福岡発、Attractions
ニューアルバム『POST PULP』でメジャーデビュー!
ぴあ関西版WEB初登場!!
2016年結成、福岡・大名のアパレルショップBINGOBONGO主宰の音楽レーベル“GIMMICK-MAGIC”の第1弾アーティストとしてデビューした4人組バンド、Attractions。2017年8月に配信リリースされたシングル『Knock Away』がSpotifyの主要プレイリストを網羅、異例の約60万再生を突破。その後リリースされた1st EP『Attractions』は高い評価を受け、2018年にはSXSWに出演。現地でも大きな反響を呼んだ。アルバム『DISTANCE』を経て、8月26日、1stアルバム『POST PULP』でビクターよりメジャーデビュー。2019年7月にリリースしたシングル『Satisfaction』と、以降発売されたデジタルシングル3曲を含む全11曲が収録(初回限定盤のみ収録のボーナストラック『Beat Down』は必聴!)。自分たちのルーツである90年代のロックや海外のインディロック、R&B、ポップ、エレクトロ、ファンクなどを彼ら独自のセンスで昇華した楽曲たちは、カオスティックながらもポップで強烈に耳に残る。たまらなくカッコ良い。現在も福岡を拠点に活動する彼らは、ぴあ関西版WEB初登場。ボーカル・TAROとギター・TAKEにリモートでインタビューを行った。
福岡からアジア、世界を目指すバンド
――まず簡単にバンドの成り立ちを聞かせてください。
TAKE「福岡の大学の音楽サークルで僕とTAROとベースのJUNが一緒にやってて、Attractionsを組むにあたって、福岡のバンド仲間のドラムのAKIRAを誘って結成した流れですね。それが2016年です」
TARO「最初に出した音源が『Knock Away』(2017年8月リリース)だったんですけど、結成時からある曲で、それがキッカケでSXSWへの切符を取りに行くライブ(『FUKUOKA ASIAN PICKS「GO GO WORLD’S FES.』)に出ることになって。それで『Knock Away』をダウンロードできるシステムにして、福岡各地にデモを配りに行って出会ったのが、BINGO BONGOだったんです」
――そこから、あれよあれよと注目されて。
TAKE「あれよあれよですかね(笑)。地道にやってた感じです(笑)」
――『Knock Away』が話題になって注目されたところが大きかった?
TAKE「そうですね。サブスクもちょうど出始めたタイミングで、1番最初に作った『Knock Away』がApple MusicやSpotifyで取り上げてもらって。最初の曲ながら注目してもらえたというのが大きいですね。これからやってくという中で、福岡にいながらもいきなり表に出してもらった感じですかね」
――目標や展望はあったんですか?
TARO「1番の目標は今でも変わらないんですけど、福岡から世界に行くことですね。僕らは英語の歌詞が多いんですけど、日本にはない、世界を目指しているバンドとして結成した認識はありますね」
――基本的に作曲がTAKEさんで、作詞をTAROさんが担当されてるんですよね。曲を作る原動力は?
TAKE「原動力で言うと、やっぱりカッコ良いオリジナルの音楽を作りたい。それを世に認識してもらいたい欲はずっとあって。よりカッコ良い曲がこの福岡の地で出来るんだよということも含めて、発信し続けてるところではありますね。メッセージを伝えたいバンドでもないので、僕らが好きだった音楽を昇華して新しいサウンドを作るというところでやってます」
『Satisfaction』よりカッコ良い曲を作らなきゃいけないプレッシャーもあった
――『POST PULP』の発売、そしてメジャーデビューおめでとうございます!
TARO・TAKE「ありがとうございます!!」
――結構早い段階でメジャーの話もあったんじゃないかなと思うんですけど、その辺はどうですか?
TAKE「今までインディで活動してきた経緯としては、マネージメントも含めて“やっぱり今は実力をつけていく時だね”という話をしてましたね」
――ついにタイミングがきたと?
TAKE「そうですね。『POST PULP』でいくかっていう流れでいきました」
――『POST PULP』の制作に入ったのはいつ頃から?
TARO「2019年の3月~4月にアルバム『DISTANCE』(2018年12月リリース)のツアーがあって、その直後にシングル『Satisfaction』をレコーディングしたよね。最初に『Satisfaction』が出来たのは大きかったかな」
TAKE「そうだね、去年の4月くらいから動き始めたんですかね。最終的に全曲録り終わったのが、今年の3月頭。最後のレコーディング中に、“コロナが日本とか来たらヤバいよね”みたいな話をちょろっとしてた段階でしたね」
――なるほど。1年かけて制作されたんですね。
TAKE「福岡在住なので、東京のライブが入った時に数曲ずつレコーディングして、みたいな感じで、曲を貯めてたイメージですね」
――制作もしつつ、ライブもしつつ。
TAKE「っていう1年でしたね、去年は」
――今作『POST PULP』は、TAROさんが“集大成”と表現されていますね。
TARO「僕らの生まれた1990年代って、僕的には音楽の進化の頂点だと思うんです。ロックもエレクトロもヒップホップも、本当に進化の頂点。2010年代の青春時代もリバイバルの時期だったし、2020年はやっとクロスカルチャーがうまい具合に出来始めた気がしていて。僕らのルーツである90年代の音楽と、90年代以降の音楽をうまくまとめて、ブラッシュアップして、新しい形として作り上げることができたという意味で、“集大成”と言いました」
TAKE「集大成って言うと、“これが全ての完成形”みたいなニュアンスもあるんですけど、そうではなくて、どんどん変わり続けていくものでもあると思う。その中でも根本として、自分たちの主軸がしっかり出来たという意味合いだと思ってます。集大成はTARO個人の感想でもあるし、俺的にはひと段落って感じ」
TARO「俺的には第2章って感じだけど」
――TAROさんの言葉を借りると、第1章のAttractionsも音楽性はジャンルレスでしたよね。
TARO「そうですね、それは変わらないんですけど、東京で初めてレコーディングしたり、大先輩と一緒に曲作ったり、今回は色々勉強する事も多かった。『Satisfaction』以降、自分たちでどこまでできるのかというところで、もの凄くチャレンジングなことだったんですけど、エンジニアの奥田泰次さんやプロデューサーの荒木正比呂さん、いろんな方々の力を借りて、やっと自分たちが頭で思い描いていたカッコ良い音が形にできました」
――コンセプトやテーマはありましたか?
TAKE「そういうことって、話し合うっちゃ話し合うんですけど、話し合ってうまくいったことがなくて(笑)。メンバーが聴いてる音楽も幅広いし、方向性を決めても結果まとまらなかったので、“自分たちが納得いくものを自由に、より強固なものにしよう”という主軸は持ってましたね。強いて言うと、景色的には夜だったりとか。夜のクラブで遊んだり演奏してるような、抽象的なものはあったりしましたけどね」
TARO「『Satisfaction』をわりかし完成度の基準にしているというか、それ以下のこともできないし、それ以上のものを常に作らなきゃいけないという想いはありましたね」
――『Satisfaction』を超えないといけない、というプレッシャーを抱いたりは?
TARO「『Satisfaction』がカッコ良いから、もっともっとカッコ良い曲作らなきゃいけないっていうプレッシャーもあったよね?」
TAKE「インタビュー受けてたら、皆がプレッシャーを感じてたって言うのを聞いて、“なるほど、なるほど”と思ってて。僕的には、結構“常に前作よりカッコ良いものを作りたい!”みたいな気質なので、そういうプレッシャーは確かにあるかも」
――TAKEさんはいつも通りに曲を作っていた感じですか。
TAKE「……まあ、個人的にも去年は悩んだことが多かったかな。レベルアップするという意味で、作曲者という意味でもAttractionsの可能性を広げるために、もっと勉強しなければとも思ったし、やっぱり自分には結構プレッシャーを与えてたのかなと思いますね」
――自分で自分にプレッシャーを与えていた。
TAKE「そうですね。自分もそうしたいと思ってたし、そうしなきゃと思ってましたね」
バンドのリアルを反映した1枚
――『Satisfaction』では歌詞に日本語も入っています。作詞の方法も変わりましたか?
TARO「変わりました。特に今作はかなりパーソナルな内容になったかなと思って。今までは想像上の物語を作ることが多かったんですけど、今回の『POST PULP』に関しては、1曲1曲違う物語がある。架空のものもありますけど、あくまでも自分の体験を元にすることが多かったですね」
――そうなったキッカケはあるんですか。
TARO「『Chain Reaction』(M-3)にすごく関わる事なんですけど、自分をどうしたいのかわかんなくなって、“より自分らしくいるためにどうすればいいんだろう”と悩んだ期間があって。それが功を奏したのか分からないですけど、“自分は自分なんだな”と思って。流行りや周りを気にすることなく、あくまでも自分のライフスタイル、自分の考え、自分のイデオロジーを歌詞に組み込むことが、自分にとっては正しいんだなと思って。楽曲がポップであることは間違いなく必要だけど、それ以上に何よりもリアルが大事。今回は結構意識しましたね」
――なるほど、リアル。
TARO「前作『DISTANCE』では、できるだけポップにとか、お客さんが聴きやすいように、歌いやすいようにという意識を学んだので、今回はそれプラス、自分の考えを組み込んだ感じですかね」
TAKE「そうだね」
――サウンド面で意識して変わったところは?
TAKE「どうだろう。逆に皆が聴いて、どう変化してるか変化してないのかは、気になるところでもありますけどね。『DISTANCE』ではシンセサイザーとか覚えたてで、結構手探り状態でやってたんですよ。その時々でどんどん学んで今があるので」
――なるほど。
TAKE「例えばハードのシンセの機材をバンドで買って、触って、思い描いた音を出せるようになるとか、そういった意味でよりイメージが強固になってきたのはありますね。思考を変えてみようという発想はあまりないんですけど、『DISTANCE』を出してからフェスに呼んで頂く機会も増えてきて、その時に対バンのアーティストを見たり、自分らの演奏を振り返って、ライブでガシガシ乗れるような曲や、ライブを魅せられる曲が欲しくなったり、そういうリアルがアルバムに反映されてるんじゃないかと思います」
TARO「今回は結構PC上で作りこんだ状態が多かったので、本当に緻密ですね。TAKEくんがパンドラの箱を開けてしまったと思っています(笑)」
TAKE「DAWの使い方に慣れてきたのもありますね。常に学びながら徐々にレベルアップしてるイメージですかね(笑)」
自由という魔法が宿った曲
――『Last Magic』(M-4)は先行配信で、アルバムでも印象深い曲です。
TAKE「『Last Magic』は1番最後に出来た曲なんですよ。今年の1月ぐらいに制作に入ったんですけど、中村佳穂バンドのシンセやアレンジをやってる荒木(正比呂)さんと共作で。荒木さんの自宅兼スタジオが三重県の四日市の離れぐらいにあるんですけど、そこに泊まりがけで行って、すっげー自由に作った曲です」
――先ほど『Chain Reaction』は自分らしさについて書いたとTAROさんがおっしゃっていましたが、『Last Magic』も、どことなくそうなのかなと。
TARO「無意識かもしれないけど、わりかしそうですね。『Last Magic』に関しては、三重県から帰ってどういう歌詞にしようかなと考えた時に、SXSWに行った体験が大きかったんですけど、そこで感じた自由という魔法に出会ってしまった。個人的にはあの感覚がこの曲に宿っていて、それを追い求めたくなったんです。自分らしさを出すための場所を追い求める主人公の気持ちも、自由を皆で共有したいという気持ちもこの曲にはあったんじゃないかな」
――荒木さんとの共作や、いつもと違う環境で制作したことで、魔法が宿った?
TARO「それはありますね。荒木さんはすごく1人1人の能力を引き出すのが上手くて、一緒に作っていて楽しいんです。本当にクリエイティブな空間だったので、すごく勉強になりました。こういう環境は今まで僕らが追い求めた形かもしれないと感じましたね」
――TAKEさんは、荒木さんとの共作はいかがでしたか。
TAKE「僕も勉強になりました。アルバム最後の曲ということで肩に力入ってて、“もうマジで良い曲作る!”みたいな気負いがあって。結構僕は曲を作る時、視野が狭くなって入り込むんですよ。だからオープンになること自体に、すごくハッとさせられた。グッドフィーリングが随所に織り込まれてる曲です。余白感もワクワク感もある。そういう意味では、1番変化球でもあるけどストレートでもある。アルバムの最後のキーにピッタリはまったイメージがありますね。『Last Magic』も全部含めて、ようやくAttractions全体が良い感じに出てきた。最高でした」
――『Last Magic』のMVも公開されましたが、撮影秘話はありますか?
TARO「タフだったけど、めちゃくちゃ楽しかったです」
TAKE「横浜の横須賀よりもっと南の海岸で、夜12時集合で、次の日の夕方ぐらいまでの長丁場(笑)。TARO以外のバックバンドメンバーは昼前ぐらいに終わったのかな。TAROはその後おじいちゃんメイクが夕方まであって」
TARO「特殊メイク初めてやった。1時間~2時間ぐらいかかるんですよね」
――TAROさんはさらに長丁場だったんですね。
TARO「でも楽しかったです。冒頭の筏のシーンは、1人1人海岸から船で5分ぐらいのところで降ろされて撮影してたんですけど、波が不安定で読めないんで、何回も撮り直して、気付けば2時間経ってて。そこそこ酔って、その後堤防で撮影して、皆お疲れで。特殊メイクやってる時に、僕も“ヤバい、限界かも”と思ってメイクのお姉さんに“ちょっと寝るかもしれないです”って言って。“寝ていいですよ!”って言われたけど、本当にあれは申し訳なかったと、反省してます」
――メイク中は寝れたんですか?
TARO「ちょっとだけ寝れました(笑)。ただ、女の子1人に頭ガッて持たれて、もう1人がペイントするみたいな格好で、女の子に顔を持たれることはなかったんで、おもしろかったです(笑)」
対極となる2つの楽曲がアルバムのテーマになった
――アルバムの中で核になる曲はありますか?
TAKE「どっちにしようかなー。『Chain Reaction』か『Blood Pressure』(M-11)なんですけど」
TARO「俺も同じ」
TAKE「『Chain Reaction』は確か、ライブフェス中にRecがあって、“ロックバンドとしてすげーエッジの効いたヘビーな曲をフェスでかましたいなー”みたいな欲求がすごい表れてる曲なんですよね。さっきTAROが話したメッセージ性もあって、すごくカッコ良い曲になったんですけど、やっぱ『Blood Pressure』にしよう(笑)」
――どうぞ(笑)。
TAKE「『Blood Pressure』は個人的にすごく気に入ってる曲で。楽曲のイメージとしては、自分らが好きなニューウェーヴ感だったり80’sの壮大な雰囲気を元にしつつ、TAROの歌の1番気持ち良い部分を出そうとしました。1番壮大で、かつソウルフルな曲にしようと思って。最初は英語で作ったんですけど、洋楽として閉じ込めてしまうのは勿体ない。それで日本語詞メインで作ったんですよね。もともと洋楽ライクな曲ではあったんですけど、日本語が混ざることで歌詞も聴いてもらえるし、楽曲の雰囲気もより伝わりやすくなった。日本にいる洋楽好きのAttractionsだからこそ出来た曲じゃないかな」
TARO「日本語詞にした事で感情移入することができる曲。僕、お客さんとのライブを“空間の共有”という風に認識していて。『Blood Pressure』は本当に皆に寄り添うし、お客さんも僕らに寄り添う曲。お客さんと自分たちの間のスペースをキュッと締めるような、本当に強力な曲だし、皆で歌えるのも本当に楽しみなんです」
――映画のエンドロールで流れていそうだなと思いました。
TARO「嬉しいです」
TAKE「“誰か映画のエンドロールに使ってください”って書いといてください(笑)」
――歌詞はTAROさんとTAKEさんの共作なんですよね。
TARO「僕まだ日本語はそんなに得意じゃないというか、ずっと英語で書いてたので、少しTAKEくんに手伝ってもらいました。日本の風情というか、やっぱ違うよね、日本語と英語の歌詞の書き方」
TAKE「あるんですよね、絶妙なバランスが。そこはTAROの意図を組みつつ、どうやったら曲の歌詞としてマッチするか、聴き馴染みも考えつつ作りました」
――実際の作業はどういう感じで?
TAKE「DAWという音楽ソフトにオケを入れて、いくつか候補がある歌詞を歌って、聴いてみて。その時は良くても持ち帰って次の日聴いたら、“何か馴染みが良くないな~”みたいなのも結構あるんで、トライ&エラーを繰り返しましたね」
――TAROさんにとっての核になる曲は?
TARO「僕もTAKEと一緒で、『Chain Reaction』か『Blood Pressure』です。なぜかというと『Blood Pressure』は、“自分を駆り立てるものは何なのか”ということを突き詰めた曲で、反対に『Chain Reaction』は、“自分はどうなりたいのか、このままでいいのか”と問題を提示してる曲になっていて、この2つが自分の中で今回のアルバムの大きなテーマかなと思っていて」
――なるほど。
TARO「『Blood Pressure』は多幸感がある。皆に対する感謝の気持ちも込めて歌いました。『Chain Reaction』は、中に溜まってるものを吐き出すようなアグレッシブな曲。対極ですけど、大きなテーマになってると思ってます」
――改めて完成してみて、今のお気持ちはいかがですか。
TARO「本当に自信持って、頑張ってきて良かったと思う。出せたことが感慨深い。僕的には『POST PULP』がメジャーデビューアルバムに重なったことは、正直そんなに関係ないんですけど、大きな1つの踏み台になるような作品かなと個人的には思ってるんで。高校生や大学生のキッズ達がカッコ良いと思ってくれたら、僕はそれだけでめちゃくちゃ嬉しい。で、海外で聴いてもらえることがあれば、早く行きたい。どの曲も、いろんなシチュエーションに合うような曲ばっかなんで、たくさんの人にヒットするようなものがあればいいなと思ってますね」
TAKE「僕は早く皆の感想が聞きたい。どこまで刺さるのかも楽しみなところです。あとライブでかましたい。その反応を受け取って、もう全然次に進みたいですね。やっぱりレスポンスあってこそ頑張れるというか。コロナ期間ではあるけど、もうバシバシ聴いて、ライブを想像して楽しんでくれたらなんて思ってますね」
text by ERI KUBOTA
(2020年8月26日更新)
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