ソロデビュー作『My Bouquet(マイ・ブーケ)』からの楽曲と
キャンディーズ・ソング満載の新たなツアーが開催!
伊藤 蘭インタビュー
伝説の国民的アイドルグループ、キャンディーズの解散から40年以上を経て、昨年ソロデビュー・アルバム『My Bouquet(マイ・ブーケ)』をリリース。キャンディーズのラスト・シングル『微笑がえし』を手がけた阿木耀子&宇崎竜童による『Let's・微・Smilin'』、『年下の男の子』へのオマージュを感じさせるトータス松本による『ああ、私ったら!』、井上陽水らしい独特の雰囲気が心地よい『LALA TIME』など、豪華作家陣による多彩な全11曲が収録。このアルバムを携え、同年6月に実現した41年ぶりとなる初単独コンサートも好評を博した。そして今年、アンコール・ツアーとして、『伊藤 蘭 コンサート・ツアー2020 ~My Bouquet & My Dear Candies!~』が2月からスタート。新たなステージに立つ彼女に、ソロ歌手としての心境やアルバム『My Bouquet(マイ・ブーケ)』に収録された自作の歌詞に込められた思い、そして追加公演も決定して注目される今年のツアーへの意気込みを伺った。
さりげない日常の中にも
大事な瞬間があるということを伝えたかったんです
――昨年リリースされたソロデビューアルバム『My Bouquet(マイ・ブーケ)』はとても素敵なアルバムですね。蘭さんの歌声を聴いていると、ずっと変わらない可愛さがありつつ、大人の女性のやさしさに包み込まれるような感覚もあって。
「ありがとうございます。そういっていただけると嬉しいです。自分でいうのもなんですが(笑)、良いアルバムになったと思います」
――キャンディーズの解散から40年以上を経て、ソロデビューしようと決めた時はどのようなお気持ちだったのですか?
「年齢的にもこれが最後のチャンスだなと思いまして、やることにしました。ソロデビューして、またコンサートをやるなんて…。何年か前の自分では思い浮かばなかったんですが。そういう(予期せぬ)ことが起こるのが人生なんだなって(笑)、今改めて思います。」
――『My Bouquet(マイ・ブーケ)』では蘭さんご自身が作詞した曲もありますね。
「こういうちゃんとした形で世の中に出すということで歌詞を書いたのは久しぶりなんですけど。自分でも思いがけず、3曲もできてしまって(笑)」
――その中の『女なら』(M-9)はロック歌謡的な曲調で、とても情熱的な内容です。
「そうですね、あの曲はタイトルが先にあったので、いいなと思って。幅広い年代の女性の方に共感して頂けたら嬉しいのですが。恋愛などに翻弄されたくないと思いながらも、どうしようもなく揺れ動いてしまう微妙な女性の心を書くことができたかなと思います」
――1曲目の『Wink Wink』には蘭さんご自身の人生が投影されているのでしょうか?
「これはまず(作曲した佐藤)準さんのメロディーに触発されまして、再スタートするようなイメージが湧いてきたんです。例えば、長年連れ添った夫婦が何気ない日常の瞬間に気づくような、さりげない日常の中にも大事な瞬間があるということを伝えたかったんです」
――そうなんですね。『ミモザのときめき』(M-8)は人生の伴侶とか、旦那様に向けての歌詞のようにも感じました。
「これはひとり旅をしているというイメージで書きました。友達同士でもそういうことってあると思うんですけど。ただ一緒にいることだけがふたりにとって必ずしも良いとも限らなくて。離れてみることで再確認できることってあるんじゃないかなって思います」
――そういうひとつ一つの歌をキャンディーズの頃からずっとファンの方が聴かれると、また感慨深いものがあると思います。キャンディーズの頃は3人で歌われていましたが、ソロとして歌う時はどんな心境ですか?
「昔がどれだけ心強かったかと、改めて思いましたね。(キャンディーズの頃は)三声の豊かさがあり、力強いユニゾンで、自然と歌に奥行きも生まれます。そういう経験をしたからこそわかる物足りなさというのもあるんですけど、同時に、(ひとりで歌うことに)やりがいもありますし」
――レコーディングされる時、なにか意識したことはありますか?
「う~ん…(しばし考えて)、曲の全体像を掴むというのかな。それはたぶん、お芝居のアプローチと同じような感じで、役を演じるときと似ているところもあって。フレーズをうまく歌えればいいっていうのではなくて。歌の世界観というか、(歌詞の主人公の)女性像みたいなものを自分の中で消化できてるかどうかというところから入りました。(歌を表現する上で)そういう捉え方をしてから歌わないと、すごく不安だし心もとないし、何か足りないと思って…。それがわかるまで時間がかかる曲もありました」
半分はキャンディーズの曲を
みなさんと一緒に歌う気持ちで臨みたい
――昨年、デビューアルバムを携えて開催された公演のステージでは、どんなことを実感されましたか?
「(歌手としてステージで歌うのは)41年ぶりですからね…。やっぱりいろんな思いがよぎるので、とにかく泣かないようにしようと思って(笑)、コンサートに臨みました。始まりで泣いてしまったら、もうぐずぐずになって歌えないなって思っていたので。せっかくやっているのに、泣いてばっかりで歌えてないというのは申し訳ないですし(笑)。でも、そこだけはなんとかクリアできたかなと。感慨に耽って、一歩そっち側に入っちゃうと大変なことになるので、なるべくカジュアルにドライに楽しく!っていうほうにもっていくという作業がけっこう必要でした。でも、みなさんそれを受け止めてくれて、すごく楽しいコンサートになったのでよかったと思います」
――どの公演でも涙を見せることなく?
「はい、おかげさまで(笑)」
――無事にステージを終えてほっとして、楽屋で涙が出たりは?
「それはありましたね。終わってから、ミキちゃんが来てくれたり、いろんな懐かしい顔の方々が来てくださったりしたので、やっぱりね…」
――今年はアンコールツアーとして、『伊藤 蘭 コンサート・ツアー2020 ~My Bouquet & My Dear Candies!~』が開催されます。アルバム『My Bouquet(マイ・ブーケ)』の楽曲はもちろん、昨年以上にキャンディーズの曲も盛り込まれるのですか?
「そうなんですよ。昨年は5、6曲だったんですが、今年はさらに増えて10曲前後。全部で22曲ぐらいで、半分はキャンディーズの曲を歌います。ただ、キャンディーズの曲は20代前半に歌っていた曲なので、キーも高くて、テンポも早いですし、若い女の子に相応しい歌。今の私の年齢ではハードルが高くなってしまっているんですけど。みなさんよくご存知の歌なので、みなさんと一緒に歌う気持ちで臨みたいと思います」
――昨年のステージは衣装替えも何回もあって、華やかでファッショナブルなステージでした。
「ありがとうございます。そういうビジュアル的な面も楽しんでいただけたらなと。若い女の子が観ても楽しんでもらえるようなステージになればいいなと思います。今回は衣装替えも多めで、いろんなタイプの衣装が出てくると思います。昔の楽曲を歌う時は、そのイメージをホーフツとさせるような雰囲気もありながらまずは動きやすいものを選びました。この年代でも大丈夫な適度な感じになっていますので、ご安心ください(笑)」
――そういったステージの衣装や演出に関して、蘭さんご自身がアイデアを出されたりすることもあるのですか?
「そうですね、なんとなくこんな感じがいいなっていうことをお伝えするぐらいですが、そうすると、まわりのスタッフがすぐに形にしてくれて、こんなのいかがですか?と提示してくださるので。すごくいい感じに進めています」
――では最後に、公演に向けてメッセージをお願いします!
「今年は5人のバンド編成にコーラス2人が入ります。ミュージシャンも素晴らしい方々なので、音楽を丸ごと感じてほしいなと思います。懐かしい歌も歌いますし、『My Bouquet(マイ・ブーケ)』の歌も楽しんでいただきつつ、青春時代と今を行ったり来たりする時間旅行を一緒に楽しんでもらえたらいいなと思います。音楽って一瞬で空気を変える素晴らしさがあると思いますので、ぜひみなさんに来ていただきたいです!」
text by エイミー野中
photo by 吉原朱美(2月5日、新宿文化センター公演より)
(2020年2月20日更新)
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