独特の感性で異彩を放つポップ・メーカーが
自ら飛躍を実感する最新ミニアルバムをリリース
ましのみインタビュー&動画コメント
2018年にメジャーデビューしたシンガーソングライター“ましのみ”が、3月に最新作『つらなってODORIVA』をリリースした。本作は、今冬に放送されたドラマ「死にたい夜にかぎって」のオープニング主題歌「7」(ナナ)を含む、5曲入りのミニアルバム。ひとつの枠にとらわれない彼女独特の感性が存分に反映されると同時に、ポップの概念の幅を広げる快作に仕上がった。最新の“ましのみ”を凝縮して5曲に詰め込んだ新作について直撃した。
これまで2作のフルアルバムをリリースしてきた彼女にとって、最新作『つらなってODORIVA』はメジャーで初のミニアルバム。まずは、この作品に込めた思いを聞いた。
「今回の『つらなってODORIVA』は恋愛を軸に、日常のいろんな場面でちょっとひと休みする、踊り場のような場所になればいいなという、私の思いをコンセプトに作りました。この作品自体が踊り場になればという思いも、もちろんあります。それに加えて踊り場って、なかなか進めない場所だったり、停滞している、前進できない場所であるとも捉えているんです。上手くいかないことが多かったり、人間関係がシンドかったりすることってありますよね。そういうときでも、踊り場が連なっていけば前に進んでいくし、成長するための階段の一段になる。後から振り返れば、こういう時間も成長するために必要だったと思えるはずだから、今はそこにいても、そういう状況を肯定して大丈夫。休んでいていいし、逃げてもいいよ。そう肯定をしたくて、付けたタイトルなんです」
キャッチーなポップ・チューンから、生音とエレクトロが有機的に絡み合ったサウンドが印象的なナンバー、そして落ち着いたトーンの弾き語りまで、全5曲を収録。ここに収められた楽曲たちは、それぞれに異なる表情と個性を持ち、聴く者にカラフルな印象を与える。
「もともと、私は音楽を全然聴いてこなかったタイプなので、たとえばヒップホップを掘り下げてやっていきたいとか、そういうことがないんですよ。今までのアルバムとかも含めてバラードからアップテンポ、弾き語りとか、作風がわりとバラバラなんですよね。良くも悪くも統一感がないといえばそうですけど、いろいろなスタイルを取り込むのは、私にもとからある性質かもしれません。それに、どこにもはまりたくないとも思っています。ヒップホップもやるしポップスもやるしというよりは、たとえばある曲はヒップホップのいいところと、ジャズのいいところを私の案配で統括する。そうして、すべての曲を私のセンスで作っていきたい。そういう、考え方なんです」
今作は初めて、自らでトータル・プロデュースを手掛けたこともトピックのひとつ。この体験は表現者である23歳のアーティストに、大きなフィードバックをもたらした。
「これまでは自分の感性が潰れてしまうのが怖くて、意識的に音楽を聴いてこなかったし、あまり音楽を勉強しないようにもしていました。でもサウンドを自分で作りたいと思ってから、音楽を聴くようになったり勉強するようになった。それで、気付いたんです。感性は、そんなに簡単に潰れないなって。今まではサウンドからビジュアルから、全部を自分のエゴでまとめることで“ましのみ”の幅が狭まって、クオリティも落ちてしまうんじゃないかみたいな考えが強くありました。あまり自分のエゴで囲い込みすぎず、プロの人に任せたうえで、自分の意見を言おうみたいなスタンスだったんです。だけど、自分にはもっと細かいこだわりがあることに気付き、サウンド作りに対して自分の感覚とかを信じられるようになった。今までの人生のなかで、2ndアルバムとこの『つらなってODORIVA』のあいだで、自分自身がかなり大きく成長したと感じています」
2ndまでの作品で世界を広げ、今作で一段上の新しい扉を開いた。自身で実感するほどの成長を遂げた今の彼女のアーティスト性が、このミニアルバムに濃縮に絞り出されている。
「これまにフルアルバムを2枚出して、30曲弱くらいで“ましのみ”のバラエティがいろいろと出せました。今作はそこからかなりステップアップした自分になって、初めに出せる1枚。やりたいことがたくさんあるなかでも、今の私がいちばんやりたかったことが詰め込めています。それをギュッと濃縮して、ミニアルバムという形にできました」
最後に、新作を届けたいファンへ。彼女が贈ってくれたメッセージを紹介しよう。
「“ましのみ”という存在を初めて知った人も、『つらなってODORIVA』はすごく入りやすいと思うんです。ミニアルバムはひとつの作品として統括するのに、世界観を見せやすくて、すべての曲が生きる。やってみて、めっちゃいいパッケージングの仕方だなと実感しました。サウンド面でも心地よくて面白い作り方をしているので相当、聴きやすいんじゃないかな。そのときどきの場面や気持ちによって、感じ方が変わる作品だと思っているので、いろんな場面でじっくり味わってほしいですね」
text by 川崎政司
(2020年4月17日更新)
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