「音源とライブの違いをみんなに楽しんでほしい」
二人組のユニットになって1年
4月22日には1stミニアルバム『CHAP』が届く!
エドガー・サリヴァンインタビュー&動画コメント
2015年から活動してきたエドガー・サリヴァンは昨年4月から佐々木萌(vo)と坂本遥(g)のユニットとなって新たなスタートを切った。12月に配信曲として世に出た『Beginnin'』から聴こえてくるフレーズのように、ずっと探していた人にやっと逢えたようなトキメキが溢れ出す。エドガー・サリヴァンの楽曲と佐々木萌の歌声はリスナーをそんな気持ちにさせるのかもしれない。都会的でありながらどこか懐かしいいなたさも内包するポップネスと歌詞の中に描き出される心象風景や愛を込めたメッセージはこの二人でしか表現できないオリジナルな輝きを放っている。2020年代J-POPのニュー・スタンダードとなる可能性を秘めた注目の存在。4月22日には待望の1stミニアルバム『CHAP』を届けてくれる彼らの音楽的バックボーンや気になる今後の展開について聞いた。
ありきたりじゃなくてもポップなものはある。
そういうものを作りたい
――ぴあ関西版WEBには初登場ということで、まずはこれまでの活動を振り返りつつお聞きしたいのですが、佐々木さんはもともとシンガーソングライターとして活動していたそうですが、結成当初のエドガー・サリヴァンでバンドをやろうと思ったワケは?
佐々木「もともと楽器の音が好きで、誰かと一緒に演奏するのが好きだったんです。好きな音楽もロックだったので、バンドをやりたい気質はあったのかもしれない」
坂本「(佐々木萌がシンガーソングライターの頃)僕はサポートをしてたんですけど。萌ちゃんと一緒に音楽活動をしているうちに、当時集まっていたメンバーと(自然に)バンドみたいな雰囲気になって。だんだん精神面からバンドになっていったので、“これはもうバンドをやるしかないよね”っていう空気が(メンバー間で)醸成されきったところで、萌ちゃんが、“バンドやろうよ!”って提案してきたのが、2015年の1月なんです。それでメンバー全員が一致してバンドをやろう!ということになりました」
――“エドガー・サリヴァン ”という印象的な名前のインスピレーションの源というのは?
坂本「江戸川橋のスタジオによくみんなで集まっていたから、“エドガワ”は名前に入れようという感じで。その後、“エド・サリヴァン・ショー”とかけてみようとか、いろいろアイデアが合わさってこの名前になりました」
――1940年代からやっていたアメリカの有名なTV番組、“エド・サリヴァン・ショー”のことは知っていたのですか?
坂本「YouTubeで観たりしてました。僕が好きなドアーズとか(ローリング・)ストーンズが出てたので。それと、自分たちもショーを作りたいみたいな意味合いも込めています」
――昨年4月に、バンドからユニットとなって新たにスタートしたふたりの音楽的なバックボーンも気になります。坂本さんはCharさんの影響でギターを始めたそうですね。
坂本「そうですね。幼馴染のお父さんにCharさんのバックでベーシストをされていた方がいまして。中学生の頃に誘われてライブを観に行ったんです。カッコイイなって思って、すぐにCharさんと同じ青い色のギターを買いに行きました! その前からロックンロールは好きだったんですが、Charさんに出会ってからブルースを聴くようになり、大学時代はソウル、ファンクに傾倒して、THE ラブ人間というバンドをやっていた時は邦楽に振り切れていました。フュージョンもすごい好きでした」
――かなりいろんなジャンルがクロスオーバーしているんですね。佐々木さんは?
佐々木「私はJ-ロックですね。ビークル(BEAT CRUSADERS)、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、POLYSICS、ELLEGARDENとか、バンドが好きでした」
――そんな二人が今、エドガー・サリヴァンとしてやりたい音楽とは?
佐々木「普通に生活していると街に響いてるものじゃないと聴かないと思うから。親しみやすいものは作りたいですけど…」
坂本「僕は自分の曲をカラオケで歌いたいですね(笑)。やっぱり自分から出てくるメロディーだったり、萌ちゃんがいいなと思うメロディーはポップなものなんだなって思います」
佐々木「逆に“ポップじゃない=わかりにくい”ってとられるかもしれないけど、ありきたりじゃなくてもポップはあると思うし、そういうものを作りたいなって。結果的にそれがロックな曲でもいいんだけど」
――ちなみに、自分たちにとってのロックとは?
佐々木「ちゃんとすべて考え続けて、疑問を持って、意見があるという状態。私はそういう精神でいたいなって思います。ロック=反抗というより、ちゃんと物事を見て、ずっと考えて、全部に感想を持つっていう感じですね」
坂本「僕は今、“ロックとは?”って振られたら、“ギターの音がデカイこと”って言おうとしてた(笑)」
聴いた人が何か思ったり、
感じるっていうところはけっこう大事だなって
――普段どんなことを考えて音楽を作っていますか?
佐々木「売れたいから音楽をやっているわけじゃなくて、人が聴くための音楽だから。聴いた人が、グッときたなとか、聴いた後に起こる変化みたいなところが大切だと思うんです。CMで流れてなじみやすい音楽とか、マーケティングにはまる音楽っていっぱいあると思うんですけど、それはアートとして残らないんじゃないかと思うので。やっぱり、後々まで残っていくものが作りたいなあという目標でやっていきたいです」
――単に聞き流されて消費されて、忘れ去られてしまうものじゃなくて?
佐々木「そう! 自分も知らず知らずにいろいろなものを消費してるけど。聴いた人が何か思ったり、感じるっていうところはけっこう大事だなって思います」
坂本「僕が思う芸術は価値観の再定義なんです。難しい言い方だけど、世の中に存在してるけど、まだみんなが気づいてないものを気づかせるみたいなのが芸術の役割だなって思っているんです。(作品、曲の中に)本当に確固たる発見があれば、簡単に消費されて、流れていっちゃうものにはならないのかなって。ポップスのよさもそれだと思う。みんなが思ってるけど、誰も口にしなかったことが言葉となり歌詞となることで残っていくから。みんなにまだ知られてなかったけど、実はあったんだよっていう発見を僕らもしたいし。そうすれば、それが金字塔になるんじゃないかなって思うので。そういうものを僕は作りたいなって思います」
――歌詞のなかに何かが隠されていたり、暗示されていたりっていうレトリックがあるようにも感じます。
佐々木「ああ、そうやってひっかかってくれるのは嬉しいです。聴いた人がイメージを膨らませるような歌詞がいいかなと思うので。ただの日記じゃないから」
坂本「萌ちゃんは“大丈夫なんだよ”とか、“わかるよ”とか、ちょっと俯瞰した位置から歌詞を書いてることがけっこうあるように思います。僕はそれを愛と呼んでるんですけど(笑)。萌ちゃんなりの愛だなと。萌ちゃんは日記のようなわかりやすいことを書いてるんじゃなくて、その裏にはいろんな感情があって、誰かと別れる時にも悲しいだけじゃなくて、キラッと光る嬉しいことがあるということも含めて。ただその出来事を書いてるんじゃなくて、言葉の質感とか聴く人の想像力の余地とかを信じて、絵を描くようにワードを置いていっているという印象があるんです。聴く人を包み込むように歌詞を書きたい人なんだろうなって」
二人でできることにフォーカスした音源
ライブは生バンドでやることもすごく楽しい
――4月22日に新しいミニアルバム『CHAP』がリリースされますが、昨年のEP『NEWS』と比べて、制作する時に違いはありましたか?
佐々木「『NEWS』は二人になって新体制の出発だったので、むちゃくちゃ思いを込めて主張している感じがあったんですけど。今回は思いはこもっているんだけど、ライブでやったら楽しいだろうなみたいな発想で曲を選んだっていうのが大きな違いです。もっと自然体で、自分たちがふだんやっているテンション感を出したかったから。“よっ!”って、軽くみんなにご挨拶するように、楽しく聴ける曲が多くなったんじゃないかな」
坂本「今までは音を詰め込んでいくのが好きだったんですけどトラックに関しては特に引き算の方向に変わってきてるなという感じです。引き算することで、ライブでの余白だったり、萌ちゃんの今まで聴こえてこなかったニュアンスのボーカルがいっぱい聴こえてきて面白いなと思います」
――新たな出会いと始まりを感じさせる先行配信曲『Beginnin'』も収録されています。
佐々木「エドサリが今の二人になったのが昨年からで、そこからひとつ新たな始まりがあり、さらにこの先に来る(いろんな)始まりにも全部あてはまる予感みたいな…、ふわっとした始まりの部分を歌っている曲です」
――3月に先行配信曲となる『DOKI DOKI』は、先日ライブで披露していた時はギターサウンドが激しくてロック感が強く押し出されているように感じましたが。
佐々木「『DOKI DOKI』はライブでやった感じとはまた違うグルーヴの曲になっています」
坂本「今回のアルバムではドラムは一個も生で録ってなくて、全部打ち込みなんです。二人でできることにフォーカスした音源をライブは生ドラムにすることで、ロックになるっていうのも面白いなと。生バンドで音楽やることもすごく楽しいので、ライブではまた違った一面として見せられるといいなと思います」
――これからどんなふうにライブを展開していきたいですか?
佐々木「ライブはバンド体制でやりたいです。4月にリリースする1stミニアルバム『CHAP』を基軸として、今までの曲もいろいろアレンジして変えたものを楽しく聴いてもらえたらと思っています!」
坂本「ライブと音源はぜんぜん違うとか、逆にめっちゃ同じでびっくりするとか、スタッフもメンバーも驚かせるようなことをしたいなと思っているので。そういう音源とライブの違いをみんなに楽しんでほしいですね」
text by エイミー野中
(2020年2月20日更新)
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