発表。1stアルバム『We Won’t Know』は2019年度タワレコ丸ビル店で年間チャート1位を、3rd EP『Lovey Day』は同じく年間チャート3位をそれぞれ獲得。じわじわと知名度を上げ、COMIN’KOBEや未確認フェスティバル、FM802 GLICO LIVE NEXTなどのライブイベントに出演。また、9月に行われた『KANSAI LOVERS 2020』ではOAを務めた。2020年11月25日、Lukie Wavesより、初の全国流通盤となる『postmodern indie』をリリース(実は“Lukie Waves”というレーベルネームは、ボーカル高木が名付け親)。配信でも聴くことができる10曲に加え、CD盤では『Somebody Like You (2020 ver.)』『ティーンエイジャー』の2曲も収録されている。“脱近代的なインディーミュージック”と銘打たれた今作は、洋楽に影響を受けたキャッチーなメロディとサウンド、そして青春の初期衝動が詰め込まれた楽曲など、実に多彩なジャンルの音楽が、英詞と日本語詞を巧みに織り交ぜて歌う高木のボーカルに包括されている。Re:nameは一体どんなバンドなのか。メンバー全員にインタビューを行った。ぴあ関西版WEB初登場!
家が近所の同級生3人組バンド
――まず、結成の経緯を教えてください。
高木一成(b&vo) 「僕とドラムのヤマケンが高校1年の1年間だけ、別の4人組バンドを組んでたんですけど、あんまりうまくいずに解散して、でも僕ら2人は本格的にバンドをやりたかったんで、中学の時仲良かったSomaがギターをやってたので、“3人でやってみーひん?”と僕が2人を繋げました。ヤマケンは中学別やったけど、俺とSomaは一緒で、2人は面識なかったので、仲良くなるために3人でユニバ行ったり、青春18切符買って滋賀まで電車で行ったりしてました」
ヤマケン(ds&cho) 「その割に、一成がめっちゃ1人でどっか行くんです。僕とSomaまだ慣れてないのに、2人にさせられて(笑)」
――それは2人を仲良くさせようという作戦?
高木 「いや、僕の天然ですね。全く気にしてなかった」
全員 「(笑)」
――でもそのおかげで仲良くなって?
高木 「はい。高1の終わりの3月25日にRe:nameを結成しました。ほぼ高2から3人でやり始めた感じですね」
――一成さんは前身バンドでもベースボーカルだったんですか?
高木 「ベースコーラスでした。ギターボーカルがセンターにいて、たまに歌うコーラスみたいな。メインボーカルじゃなかったんですけど、歌うのは好きやったんで」
ヤマケン 「僕、前のバンドの時から一成歌うまいなぁと思ってて、覚えてるかわかんないですけど、前のバンド解散した時に、僕が一成に“ボーカルしたらええんちゃう?”と言ったんですよ。今そこにかなり誇りを感じてまして(笑)」
――ヤマケンさんが見出したと。一成さんはそう言われてボーカルをやろうと思ったんですか?
高木 「そうですね。前のバンドでもちょいちょいボーカルみたいなことはやってたし、曲も作ってたんで。で、中学の友達に暇なギターのヤツおるわって声かけて(笑)」
Soma(g&cho) 「ちょうどそのバンドが解散するタイミングと、僕がハンドボール部を辞めたタイミングが重なったんですよ」
――ギターは部活でなく、趣味でやっていたんですか?
Soma 「はい、中学の時に軽く習ってたんですよ。一成に教えたりもしてたんですけど」
――すごい。
高木 「中学では僕ら全員野球部で坊主やったんですよ。やのに“今日ギター習いに行かないとダメなんで帰ります”みたいな。めちゃめちゃカッコええやん」
全員 「(笑)」
高木 「それがキッカケでSomaを家に呼んで、家にあったアコギで教えてもらってて」
――一成さんのギターの先生なんですね。
ヤマケン 「実際、一成は“俺、Somaっていう師匠おんねん”って言ってたんですよ」
高木 「そうやったっけ」
ヤマケン 「あと、僕がまだSomaと面識がなかった頃、前のバンドのライブをSomaが見に来てくれて、“俺もギター久しぶりにやりたくなったわ”と言ってくれたみたいで、一成がめっちゃ喜んでました」
高木 「(笑)」
――Somaさんのギター魂に火をつけたと。何だか引き合ってますね。3人には役割分担があるそうですね。
高木 「バンド結成当初から役割ははっきり分かれてて。僕が曲作りとグッズやCDジャケットのデザイン、ヤマケンがスケジュールやお金の管理、Somaがパソコン1番強いんで、動画編集をやってくれてます」
――あとプロフィールの英語表記で気になる表現がありまして。“ヤマケンさんの過去に秘密がある”と書いてありましたが……。
ヤマケン 「僕とSomaはツイッターやってるんですけど、僕だけ1000人ぐらいフォロワーが多くて、よくツッコまれるんですよ。僕は秘密めかして答えをボカすんですけど、ほんまは中学の時、バンドアカウントをやる前にMr.Childrenが好きな人が集まる趣味アカをやってて。そのフォロワーが1000人いるんですよ」
――ミスチルファンの方1000人にフォローされてるんですか!
ヤマケン 「そうなんです(笑)」
――面白いですね(笑)。ではメンバーさんがどんな人か、他己紹介をしてください。
高木 「ヤマケンはバンドの中では1番可愛いと言われがちですね。天パやし、笑顔が可愛いとよく言われてます(笑)」
ヤマケン 「いや、見た目かい(笑)」
高木 「音楽の好みが僕と全く違って、サザンとか山下達郎とかちょっと古い音楽が好き。あと映画もめっちゃ好きです。文章を書くのも得意なんですよ。大体バンドのWebインタビューもヤマケンが答えてくれます。あと見た目はあんま変わってないけど、中身が変化してますね。彼は前に出るタイプだと思われるんですけど、実はそんなことないんです」
ヤマケン 「そうなんです。フットワーク軽いと思われがちなんですけど、重い方で。逆にSomaはフットワーク重いと思われるけど、実はめちゃくちゃ軽い。クールに見えるけど動物好きで、1番友達を大事にする。あと受け皿が広いですね。僕と一成は割と我が強くて、“ここは曲げたくない”って意見を言い合うんですけど、Somaが“俺やるで”と言ってくれることが多いですね」
高木 「そういうヤツがいないと回らんもんな」
Soma 「ちょっと気分良くなりました(笑)。一成は中学から知ってるけど、見た目は絶対変わった。めっちゃセンスあるヤツになった」
高木 「嬉しいですわー(笑)。中学の時はメガネで坊主やったから、成人式に行ったらマジで気づいてない人がいたんですよ。別人並に変わってるんですよね」
――一成さんはデザインはずっとされてるんですか?
高木 「2nd EPの『ALIVE』以外はやってますね。意外と楽しくて、メンバーが“めっちゃええやん”と言ってくれるので、じゃあこのままいこかなと。今作は写真をカメラマンに撮ってもらって、デザインは自分でやりました」
――すごいですね。
高木 「デザイナーさんにお願いする時って100%自分の要望が伝わりにくいので、自分が思ってる“こうしたい”を叶えるために、最近は色んなことを自分でやりたいと思うようになりました。いずれはレコーディングも自分たちでやれたら最高ですね」
――最初からこんなバンドにしたいというビジョンはありましたか?
高木 「それは本当にどんどん変わっていってる感じがありますね」
ヤマケン 「高校の時はどちらかというと僕が前に出て、友達同士でバンドやってる強みを活かして、洋楽というより青春の感じを表に出していこうと思ってました。大学入ってからは良い意味で一成のやりたい方向に変わってきてます」
高木 「今、僕が結構やりたいことやらせてもらってるんですけど、バンドのコンセプトが、“他の日本のインディーズバンドがやってることと違うことをしたい”なので、それを活動全部に反映しています。たとえばSNSに英語入れたり、ジャケットに自分たちの写真を入れてみたり」
――曲を作る過程は?
高木 「最初はめっちゃ原始的でした。僕が家でアコギと歌で曲を作って、それをシェアする術を知らなかったので、スタジオで“新曲発表します”って弾き語りで聴かせて、そこからアレンジして。徐々にスマホのボイスレコーダーで録って送ったり、GarageBandで声やギターを重ねるようになって、今はパソコンで自分で録って打ち込んで、デモ音源作ってシェアしてます。曲も最初は洋楽っぽくしようと思ってなかったんですけど、中学の時から洋楽ばっかり聴いてたんです。中1の時にOne Directionが初来日して、めっちゃカッコ良くて、そこからいろんなバンド見に行ったりして。高1で初めて作曲した時も、自然と参考にしたのは洋楽でしたね。そのうち“Re:nameって洋楽っぽくて良いね”と言われるようになって、それが強みとわかってからは、歌詞も英語で書いてます。今は日本語詞と英詞の曲があるんですけど、日本語詞の曲にも洋楽の雰囲気を入れたいなと思って。基本メロディーが先ですね」
――曲を通して表現したいことはありますか?
高木 「あまり一貫したものはないですね。今回のアルバム『postmodern indie』もテーマがなくて、タイトルも“他と違うことしたい”というのが一貫してるだけで、ジャンルも幅広くやっていきたいと思ってます」
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自粛期間に幅広いジャンルに挑戦した楽曲制作
――『postmodern indie』のお話を聞いていきたいと思います。
ヤマケン 「『postmodern indie』は、1曲目から10曲目までは配信でも聴けて、11曲目と12曲目はCDだけの収録です。配信で聴く人にはこれからと今のRe:nameを、CDも買ってくれた人には今とこれまでの青春ぽいRe:nameが楽しめる形にしました」
――今作は作る過程の中で曲が増えたそうですが、制作自体はいつからスタートしたんですか?
高木 「『We Got Love』(M-10)はワンコーラスが2019年末ぐらいに出来てて、そこから次はアルバム出そうという話はしてたんで、作り始めました。5曲目の『byebye』も割と早く出来たんですけど、コロナで自粛になってライブが出来なくなったんで、その分曲を作っていきました」
――ライブ活動がなくなった代わりの時間を制作にあてたと。
高木 「多分、もう少し前の時期がコロナだったら、もっと似たような楽曲が出来てると思うんです。今回、色んなことをやってみたいなという時期に自粛期間があったので、敢えていろんな要素を入れた曲に挑戦できました。初めてレコーディングの前にプリプロをしたので、レコーディング前に冷静になって曲を聴く時間もあって、曲の取捨選択もしました」
――時間をかけて客観的な視点を持って作られたんですね。ほんとに同じバンドの曲かなと思うぐらい、幅広いジャンルが入っていましたが、それは単純にいろんなジャンルに挑戦してみたいという気持ちから?
高木 「スリーピースだと、ライブで結構やれることが限られてくるんです。最初はやりたい音楽を3人に落とし込んで曲を作ってたんですけど、ちょうど自粛が始まった時ぐらいに、ライブで同期を流す機材を入れて、演奏の幅を広げてみたいという話をしてて。機材揃えたら案外いけそうだったんで、同期ありきで作った曲が何曲かあるんです。それでジャンルが広がったかなと」
ヤマケン 「それと、去年ライブするたびに、洋楽ライクの曲と日本語の曲両方やってて、ライブ終わりにいろんな人に“Re:nameはどっちに行きたいのか分からない”とずっと言われてて。コンプレックスもあったんですけど、それって強みなんじゃないかなって。じゃあいろいろできること見せたろうぜ! というニュアンスもあって、振り切りました」
『postmodern indie』が誰かの思い出になって欲しい
――それぞれ今作の中で気に入っている曲はありますか?
ヤマケン 「僕は『byebye』がクリスマスっぽいアレンジで単純に好きです。この曲メロディーがすごく良くて、全体的に少し昔のUKのニュアンスで、クリスマスソングになるダイヤの原石感を感じて、一成にクリスマスソングかき集めてラインで送って、“こういうのやってみてくれへん?”とお願いしました。それと『Somebody Like You (2020 ver.)』(M-11)も気に入ってます」
――2020 ver.ということは再録ですか?
ヤマケン 「そうです。内容も変えて。ここで言うの恥ずかしいんですけど、途中3人の声が入るところで一成が、“この歌詞で3人の声入るのめっちゃ良いな”と言ったんですよ。英詞だから意味がわかってないんですけど、“Bestfriend”って単語が入ってるから、青春の友情の歌詞かなと思って、CD届くのを楽しみにしてます」
高木 「お客さんと一緒やん(笑)」
――歌詞カードに和訳も載るんですか?
高木 「CDにはでっかいポスターを折り畳んで入れてるんですけど、そこに歌詞は載っていなくて。歌詞カードは誰でも見れるようにしたいなと思ったんで、QRコード読み取ったらネットで見れるようにしてます。和訳もそこに載ってます」
――Somaさんはいかがですか。
Soma 「僕は8曲目の『Late Night City』です」
高木 「ギターが1番活躍してる曲やな」
Soma 「この曲、ギター何人おるんやろうというぐらい重なってて。僕らの曲あんまりギターソロがないんですけど、この曲は今回唯一ギターソロが入ってます」
高木 「ギターソロは完全にSomaが作ったしな」
Soma 「1回やり直したけど、詰めて今の形になりました」
――こういうふうに弾きたいとか、イメージはあったんですか?
Soma 「あまり音を歪ませないようにしました。歪んでない方がこの曲に合っているので、結構音にはこだわりました」
――“壊れた天秤だけそっと 透かして飛ばして欲しいの”という歌詞が、儚さと切なさを感じます。
高木 「僕は歌詞にストーリー性を持たせる曲と持たせない曲があって、これは特に後者ですね。深夜の夜の街を歩きながらいろんなこと考えて、もうええわ!ってなる雰囲気を出したくて、色んな言葉をわざと混ぜて表現にこだわってます」
――一成さんのオススメの曲は?
高木 「僕は1曲目の『Swingboat』。最後の方に出来た曲で、全部日本語詞なんですけど、洋楽感とアコギを入れた爽やかな感じが狙い通りにいったという達成感があって、推し曲です」
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――今作は初の全国流通盤ですが、どんなふうに聴いてもらいたいですか?
高木 「初めて聴いてくれる人は“Re:nameってこういう感じなんや”となると思いますけど、あまりジャンルに捉われてほしくない。振り幅のあるバンドなんやと思ってもらえたら嬉しいです」
ヤマケン 「聴いてくれた人が昔を思い出す時、そのシーンと一緒に出てくるCDになって欲しい。僕も初めて聴いたCDや、親に買ってもらったCDはよく覚えてますし、『postmodern indie』が誰かの思い出になって欲しいです」
Soma 「このCDを聴いて、ライブハウスにまだ行ったことがない人の、初めてのライブハウスのライブが僕らになったらいいなと思います」
――最後に、今後の目標やビジョンは?
高木 「他のインディーズバンドと違うことをしたい。その軸だけずっとブれずにやっていって、最終的に海外ツアーができたら、自分の理想通りです。軸だけブレへんようにやっていきたいですね」
ヤマケン 「僕、星野源さんとかKing Gnuさん、芸人ならダウンタウンさんや爆笑問題さんみたいに、メインストリームにいるのに掘ったら実は尖ってる人に昔から魅力を感じるんです。なので最終的にはメインにいながらも、実はやりたいことやって尖ってる、みたいなバンドになりたいです」
Soma 「あんまりバンド音楽を聴かない人達や、幅広い年齢層の人に受け入れてもらえるようなバンドになっていきたいです」
Text by ERI KUBOTA
(2020年11月25日更新)
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